866 ホラー 02 New! 2006/09/02(土) 19:58:03.58 ID:WbelzKyI0
それは、まだ僕が大学生だった頃。
長い夏季休暇は体だけでなく精神にも影響し、けだるい日々を送っていた時のことだ。
ある日、親友のSが僕ともう一人の親友であるDに、キャンプに行かないかという話を持ちかけてきた。

( ^ω^)「キャンプかお?」
(´・ω・`)「うん、そうなんだ。すまない」
(;^ω^)「いや、別に謝らなくてもいいお」

このSという奴はよく突拍子もない提案を持ちかけてくるため、今回も僕は「ああ、またか」という感じで受け止めていた。
なんでも、最近知り合いからキャンプの穴場スポットを教えてもらったらしい。
ここからは少し離れた場所にあるようだったが、車で行けばそれほど時間はかからないそうだ。
実際何の刺激もない怠惰な生活に嫌気が差していたし、僕は二つ返事でその提案を了承した。

('A`)「男三人でキャンプかよ……マンドクセ」
(´・ω・`)「あ、君は強制参加だよ」
( ^ω^)「僕ら免許持ってないお」

嫌がるDを半ば無理矢理に了承させ、僕らは早速キャンプの準備に取り掛かった。
手始めに古典の英雄を店名にした大型量販店でキャンプセット一式をワリカンで購入し、各自自由に食料などを購入。
あれだけぶつくさ言っていたDも、わざわざ店員に商品の場所を聞いたりと、まんざらではないようだった。
ただ、ポーションは流石になかったようだが。

(´・ω・`)「じゃあ、明朝七時に僕の家に集合ということで」
('A`)「把握した」
( ^ω^)「うはwww夢がひろがりんぐwwwwwww」

僕達は集合時間と場所を決め、そこで散り散りにそれぞれの家に帰っていった。
本当に、きっと明日は楽しいキャンプになると、皆この時は信じて疑わなかったはずだ。

――そして、次の日。

867 ホラー 02 New! 2006/09/02(土) 19:58:49.96 ID:WbelzKyI0
寝ぼけ眼のDに助手席でSが必死に話しかけつつ、僕らはその穴場というキャンプ場へと向かった。
途中に結構な山道を通ったものの、景色は実に綺麗で、僕は後部座席の窓からうっとりと観賞に浸っていた。

(´・ω・`)「着いたよ、ここだ」

鬱蒼とする森の中を抜けて、少し開けた場所に辿り着く。そこが、Sの言った穴場というキャンプスポットだった。

僕らは手頃な場所に車を停め、外に降りて新鮮な空気を肺に送る。
流石穴場と言うだけあって、僕ら以外には誰の姿も見当たらなかった。
その後、僕らはキャンプセット一式を車の荷台から降ろし、説明書を見ながら組み立てていく。
安値で買ったにしては十分の、しかし三人で寝るにはちょっと狭いテントが出来上がった。

(´・ω・`)「ここが僕達の愛の巣になるわけだね」
('A`)「お前が言うと笑えねーよ」
( ^ω^)「お前ら、いいから薪拾うの手伝えお」

本来なら薪を拾わなくとも専用の道具を買えば済むことなのだが、貧乏学生だった僕らにそんな余裕はない。
僕らは冗談を言い合いながら、森の中から手頃な薪を拾っていった。
だが、キャンプに来たという高揚感からか、僕らはこういういつもならめんどくさがるような作業も実に楽しく感じていた。

一通りの準備を終え、僕らは森林を大いに楽しんだ。
木々に囲まれながらただぼーっと過ごすだけでも飽きないし、拾った木の実の大きさを比べたり、近くで川を見つけたり。
本当に僕らは童心に帰ったようにその日ははしゃいで過ごした。
きっと、いつも家で過ごすばかりだった僕達にとってどれもが新鮮な体験だったからだろう。

