70 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:04:42.58 ID:zHOmlmqh0
誰も気付いていない。
僕だって、始めから気付いていたわけじゃない。
気付いたとしてもどうにもできない。
何故、そんなことが始まったのだろう。

人が。世界中全てが。そしておそらくはこの世界全てが。



――――加速している。




(´・ω・`)「……145回。また、縮まった」

僕の目の前には机がある。
その上には、磁力を利用して無限に反復するおもちゃが乗っている。
スーパーとかで広告に利用されているアレだ。

僕はこのおもちゃがお気に入りだった。
パソコンの横には常に置いていたし、ただ眺めているだけで楽しかった。
何でそんなに好きだったのかはわからない。

71 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:04:57.57 ID:zHOmlmqh0
ある日。
なんとなく、違和感があった。
振りの回数と時間の経ち方に齟齬があるような。
普通なら絶対にわからないであろう細かな違い。

その日はあいにくと暇だった。
予定があれば気付かなかったかもしれない。
惰眠を貪れば違和感が無くなったかもしれない。

でも、俺は暇だったんだ。
だから時間と回数を測ってみた。
一秒にきっかり三回、つまり一往復と半分だけ動くはずのおもちゃ。

わかりやすく100秒で測ってみた。
引き出しの中のストップウォッチを持ち出して。
父が持っていたカウンタを勝手に借りて。

72 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:05:12.54 ID:zHOmlmqh0
結果は、295回。

磁力は多分衰えないものなんだと思う。
少なくとも、磁力が切れた物体なんて僕は見たことが無い。

なら、何で回数が合わない?
僕はもう一度測ってみた。

結果は295回。
先ほどと変わらなかった。

かなり古いおもちゃだから、どこかが壊れたんだろう。
僕はそう思って一旦はそのことを忘れていた。

73 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:05:33.78 ID:zHOmlmqh0
一週間後。
ふと、そのことを思い出した俺は、再び測ってみることにした。
同じおもちゃを使い、同じストップウォッチを使い、同じカウンタを使って。

結果は、239回。


……コレがきっかけだった。
僕は毎日同じ時間に測ることにした。
次の日は231回。
また次の日は223回。
その次の日は215回。

磁力を測って計算をしたりもしてみた。
質量を全部求めて、物理的に推量したこともあった。

計算では間違いなく300回になるはずだった。

だけど、毎日毎日、回数は減っていく。
僕は次第に時を疑うようになっていった。

74 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:05:49.86 ID:zHOmlmqh0
(´・ω・`)「……138回。また、縮まった」

これがゼロになった時。
その時、何が起こるのかはわからない。

僕にわかるのは一日に8回だけ時が縮んでいくということ。



タイムリミットまで、あと18日。





75 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:06:17.44 ID:zHOmlmqh0
終わりです。最後のほうgdgdですが批評とかお願いします。

80 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:16:15.48 ID:zHOmlmqh0
>>76-79
うを、ありがとうございます。
続きを今すぐ書いてきますので。

96 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:33:16.69 ID:zHOmlmqh0
>>74の続きをトウカします。

97 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:33:34.38 ID:zHOmlmqh0
(´・ω・`)「…………」

僕は学校へ行かなくなった。
そんなところに、今更意味があるとは思えなかったから。

僕は布団から出なくなった。
時の縮んだ世界を見るのが苦痛だったから。


それでも。
僕はおもちゃを測るのをやめない。
130回。
122回。
114回。
106回。
何が起こるのか。
何が起こっているのか。
何故誰も気付かないのか。
もう誰もが知っているのか。

(´・ω・`)「……残り、44回」

いつのまにか、僕は回数を『残り』と表現するようになっていた。

98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:33:50.06 ID:zHOmlmqh0
さらに5日が経った。
おもちゃの『残り』は、すでに4回となっている。
明らかにおかしいとわかるのに、感覚的には違和感がほとんど無い。
始めに気付いた時と同じくらいだ。意識しなければまったくわからない程度の。

僕は、2週間ぶりに布団を出た。
汗を吸い込んだ服と伸び放題の無精ひげがとても気持ち悪い。

それでも僕はおもちゃだけを見ていた。

今まで通り規則正しく縮むのなら、3時間に一回縮むはず。
僕は、何も無い机におもちゃを置いて、ストップウォッチを握り締めた。

99 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:34:05.63 ID:zHOmlmqh0
残り、3回。
お腹が減ってきた。
でもここを離れるわけにはいかない。


残り、2回。
トイレに行かず、ペットボトルにするようにした。
もう一秒でもここを離れたくない。
離れたら、セカイが終わるような気がした。


残り、1回。
いよいよ最後だ。
あと3時間で、何かが起こってしまう。




残り、0回。






100 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:34:27.89 ID:zHOmlmqh0
……何も起こらない。
世界は変わらず動き続け、僕も健康であり続けている。

何で?
0になったんだ。もう時は動いていないんだ。
何故僕は動ける? 何故世界は止まらない? 何故矛盾が起こらない?

なぜ。
何故何でどうして訳がワカラナイ意味が理解できないこの世界は時に従うのではない
のか何故誰も止まらない世界とはなんなんだそもそも何でどうして時が縮んだのかそ
の前に時って何なんだワカラナイ理解できないどうしてなんだ――――!!






僕は、もう一度測る。
もう拠り所はこのおもちゃしかない。

ストップウォッチを使い、正確に100秒測る。

一回も見逃さないように。
絶対に正しく測るために。


結果。

101 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 23:34:48.32 ID:zHOmlmqh0




−1回。




(´・ω・`)「……あは。あはははははははは!!」

そうだ。
理解する必要なんて無い。
僕はただ笑い続けた。

元々この世界は狂っていた。
なら、そこに住む僕が狂っていないはずがない。

僕はいつまでも。
それこそ悠久の時が経つほど笑い続けた。
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