522 (;'゚;ё;゚`;)<ブーンが死にました New! 2006/06/11(日) 03:26:15.61 ID:5uEVLLWfO
2006/6/13 東京 立川

その端整な顔は、脇を通り過ぎて行く男達を例外なく魅了する。

夏の訪れを感じさせる服装は、彼女の美貌と相俟ってどこか神秘的な雰囲気を醸し出す。

約束の時間は15:30。あの交差点の向こうで、彼女が待っている。

急がねば―――

(;^ω^)「ヤベェwww完全に遅刻www」

時間は無情である。それは未来に進ませることも、過去に戻すこともできない。

気温は28℃。ああ、日差しがうっとおしい。

(;^ω^)「ティッシュ配りuzeeeeeeeeeeeeeeee!!」





524 (;'゚;ё;゚`;)<ブーンが死にました New! 2006/06/11(日) 03:28:49.95 ID:5uEVLLWfO
(;^ω^)「ゼェ…ゼェ…これで三回連続で遅刻だお…ヤバス……」

(;^ω^)(!! 前方150メートル、目標を発見!映像、出ます!)


腕時計を瞥見する。約束の時間はとうに過ぎ去った。

だが過ぎ去った時間は戻らない。そんなことは承知している。


(;^ω^)「ツンー!すまんお!」

正面の彼女もこちらに気付いたようだ。聞き取れないが、何か叫んでいる。
恐らく「ぶち殺す」とか何か、そういった類であろうが。

信号が変わる。

時を巻き戻すことはできない。だが過去の過ちを償うことはできる。

ξ゚听)ξ「遅いわよ!このチンカス!」

そしてそれは必ずしも“対価”或いは“代償”を伴う。

(;^ω^)「言い訳はしないお……」

今回の場合、

ξ゚听)ξ「もう!いろいろ奢ってもら…………え……?」

それは非常に高い“代償”となった。

525 (;'゚;ё;゚`;)<ブーンが死にました New! 2006/06/11(日) 03:30:15.18 ID:5uEVLLWfO
ξ;゚听)ξ「………嘘でしょ……」



「おい、人身事故だってよ!」

「飲酒の居眠りですって…」
「あんらまぁぁぁぁやだわぁ!ねぇぇ奥さん!」

(警゚Д゚)「現場検証を行いますので!部外者は立ち入らないでください!」


ξ゚听)ξ「ねぇブーン……?遅刻なんて別に怒ってないわよ……」

(警゚Д゚)「ほらお嬢ちゃん、ここは立入り禁止だよ!下がって下がって!」

ξ゚听)ξ「早くしないと、席なくなっちゃうじゃない……」

(警゚Д゚)「お嬢さん、気持ちはわかるけど…」

ξ;;)ξ「嘘って言ってよ……目を開けてよ………ねえ!!」

ξ;;)ξ「ブーン!!!!」



526 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:31:39.97 ID:5uEVLLWfO
( ;ω;)「はっ!!」

( ;ω;)「ここは……?」


何も見えない。
何も聞こえない。

そうだ、僕は死んで―――

( <●><●>)「いらっしゃい。」

(;^ω^)「うおっ!!キメェwww」

( <●><●>)「ほう、いきなり気持ち悪いとは失礼な方ですね。」

(;^ω^)「すいません…フヒヒヒ……ところで……」

( ^ω^)「ここはどこだお?」

(   < ● > < ● >  )

(;^ω^)「ギャアアァァァァァァァアアア!!!」

( <●><●>)「冗談ですよ。フッフッフッ…」

(;^ω^)「(洒落にならねぇ……)そ…それはどうも……本当はどこなんだお?」

( <●><●>)「…今から案内します。」


527 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:32:35.74 ID:5uEVLLWfO
長い長い階段を下る。いつの間にか、視覚も聴覚も元通りになっている。

