770 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:52:30.77 ID:z7NunCH0O
題:( ;ω;)「どんな姿になっても大好きだお!ツン!」、探検隊、少年の日、ホラー、スランプ、同窓会


僕は仕事がどんなに忙しくとも、一年に一回の同窓会の出席を欠かさない。
それは、親友のドクオやショボンも同様だろう。
僕の中で少年の日の輝きは、今も胸に焼き付いているのだ。

( ^ω^)「ドクオ、仕事の方はどうかお?」

今や人気作家となったドクオ。
雑誌やテレビで澄ました顔をしているが、そんな事は関係ない。
今も昔もドクオはドクオ。

('A`)「あぁ、最近スランプでな。筆が全然進まねえ。
……でも、今日は良い気分転換になりそうだ」

グラスを傾け、口の端を僅かに持ち上げるドクオ。
皮肉の笑みにしか見えないが、彼にとってはそれが満面の笑みであるという事を、僕は知っている。

771 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:53:38.41 ID:z7NunCH0O
(´・ω・`)「やぁ、二人共」

しょぼくれた顔で近づいてくるショボン。
やはり一年前から変わっていない。
僕等は変わらぬ挨拶を交わす。

( ^ω^)('A`)「うほっ、いい男!」

(´・ω・`)「やらないか」

そして三人同時にハイタッチ。同窓会の会場に響く、うほっ、いい音。

( ^ω^)「バーボンハウスはどうだお?」

昔からショボンは自分の店を持ちたいと言っており、確か僕の家に開店の葉書が来ていた。

(´・ω・`)「うん、ようやく軌道に乗れたよ。
――ドクオはよく来てくれるよね」

ショボンの声には僕に対する非難がふくまれている。

773 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:54:21.62 ID:z7NunCH0O
何故、君は来てくれないのか、と。

僕だって行きたいのは山々だが、生憎ショボンの店は遠いのだ。
しがないサラリーマンである僕には少々厳しい。

――だから話題を変えた。
僕の最も気になる話題に。

( ^ω^)「ツンはどうしたのかお?」

このメンバーに足りない人物、ツン。
四人一緒にいつも行動し、口には出さなかったが僕達三人が恋心を抱いた人だ。
その彼女の姿が同窓会の会場に無い。
毎年彼女は出席して、僕達と思い出話に花を咲かせていたのに。

('A`)「うーん、携帯にも繋がらないんだよな……」
携帯を耳に当て、苛立たし気に携帯を閉じるドクオ。
何度も電話をしたのだろう。

僕もした。

775 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:55:13.00 ID:z7NunCH0O
(´・ω・`)「外国に行っているんじゃない?」

ツンが考古学で世界を飛び回っている事は知っていた。
しかし、同窓会の日は休みを取る、と、彼女は語っていたのに。

集団の輪から離れ、憶測を交わしあう僕達。
不意にドクオが顔を上げ、僕の顔をマジマジと見つめる。
いや、正確には僕の背後を。

そこには、高校時代のクラス委員、クーが立っていた。
相変わらず、美人だけど近寄りがたい雰囲気を漂わせている。

川 ゚ -゚)「君達、少しいいか?……ツンの事だ」

そういえば、クーとツンは仲が良かった。
昔、二人で話している所を僕達は羨ましく眺めていた覚えがある。
そういえば、彼女から僕達に話し掛けて来た事は今回が初めてだ。

――嫌な予感が、した。

776 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:56:19.21 ID:z7NunCH0O
川 ゚ -゚)「彼女は死んだよ。
洞窟の発掘作業中、落盤に巻き込まれてな。
救助された時には、虫の息だったらしい」

僕の中で時が止まった。

なんだと?
クーは何を言っている?
死んだ? 誰が? 彼女?
――ツン?

('A`)「……言っていい冗談と悪い冗談があるぞ」

そうだ。そうに決まっている。
タチの悪い冗談だ。

が、クーの拳は堅く握られ、震えていた。

川 ゚ -゚)「私が一度でも冗談を言った事があるか?
葬儀に君達を呼ばなかったのは、彼女の意志だ。
……自分の姿を見られたくなかったのだろうな……グッ!?」

(;´・ω・`)「やめなよ、ブーン!!」

777 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:57:11.22 ID:z7NunCH0O
気が付けば、僕はクーのむなぐらを掴んでいた。
ドクオとショボンが慌てて僕を引き剥がす。
頬には涙が流れていた。

(#;ω;)「嘘を言うなお! 嘘だお! 嘘だおぉ!!」

がむしゃらに暴れる僕。
クーはへたりこみ、俯いている。
床に雫が零れ、小さな水溜まりを作っていく。

川 ; -;)「私は、彼女の姿を見て、目を逸らしてしまったんだ……。
あの、美しく、強かった彼女があんな……、あんな……」

ドクオとショボンも泣いている。
それを見て、また僕は泣いた。

『何泣いてんのよ、なっさけないわねぇ』

背後から掛かった懐かしい、聞き間違えようのない声。

彼女の澄んだ、鈴のような声。

( ;ω;)「ツンっ……」

「同窓会の会場はここでいいのね? 内藤?」

778 同窓会 New! 2006/08/31(木) 00:58:27.46 ID:z7NunCH0O
……何も、考えられない。

目の前の、人型なだけのの『コレ』が、ツン?
打ち棄てられた人形のような四肢に、目も鼻もわからない『コレ』が?

どんな姿になっても大好き――。

漫画などでよく見るこの表現。

――僕には無理だ。

ドクオとショボンも動けないらしい。
クーは聞いた事のない卑しい声で、ゲラゲラと笑っていた。床に尿溜りができている。

僕の耳は、周りの人間の阿鼻叫喚を捉えていた。

「ねぇ、どうしたの? 同窓会には出るって言ってたじゃない」

『彼女』は肩と胴体をくねらせ、ゆっくりと僕等に近づいてくる。

頭が振れるたびに肉片と血が飛び散り、床を深い紅に彩っていく。

『彼女』の後ろに延びているのは、小腸か大腸か。

「まずは乾杯をしましょうよ」

『彼女』は何も無い眼窩から僕を床から見上げ、心底嬉しそうに言い放った。

終わり

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