17 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 1/38 New! 2006/09/02(土) 22:44:49.45 ID:OjA5rNIv0

ここは、何もない田舎町。
名産品というほどのものもなければ、観光資源だってない。
町にただひとつの駅は無人駅だし、バスなんか一日に四本しか走っていない。

ここにあるのは、それほど大きくはない平野部に広がる田んぼや畑、
その裏にでんと構えている山、そしてぽつぽつと点在する木造の、古い古い家だけ。

だから当然、この町で娯楽といったら、年に一度のお祭りか、
そうでなければ酒を飲むことくらいしかなかった。


……あの日俺たちが犯した過ちも、そんな娯楽の少なさが原因だったんだと思う。


21 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 2/38 New! 2006/09/02(土) 22:45:57.41 ID:OjA5rNIv0

('A`)「あー、なんかおもしれーことねぇかなー」

ξ゚听)ξ「あるわけないでしょ、こんなド田舎に」

(´・ω・`)「何かあればすぐにそれが町中に知れ渡るくらいだし、目新しいものなんてないよね」

('A`)「まあそうだよな。ああ畜生、なんかおもしれーことねぇかなぁ」

( ^ω^)「ふっふっふっふ……」

('A`)「……お? 何だブーン、その含みのある笑いは」

( ^ω^)「みんなには内緒にしてたけど、実はブーンはこのたびめでたく免許を取ったんだお!」

ξ゚听)ξ「ハァ? あんたみたいな愚図が免許なんて取れるわけないじゃない」

(´・ω・`)「それには同意せざるを得ないね」

('A`)「……まったくだ。大体、おまえが免許取ってるなんて話は聞いたことないぞ」

(;^ω^)「ちょ、みんな酷いお! ブーンは本当に免許を取ったんだお!!」


24 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 3/38 New! 2006/09/02(土) 22:47:35.57 ID:OjA5rNIv0

そう言って、ブーンは安っぽい黒の人工皮のカードケースを取り出す。
ぱかっと開かれたそこに入っているのは、確かに普通免許証だった。


ξ゚听)ξ「え、嘘、本当なの?」

(´・ω・`)「いつの間に……」

( *^ω^)「ふふふふ、みんなをびっくりさせようとカーチャンとトーチャンに口止めしてたんだお」

('A`)「おまえが最近妙に付き合いが悪かったのはそういうことだったのか」

( ^ω^)「隠しててすまなかったお。けど、これで早速ドライブに行くお!」

ξ゚听)ξ「ドライブって言ったって……この辺り、ほっそい農道くらいしかないじゃない」

( ^ω^)「道なんてどこでもいいんだお! 光る風を追い越すんだお!!」


言うが早いか、両手を広げて走り出すブーン。
俺たちはしばらく顔を見合わせてから、仕方なくその後を追った。


27 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 4/38 New! 2006/09/02(土) 22:48:59.77 ID:OjA5rNIv0

( ^ω^)「……しめしめ、今ならトーチャンもカーチャンもいないお」

ξ゚听)ξ「……ねえ、勝手に車なんか持ち出しちゃって平気なの?」

(´・ω・`)「もし事故ったりしたら、洒落になんないよね」

( ^ω^)「大丈夫だお! 僕のドライビングテクニックを信じるお!!」

('A`)「……いや、むしろそこが一番の不安要素なんだけどな」


三者三様のやんわりとした制止にも全く耳を貸さず、
ブーンは車のキーを玄関のキーホルダーから取り、そのまま納屋の方へと走っていく。
そして、それからすぐに、ブーンの家のおんぼろ軽自動車の始動音が聞こえてきた。


('A`)「うーん、まあしょうがない、折角だから付き合うか」

(´・ω・`)「このままじゃブーンも止まらないだろうしね」

ξ゚听)ξ「ほんっと仕方ないわね……」


俺たちは、さも「やれやれだぜ」といった風に、
運転席の窓からぶんぶんと手を振るブーンの元へと歩き出す。
だけど、本心を言えば、少し……いや、相当にわくわくしていたんだ、俺たちも。

……そして、だからこそ、あんな事故が起きてしまったんだ。


28 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 5/38 New! 2006/09/02(土) 22:50:15.10 ID:OjA5rNIv0

