598 ( <○><○>)スクリプトと狂気とテレビと媒介と New! 2006/06/06(火) 21:52:46.59 ID:SWZoVDCG0
 
 私は貴方を許さない。

 憎き者を許さない。

 私を馬鹿にした全ての有象無象を、許さない。


 私は祟る。餓鬼を祟る親を祟る教師を祟る餓鬼を祟る。

 ディスプレイの前にいるお前も祟る。
 へらへら笑うお前を祟る祟る祟る祟る。

 呪詛の道を私は進め。
 誰もがキチガイと云う、呪詛の道を。

 さあ、PCを立ち上げろ。


「狂いの意地を見せてやれッ!」


 上田 次郎は、そう絶叫した。


 (<●><●>)「私は貴方を――許さない」

 親からも見捨てられ友からも見捨てられた。でも私は尊崇されるべき存在。

「そう、私は日本科技大教授、上田次郎なのだから」

600 ( <○><○>)スクリプトと狂気とテレビと媒介と New! 2006/06/06(火) 21:59:56.10 ID:SWZoVDCG0
 その日、僕達の担任である上田次郎教授は大学を休んだ。
 上田教授が休講したのは、生まれて初めてのことらしい。

 僕の友達のドクオはそう言っていた。

「上さんはどうしちゃったんだお?」
「僕が知るものかい。大方、家でエロゲでもやっているんじゃあないか?」

 ショボンに聴いてもこの調子。
 情報通のショボンでも知らないぐらいだから、他の生徒に聴いても結果は一緒だろう。

 あの上田教授が、大学を休む? 信じられなかった。

 大学を、学生を、『誰よりも愛していた』はずの上田教授が――

「休講するなんて」


 ちょっと拍子抜けした。

 だから僕はVIPに行った。
 授業中だったけど、上ちゃん以外の授業はみんなつまんないんだ。

 上ちゃんは情報学科の先生。とっても気さくで優しい人なんだよ?
 ちょこっと変わってるけどね。

「あれ? なんかへんだお」

 すぐに、VIPの異変に気が付いた。
 妙なスレが、乱立していた。

610 ( <○><○>)スクリプトと狂気とテレビと媒介と New! 2006/06/06(火) 22:12:19.18 ID:SWZoVDCG0
「なんだよそれ」

 ドクオが僕のPCを覗き込んできた。
 今し方まで爆睡してたらしく、しきりに目をこしこしとしている。

 いつもなら、気にもとめない、ただのスレタイ。

 なのに何故か――

『UFOがあっち行ってこっち行って落っこちる日の正午
 日本科学技術大学を爆破する』

 というスレタイは、狂った輝きを放っていた。

「なげぇスレタイだなwwしかも乱立かよwww」
「なんだ、僕らの大学じゃないか。乱立祭なら参加したかったな。
でもおかしいな、僕ほどのVIPPERがこんな大規模な乱立に気が付かないなんて――?」

 嫌な、怖気がした。狂気の沙汰。そんな怖気が。

「ほんとに爆発したらさ。テラバロッシュじゃねwwじゃねww?」

 ブーンは何も言えなかった。スレを片っ端から開いてみた。

「うわ」

 狂気を感じた。

 無。無無。無無無無無。そこにあったのは完全な無であった。

620 ( <○><○>)スクリプトと狂気とテレビと媒介と New! 2006/06/06(火) 22:21:35.45 ID:SWZoVDCG0


 良くあるただの無言スクリプト。


 そう、良くあることなんだ。良くあることなんだ。

 良くあることなら何で!!!!!!!

 このスレはみんな『 9 9 9 』で固まってるんだよ!

「ちくしょう、なんで書き込めない」

 嫌な不気味さだった。専ブラに並ぶスレは、みんなこのスレ。

 レス数の覧は999で埋め尽くされていた。
 まるで、誰かの笑い声の如く。

「どうしたんだよブーン。落ち着けよ」

 書き込めない…書き込めない!

 どうして? 何故? 何が起きてる?

 いやな、嫌な感じがする。

 ハットして時計を見た。

 行動の大鐘の音と共に、爆発音が轟いた。

628 ( <○><○>)スクリプトと狂気とテレビと媒介と New! 2006/06/06(火) 22:34:24.91 ID:SWZoVDCG0
 翌日。テレビはこぞってそのニュースを報道した。

 現職教授による、大学爆破事件。
 あの部屋で、ショボンだけが、生き残った。

 あまりにショッキングなその事件は、日本中を震撼させた……。

(;<●><●>)「違う! 私じゃない! 私じゃないんだ!」

 上田の声はもう誰にも届かない。

 直接証拠は出なかった。だが状況証拠が十分だった。
 警察の特捜部によって、すぐにあの乱立が上田教授のものだと分かった。
 警察は逮捕に踏み切った。

 上田教授はもう二度と監獄から出てこれないだろう。
 そこにはもう、エロゲもなければPCもないのである……。

 しかし誰も、ある事実にまったく気が付いていなかった。

 否、ブーンだけは気付いていた。雑多な、乱立するスレの中に、一つだけ。

「ようこそ、爆弾ハウスへ」

 というスレッドがあることに――。しかしブーンもドクオもこの世にいない。
 誰にも知られることのないそのスレはゆっくりと、datの海に沈んでいった――。

 何処かのディスプレイの前で、嗤い声がした。

                                        (完)

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