931 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:37:46.65 ID:Irs+m+SX0
ξ゚听)ξ「まったくドジよねーあんたって」
(;^ω^)「う、うるさいお!」

ここはとある病院の一室。少年と少女がそんな会話をしていた。
少年――ブーンのほうは足にぐるぐると包帯が巻かれてベッドの上で横になっており少女――ツンはそのベッドの傍にある椅子に座りながら林檎の皮を剥いている。
ξ゚听)ξ「掃除中にドクオとチャンバラごっこしてたら階段から足踏み外して骨折なんて小学生じゃないんだから…」
( ^ω^)「心はいつまでも少年のままだお」
ξ゚听)ξ「あんたはもう少し大人になりなさいって!」
( ,,゚Д゚)「ハハ、いつも仲がいいなお前ら」

ブーンの向かい側のベッドから笑い声が聞こえた。
ξ////)ξ「ギ、ギコさん…。別にこいつとはそういう関係じゃありません!」
( ^ω^)「うはwwwww即答wwwwww」
向かい側のベッドにいるギコと呼ばれた男はハハ、と軽く笑った。
ギコというのはブーンと同室にいる男性である。年齢は二十二〜三位だろうか。ブーンより先にこの部屋にいたため一週間前に入院したブーンのよき相談相手となっていた。
毎日ブーンのお見舞いに来ているツンとも仲良くなり、その二人をからかうのを一日の楽しみとしていた。


932 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:38:02.40 ID:Irs+m+SX0
( ,,゚Д゚)「まーそう否定すんなって。いやー青春っていいよなぁ。俺もあの頃を思い出すぜ…」
ξ////)ξ「だからギコさん、私たちはそういうんじゃ…」
ギコがからかいにツンが否定しようとしたのをブーンが遮った。
( ^ω^)「ツン、話があるお。ちょっと外に出るお」
ξ゚听)ξ「何?話だったらここでいいじゃない」
( ^ω^)「ちょっとここではいえない大事な話なんだお」
と、ブーンはギコの方をチラッと見た後そう答えた。先ほどとは違いブーンの表情も少し真剣なように見える。
( ,,゚Д゚)「なんだなんだ。ついに愛の告白か?」
ギコがニヤニヤしながらからかってくるが、ブーンはそれを無視しベッドの脇に立てかけてあった松葉杖を手にした。
そしてベッドから下り、立ち上がる。
( ^ω^)「じゃあツン、屋上へ行くお」
そう言うとブーンは松葉杖をつきながら病室のドアの方へ歩き出した。
ξ゚听)ξ「あ、ちょっと待ちなさいよ!」
ツンは剥きかけの林檎を近くの棚の上におき、向かい側にいるギコに会釈をするとブーンの後を追っていった。

( ,,゚Д゚)「あの頃…か…」
一人取り残されたギコがそうつぶやいた。



――ξ゚听)ξと花束と蜂蜜と――

933 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:38:18.03 ID:Irs+m+SX0
季節はもう春の中頃ではあるが、まだ風は冷たく肌寒い。
もう一枚何か羽織ってくれば良かったかな、とツンは少し後悔した。
( ^ω^)「こんな寒いところでごめんお。でもギコさんには聞かれたくなかったから…」
ξ////)ξ「は、話って何なのかしら」
(;^ω^)「えーっと改まって言うとなんか言い辛いお」
え?とツンは少し驚いた。ブーンも緊張してるように見えたからだ。
胸の鼓動が高まっていく。これってもしかして本当にギコさんがいってたとおり…
( ^ω^)「実は話っていうのは他でもないギコさんのことだお」
そして鼓動は静かになった。


(メメ^ω^)「何で僕が殴られなくちゃいけないんだお?」
ξ゚听)ξ「何となくよ。それでギコさんが何なの?」
ブーンは殴られた理由に釈然としない様子だったが話を続けた。
( ^ω^)「実はギコさんが三日後に退院するんだお。それで僕からも何かお祝いをしたいと思ってるんだけど…」
ξ゚听)ξ「あら、あんたにしては気が利いてるじゃない」
しかしブーンは「でも…」と付け加えた後に自分の足を指差した。
( ^ω^)「この足じゃあどこかに出かけることも出来ないからプレゼントを買う事が出来ないんだお。だからツン、お金は僕が出すから代わりに買ってきてくれないかお?」
ξ゚听)ξ「わかったわ。なんだかんだでブーンはギコさんに世話になってたもんね。で、何を買ってくればいいの?」
( ^ω^)「えーっと…」
ブーンは自分のポケットの中からなにやら紙切れのような物を取り出し、それに目を通したあとツンに告げた。
( ^ω^)「ギコさんが好きな花、ナデシコとギコさんの好物である蜂蜜を買ってきて欲しいんだお」