('A`)「ヒュウ! こりゃ気持ちいいな!」

(´・ω・`)「いつも見慣れてる景色なのに、いつもと違って見えるよね」

ξ゚听)ξ「んー、風が気持ちいいわ……」

( ^ω^)「イヤッホーウ、だお!!」


アスファルトで舗装もされていない農道を走る軽自動車。
開け放った窓から入ってくる夕暮れの風は、俺たちの気分を軽くしてくれる。


ξ゚听)ξ「乗る前は不安だったけど、意外と荒くない運転ね」

( ^ω^)「任せるお! もっともっとスピードを出したって平気だお!」

(´・ω・`)「これ以上は危ないと思うけど、でも、まだこれで40kmそこそこなんだね」

('A`)「そういやこないだジョルジュが『時速80kmの時の風がおっぱいと同じ感触』って言ってたな」

( *^ω^)「マジかお!? それはもう何としても試してみるしかないお!!!」

ξ゚听)ξ「……ハァ、男どもはこれだから」

('A`)「よし、逝け! ただし危ないからおまえはハンドルから手を離すなよ!」

(;^ω^)「ちょ、それは酷いお! 僕だっておっぱいを揉んでみたいお!!」


30 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 6/38 New! 2006/09/02(土) 22:51:56.44 ID:OjA5rNIv0

そして、ブーンはさらにアクセルを踏み込み、車を一気に加速させる。



……けど、それはあまりにタイミングが悪すぎた。



あの時の失敗の原因はいくつでも思いつく。

夕暮れ時の視界の悪さと、初心者ゆえのライトの点灯忘れ。
たまたまそこが、視界を大きくさえぎる地蔵堂がある辻だったこと。
誰もがくだらないおしゃべりに夢中になりすぎていて、
曲がり角から人が飛び出してくる可能性を考えてすらいなかったこと。
ベタ踏みしていたアクセル。おんぼろ自動車の、効きの悪かったブレーキ。
窓の外に利き腕を出していたことによる、とっさのハンドリングミス。



――――衝撃は、一瞬だった。



              (<●><●> )



                       ドンッ!!


35 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 7/38 New! 2006/09/02(土) 22:53:05.30 ID:OjA5rNIv0

……誰もが言葉を失っていた。


――――まさか。まさか。なんで。どうして。まさか。そんなバカな。まさか。どうして。なんで。


最初に頭の中をめぐるのは、そんな意味のない単語ばかり。


――――やばい。まずい。やってしまった。どうしよう。大変だ。やばい。やばい。


次に浮かんでくるのは、自分たちがしでかしてしまったことに対する、やはり意味のない単語。

そして、最後に思いつくのは、


――――何とかしなければ。何とかしなければ。何とかしなければ。何とかしなければ。



――――――――何としてでも隠し切らなければ。




卑しい、自己保身。



38 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 8/38 New! 2006/09/02(土) 22:54:16.55 ID:OjA5rNIv0

それからまず俺たちは、轢いてしまった人物を確認した。よく知っているやつだった。

町外れでひっそりと暮らしている一家の、哀れな末子。
生まれたときから脳の発達に障害を負っていたらしく、奇行ばかりが目立ち、
それゆえ学校も辞めさせられ、その家の離れに閉じ込められるようにして生きていた、
本人には何の罪もなくとも、町からも家族からも疎まれ、つまはじきにされていた、俺たちの元同級生。
ここ数年は誰も姿を見たこともなかったし、町の人間からも忘れ去られつつあった男。


――――これなら、バレずに済むかもしれない。


だから、俺たちにそんな考えが浮かんでしまったのも、無理のないこと。



……俺たちは短い協議の結果、そいつを裏の山の奥深くに埋め、
大きくへこんだ車のバンパーは、無茶な運転のため、町外れの木にぶつけてしまったことにした。

ブーンは両親からこっぴどく怒られたし、俺たちも漏れなく同じ目にあったけど、
それで……それだけで済むのなら、安い話だ。

そして、これは俺たちだけの、絶対に誰にも言えない秘密になった。
最後の最後までこの決定に反対していたツンも、最終的には従ってくれた。



――――だから、だから、本当ならこの話はそこまでで終わるはずだったんだ。


39 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 9/38 New! 2006/09/02(土) 22:55:32.14 ID:OjA5rNIv0

あの事件から一ヶ月。最初は戦々恐々としていた俺たちも、
次第に薄れゆく噂話を聞き、徐々に安心していった。

あの日から数日後、まずは行方不明の話。次に、捜索願が出されたという話。
それからしばらくして、「昔からおかしかったから、ついに本当に気が狂ってどこかに行ったんだろう」という話。
終いには、「あの子のことを疎ましく思った家族が殺して庭にでも埋めたんじゃないか」という話。

