670 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/08/08(火) 00:37:26.98 ID:bGkpNSdEO
「一枚、どう?」

これが、彼女との出会いだった。

('A`)「・・・ありがとう」

差し出されたチューインガムを受け取り、お礼を言う。
我ながら無愛想だとは思うが、昔からこうなのだから仕方がない。
しかし、そんな俺の態度を咎めるわけでもなく、屈託のない笑顔で話し掛けてくる。

(*゚ー゚)「あなた、いつもここにいるのね。
私も屋上、好きなんだ。空が見渡せるから」

どうやら彼女もここが好きらしい。断りなく、俺の隣に座る。
屋上は立入禁止なのに、よく入ってきたもんだ。と言っても、俺が言えた義理じゃないが。

(*゚ー゚)「空ってさ、優しいカンジがしない?
こう、なんていうのかなぁ・・・海のような」

('A`)「母親のような?」

(*゚ー゚)「そう!そんなカンジ!
って言っても、私は母親の優しさなんて知らないけどさ」

一瞬、哀しげな顔を見せた。
それはすぐに消えて、またあの笑顔に戻る。
マズいこと言ったかなぁ・・・

671 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/08/08(火) 00:38:15.76 ID:bGkpNSdEO
('A`)「あ、あのさ」

(*゚ー゚)「見て!飛行船が飛んでるよ!
     いいなぁ〜!私もあれに乗ってみたい」

突然ぴょんぴょんと跳ね、楽しそうに話す。
そのせいで、言い掛けた言葉が喉に引っ掛かっちまったよ。
・・・でも、楽しそうだな。

('A`)「ホント、空が好きなんだなぁ」

貰ったチューインガムをぷくーっと膨らませながら、彼女に問い掛けた。

(*゚ー゚)「あー!すごーい!ぷくーって膨らませるんだ?!
私苦手なんだよねー」

膨らませようとして、ぱちんと弾ける。
弾けたガムが顔にくっつき、とれないみたいだ。

('∀`)「はははははw」

(*゚ー゚)「笑うなんてひどいよー!」

頬をぷくーっと膨らませて怒ってきた。
もちろんそれは冗談でだろうけど。

673 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/08/08(火) 00:38:46.33 ID:bGkpNSdEO
('∀`)「君の頬、チューインガムみたいだぜ?」

(*゚ー゚)「あ、ホントだー・・・って、からかわないでよっ」

二人で声をあげて笑った。
空に届くくらいに大きな声で。
こんなに笑ったのも久しぶりだなぁ。

('A`)「あのさ、明日も・・・その、ここに、来る?」

うわぁ、カミカミじゃんか俺。恥ずかしい。
でも、明日も会いたかった。それは恋とかそんな感情じゃなく、純粋にこの時間を過ごしたかったから。

明日は簡単に膨らませるガムを買ってこよう。
そしたら、もっと楽しい気がするから。

(*゚ー゚)「いいよ!その代わり、次は空が飛べるくらいにガム膨らませてねw」

('A`)「ちょwそれは無理www」

チューインガムをぷくーっと膨らませ、失敗した。
顔に張り付くガムが、妙に心地よく感じた。
明日も二人で膨らませようか――

FIN

inserted by FC2 system