934 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:38:38.15 ID:Irs+m+SX0
―――翌日、ツンは街で一番大きい百貨店にいた。
ここになら蜂蜜も売ってるだろうし花屋も確か何階かにあったと記憶していたからだ。
ξ゚听)ξ「えーっと花屋は…2階の隅のほうね」
入り口にある案内板を見てツンはつぶやき、昨日ついでに調べたナデシコのことを思い出していた。

ナデシコ――名前のとおりナデシコ科の植物。
開花時期は4月から10月と比較的長い時期に咲く花。
赤い花が美しく、大和撫子の語源にもなっているらしい。
花言葉は―――

ここまで思い出しツンは顔を真っ赤にした。
ξ////)ξ(べ、別にブーンにあげるわけじゃないんだから関係無いじゃない)
そう自分に言い聞かせ、何とか落ち着きを取り戻す。
ξ゚听)ξ(でもギコさんってこういう花が好きだったのねぇ。意外だわ)
そんなことを考えてる間にツンは2階の花屋の前にたどり着いていた。


935 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:39:22.51 ID:Irs+m+SX0
(*゚ー゚)「いらっしゃいませ」
店のドアを開けると女の人が笑顔で挨拶をしてきた。自分より少し年上だろうか。
ξ゚听)ξ「あの、ナデシコってありますか?」
(*゚ー゚)「…はい、ありますよ。ちょっとついて来て下さい」
少し言葉に詰まってたような気がするが気のせいだろう、ツンはそう思いつつ彼女の後をついていった。
(*゚ー゚)「こちらがナデシコです」
そう言った彼女の目の前には何本もの赤い花が筒にささっていた。
ξ゚听)ξ「これがナデシコ…」
ツンはナデシコをはじめて見た。昨日調べたときは写真などは載ってなかったからだ。
赤いというよりもピンクに近い花、思ってたより長い草丈。
(*゚ー゚)「キレイでしょう?私もこの花が好きだったんですよ」
店員が笑顔で告げる。
確かに凄くキレイだ。好きだったのも頷ける。



936 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:39:38.87 ID:Irs+m+SX0
――だった?

ξ゚听)ξ「あ、あの。好き『だった』っていうのは…?」
(;゚ー゚)「あ……」
少し、というかかなり動揺しているように見えた。
(;゚ー゚)「あ、今も好きですよ。ただ…昔のことを思い出しちゃうから」
ξ゚听)ξ「昔の…こと?」
(*゚ー゚)「はい、昔この花が好きだった人と付き合ってたんです。でもその人は『いつかビッグになってお前を迎えにくるから待ってろ』といって都会に行っちゃったんですよ。そのときこの花を貰ったんです」
ξ゚听)ξ「それで…?」
(*゚ー゚)「それからもう5年経ちました。でも彼との連絡も途絶えてしまいました」
ξ;゚听)ξ「す、すいません!なんか嫌なこと思い出させてしまって」
そう謝るツンに店員は笑顔で答えた。
(*゚ー゚)「いえ、いいんですよ。私が勝手に話したことですし。それに…」
彼女は一呼吸置いてから続けた。
(*゚ー゚)「それに私はまだ待ちつづけるつもりです。今はどこにいるか分からないしそんな約束なんか忘れて違う人と新しい生活をはじめてしまってるのかも知れない。それでももし彼が帰ってきたときに誰も待っている人がいなかったら…って考えるとかわいそうになっちゃって」
馬鹿な女ですよね私って、と微笑まじりに付け加える。
ただツンはその笑顔が悲しげに見えた。
(*゚ー゚)「ごめんなさい。こんな長話してしまって。でもこの花を見るとどうしても思い出しちゃうんです。彼と過ごした日々とか、彼が美味しそうに私のつくった蜂蜜ジュースを飲むところを…」
ξ゚听)ξ「蜂蜜ジュース?」
(*゚ー゚)「彼が大好きだったんですよ。確か風邪を引いたときにお母さんにつくってもらったとかで」