最後の噂については、「それがきっかけで山に埋めた死体が掘り起こされたらどうしよう」
などと考えてもいたが、所詮はしがない噂話、あっという間にフェイドアウトしていった。



……そして、一年も経つ頃には、俺たち自身すらあの事件のことを忘れてかけていた。





43 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 10/38 New! 2006/09/02(土) 22:57:12.05 ID:OjA5rNIv0

( ^ω^)「みんな、おひさしぶりぶりだお!!」

('A`)「うぉい、おっせーぞブーン! こっちはもう始めちまったぜ!」

ξ゚听)ξ「相変わらず時間にルーズね」

(´・ω・`)「ブーンは僕たちに酷いことしたよね、ごめんなさいしないといけないよね」


丁度あの事件から一年後経った日、俺たちは久しぶりに顔を合わせていた。

高校を卒業した俺たちは、俺は隣町の工場に就職し、ブーンは実家の農業を手伝い、
ツンは都会の大学に合格、一人暮らしを始め、ショボンは駅前のバーに就職した。

それまでは毎日のように一緒に行動していた俺たちだったけど、
紅一点のツンが離れていったことと、それぞれ仕事を始めたことによって、
以前ほどにはつるむこともなくなっていた。

だけど、お互いの近況やらなにやらを話しているうちに、
一年前と同じように、四人一緒にいることがごく当たり前、という感覚が蘇ってくる。

俺たちは、ショボンが作ってくれる酒を堪能しながら、
積もり積もった話、そして昔話に花を咲かせた。



44 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 11/38 New! 2006/09/02(土) 22:58:27.76 ID:OjA5rNIv0

ξ゚听)ξ「……そういえば、丁度去年の今くらいだったわよね」


宴もたけなわとなった頃、ツンが発した何気ない一言によって、場の空気が凍りつく。


ξ゚听)ξ「……あっ、ご、ごめん……」

( ^ω^)「……いや、いいんだお。もう大丈夫だお」

('A`)「……そうだな。結局あれから何事もないしな」

(´・ω・`)「今日は僕たちの貸切だから、誰かの耳に気を配る必要もないしね」


ショボンの言葉通り、ここ、バーボンハウスには俺たち以外に客はいない。

……だからだろうか、俺たちの話は徐々に過激さを増していく。


ξ゚听)ξ「しっかし、本当にいい迷惑だったわよね」

(´・ω・`)「彼は昔から基地の外にいる人だったしね」

('A`)「おう、そういや俺も昔は散々こえぇ目にあわされたわ」

( ^ω^)「僕も何度も気持ち悪い目にあったお。だから、あれは天罰だったんだお!」


45 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 12/38 New! 2006/09/02(土) 22:59:46.87 ID:OjA5rNIv0

ξ゚听)ξ「ま、天罰とまでは言い過ぎだとしても、天命だったのかも知れないわね」

('A`)「あー、大昔に『お前は呪われます。分かっています』とか言われたのを思い出したぜ」

( ^ω^)「ブーンも『お前が気が狂って死ぬことは分かっています』って言われたお」

(´・ω・`)「人を呪わば、ってやつだね。しょうがないよね」

(#'A`)「クソ、思い出したらなんか腹立ってきた」

ξ゚听)ξ「……まあいいじゃない。相手はもう何を言うこともないんだから」

(´・ω・`)「……さて、それじゃあこの話はいい加減やめにしないかな?」

('A`)「だな、気分のいい話じゃねぇし」

( ^ω^)「話題を変えるお! ……ツンはいつまでこっちにいるんだお?」

ξ゚听)ξ「そうね、大学の夏休みは長いから、8月の終わりくらいまではいるかな」

( ^ω^)「じゃあじゃあ、それまでブーンたちといっぱいいっぱい遊ぶお!!」

('A`)「バカだなブーン、俺たちにゃ仕事があるし、ツンだって宿題があるだろ?」

(;^ω^)「……それをすっかり忘れていたお……」


そんなこんなで、俺たちは酔いどれてふらつく足のまま、それぞれ家路についた。


47 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 13/38 New! 2006/09/02(土) 23:01:38.18 ID:OjA5rNIv0