緩やかな螺旋で、真っ赤に染まった階段は、どこか狂気じみている。

所々に設置されたランプや蝋燭も、その一端を担っているのだろう。

一番下まで着くと、三つの扉があった。


【実話】 【元ネタ】 【オリジナル】


( ^ω^)「………?これは?」

( <●><●>)「見れば分かりますよ。お好きな部屋へどうぞ。」



528 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:33:13.16 ID:5uEVLLWfO

【オリジナル】

扉を開けると、一人の人間が中央に立ち、黒板に何かを書き綴っていた。
どうやら何か、所謂“小説”を書いているようだ。
内容としては、やはり一般人の作品。別段天才じみているわけではない。


そしてその周りを取り囲むようにして、数人の人間がそれを見物している。

ただ黙って見ている者もいれば、やかましく騒ぎ立てる者もいた。

そしてその殆どが罵詈雑言であった。


「糞つまらん。早く死ね」


「ここはお前の日記帳じゃねえんだ!チラシの裏にでも書いてろ!な!」


「死ね。  読んでないけど。」


「スレタイはともかく、マナカナ(ry」




529 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:33:57.42 ID:5uEVLLWfO
( ^ω^)「………」


( <●><●>)「ここは地獄です。」

( <●><●>)「中央の人間は、昨日ここにきました。周りにいるのが、悪魔です。」

( <●><●>)「悪魔は皆、他人の不幸が何よりの幸福だと思っています。」

( <●><●>)「……“落ちましたね”………」

( <●><●>)「ここは終わりです。次の部屋に行きましょう。」




530 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:35:02.12 ID:5uEVLLWfO
【元ネタ】

ここも先ほどと同じような部屋だった。少し違う点を挙げるなら、さっきより人が多い所か。
やはり中央の人間が、一生懸命何かを書き綴っている。次第に殴り書きになってはいるが。


「パクリ乙」

「 ま た 改 悪 か 」
>>1の母です。この度は(ry」

しかし同様に、周りの人間たちの悪口もまた変わらない。
内藤も徐々に嫌気がさしてくる。一体こいつらは何が楽しいのか。
何が嬉しくてこんなことをするのか。

( ^ω^)「ひどいお…真ん中の人が可哀相だお。…ん?」
(;^ω^)!!!!???

内藤の目に、信じられない光景が飛び込んで来た。
さっきの部屋で、皆を楽しませようと何かを書いていた人が、周囲に立ち、暴言を吐き散らしているではないか。

「糞糞糞糞糞死ねあばばbbっばくぁwせdhryふじこlp;@」

「JASラックに通報しますた^^」

「カススレ晒しage」

532 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:36:37.14 ID:5uEVLLWfO

(;^ω^)「……」

言葉が出なかった。先ほどまで輝いていた彼が、ここまで陥ちるものなのか。

誰よりも長く粘着し、誰よりも口汚なく罵り、そして今の彼は誰よりも醜かった。


( <●><●>)「彼もまた、悪魔に魅入られたのでしょう。」

( <●><●>)「理不尽な暴言は、刹那的に快感をもたらしてくれますからね。」

( <●><●>)「ここももう“落ちる”でしょう……」


533 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:37:10.60 ID:5uEVLLWfO

部屋を出ると、今までいた場所は跡形もなく消滅した。

残るは一部屋。「実話」と書かれた部屋だ。


暴言の内容の違いはあれど、ここも結局は同じだった。

互いに互いをけなしあい、醜い姿を露呈しているだけだ。

( ^ω^)「なんか、悲しいお…」

( ^ω^)「もうここにはいたくないお。他へ行くお。」

( <●><●>)「わかってます。では、上へ。」



534 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:37:51.30 ID:5uEVLLWfO
長い長い階段を上る。

緩やかな螺旋で、真っ赤に染まった階段は、どこか神々しさを感じさせる。

所々に設置されたランプや蝋燭も、その一端を担っているのだろう。


一番上まで着くと、三つの扉があった。


( ^ω^)「また地獄かお…」
( <●><●>)「見てからのお楽しみですよ。」




 【実話】 【元ネタ】 【オリジナル】



535 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:38:32.86 ID:5uEVLLWfO
扉を開けると、一人の人間が中央に立ち、黒板に何かを書き綴っていた。
どうやら、所詮“小説”を書いているようだ。
内容としては、やはり一般人の作品。別段天才じみているわけではない。

