411 从 ゚∀从が月見をするようです 1/11 New! 2006/10/11(水) 00:55:18.72 ID:D2ueLFXf0

从 ゚∀从「また一人ぼっちか……」

从 ゚∀从「なぁ、何で人間って死ぬんだろうか…」

从 ゚∀从「アンタには分かるかい?」

女は瞳に水を溜まらせながら淡々と喋る
その声からは悲しみや憎しみの思いが篭っていた

目の前には大好きな恋人が使っていたパソコン
椅子には誰も座ってない、キーボードは誰もうってない

その場に人なんていやしない
なのに、女は誰もいない空間に向かって喋りかけていた

从 ゚∀从「まぁ、アンタに聞いても分からないか……」



从 ゚∀从「アンタはもういないんだしね……」

擦れた様な声は外で唸っている風の音にかき消された

412 从 ゚∀从が月見をするようです 2/11 New! 2006/10/11(水) 00:56:10.34 ID:D2ueLFXf0

从 ゚∀从「スポーツ、芸術、食欲、読書。秋って色々な事ができるんだよ?」

从 ゚∀从「月見団子とか食べながらお月様見れるんだ」

从 ゚∀从「でも一人ぼっちだと何も楽しくない……」

从 ゚∀从「アンタが始めての彼氏になってくれたのにあんまりだよ…」

先ほどから瞳に溜まっていた水が一気に流れ始めた

从 ;∀从「あん…たは何…でいなくな…っちゃ…ったの……?」

鼻からも水が滴り落ち、呼吸が苦しくなってきたがそれでも女は呟く

从 ;∀从「だい…すき…だよ。ど…くお……」



暗くも明るく光っている月光が窓を通り抜け
苦しみ、悲しく嘆いている女を照らしている

414 从 ゚∀从が月見をするようです 3/11 New! 2006/10/11(水) 00:57:14.22 ID:D2ueLFXf0
ジリジリジリと規則的な音を奏でながら目覚まし時計が鳴る
その時計を思い切り叩き静かにさせてから女は上体を起こす

从 ゚∀从「…ん、もう朝か」

目の下が赤く腫れ上がっている女は仕事へ行く支度をする為起き上がる

顔を洗う為に洗面所へ
飯を食べる為にキッチンへ
用を済ますためにトイレへ

やっている事は全て日常的な事
そんな当たり前の事をやっている

从 ゚∀从「よし、準備は出来た。じゃあ行こうかな」

支度を済ませ家を出ようと扉を開いた

(´・ω・`)「やぁ」

从 ゚∀从「………」

女は扉を閉めた

415 从 ゚∀从が月見をするようです 4/11 New! 2006/10/11(水) 00:58:27.67 ID:D2ueLFXf0

(´・ω・`)「ちょっとちょっと待ってよ!!いきなり扉を閉めないで!」

そういうと男は扉を無理やり扉を開けようとする

从 ゚∀从「何だよアンタ!ウチは痴漢お断りだよ!」

(´・ω・`)「痴漢じゃないよ!貴方に届け物があるんだよぉ!!」

从 ゚∀从「届け物?」

(´・ω・`)「はぁはぁ、やっと落ち着いてくれたか。手紙が君宛に届いているんだ」

女は扉を開け男を玄関まで上がらせた

从 ゚∀从「手紙って何のこと?まぁいいや、その手紙見せてよ」

(´・ω・`)「送り主とか聞かないんだ。まぁ別に良いけど」

男は腰にかけていたウエストポーチの中から茶色い封筒を取り出し女に手渡す

(´・ω・`)「ハイ、これ。今すぐ読んでみて」

从 ゚∀从「そのつもり」

416 从 ゚∀从が月見をするようです 5/11 New! 2006/10/11(水) 00:59:26.38 ID:D2ueLFXf0
女は茶色い封筒を破り中から白い紙を取り出し広げる
そこには小さな文字でこう書かれていた


C:\Documents and Settings\Owner\デスクトップ\dokuo\system\N2_136\windows\takaoka.txt


从 ゚∀从「……何これ?」

(´・ω・`)「パソコンを使うんだよ。開き方ぐらいは教えたはずだよ」

从 ゚∀从「…えっ?」

女は驚いた表情で目線を紙から男の方へと変える

本来ならいるはずの男がいつの間にかいなくなっていた

从 ゚∀从「……どういう事?」

混乱していて頭の中で色々な推測が飛び交う
だが結論は出ない
ヒントになりそうなものは右手に持っている白い紙

从 ゚∀从「…まずはこのファイル開いてみるか」

418 从 ゚∀从が月見をするようです 6/11 New! 2006/10/11(水) 01:01:08.10 ID:D2ueLFXf0
女は逆方向へ向き足を進める
目的地は大好きだった恋人が良く使っていたパソコン
昨日深夜まで泣く女と一緒にいたパソコン