それからしばらくしたある晩、俺は血相を変えたショボンからの電話を受けた。


(;´・ω・`)「す、すいません、ドクオ、ドクオはいますか!?」

('A`)「あん? 俺だけど……って、ショボンか、どうした、そんなに慌てて」

(;´・ω・`)「今からすぐ、地蔵堂へ来て欲しいんだ」

('A`)「……おいおい、今何時だと思ってんだ? もうそろそろ日付が変わるぞ?」

(;´・ω・`)「時間なんか気にしてる場合じゃないんだ! 頼む、すぐ来てくれ!」


ショボンはそれだけ言うと、乱暴に受話器を置いた。


(;'A`)「おいおいおいおい、一体何事なんだよ……」


普段冷静なショボンがあれほど取り乱すということは、相当な何かがあったのだろう。
俺は軽くため息をひとつ吐き、バイクのキーとヘルメットを持って家を後にした。


49 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 14/38 New! 2006/09/02(土) 23:03:09.60 ID:OjA5rNIv0

('A`)「うおーい、来たぞー」

(;´・ω・`)「こんな時間にすまない、けどよく来てくれたね」

('A`)「ま、おまえさんがここまで慌ててんだ、よほどのことがあったんだろ?」

(;´・ω・`)「う、うん……。じゃあすまないけど、今からひとつ、話を聞いて欲しい」


生憎サービスのテキーラはつかなかったが、ショボンはある噂話について語りだした。
その話の内容をまとめるとこうだ。

・数日前の夜から、夜中にふらふらと歩く人影が散見されている。
・その人影は、例の「行方不明」になったあいつに酷似していたらしい。
・しかもその姿は「体のいたるところが腐り落ち、泥にまみれ、一部白骨化したもの」だったらしい。


(;'A`)「……その噂話については理解したけど、俺を呼び出した理由は何なんだ?」

(;´・ω・`)「……今から、あの山に、確かめに行こうと思う」

(;'A`)「ちょ……おま、正気か!? 噂話は所詮噂話だろ!?」

(;´・ω・`)「……それはそうなんだけど……けど、けど……」


そのまま口ごもり、黙り込むショボン。
数分たっても口を開く様子がないので、俺から話しかけようと思った矢先、


50 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 15/38 New! 2006/09/02(土) 23:04:13.45 ID:OjA5rNIv0



(;´・ω・`)「僕もその、目撃者のひとりなんだよ……!!」



――――ショボンの口から、とんでもない一言が飛び出した。




53 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 16/38 New! 2006/09/02(土) 23:05:46.25 ID:OjA5rNIv0
それから俺とショボンは、あの日のあの場所へと向かった。
懐中電灯やスコップはショボンが事前に用意していたものを持って行った。

……もちろん、俺は「こんなバカバカしいこと」と思っていた。

けど、ショボンの態度や言葉からは、冗談っぽさのかけらも見当たらなかった。
だから、俺は仕方なく、ショボンに付き合った。


(;´・ω・`)「ここ、だよね……」

(;'A`)「……ああ、間違いない。目立たないように石で作った目印もそのままだ」

(;´・ω・`)「本当に、間違いない、よね……?」

(;'A`)「……間違いようがない、はず、だ……」


そう、実際、間違いようはなかった。
山を登るにつれ、あの日の記憶が鮮明に蘇ってくるんだから。
そして、記憶通りの場所に確かにたどり着き、身間違えようのない目印まで見たんだから。

……繰り返すが、俺は「こんな確認をするなんて、バカらしい」と思っていた。


(;´・ω・`)「じゃあ何で、どうしてここには何もないんだい!?」



――――懐中電灯に照らされ、大きく口を開けた暗い穴を見る、その時までは。

56 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 17/38 New! 2006/09/02(土) 23:07:58.05 ID:OjA5rNIv0

しばらく、俺とショボンはそこで呆然としていたと思う。時間にして、恐らく十分程度は。

それから、例えようのない恐怖が背筋を這い上がってくるのを感じ、
二人で無茶苦茶に絶叫しながら山を下り、タンデムで俺の家まで飛ばし、
玄関先にバイクを打ち捨て、不審がるカーチャンの問いかけも無視し、
俺の部屋に入り、鍵をかけ、カーテンも閉め、身を寄せ合い、ぶるぶると震えた。


