116 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/06/02(金) 00:21:53.55 ID:1sQR8cy40
ξ゚听)ξ「何よ、ちょっとぐらい覗いたっていいじゃない・・・」
そんな愚痴をポロリとこぼすツン。
その直前に彼女は母親にしかられたのだ。

小学4年生のツンの家には大きな倉庫がある。昔からあったのだろう、大きく、古びた高床式の倉庫だ。
そこに彼女は興味本位で入ろうとしたのだ。しかし、母親に見つかり、叱られた。
経緯はこんなところである。

ξ゚听)ξ「・・・ふーん、でもいいもーん」
彼女は一人、得意げに笑った。
ξ゚听)ξ「夜中、こっそり抜け出してやる・・・」
怖いもの知らず、好奇心旺盛・・・
子供とは、かくも恐ろしい存在だ。
・・・・・・
そして、彼女の待っていた夜が訪れる。
母親の「寝なさい」との言葉に元気よく返事し、彼女はベッドに潜り込んだ。
ξ゚听)ξ「絶対、起きててやるもんね・・・」
そんなことを、考えながら。

深夜、日付が変わった直後。
彼女はもそもそと布団から這い出し、用意してあった懐中電灯を手に取った。
ξ゚听)ξ「ふっふっふ・・・」
宵闇に一筋の光をつくり、彼女は足音を立てないように、ゆっくりと玄関に向かう・・・
そして、まんまと外に出ることに成功したのだ。
ξ゚听)ξ(よし、脱出成功!)
彼女は心の中でそう呟く。
そして、小走りで倉庫へと向かった。
・・・・・・

117 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/06/02(金) 00:22:40.19 ID:1sQR8cy40
おそるおそる、音を立てないように倉庫の扉を開く。
ξ゚听)ξ「・・・・・・」
そして彼女は、その中に足を踏み入れた。

中もやはり、真っ暗だった。
どこに何があるかなど見えるはずも無い。
ひんやりとした空気。古い、独特の匂いがする。
ξ゚听)ξ「うーん・・・」
彼女は懐中電灯で辺りを照らす。
色々なものがそこにはあった。
木箱や、筒状になっている掛け軸のようなもの・・・
ξ゚听)ξ「・・・・・・・・」
しかし一ついえることがある。
幼いツンが興味を示すようなものなど、何も無いということだ。
ξ゚听)ξ「なーんか、つまんないなあ・・・」
案の定、ツンはそう呟いた。
ξ゚听)ξ「・・・かーえろ」
投げやりな気分でそういった時
カタン、と。
小さな物音がした。
ξ゚听)ξ「・・・・・・?」
その音を辿り、彼女は奥へと進む。

118 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/06/02(金) 00:24:07.91 ID:1sQR8cy40
ξ゚听)ξ「・・・・・・!」
彼女は思わず、大声をあげそうになった。
照らし出されたのは、複数の和人形。着物を着た、ひな祭りでお目にかかるようなそれである。
大きさは、ツンのひざぐらいまでと結構大きいのだが。
しかしその程度ならば驚きもしない。
彼女の目の前の和人形は、動いていた。
ξ゚听)ξ「うそ・・・」
思わず、そう口走る。
その声に反応したのだろうか、
一体の人形が首を動かし、彼女を見上げた。
ξ゚听)ξ「・・・・・・・」
硬直するツン。
しかしその人形はすぐに彼女から視線を外し、歩き出した。
何をするのかと、ツンは成り行きを見守る。
と、いつの間にか
人形達は一列に並んで立っていた。
一瞬の静寂の後、彼らは突如、奇妙なステップを踏み始めたのだ。
ξ゚听)ξ「・・・ダンスしてるの・・・?」
それは舞などの和の踊りとはとても言えない、妖しげな踊りだった。

カタリ、カタリと、小さな音を立てながら彼らは踊る。
ξ゚听)ξ「・・・・・・・」
いつの間にかツンは、その踊りを見入ってしまっていた。
繰り広げられる人形劇。
それは、彼女に時を忘れさせるには十分すぎるものだった。

それ以来。
彼女は深夜になるとベッドを抜け出し、倉庫でその踊りを鑑賞するようになっていた。
その奇妙で、妖しげな踊りに彼女は引き込まれてしまったのだ。
そして、彼女が始めて人形劇を目撃してから、数日後のこと

119 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/06/02(金) 00:25:25.67 ID:1sQR8cy40
ξ゚听)ξ「・・・え?」
いつものように踊りを眺めていた彼女の耳に、どこからか、声が聞こえてきた。

お前も、一緒に、踊らないか
と。
見ると、人形達が彼女に手招きをしていた。
こっちに、おいでと。一緒に、踊ろうと。
その囁きに頷いて、彼女は人形達の輪に入る。
ξ゚听)ξ「どうやって踊ればいいの・・・?」
どうにでも、好きなように踊ってみよと。
人形達は口々にそう言った。
ξ゚听)ξ「うん・・・」
とりあえず、彼女は人形達の動きをまねてみることにした。

しかしその後すぐに
彼女の腕や、脚は勝手に、妙な踊りを作りはじめた。
ξ゚听)ξ「・・・・・・・」
人形達が、不気味に笑う。
ツンは一心不乱に踊り続けた。
そして彼女は、徐々に人間としての自分を失っていった。

まず、彼女は言葉を失くした。
ほらほら、どうした・・・もっと、華麗に踊れ・・・
人形のうちの一人がそんな言葉を口にしたとき、すでに彼女は聴覚も失くしていた。
反応を見せない彼女を見て、人形達はまた、笑った。
その時にはもう、視覚すらも失くしていた。
ξ゚听)ξ(あぁ・・・)
最後にツンは、心を失くした。
それでも彼女は踊り狂った。
奇妙に、妖しげに。

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