从 ゚∀从「あれ、何で?」

女の目の前には液晶画面から光を照らしているパソコンが一台

从 ゚∀从「…さっきはついてなかったはずだけど」

ふと、女は思い出す
恋人が言ったセリフを


――このパソコン立ち上がるの糞遅いんだよなぁ

――おう、高岡お前待つの嫌いだろ?だから俺が先に電源入れといてやったぞ


从 ゚∀从「……アタシが消し忘れてたんだなきっと」

女は無理やり納得する
だが、その時ふと女は思う

恋人が死んでから一度もパソコンをつけてないことを

419 从 ゚∀从が月見をするようです 7/11 New! 2006/10/11(水) 01:03:00.80 ID:D2ueLFXf0

从 ゚∀从「やり方覚えてるかなぁ」

そう言うと女はマウスを握り、おぼつかない手つきでマウスを動かしクリックをする
先ほど紙に書いてあったフォルダまで辿り着く途中に如何わしい名前のファイルがあったが
女は無視し目的のファイルだけを開く

从 ゚∀从「…ここが最後かな」

このフォルダの中には一つだけテキストファイルがある
女はそのファイルに矢印を重ねダブルクリックをした


从 ゚∀从「なにこれ…」


    高岡、元気にしてるか?

    いきなりだが、お前の好きな物は俺、俺の好きな物はお前

    それなのに俺はお前の好きな物を奪ってしまった、ゴメンな。

    一緒にお前の大好きな月見をしたかったな

    でもそれはもう叶わない夢……か


420 从 ゚∀从が月見をするようです 8/11 New! 2006/10/11(水) 01:05:10.77 ID:D2ueLFXf0

    まぁそんな湿っぽい事言ったら泣き虫のお前がまた泣くなw

    だからもうキッパリ言う

    俺の事は忘れて新しい男作れ、んで傷を癒せ

    俺が言いたい事はそれだけだ


从 ;∀从「……」

悲しみで声すら出てこない
だが、女は力を振り絞り擦れた声を出す

从 ;∀从「い…や…だ」

从 ;∀从「なん…で…なの?なんで…アン…タは…そんな…事言う…の?」

从 ;∀从「ア…タシ…はアン…タのこと…好きだ…よ?あた…しならそんな…ことぜっ…たい…いわな…いよ」

从 ;∀从「デモ…モウ…アエ…ナイ」

从 ;∀从「ハナレ…タクナイ…イッショニ…イタイ」

从 ;∀从「ダイスキ…ダヨ…ドクオ…」

421 从 ゚∀从が月見をするようです 9/11 New! 2006/10/11(水) 01:07:03.31 ID:D2ueLFXf0
女は泣きながら画面を見続けている
すると誰も触っているはずのないマウスが急に動く
さらにあのテキストファイルに文字が追加される

从 ;∀从「エッ、ドウイウ…コト?」


    俺だって大好きだ。お前とはなれたくない

    だがこれが人間の宿命と言う奴なんだ

    死んだ人間とは一緒にいられない


从 ;∀从「……そうだね」


    だが月見ならできるかも知れない


从 ;∀从「…えっ?」

画面から全てのブラウザが消えデスクトップの絵が変わる

423 从 ゚∀从が月見をするようです 10/11 New! 2006/10/11(水) 01:08:38.97 ID:D2ueLFXf0

从 ;∀从「…綺麗」

目の前に移るのは綺麗で丸くそれでいて力強い
そんな美しい自然が写っていた

从 ゚∀从「……」

あまりにも美しさに涙はいつのまにか止まっていた
無言で見惚れていた女はどこからか声が聞こえる事に気がついた


――最初で最後の月見だな


从 ゚∀从「……うん。楽しいよ。ドクオ」

女は誰もいない空間に寄りかかりながら至福の表情で画面を見続けている





女が一人で椅子に腰掛けて寝ている
その横で人が喋るような音が聞こえた


424 从 ゚∀从が月見をするようです 11/11 New! 2006/10/11(水) 01:09:37.29 ID:D2ueLFXf0









「神様ありがとうございます。貴方には三つほど感謝させてもらっています」




「一つ目は彼女に会うために体を貸してもらったり色々な事をしてもらって感謝します」

「二つ目は彼女と生まれて初めての月見をさせてくれた事に感謝します」

「最後にこんな最高の女性が俺の彼女になる運命を作ってくれた事に感謝します」


―完―

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