(;'A`)「な、な、な、なんだったんだよ、あれは……」

(;´・ω・`)「わ、分かんない、分かんないよ……」

(;'A`)「ありえねぇだろ、普通に考えてありえねぇだろ……!!」

(;´・ω・`)「う、うん……けど、もし、今、僕たちが考えてることが本当なら……」

(;'A`)「や、やめてくれよ、マジで……」

(;´・ω・`)「けど、もしかしたら、ブーンやツンはまだ何も知らないかもしれないよね」

(;'A`)「あ、ああ……とりあえず電話だけでも入れておくか……」


この辺りじゃ、携帯電話なんか持っていても、そもそも電波が入らない。
だから、この町で電話といったら、未だに家庭用の固定電話のことを指す。

ドアを開けたらあいつがいるんじゃないかという恐怖を押し殺し、
俺は居間にある電話の元へと向かった。


60 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 18/38 New! 2006/09/02(土) 23:09:40.30 ID:OjA5rNIv0

(;´・ω・`)「どうだった……?」

(;'A`)「ああ、一応ブーンには繋がった。家中の鍵をかけて、外に出ないように言っておいた」

(;´・ω・`)「ツン……ツンは?」

(;'A`)「それが……何度かけなおしても繋がらないんだ……」


駄目元で、先日聞いたばかりのツンの携帯電話にもかけてみたが、
それでもやはり結果は変わらなかったことを、ショボンに伝える。


(;´・ω・`)「……もしかしたら、もう」

(;'A`)「ばっ……バカ! バカ! ケツマンコ! おま、何言ってんだ!」

(;´・ω・`)「す、すまない……けど、不安で不安でどうしようもないんだ」

(;'A`)「……ツン、今日、何か用事があるって言ってたっけ」

(;´・ω・`)「いや、特に何も言ってなかったと思う」


だったら、電話に出ないはずがない。
時間が時間だというのはあるが、それでも5分以上鳴らし続けて誰も出ないはずがない。

……ショボンではないが、流石に俺も不安を隠しきれなかった。


63 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 19/38 長すぎスマソ、だがここでないと祭り参加にならず… New! 2006/09/02(土) 23:11:25.36 ID:OjA5rNIv0

(;^ω^)「もしそれが本当ならとんでもないことだお……ツンが心配だお!」

(;'A`)「あ、ああ……それに、」

(;´・ω・`)「いくらなんでも、朝になっても電話に誰も出ないのはおかしいよね……」


あの後、一睡も出来ないまま朝を迎えた俺とショボンは、ブーンの家へと来ていた。
俺の家を出る前にツンにも電話をしたが、ショボンの言うように、誰も出なかった。


(;^ω^)「今すぐ、今すぐに確かめに行くお!!」


ブーンの一声に、俺もショボンもうなづく。
そして俺たちは、あの日と同じ、ブーンの家の軽自動車でツンの家へと急いだ。



136 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 20/38 >>63の続き New! 2006/09/02(土) 23:49:16.90 ID:OjA5rNIv0

……ピンポーン、ピンポーン。ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。


(;^ω^)「……誰も出ないお」

(;'A`)「……これは」

(;´・ω・`)「……ねえ、思い切って、入ってみない?」


あれから十分後、飛ばせるだけ飛ばしてツンの家についた俺たちだったが、
何度チャイムを鳴らしても、誰も出てこない。

……いや、それどころか、家から人の気配がしない。

外から見る限りでは、家にも庭にも何も不審な点はなかったが、
だからこそ、余計に不安を煽られて、俺とブーンはショボンの提案に賛成した。


(;´・ω・`)「じゃ、じゃあ、開けるよ……」


予想に反して、ドアはあっけなく開いた。
この田舎では犯罪など滅多に起きるものではないから、
一年中、どこにも鍵をかけない家も数多くある。

……しかし、俺の記憶している限りでは、ツンの家はそうではなかったはずだった。


140 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 21/38 New! 2006/09/02(土) 23:50:50.05 ID:OjA5rNIv0

(;^ω^)「お邪魔しまーす、だお……」


雨戸が開けられているせいか、家の中には暗さがあまりない。

……が、それと同時に、やはり、人の気配もない。


(;´・ω・`)「すいません、あがらせていただきます……」

(;'A`)「お邪魔します……」


俺たちは無駄に靴をきちんと揃え、恐る恐る家の中へとあがりこむ。


(;´・ω・`)「どうする……?」

(;^ω^)「ぼ、僕に聞かれても分かんないお……」

(;'A`)「片っ端から調べていくしか、ないんじゃないか……?」


この提案に反対する声は上がらなかったので、
びくびくしながらも、言い出しっぺの俺がひとつずつドアを開けていく。


144 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 22/38 New! 2006/09/02(土) 23:52:40.57 ID:OjA5rNIv0

