101 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/09(金) 21:39:46.10 ID:KGSaVw5L0
《ジリリリリリ…!!!》

背後では、けたたましい防犯ベルの音が鳴っていた。
しかし、もはや手遅れだった―――。
ブーンとショボンは、既に大量の札束を抱え、乗ってきた車に向かって猛ダッシュしていた。

( ^ω^)「⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーーーン!!!!」
( ´・ω・)「⊂二二二( ^ω^)二⊃ ブーーーーーン!!!!」

ブーンの威力は侮れない。フェンスを二本、四本と飛び越え、たちまち車に辿り着いた。
ブーンはすぐさま運転席に入り、ショボンは車のルーフから、札束の入った風呂敷を押し込んだ。

「待てぇ!」
「ちくしょう!!」

ようやく追いついたカジノの警備達が、銃を発砲する。だが、ブーン達の車は既に遠ざかっていた。

102 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/09(金) 21:40:40.45 ID:KGSaVw5L0
「追え、追え!逃がすな!!」

警備の男達は口々に叫びながら、駐車場で各々の車に乗り込んだ。
発進する―――、

《ガタン!》
「あぁ!?」

最初の車のタイヤは四つとも吹き飛び、同時にボンネットとトランクが開いた。
二台目も、やはり少し走ったところで前輪、後輪とタイヤがすっぽ抜け、最終的にドアというドアが開いて完全に動きを止めた。

「ああ〜!!?」

三台目は―――車が真っ二つに割れていた。
エンジンのない後ろの部分は取り残され、前の部分もタイヤのないむき出しの金属が地面と接し、火花を散らして思うように運転できない。

「うげぇっ」
《ガシャーン!!》
最後には、止まっていた別の車に、真横から突っ込んだ。
細工された車は、そんな始末である上に、残った車も追突するやらされるやらで、まともな車は一つも…、

103 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/09(金) 21:41:07.73 ID:KGSaVw5L0
「………」

いや、一つ―――、

《コツン…》
無事だった車のバンパーに、抜けたタイヤの一つがぶつかった。
《ガターン!!》
その拍子に、車全体が落ち込んだ。またしてもタイヤが全て外れたのだ。同時に、ボンネットが開いた。

┌────────┐
│                |
│   おつんでれ    |
│                |
│    ( ^ω^)     |
│                |
└────────┘

その裏側に、ガムテープで貼り付けられたメッセージを、男達は呆然と見つめる他無かった…。

104 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/09(金) 21:41:43.38 ID:KGSaVw5L0
( *^ω^)(*´・ω・)「はははははwwwww」

ブーン達は、100ヌルポ札ではち切れんばかりに満たされた車内で、喜びの笑みを交わしていた。
ハイウェイに上がってからしばらくするが、追っ手のやってくる気配もない。大成功だった。

(*´・ω・)「ナンバー不揃いで、50億はあるよ!」

ショボンも何時ものしょぼくれた表情はなりを潜め、今はただ、満足げな笑いを浮かべている。

(*´・ω・)「札ビラのシャワーだぁ!それっ!」

テンション最高潮のショボンは、自分の周りにある札束を、がさりとすくってブーンに浴びせた。

( *^ω^)「うわっ。アツ、アツアツアツっ!!もっと、うめてちょうだいお〜www」

ブーンもノリノリで、ハンドルを左右に切る。
正直、ハイウェイでは危険極まりないが、そこはA級ライセンスを持つ彼のこと。コントロールを失うはずもない。

( *^ω^)「ははははは、は…」
( ^ω^)「………?」

―――だが札束を見ていたブーンは、やがて、あることに気付いた。

105 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/09(金) 21:42:15.72 ID:KGSaVw5L0
( ^ω^)「………」