937 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:40:29.00 ID:Irs+m+SX0




二日後、ギコの退院予定日――
( ^ω^)「じゃあギコさん、お元気でだお」
( ,,゚Д゚)「ああ、ブーンも早く足治せよ」
ツンはブーンと病院の入り口でギコと会話をしていた。勿論ギコを見送るためである。
( ,,゚Д゚)「じゃあツンも元気でな。ブーンのことをよろしく頼むぞ」
ξ////)ξ「それってどういう意味ですか?」
ツンは顔を真っ赤にして問い詰めるがギコは「言葉通りの意味だが?」と軽く笑いながら答えた。
( ,,゚Д゚)「じゃあ、行くか」
ギコは自分の足元に置いてあったバッグを拾い上げる。と―――
( ^ω^)「ギコさん、ちょっと待つお」
ブーンがそういうとツンは足元に置いてあった大きな紙袋から花束のようなものを、ブーンはその紙袋からそれよりも一回り小さい紙袋を取り出した。
( ^ω^)「ギコさん退院おめでとうだお。これは退院祝いだお」
( ,,゚Д゚)「おいおい、いいのかよ。なんか悪いぜ、高校生から高価そうなものを貰うなんてさ」
ξ゚听)ξ「いいんですよ。お金は全部ブーンが出しましたから。はい、どうぞ」
そういうとツンは花束をギコに手渡した。


938 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:40:44.48 ID:Irs+m+SX0
( ,,゚Д゚)「ナデシコの花、か。…やっぱりキレイだなあ」
ξ゚听)ξ「ギコさんその花好きなんでしょう?」
( ,,゚Д゚)「…まあな」
そういったギコの顔が少し引きつったのをツンは見逃さなかった。
ξ゚听)ξ(ブーン、ギコさんは本当にあの花が好きって言ってたの?)
(;^ω^)(た、確か看護婦さんとそんな話をしてたのを聞いたお)
( ,,゚Д゚)「いや、ブーンの言う通り本当にこの花は好きだぜ」
二人はかなり小声で話していたのだがギコには聞こえていたらしい。
ギコさんの顔がいつもより険しくなった気がする――ツンはそう感じた。
( ,,゚Д゚)「いや実はさ…この花見てると昔のことを思い出すんだよ。昔から俺はなんかどでかい事をしたいと思っててね、五年位前だったか恋人に『いつかビッグになってお前を迎えにいく』とか大見栄はって都会に出たんだ」
ξ゚听)ξ「!!」
あの時は俺も若かったな、とギコがつぶやいた時、ツンは二日前のことを思い出していた。


この話どこかで聞いたような――


( ^ω^)「それとその花はなんか関係あるのかお?」
( ,,゚Д゚)「ん、ああ。その話をしたときその恋人にこの花をあげたんだ。この花の花言葉が―――」
ξ゚听)ξ「あ、あの。ギコさんは蜂蜜のジュースが好きなんですよね?」
ギコが何か続きを話そうとしていたのをツンが遮った。
別に花言葉がどうこうというわけではない。
たださっきの話を聞いてある一つの仮説が思い浮かんだのだ。
もしかしたらこの人が―――
( ,,゚Д゚)「なんだよ唐突に。そうだぜ、お袋の作ってくれた蜂蜜ジュースがうまいんだ」
そしてそれは確信に変わった。

939 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:41:03.21 ID:Irs+m+SX0
( ^ω^)「……ツン?」
ξ゚听)ξ「やっぱり…」
ツンは確信したような表情でギコを睨んだ。
( ,,゚Д゚)「な…なんだよツン。それってブーンから聞いたんだろ?」
(;^ω^)「あ…あの…」
ブーンはあうあうしながらも、ギコの疑問に答えた。
(;^ω^)「ギコさんが蜂蜜が好きなのは知ってたけど…ジュースが好きなんていうのは初耳ですお」



ξ゚听)ξ「それで、その恋人とはその後連絡をとったんですか?」
( ;,゚Д゚)「………」
ξ#゚听)ξ「どうなんですか!?」
(;^ω^)「ツン…少し落ち着くお」
ξ#゚听)ξ「あんたは黙ってなさい!」
(;^ω^)「あうぅ…」

940 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:41:18.74 ID:Irs+m+SX0
ギコはしばらく黙っていたが、観念したのかその重い口を開いた。
( ,,゚Д゚)「連絡は…とってない。ビッグになるまで戻らないと誓って俺は約束を果たせなかったんだ。あいつに会う事はできないよ。それにあいつももう俺のこともそんな約束も忘れて…」
ああ、なんてこの人は鈍いんだろう、ツンはそう思った。
何で私があなたの恋人のことを知ってるのかとかそういう事は考えないのか?
それともそこまで考えられないほど混乱しているのか?
どちらにしろわかってないのならわからせてやるしか無さそうだ。
ξ゚听)ξ「忘れてなかったら……今もあなたの帰りを待ちつづけてるとしたらどうするんですか?その気持ちを『約束が守れなかったから』とかいうちっぽけな理由で踏みにじってしまうんですか?」
( #゚Д゚)「ちっぽけなんかじゃねぇ!」
ξ#゚听)ξ「ちっぽけですよ!」
ギコは自分の夢を軽く扱われたことに怒っているようだったが、ツンも引き下がる気はなかった。
あの時の『恋人』の悲しげな笑顔。
その笑顔から悲しさを奪い取ることができるのはこの人しかいない。
ならば私が出来る事は―――