居間……誰もいない。

台所……誰もいない。

洗面所……誰もいない。

トイレ……誰もいない。

風呂場……誰もいない。

客間……誰もいない。


階段を上る。


ツンの部屋……誰もいない。

トイレ……誰もいない。

ツンのお父さんの書斎……誰もいない。

ツンのご両親の寝室……誰もいない。



……誰も、いない。



145 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 23/38 New! 2006/09/02(土) 23:54:21.10 ID:OjA5rNIv0

(;^ω^)「……う、うわああああああああああああ!!!!!」


家中探し回って、最後のドアを開け、
そして、そこにも誰もいなかったことが分かった瞬間、ブーンが絶叫した。


(;^ω^)「そんなわけない、そんなことあるわけないお!!!!!」


ベッドの布団をめくり、クローゼットを開け、寝室を飛び出す。
俺とショボンは、慌てて後を追った。


(;^ω^)「ツン、ツン!! 隠れてないで出てくるお!!!!」


ベッドの下を覗き込み、カーテンと窓を開け放ち、扉という扉を開く。
机の引き出しを開け、部屋の隅の衣装ケースの中身をぶちまける。


(;^ω^)「ツン、ツン、ツーーーーーーーーーーーーン!!!!!」


ブーンの凶行は、俺とショボンの必死の制止も虚しく、
ツンの家中を荒らし尽くすまで止まることはなかった。


149 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 24/38 New! 2006/09/02(土) 23:55:35.91 ID:OjA5rNIv0

( ;ω;)「ツン……ツン……うっうっうっうっ……」


やがて、一時の激情から解放され、ブーンは力なく床にへたり込んだ。


(;'A`)「ま、まあ、ほら、たまたま一家総出で誰かの家に泊まったのかも知れないし……」

(;´・ω・`)「そうだよ、だから元気だして」


もしそうだとしたら、今度は住居不法侵入だの何だの、
別の問題が起きるような気もしたが、俺もショボンもそんなことを信じてはいない。

……だから、この説得には、何の力もこもっていなかった。


(;'A`)「とりあえず……帰ろうか」

(;´・ω・`)「そうだね、このままここにいても仕方ないよね……」

(;'A`)「ほら、ブーン、帰ろう」

( ;ω;)「うっ、うっうっ、うぅ……」


脱力、放心したままのブーンを、俺とショボンで両脇を抱え込むようにして運び、
苦労して車まで連れて行った。


153 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 25/38 New! 2006/09/02(土) 23:57:23.08 ID:OjA5rNIv0

……あれから一週間経った。

その日のうちに、俺とショボンで警察に届けを出し――家中を荒らした
ことに対してはこっぴどく怒られたが、それでも届けは受理され、
そして、ツン一家が突如謎の失踪をとげた、という噂話が町中に広まった。

しかし、未だに事件解決の糸口は見えていないらしい。

俺たちはその後何度も警察に足を運び、調査の進捗状況を聞いたが、
その度にすげなく「まだ何も分かっていない」と告げられるだけだった。


( ;ω;)「ツン……ツン……一体どこに行っちゃったんだお……」

(;'A`)「ブーン……」

(;´・ω・`)「……き、きっとそのうち、ひょっこりと姿を現すと思う」

( #;ω;)「いい加減なこと言うなお! もう一週間、何の連絡もないんだお!!」

(;'A`)「……」

(;´・ω・`)「ご、ごめん……」


今日も俺たちはブーンの家に集まり、何も得ることがない会話をしている。

……ブーンだけじゃなく、俺とショボンも、そろそろ精神的な限界が近づいてきていた。


157 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 26/38 New! 2006/09/02(土) 23:58:55.28 ID:OjA5rNIv0

……ブーンから電話があったのは、その晩のことだった。


( *^ω^)「ドクオ、聞いてくれお! ついにツンが戻ってきてくれたお!!」

(;'A`)「え……? ま、マジか!? 無事だったのか!?」

( *^ω^)「だお! これで何の心配もなくなったお!!」

(;'A`)「い、今どこにいるんだ、ブーン!?」

( *^ω^)「これで元通りだお、良かったお! おっおっおっおっ!!」

(;'A`)「お、おい、ブーン……ブーン!? 今おまえはどk」


ガチャン、ツーッ、ツーッ、ツーッ、ツーッ……。


(;'A`)「ちょ……切っちまいやがった……」


そのまましばらくの間、俺は受話器を片手に呆然としていたが、
急にいいようのない不安に襲われ、バイクのキーとメットを取りに部屋へと戻り、
家族に「ちょっと出てくる」とだけ伝え、ブーンの家へとバイクを発進させた。


