500 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:10:52.91 ID:ntXVBRID0
――――ぴちゃん

――――ぴちゃん

背後で水音がする。
蛇口をちゃんと閉めていなかったのだろうか。
風呂あがりの濡れた髪を乱暴に拭きながら、俺はそれを無視した。
(´<_`;)「はあ……」

兄者と共にネットをして数年、
グロ耐性はしっかり身についてしまったが
蓮と心霊系は未だに苦手なままだ。

502 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:12:16.65 ID:ntXVBRID0
一滴一滴したたり落ちる水も、長い時間放っておけば結構な量になる。
だが、浴槽の隣には鏡がある。
今、それをまともに見るのは嫌だった。
(´<_` )(大体兄者がいきなりオカルト板に行こうなんて言うから……)
ぶつぶつと心の中で呟きながら、畳まれた服に手を伸ばす。

(´<_` )「…………」
視界の隅に何か怪しげな物が映る。
横幅十センチ、縦幅一メートルほどのすりガラス。
そこに、ぼんやりとした人影があった。
( <_  )「    」

503 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:13:40.84 ID:ntXVBRID0
(`<_´#)「ああああ兄者あああああああああ!!!1!」
(;´_ゝ`)「しょ、正直スマンカッタ」
(´<_`#)「すりガラスに顔近づけるのは止めろって言っただろ!」
驚いたのもつかの間、何てことは無い、そこにいたのは兄者だった。
しかし、
(´<_`;)「兄者だって分かってても嫌なんだよ!」
( ´_ゝ`)「いやー、悪い。そういえばそんな事言ってたな」
当の本人はいつもこうだ。
へらへらと笑ってごまかして、止めようとしない。
(´<_` )「で、何の用だ」
( ´_ゝ`)「ペンタブを置きっぱなしにしててな……お、あったあった」
(´<_`;)「何で風呂場に……」
( ´_ゝ`)「細かい事を気にする奴なんて大っ嫌いだ!」
そう茶化して、風呂場を出て戸を閉めようとする。
が、その手が途中で止まった。

504 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:14:22.57 ID:ntXVBRID0
( ´_ゝ`)「弟者」
(´<_`;)「な、何だよ」
( ´_ゝ`)「だるまさんがころんだ」
うっ、と声をあげて、俺は一歩後ろに下がった。
せっかく今日は忘れてたのに……
( ´_ゝ`)「怖いからって裸で出てくるなよ?妹者がいるんだからな」
( <_ #)「〜〜〜っ!」
ククッと笑って、今度こそ兄者は風呂場から出て行った。
悔しいが、自然と服を着る動きが速くなる。
最後、Tシャツに片手を通すと同時に勢いよく戸を開けた。
(´<_` )「 ! ? 」
出口のすぐ側に、人。
(*´_ゝ`)「やあ、ようこs」
(`<_´#)「ふざけんなああああ!!!」

506 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:15:37.37 ID:ntXVBRID0
次の日の夜。
昨日の事はなるべく考えないようにして、
風呂場から出た。
从・∀・ノ!リ人「ちっちゃいあにじゃ、もうおふろおわったのじゃー?」
(´<_` )「あ、ああ……」
从・∀・ノ!リ人「いもじゃ、ちょっとにかいであそんでくるのじゃー」
そう言い残して妹者は行ってしまった。
ぱたん、と二階の部屋のドアを閉める音がして、
家の中は静まり返った。

父者と母者は出かけている。
兄者は自室でパソコンでもしているのだろう。
今、一階にいるのは俺一人だ。

508 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:16:25.68 ID:ntXVBRID0
(´<_` )「…………」
喉が渇いた。
冷蔵庫の手を伸ばし、扉を開ける。
麦茶か牛乳か、どちらにするか迷いながら何となくふり返ってみた。
薄暗いどころか暗い廊下が見える。
その横の、さらに深い闇。
風呂場だ。
あまり長時間見ていたいものではない。
視線を逸らし、牛乳パックを掴んでコップを探す。
そしてもう一度廊下に目をやってしまった。

509 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:17:19.35 ID:ntXVBRID0
瞬間、風呂上りの火照った体がすっと冷えるのを感じた。
完全に開かれた風呂場の戸から何かが覗いている。
塊。
いや、あれは人の顔だ。
90度横向きになった顔だけがこちらを見ている。
(´<_`lil)「うわっ……!」
一歩下がろうとするが、後ろは台所の洗い場だ。
動けずに凍り付いているうちに、ひゅっと顔が引っ込む。
ククッと聞き覚えのある笑い声がした。
(´<_` )「兄、者……?」
クッ。クククッ。
必死で笑いをこらえる、昨日の夜も聞いた声。
(´<_`;)「ばっ、馬鹿!ふざけるのもいい加減に……」

510 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/03(日) 11:17:59.02 ID:ntXVBRID0
風呂場へ歩み寄ろうとしたその時。
どすん。
二階で足音がした。
どすん。どすん。どすん。
重い足取り。
どん、どん、どん、どん、どん、どん、
(´<_`lil)「妹者……じゃ、ない」
とん。
一階の床へ足を下ろす音。
誰?誰が来る?
( ´_ゝ`)「……よう、弟者」
暗い廊下に姿を現したのは、
――――兄者。
闇に溶けて表情はよく見えないが、間違えるはずはない。
( ´_ゝ`)「どうした?青い顔して」
何かあったのか?
それよりいい萌え画像を見つけたのだが――
そう続ける兄者の声も耳には入らない。
風呂場の顔は?あの声は?今俺の目の前にいるのは……
クククッ。
また、笑い声。
それは、兄者の声じゃない、知らない何かの笑い声に変わって消えた。
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