82 ( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです New! 2006/10/10(火) 19:21:10.19 ID:9WLQ9otV0
>>76乙!!
これの続編が読んでみたいw

じゃあ次いきます

「( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです」



( ^ω^)「柿まいうーだお!」

('A`) 「この熟れたほーじゅんな味がなんとも・・・」

木造建築の家、古風な縁側にたたずむふたりの少年がいた。
年のころは10代にさしかかったばかりだろうか。

( ^ω^)「あー!ドクオ"ほーじゅん"なんて難しいことばつかってるおー!
       意味わかっとーのかおー?」

語尾が妙に間延びした少年が次々と柿を口に放り込みながら、友人を小馬鹿にする。

('∀`) 「やかまし!ブーンなんかさっきからくってばっかじゃ!!脳みそまで肉なんじゃねーの?」

その言葉を茶化してブーンと呼ばれた少年に返す。

84 ( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです New! 2006/10/10(火) 19:22:57.07 ID:9WLQ9otV0


( ^ω^)「かちーん。おまえはおれをおこらせた、だお!くらえ、柿の種!!」

ぶっ、と音を立てて口から柿の種を吐いた。
それは勢いよくドクオへと向かう。

(;'A`) 「うっわ、種が腕についた!果汁とブーンのつばでびたびたする・・・」

( ^ω^)「ざまみろだお!もっと食らうお!」


ぶっぶっぶっ、と柿の種が連射される。

(;'A`) 「ちょwwwおまっwwwwこっちも黙っとーと思うなよー!」

ぶぶぶぶぶ、とドクオも負けんばかりに種を吐く。

(;^ω^)「な、ドクオもなかなかやるのうだお・・・これは、勝負するお!」

('∀`) 「てめーには負けん!」

若い頃にありがちな、訳の分からない闘争本能に火がついた。

小さな男の子とはこうなったらもう手のつけようがない。
日が暮れるまで家の庭で柿の種を飛ばしあった。

仕舞いには一度地面に落ちた柿の種まで拾って投げていた。

86 ( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです New! 2006/10/10(火) 19:23:45.37 ID:9WLQ9otV0



( ^ω^)「ふぅ・・・まぁ、一時休戦でもするお」

('A`) 「そうだな、もー疲れただ・・・」

どろんこになるまで取っ組み合った二人の勝負は、それでもあっさり終止符を打った。



('A`) 「うわぁ・・・」

と、そこでドクオが感嘆の声をあげた。
ブーンはドクオの視線の向く先を探す。

( ^ω^)「どうしたお・・・って、すっこいきれいな夕陽だお・・・」

('A`) 「あぁ・・・まっかだな・・・明日もきっと今日みたいにいい天気なんだろな」

( ^ω^)「あーきのゆーうーひーにーてーるーやーまーもーみいじ、だお!」


この前小学校でみんなで合唱した歌だ。

ドクオもなんだか嬉しくなって、一緒にそれを歌った。
縁側に寝転びながら。


89 ( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです New! 2006/10/10(火) 19:24:56.86 ID:9WLQ9otV0

縁側から覗く景色。

一面の田んぼ畑。
そこにもう青さはなく、稲はもう刈り取られ、木の棒に干されている。
近所のおじちゃんがちまちまと脱穀しているのも見えた。

その周りをすずめやらからすやらがちょんちょんとスキップする。
田んぼに落ちた米粒をたべているのだ。

聞こえるのは小川のせせらぎ。
ほたるが出来るほどに澄んだ美しいその流れ。

感じるのは頬なぶる秋風。
清浄な大気は心を洗う、とここに住む人は信じてきた。

匂うのは、母と祖母がならんで作る夕食の匂い。
今日は父が魚をとってきてさばいてくれるかもしれない。



毎日がわくわくして、きらきらしたものがいっぱいあった。
この何も無い里の、そのすべてを愛していた幼少期。


91 ( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです New! 2006/10/10(火) 19:26:56.32 ID:9WLQ9otV0

( ^ω^)「ここにくるのも久しぶりだお・・・」

ブーンはその後すぐ街に引っ越してしまった。
そして大きくなって、大学を出て来春、サラリーマンになる。
就職が決まったので、長い間離れていたこの祖母の実家に報告の為に帰ってきたのだ。

─昔、ここでいとこのドクオと一緒に遊んだお・・・。

思い出ばっかり蘇ってきて、落ち着いてられなくてブーンは家の中をうろうろしていた。
そして、あの縁側に行って見たものは。


1本の、立派な柿の木だった。

( ^ω^)「あれは・・・あの時の・・・?」

庭で暴れていたから、ひとつぐらいは地中に埋まってしまったのかもしれない。
それが、芽吹いたというのか。

ただ、なんとなくしあわせな気持ちになって、笑顔で柿の木に向かってこう言った。


( ^ω^)「お前のおかげで、いつでもあの頃のぼくたちに会えるお!」



( ^ω^)ブーンは田舎育ちのようです おわり

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