165 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 27/38 New! 2006/09/03(日) 00:00:30.58 ID:cixgdaC+0

('A`)「ブーン、俺だ、ドクオだ。開けてくれ!」


ブーンの家に着くと、ブーンの部屋に明かりが灯っているのが見えた。
……と言うか、「ブーンの部屋にしか明かりが灯っていない」のが見えてしまった。
この時間ならまだ、家の人は全員起きているはずなのに、居間は暗いままだ。

体中にじわじわと、虫のように不安が這い上がってくる。
俺はその不安を打ち消そうと、いっそう大声をあげ、ブーンを呼ぶ。


(;'A`)「ブーン、おい、ブーン! 聞こえてるんだろう! 俺だ、ドクオだ!!」

(  ω )「……そんなに大声出さなくても聞こえてるお」


玄関の向こう側から、ブーンの声がした。


(;'A`)「ブーン……いたのか、良かった……早くここを開けてくれ」

(  ω )「今、開けるお……」


ガチャリと音がして、ドアが開いていく。
果たして、そこにいたのはブーンだった。


173 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 28/38 New! 2006/09/03(日) 00:02:14.81 ID:cixgdaC+0

(;'A`)「ブーン、さっきはどうしたんだよ、いきなり電話切られちまうから心配したんだぞ」

(  ω )「……そうかお。でも、もう何の心配もないお」


うつむいたまま、ブーンは俺に背を向け、自分の部屋へと歩き出す。
そのブーンの様子と、家中に充満している肌が粟立つような雰囲気にぞっとしながら、
それでも俺はブーンに話しかけ続けた。


(;'A`)「……で、ツンは今どこにいるんだ? おまえの部屋か?」

(  ω )「……そうだお。でも、今は寝てるお」


その時、俺はふと気付いてしまった。
奥の方から漂ってくる、本能が拒否反応を示す、嫌な匂いに。


(;'A`)「そ、そうか……。じゃ、ちょっと顔見たら、俺、帰るわ」

(  ω )「……そうかお? ゆっくりしていってもらって構わないお?」


そういって、ブーンは自分の部屋のドアをゆっくりと開ける。


――――そして、俺は「それ」を見てしまった。


177 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 29/38 New! 2006/09/03(日) 00:03:17.22 ID:cixgdaC+0

――そこにいたのは、



(;'A`)「…………!!」



――――いや、「あった」のは、



(  ω )「ほら、よく寝てるお。ブーンが見つけたときからずっと、ぐっすりだお」





――――――――「永遠に眠り続ける」、ツンの姿だった。






190 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 30/38 New! 2006/09/03(日) 00:05:22.27 ID:cixgdaC+0

(;'A`)「……うっ、うわああああああああああああああああ!!!!!!!」


「それ」を見た瞬間、反射的に叫びを上げ、俺は部屋から逃げ出そうとした。


(  ω )「……どこに行くんだお? ツンに挨拶してやって欲しいお」


しかし、いつの間にか背後に回りこんでいたブーンに
とんでもない力で両肩を押さえつけられ、「それ」を凝視してしまう。



――――そう……そこ、ブーンのベッドの上に「あった」のは、ツンの死体だった。





192 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 31/38 New! 2006/09/03(日) 00:06:45.85 ID:cixgdaC+0

(;'A`)「ぶ、ブーン……」


全裸のままの体には、そこらじゅうに泥と細かい傷がついていて、
生前よりも若干膨らんでいて、ところどころに赤黒い染みができていて、


(;'A`)「これ、一体……」


あんなにも綺麗だった髪も、色々なものにまみれ、ぐちゃぐちゃになっていて、
そこかしこに、小さな、白い虫が這っていて、


(;'A`)「これ……これは一体……」


一言で言えば、そう――――


(;'A`)「これは一体、どういうことなんだよ……!!!!」




――――完全に、腐乱死体。




195 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 32/38 New! 2006/09/03(日) 00:08:17.45 ID:cixgdaC+0

それに気付いた瞬間、物凄い腐敗臭が鼻をつく。


(;A;)「おぉ……おぶっ……っあ……」


しかし、ブーンはそんなことはお構いなしにツンに近づき、軽く口付けをした。


(  ω )「ドクオ、どうかしたのかお? ツンはこんなにも綺麗なのに」

(;A;)「おっ……おまえ……それ、どうして……」


込み上げる嘔吐感を必死に飲み下し、ブーンに問いかける。


(  ω )「あの夜、ショボンの話を聞いてからずっと、僕は考えていたんだお」

(;A;)「……? な、何を……?」

(  ω )「……ツンなら、どこにいるのかって。どこに行くのかって」


相変わらず表情を見せないまま、呟きのような独白が続く。



198 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 33/38 New! 2006/09/03(日) 00:09:47.49 ID:cixgdaC+0