ブーンは車を車線の端に寄せ、踏み込んでいたアクセルをゆるめた。
別の車が何台か、クラクションと共に、ブーン達の車を追い越していく。

( ´・ω・)「? どうしたんだい、ブーン?」

札束をかき分けながら、ショボンは急にテンションの下がったブーンに話しかけた。

( ^ω^)「…捨てちまうお」
Σ(;´・ω・)「えぇ!?」

捨てちまう―――というのはもちろん、つい先程盗み出した、この大量の札束のことだ。

( ^ω^)「コイツは偽物だお。よーく出来てるけど」
( ´・ω・)「これが!? まさかぁ。国営カジノの大金庫からかっぱらったんだよ?」

ショボンは手近な100ヌルポ札の束を掴んで、眺めてみた。どこからどう見ても、本物の札束だ。帯もしてある。

( ^ω^)「ゴルァ札だお」
Σ( ´・ω・)「ゴルァ札…! 幻の偽札というアレかい?」
( ^ω^)「国営カジノにまで、出回ってきたとはな…」

ブーンの眼には、いつになく鋭い赫きが宿り始めていた。盗みのターゲットを決めた時の、あの目つきだ。

( ^ω^)「ショボン、次の仕事は決まったお。前祝いに、パーッとやるお!!」

106 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/09(金) 21:42:38.95 ID:KGSaVw5L0
( *^ω^)「ぱぁーっ!」

言うが早いか、ブーンはルーフを開け、そこから両手一杯に抱えた札束をばらまいた。

(*´・ω・)「そ〜らっ!くそ、くそっ、そぉらぁっ!!」

ショボンも、車の中から札という札を掻き出し、終いには車のドアを開け放ち、そこから大量の札束が飛び出していった。
偽札は帯から外れ、自在にハイウェイの上を、高速の空を舞った。そして、やがて海の上に出た。
一隻のヨットが、ゆったりと海を行くその上で、数え切れないほどの紙吹雪が、ひらひらと漂っていた―――。

617 Boone the III - The Castle of Skaltinov sage New! 2006/06/11(日) 11:53:21.05 ID:C7GXnorv0
はい、ここでOPですよ。。。
よい子のVIPPERは、脳内で例のテーマを流しましょう。


( ^ω^)「もう少しで、目的地だお…」

地図を見ながら、ブーンは誰にともなく呟き、草の上に寝転がった。
夕暮れ、夜。
海を越え、雨の中を行き、山を越え、線路を越え…。それがもう何日目だろうか。

( ´・ω・)「まあ、ソーセージでも食べなよ」

ブーンが首だけ起こして見ると、ショボンがプライパンをバーナーで炙っている。

( ^ω^)「夕飯かお?」
( ´・ω・)「うん」

木箱には、酒も入っている。皿も出ている。

( ´・ω・)「もう少しって言ってたけど、あとどのくらいなの?」
( ^ω^)「んー。今日一晩行けば、明日の昼には着けるはずだお」
( ´・ω・)「ふぅん…」
( ^ω^)「あ、バーボンあるお?」
( ´・ω・)「ううん。でも、このテキーラはサービスだよ」

618 Boone the III - The Castle of Skaltinov 割り込みみたいでスマソ New! 2006/06/11(日) 11:54:01.69 ID:C7GXnorv0
食後のひととき。

( ^ω^)「………」
( ´・ω・)「………」

二人は、無言で煙草を吹かしていた。
ブーンはルーフの上で。ショボンは車に寄りかかって。

( ^ω^)「星がきれいだお」
( ´・ω・)「そうだね」
( ^ω^)「あ、大きな青い星…」
( ´・ω・)「なんと…。我がブーンの頭上に 死 兆 星( ;^ω^)「違うお!」

そんな会話を、少したしなむ。

620 Boone the III - The Castle of Skaltinov でも貼ったったもんは仕方がないってことでさ…こらえてくれ New! 2006/06/11(日) 11:54:58.38 ID:C7GXnorv0
( ^ω^)「行くお?」
( ´・ω・)「うん。 …よいしょ」
( ^ω^)「あ、ポイ捨て…」
( ´・ω・)「気にしない、気にしない」

ブーンは運転席、ショボンは助手席についた。

( ^ω^)「あー、ケロロがちゃんと撮れてるか心配だお…」
( ´・ω・)「…ここまで来て、それ?」
( ^ω^)「家のビデオデッキ、今調子悪くて…。勝手に巻き戻ったりするんだお」
( ´・ω・)「買い換えなよ。一応大泥棒なんだから」

エンジンをかける。
星々も、やがて明け方に消えてゆくのだろう。
夜空の下で、テールランプの赤い光が、小さく灯った。

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