そうして、あっという間に夜は更けていった。

(´・ω・`)「あ、もうこんな時間だね」
( ^ω^)「今日はもう寝るかお」
('A`)「こんなに早く寝るのは久し振りだな……」

868 ホラー 02 New! 2006/09/02(土) 19:59:32.37 ID:WbelzKyI0
僕らは明日もこんなに楽しい一日が過ごせるかと思うと、始めはなかなか寝付くことができなかった。
なので、僕らは眠くなるまでお喋りをして過ごすことにした。
狭い中に三人共うつ伏せになり、男同士特有の猥談や趣味のトークで盛り上がったり、結局彼女がいないことで落ち込んだり。

そんなことをしている内に、流石に遊んだ疲れが響いたのか、僕らはようやく眠気を感じ始めた。
九月だというのにそのキャンプ場は実に涼しくて、やがて僕らは誰からともなく眠りこけていった。

だが、寝始めてから恐らく二時間ぐらい経った頃――

(;-ω-)(……んん…)

僕は、急な寝苦しさに目を覚ました。何故なら、最初あんなに涼しかったのが、今は茹だるほどの暑さだったからだ。
外側と内側の両方から炎が燃え滾るような強烈な暑さに、僕はまるでサウナの中にいるような感覚を覚えていた。
額を手で拭ってみると、尋常ではない汗が吹き出ており、既に服の方も全身の汗でべたべた。
とても寝れるような状態とは言えなかった。

(;-ω-)(な、なんなんだお…?)

「うわあっ!?」

突然隣で大声がして、その声の主ががばっと起き上がる。
僕も慌てて確認すると、そこには怯えたような表情で周囲を見回すDの姿があった。

(;゚ω゚)「ど、どうしたんだお!?」
(;゚A゚)「い、今ドーンって物凄い音がしただろ!?」

Dはそれだけ言うと、再び何度も首が千切れんばかりに周囲を見回す。
僕と共にSもこの騒ぎに起き上がっていたが、僕らは二人してこのDの様子に目を見合わせた。

871 ホラー 02 終わり New! 2006/09/02(土) 20:00:50.76 ID:WbelzKyI0
(;^ω^)「音って……Sも聞いたのかお?」
(;´・ω・`)「いや……」

Sに確認したが、どうやらその音はDだけが聞いたようだった。
Dは相変わらず怯えた様子で緊張していたが、僕達はそれを見て眉をしかめる。
しかも、その時気付いたが、Sの全身も汗でぐっしょりと濡れていた。見てみると、Dもはあはあと息を荒げている。
どうやら、異変はこの場にいる全員が感じていることのようだった。

とりあえず、緊張するDを二人でなだめ、僕らは予定を切り上げて明日の朝にはもう帰ることを取り決めた。
そうして再び床に着いたが、その寝苦しさにほとんど落ち着くことはできなかった。

そして、太陽が昇り始めた頃――突然僕らの寝苦しさは嘘のように晴れていた。
ほぼ徹夜だったために体にだるさは残っていたが、なんとか自らを奮い立たせ、キャンプの後片付けを行う。
時間はかかったものの、僕らは荷物を車に詰め込み、逃げるようにしてそのキャンプ場を後にした。

(´・ω・`)「大丈夫かい…?」
( ^ω^)「無理せずゆっくりでいいお」
('A`)「ああ……大丈夫だ」

昨夜に一番様子のおかしかったDを気遣いながら、僕らは森林を抜けていく。
やがて、公道に出るという時、僕らは車の前を通ろうとする農夫の姿を見つけた。
Dは車を一旦停め、窓を開けてその農夫に声をかける。

('A`)「どうぞ」
/ ,' 3「ああ、どうも……ところで、あんた達どっから来たんだい?」
('A`)「この先のキャンプ場からですけど…?」
/ ,' 3「え? しかし、あそこは……」


――昔、空襲があった場所だよ。

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