(  ω )「僕は、きっと『あの場所』にいると思ったんだお」

(;A;)「『あの場所』……あの、あいつを埋めた場所か……?」

(  ω )「そして、ツンはやっぱりそこにいたんだお。だから、ここに連れてきたんだお」


俺の言葉など最初から耳に入っていないかのように、
ブーンはとうとうと言葉を紡ぎ続ける。


(  ω )「ツンはぐっすり眠ってたけど、今までと何も変わってなんかなかったお。だけど……」

(;A;)「……?」

(  ω )「土の中でなんか眠るから……なくなっちゃっていたんだお」

(;A;)「なくなる……? 何がなくなってたんだ……?」


そこでブーンは一旦口を閉じ、ツンの頬を優しく撫で、そして、

ツンのまぶたを、 手の平で、 そっと持ち上げた。



204 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 34/38 New! 2006/09/03(日) 00:11:13.42 ID:cixgdaC+0


  そこには、 確かに、
                 何も、 なかった。


 あるはずのものが  なかった  そこに

                        広がるのは、



         暗い、


                      空洞。






              ξ<●><●>ξ






210 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 35/38 New! 2006/09/03(日) 00:12:29.42 ID:cixgdaC+0

(;A;)「うわあああああああああああああ!!!!!!」


俺は半狂乱になって後ずさり、壁に当たって、膝が折れた。
立ち上がろうとしても、笑いっぱなしの膝には、力が全く入らない。


(  ω )「ドクオ、どこに行くんだお? そっちはクローゼットだお?」


口調だけは優しく、ブーンが近寄ってくる。
俺はブーンから逃げるように足を動かすが、背中はクローゼットから離れない。


(;A;)「や……やめ……こっ、こっち、こ、来ないで……」


ブーンが伸ばしてきた手を避けようと頭を動かした時、クローゼットのドアが開いた。
そして、そこから何かが、どさっと音を立てて、落ちてきた。


(´ ω `)「た……たすけ……て……」


ショボンだった。息も絶え絶えに力なく床を掻き、弱弱しくうごめく。


(;A;)「しょ……ショボン!? おま、ど、どうして……」


217 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 36/38 New! 2006/09/03(日) 00:14:18.84 ID:cixgdaC+0

どうしてここに、という言葉は声にならず、
それでも俺はショボンの腕をつかみ、何とか助け起こした。


……しかし。






      (´<●>ω<●>`)

           「ドク……オ……た……すけ……て……」






ショボンの眼窩も、空洞に支配されていた。



228 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 37/38 New! 2006/09/03(日) 00:17:17.27 ID:cixgdaC+0

(;A;)「おああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」


反射的にショボンの腕を振り払い、俺はドアへと這いずる。


(  ω )「どこに行くつもりだお? まだ僕の用事は済んでないお?」


しかし、ブーンにドアをさえぎられ、進めなくなってしまう。


(  ω )「トーチャンのもカーチャンのも、ショボンのも駄目だったから」

(;A;)「おま……何を……」

(  ω )「……だから、今度はドクオので試してみるんだお」


無感情にそう言い放ち、ブーンは俺のあごを掴んだ。



237 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです 38/38 ENDに続く New! 2006/09/03(日) 00:19:12.72 ID:cixgdaC+0

(;A;)「や……やめ……やめてくれ……」


これから自分が何をされるのかを悟り、俺は力なく懇願する。

……しかし、ブーンの力は緩むことはなかった。


(;A;)「ぐああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」



240 ( ^ω^)たちが報いを受けるようです END New! 2006/09/03(日) 00:20:13.93 ID:cixgdaC+0

……最後の瞬間、俺は見た。


ツンが横たわるベッドの奥に立ち、俺たちを見下ろす、あいつの姿を。


……最後の瞬間、俺は聞いた。


半分以上肉が腐り落ちた顔で、はっきりと笑いながら、あいつが言った言葉を。




            (<●><●> )

                「お前が呪われて死ぬことは、分かっていました」




――――そして、俺は、自分の顔面に、激痛を、感じた。






               〜糸冬〜

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