そしてその周りを取り囲むようにして、数人の人間がそれを見物している。

ただ黙って見ている者もいれば、やかましく騒ぎ立てる者もいた。

ただ、誰一人として

「wktkが止まらない件」

「うはーwww夢がヒロガリングwww」


「 こ れ は 面 白 い 」


誰一人として、悪口を言う者はいなかった。
反対に、中央の人間を称賛し、褒めそやす言葉だけがそこにはあった。

( ^ω^)「…地獄じゃなかったのかお……?」

( <●><●>)「ええ。ここは天国、心を休め、癒す場所です。」
( <●><●>)「さあ、次の部屋に行きましょう。」


その部屋はまもなく満員になり、新しい部屋が作られた。

537 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:39:17.67 ID:5uEVLLWfO
次の部屋。
ここも先ほどと同じような部屋だった。少し違う点を挙げるなら、さっきより人が多い所か。

やはり中央の人間が、一生懸命何かを書き綴っている。そして次第にその文章は洗練され、磨きがかかって行く。


「期待age」


「明日試験なのに寝れねぇ……orz 作者GJ!」

>>1の母です。この度は息子が文学賞を受賞し(ry」



そして同様に、周りの人間たちの称賛の言葉もまた変わらない。

内藤も徐々に陽気になってくる。ここにいると、何だか朗らかな気分になる。

何でかはわからない。だけど、何故か嬉しく感じる。


( ^ω^)「おっおっおっ。ワクテカ保守、っと。…お?」

さっきの部屋で中央にいた人物が、内藤の隣りで賛辞の言葉をおくっている。
ほどなくして作者が退席すると、惜しみのない拍手がいつまでも続いた。

538 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:40:20.97 ID:5uEVLLWfO
最後の部屋も全く変わらない様子だった。
誰もが笑顔になり、誰もが感涙し、そして誰もが賛美の言葉を忘れなかった。


( ^ω^)「いやー。いいものを見せてもらったお。」
( ^ω^)「次回作の期待でドキがムネムネするおwww」
( <●><●>)「内藤さん、なにか気付きませんでしたか?」
( ^ω^)「お?…気付かないわけがないお。」
( <●><●>)「そうですか。それはよかった。」

( ^ω^)「天国だとか地獄だとか、そんなものは存在しないんだお。」

( <●><●>)「……」

( ^ω^)「あんなもの、人の心が作り出す幻想にすぎないお。」

( <●><●>)「…内藤さん…」



539 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:41:22.54 ID:5uEVLLWfO
( ^ω^)「皆が地獄だと思えば、そこはどんな所でも地獄になるお。」

他人を貶めようと躍起になって、そのうち自分まで貶められるお。
周りの人達も、それを見て見ぬ振りをして、いつの間にか自分もそうなってしまうんだお。

( ^ω^)「そうなったら終わりだお。悪魔の思う壺だお。」

( ^ω^)「でも、皆が皆のことを少しでも思いやる気持ちを持てば、…そこはどんな所でも天国になるお。」

( <●><●>)「わかってます。……わかってます…」

( ^ω^)「生きてさえ入れ歯、どこだって…」

(;^ω^)「ちょwwwそういえば俺死んでね?www」

( ;ω;)「あみゃあああああ!!ツン!ツンー!!」

( <○><○>)「フフフ…さて、あなたの行き先は………」



540 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:42:15.82 ID:5uEVLLWfO






        (無言)













541 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:42:51.06 ID:5uEVLLWfO












生きてさえいれば、どんな場所だって天国にも地獄にもなります。

あなたは今、どこにいますか?





542 (;'゚;ё;゚`;)<生肉 New! 2006/06/11(日) 03:43:49.55 ID:5uEVLLWfO



    【おわり】

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