ξ;;)ξ「ちっぽけですよ、本当に…」
ツンの頬に涙が伝う。
けれどそれを拭うことなく、続ける。
ξ;;)ξ「あの人の想いに比べたら……本当にちっぽけですよ、そんなこと…」

941 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:41:34.26 ID:Irs+m+SX0
(;^ω^)「ツ、ツン?とりあえず涙を拭くお」
ブーンはそう言うと自分のポケットからハンカチを取り出しツンに手渡した。
ξ;;)ξ「ブーン…。ありがとう」
ツンはブーンからハンカチを受け取り涙を拭いた。

ブーンは正直今の状況を理解できないでいた。
ただ一つだけわかるのは――


( ^ω^)「ギコさん」
( ;,゚Д゚)「な、なんだよ」
ギコは動揺していた。それは話がよくわかってないブーンが見てもわかることだった。
( ^ω^)「僕は正直今の状況を理解できてないお。ギコさんの約束とか恋人のこととかいまいちよくわかってないお。でも――」
ブーンは一呼吸置き、つづけた。
( ^ω^)「でも、ギコさんはツンを泣かせたお。ツンは滅多なことでは泣かないお。なのにそのツンを泣かせたって事はたぶんギコさんが悪いんだと思うお」
ξ゚听)ξ「ぶ、ブーン…?」
( ,,゚Д゚)「…………」
ブーンのその一言であたりがしん、と静まりかえる。



その沈黙を打ち破ったのは―――
( ,,゚∀゚)「は、はは、アッハハハハハハハハハ」
ギコの笑い声だった。


942 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:41:49.92 ID:Irs+m+SX0

(;^ω^)「ちょwwギコさん笑いすぎだお」
( ,,゚∀゚)「ハハハハハハ、な、なんだよそのdでも理論は。腹イテェwww」
ξ////)ξ(な、なんか物凄く恥ずかしい)
ギコは腹を抱え笑い続け、ツンは顔を真っ赤にして――
なんかいつもの二人に戻った気がしてブーンは少し安心した。
…何か釈然としないが。


( ,,゚Д゚)「じゃあお前の言う通り俺が悪いってことにしてやるよ」
ギコがそんなことを言ったのは彼がしばらく笑いつづけた後だろうか。
( ^ω^)「え…」
( ,,゚Д゚)「いや、実はさ、俺もこの町に戻ってきたのは彼女に会おうと思ったからなんだ」
ξ゚听)ξ「じゃあどうして…」
ツンの質問にギコは空を見上げながら答えた。
( ,,゚Д゚)「俺は…怖かったんだと思う。あんなちっぽけな約束なんか忘れて違う奴と幸せに暮らしてたら…とか考えると恐くて会えなかったんだ」
馬鹿だよなぁ俺って、と微笑交じりで付け加える。
そんな彼を見てツンはふふ、と笑った。
( ,,゚Д゚)「なんだよ、何がおかしいんだよ」
ξ゚ー゚)ξ「いいえ何でも。ただ似たもの同士だなあって思って」
( ,,゚Д゚)「なんだと?お前らだって似たもの同士じゃねえか」
(;^ω^)ξ////)ξ「ど、どこがですか(お)!!?」
ギコは「さぁ?自分達で考えな」というと顔を真っ赤にしている二人のほうを見て微笑んだ。


943 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:42:05.30 ID:Irs+m+SX0
,,゚Д゚)「じゃあ、そろそろいくわ」
ギコは自分のバッグを肩にかけ、そして蜂蜜のはいった紙袋と赤い花束を手に持ち、そう言った。
( ^ω^)「じゃあ今度こそお別れだお。ギコさん今までありがとうだお」
( ,,゚Д゚)「おう、お前らも元気でな。あとツン…」
ξ゚听)ξ「なんですか?」
( ,,゚Д゚)「ありがとう。お前の言葉がなかったら俺、一生後悔するところだった」
ξ;゚听)ξ「こ、こっちこそでしゃばったこと言ってすいませんでした」
( ,,゚Д゚)「はは、いいってそんな事は。いつもの事だろ」
ξ゚听)ξ「……それどういう意味ですか?」
ツンが不機嫌そうに聞くがギコはそれを無視した。その代わりに一輪の花をツンに手渡す。
その花は先ほどギコに渡した花束から抜いたものだった。
( ,,゚Д゚)「これは俺からお前たちにプレゼントだ。とはいってもお前たちから貰ったものだけどな。まあこの花の意味はお前たち二人に関することだと思ってくれ」

