730 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:17:34.41 ID:j9uNb7H30
んじゃ投下

お題:文才


――ここはとある高校の部室

('、`*川「ダメね。やり直し」

先輩のペニサスにそう言われて私――貞子は、
突き返された原稿用紙を受け取り、渋々自分の机へと戻った。

川д川「やっぱりダメかぁ・・・」

从'ー'从「元気出してよぉ〜、貞子さん〜」

後輩の渡辺さんが慰める。
今まで何度も彼女に癒されてきたことか。
私は頭をなでなでしてもらい、礼を言う。

川д川「ありがとう、渡辺さん」

从'ー'从「いえいえ、どういたしましてぇ〜」

734 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:21:03.85 ID:j9uNb7H30
('、`*川「それじゃ今日の活動はコレでおしまい。また明日ね」

その言葉がペニサスから発せられ、部員たち――と言っても3人だけだが――は
原稿用紙やらノートパソコンやらを片付け始める。

私は今、高校のクラブ活動でちょっとした物語を書いている。
いや、物語というには少し子供じみた内容。
“おはなし”とでも言うべきか。

从'ー'从「それじゃ、お先にです〜。また来週〜」

渡辺さんが手を振って部屋を出る。
私は会釈し、手を振る。

735 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:23:01.97 ID:j9uNb7H30
時刻はもう8時を過ぎている。
薄暗く頼りない街灯に照らされながらも、無事に家に着いた。

川д川「ただいまー」

玄関の扉を開いて帰りを告げる。

川 ゚ -゚)「お帰り。今日は早かったな」

同居人のクーが、料理を作って待っていた。

川д川「ごめんね、いつも」

川 ゚ -゚)「いや、気にするな。それより早く食べないと冷めてしまうぞ」

川д川「うん」

736 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:25:03.53 ID:j9uNb7H30
クーは高校からの友達だ。
困ったことがあったらいつも真剣に相談に乗ってくれる。

2ヶ月前から私たちは、文化祭で演劇部が演じるオムニバス形式の物語の一つを作っている。
それで私は、放課後からこんな時間までカンヅメ、というわけだ。
それを気遣ってくれたクーは、一時的に住み込みで、毎日私の家で夕食を作ってくれている。

私は、本当に彼女に感謝している。

川 ゚ -゚)「それじゃ、私は寝る。あまり徹夜するなよ」

川д川「ありがと。それじゃクー、おやすみ」

川 ゚ -゚)「ああ」

738 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:28:23.67 ID:j9uNb7H30
基本となる設定は、とある高校で起こったお話の数々。

ペニサス先輩の話は、ベタに恋愛モノ。
サッカー部の男子が、マネージャーに恋をする。

渡辺さんは、ほのぼの系。
同じ高校に通う姉妹の生活。

私は、熱血スポ根ドラマを書いていた。
野球部が甲子園を目指す・・・・・・・・・・・・



あれ?

739 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:30:35.77 ID:j9uNb7H30
今まで気づかなかった私が恥ずかしい。
文化祭で見せる演劇で、スポ根モノなんて最初から無理があった。
そんなものやったって時間的に無理だし、観客も誰も興味なんか向けない。
それに話のつながりが薄すぎる。

あああああああ、こんなものをペニサス先輩に提出し続けた私って・・・・・・。

ろくに考えもせずにこの話を見せてしまったペニサス先輩ゴメン・・・・・・。
そして、気づかずに落ち込んだ私を慰めてくれた渡辺さんゴメン・・・・・・。

川;д;川「最初から書き直そう。。。。。。。。」

ちょうど明日は土曜日。
徹夜したら、大筋の流れなら完成できるかもしれない。

川д川「ファイトー、貞子ー、オーッ」

夜ゆえあまり大声を出さず、自分にエールを送った。

740 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:32:30.83 ID:j9uNb7H30
恋愛モノのペニサス先輩。

ほのぼの路線の渡辺さん。

ならば私は、何が書けばいいだろうか・・・。

私はしばらく考えた。



・・・・・・・・・やっぱり、私にはコレしかない。

741 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:35:01.24 ID:j9uNb7H30
――1ヵ月半後・体育館ステージ

演劇部1「あれ・・・・・・、私どうなっちゃったの・・・?」

演劇部2「まぁ、可愛い猫さん」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

('、`*川「まったく、意表をついてあんなんとはねぇ・・・」

从'ー'从「貞子さんらしいです〜。ペニサス先輩もよくOK出しましたねぇ〜w」

('、`*川「・・・・・正直、面白かったわよ、その変な設定」

川д川「まさか、こうなるとは思いませんでした・・・・・・」

貞子のシナリオは実にぶっ飛んでいた。

742 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:37:14.96 ID:j9uNb7H30
とある高校の女子生徒が下校中、急に熱を出して倒れる。
目が覚めると、なんか背が低くなったような感覚。
不思議に思ってカーブミラーを見ると、猫になっていた・・・。

貞子が書いたのは、いわゆる“ファンタジーモノ”。

偶然にも、ペニサスと渡辺さんのストーリーにも猫が絡んでいるため、
勝手ながら使わせてもらった。

('、`*川「貞子ったら、ファンタジーモノを書く才能“だけ”はあるんだねぇ」

川;д川「ペニサス先輩、それちょっとひどいです・・・」

从'ー'从「あ、通し稽古するみたいですよ〜」

743 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:40:09.88 ID:j9uNb7H30
そして文化祭当日

三人のオムニバス形式の物語は大盛況。
吹奏楽部の演奏を上回る観客を誇った。

川;д川「エグッ、大成功で、ヒック、よかったです、ウェック」

('、;*川「何泣いてるのよ・・・。ま、確かにうまくいくかは分からなかったけどね」

从'ー'从「あれぇ〜?ペニサス先輩が泣いてるよ〜?」

('、;*川「!! ・・・・・・見たな?」

从'ー;从「ふぇぇぇぇぇ!今度は怒ってるよ〜!!」

744 お題:文才 New! 2006/06/07(水) 01:43:22.90 ID:j9uNb7H30
まぁ、なにはともあれ。
文化祭も演劇も大成功だった。
最初は、ファンタジーなんか受け入れられるのかと思ってた。
でも、ありがとう、とか、趣の違った演劇を見れた、みたいな感想がもらえてうれしかった。

私にも“ファンタジー小説家”の道が見えてきたかな?


帰ったらクーにご馳走しなきゃね。


―――――了

inserted by FC2 system