その言葉を聞いて――
ブーンはクエスチョンマークを頭の上にたくさん浮かべ、ツンは先ほどよりももっと顔を真っ赤にした。
ξ////)ξ「ギコさん!!」
( ^ω^)「ツンは意味がわかったのかお?僕にも教えて欲しいお」
ξ////)ξ「馬鹿っ!」
(メメ;ω;)「何で殴られなきゃいけないんだお?」

( ,,゚Д゚)「ははは、じゃあな、また今度遊びにこいよ。茶くらいは出してやるから」

そういってギコは病院の出口の方へ歩いていった。

944 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:43:12.71 ID:Irs+m+SX0
あの思い出の花を買った少女が来てから三日経った頃だろうか、いつものように店番をしていたらふと睡魔が襲ってきた。
(*゚ー゚)「ふわぁああ……」
と、大きなあくびをする。
どうせいつものように客なんて来ないだろう、寝たって構わないか。
そう思いカウンターに伏せて睡魔に身を任せた。
と――

「確かツンの言ってた花屋ってここだったよなぁ」

なぜか懐かしい声がした。
ただその声が実際に聞こえるのはありえない、と否定する。
なぜなら彼は都会にいるのだから。
ああこれは夢なのか。
ならばこの声が聞こえるのも納得がいく。

「すいません」

また懐かしい声がした。
正直この声を聞くと悲しくなってくる。
この声を聞けるのは夢の中だけで現実ではもう聞く事が出来ないかもしれないからだ。

「おーい。すいません。起きてますか?」

三度懐かしい声がした。
次声がしたらちょっと起きてみよう。
そしているはずのない彼に文句の一つでも言ってやろう。

( ,,゚Д゚)「ちょっといい加減起きたらどうだ」
(#゚−゚)「遅いわよ!」
私が顔をあげると、そこにはもう夢でしか会えないと思っていた彼が蜂蜜の瓶を持って立っていた。

945 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:43:28.30 ID:Irs+m+SX0
;゚ー゚)「ギ…ギコ君……?」
( ,,゚Д゚)「よ、よう。久しぶりだな」
(;゚ー゚)「ど、どうして…」
( ,,゚Д゚)「あ、いや…久しぶりにしぃの作った蜂蜜ジュースが飲みたくなってな」
そう言うと彼は自分の持っていた蜂蜜の瓶を私の前に差し出した。

(*;−;)「馬鹿っ!どうして今まで連絡くれなかったのよ!心配したじゃない!」
今まで抑えてきた感情が爆発する。それとともに目から涙が溢れてきた。
( ,,゚Д゚)「ごめん…。俺、本当に馬鹿だ。あんな阿呆らしい約束に拘ってて…」
彼は動揺していた。私が泣いていたからだろうか。
( ,,゚Д゚)「やっぱり俺、お前がいないと駄目だった。絶対に約束を果たすまで戻らないって思ってたけどやっぱり無理だった」
(*;−;)「ギコ君…」
( ;,゚Д゚)「だから……あの…その…」

やっぱり彼は変わっていなかった。肝心なところでいつも言葉に詰まる。

( ,,゚Д゚)「俺と、一緒にならないか?」

――でもそんな彼に少し安心もした。

946 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/08(木) 14:43:44.19 ID:Irs+m+SX0
( ;,゚Д゚)「し、しぃ!?」
ギコは驚いた。なぜならいきなりしぃが自分に抱きついてきたからだ。
(*;−;)「遅いわよ。どれだけ待ってたと思ってるの?」
( ,,゚Д゚)「ごめん…。何回謝っても許されることじゃないよな…」
(*;ー;)「でも…よかった。ギコ君全然変わってなくて」
( ,,゚Д゚)「そ…そうか?で、返事は…」
(*;ー;)「決まってるじゃない。勿論――」



そんな二人の傍には赤い花が二人を祝福せんとばかりに咲き誇っていた




ナデシコ――名前のとおりナデシコ科の植物。
開花時期は4月から10月と比較的長い時期に咲く花。
赤い花が美しく、大和撫子の語源にもなっているらしい。
花言葉は―――



テーマ: ――ξ゚听)ξと花束と蜂蜜と――  fin

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