471 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/03(土) 04:04:36.96 ID:jsQqVuosO
キキーッ! グシャ!
 
「内臓はメチャクチャ、神経や血管はズタボロ…。このままでは──」
「心拍数低下! 脳波も弱まって──」
「……アレを移植するしかない。急げ」
 
内藤ホライゾン10歳───
彼は公園で遊んでいただけだった。日も傾き始めた頃、1羽の鳥が頭上を飛び去った。珍しい鳥だ。
彼は好奇心の赴くままに、その鳥を追いかけた。
そして目前に迫るトラック……。


472 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:05:36.27 ID:jsQqVuosO
身体が動かない…。痛い、痛いよ…。
このまま死んじゃうのかな…? 何も見えない、真っ暗だ。
誰かが話している。何だろう…?
 
『意識が戻りません…』
『この子は、もう──』
 
この子って、僕かな?
そうか…。やっぱり僕は死んじゃうんだ…。
ヤだな…。
 
《力が欲しいか!》
 
え? 力…?
 
《生きたければ手を伸ばせ!》
 
………。
……。
…。
 
生きたい! 力が欲しい!
 
《力が欲しければ──》
 
 
 
第一話(仮):発動

473 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:06:51.99 ID:jsQqVuosO
( ^ω^)「掃除だるいお…」
 
彼、内藤ホライゾンはVIP高校に通う、平凡な高校生だ。
今日は掃除当番の日。
内藤はサボりの常習犯である。
もともと怠け者な性格であるので、この日もサボって帰ろうとしていた。
しかし…
 
ξ#゚听)ξ「コラー! またサボる気でしょ!」
(;^ω^)「おっおっ、ツンだお。逃げるお!」
⊂二二二( ^ω^)二⊃ブーン
ξ#゚听)ξ「待ーちーなーさーい!」
( ^ω^)「ツンじゃ僕に追いつけないお〜。バイバイだお〜」
ξ;゚听)ξ「ハァハァ…ハァ…。逃げ足だけは速いんだから…」
 
彼女の名前はツン。
内藤とは幼馴染みであり、そのせいか先生に内藤の監視役のような仕事を任されていた。

474 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:07:32.55 ID:jsQqVuosO
だが内藤はあの性格である。
何か面倒な事があるとすぐに逃げだそうとするので苦労は絶えなかった。
 
端から見れば損な役回りではあるが─実際に損な役回りではあるが─ツンはそれほど嫌だとは思っていなかった。
それは彼女が密かに内藤へ思いを寄せているからだった。
それは内藤も然りであるのは周知の事実。
しかし彼女の性格からして告白などできる訳もなく、現在までただの幼馴染みとして通していた。
このような事は時間が解決してくれるだろう。
この日々が続くのであれば…。

475 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:08:58.28 ID:jsQqVuosO
J('ー`)し「ホライゾン、買い物に行ってきておくれ」
( ^ω^)「だが断る」
 
ゲームに夢中になっている彼は素っ気ない返事で応答した。
 
J('ー`)し「困ったねぇ…。これじゃあご飯が作れないよ。今晩はご飯なしでいいかい?」
(;^ω^)「それは困るお…」
J('ー`)し「なら行ってきておくれ」
(;^ω^)「わかったお…」
 
面倒な事が大嫌いではあるが、食い意地だけは人一倍な彼は渋々家を出る。
外はもう薄暗くなっていた。 
その闇と同化するように身を隠す者がいる事を、内藤は知る由もなかった。
 
 
「ありがとうございましたー」
 
スーパーで買い物を済ませ、ノロノロと歩いて公園に差し掛かった。
この公園はなかなかに広く、町民の憩いの場となっている。
ここを横切れば近道になるので、当然足を踏み入れた。
 
「ターゲットを確認した。これより作戦を実行する」
「了解。迅速に済ませろ」


476 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:10:39.41 ID:jsQqVuosO
( ^ω^)「帰ったらゲームの続き──お?」
 
内藤の前に数人の男が立ちはだかる。
どうやら茂みに隠れていたらしい。
後ろを振り向くと、そこにも数人の男が。
 
(;^ω^)「な、なんだお?」
「捕らえろ」
 
男達はジリジリと距離を詰め、今にも内藤を捕縛しようと迫る。
 
──数分前

ξ;゚听)ξ「いっちに、いっちに…」
ξ゚听)ξ(あら…? あれブーンじゃないの?)
 
ジョギングをしていたツンが公園の脇を通った時、内藤の姿を発見した。
 
ξ゚ー゚)ξ(ちょっと脅かしてやろうかしら)
 
ツンは息を整えながら慎重に公園に侵入した。

477 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:11:48.58 ID:jsQqVuosO
(;^ω^)「ちょ、来んなお!」
 
男達が内藤を掴もうとした時、その中の一人の男が倒れた。
それを成したのは、身の危険を感じた内藤の拳である。
この拳は何故か非常に頑丈である為、100%の力で打ち込む事ができる。
流石に高校生ともなれば筋力は成熟しているので、その一撃を食らった男は腹を押さえて蹲った。
そしてその隙を縫って内藤は買い物袋を放り出して駆け出した。
走ってしまえば自分に追いつける者などいない。
内藤には自信があった。
 
「何をやっている! 追え!」
 
彼の思惑通り、追いつける者はいなかった。
公園を抜けて交番に駆け込む。
それで終わりだ。
出口まであと30mもない。もう少しで脱出できる。
そう思われたが、出口を固めるようにまた数人の男が現れ、向かってくる。
内藤は速度を緩めない。
勢いはそのままに飛び蹴りを放つ。
蹴られた男は派手に転がり、道が開けた。
これでもう自分を止める者はいないと思われた。
だが…
 
『キャー!』
 
女の悲鳴が響いた。

478 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:13:31.23 ID:jsQqVuosO
「止まれ内藤ホライゾン。この女がどうなってもいいのか?」
ξ;゚听)ξ「ブーン…」
(;゚ω゚)「つ、ツン!?」
「知り合いか? ならば都合がいい。女の命が惜しければ我々に従え」
ξ;゚д゚)ξ「ひっ…!」
 
男は幅広のナイフをツンの首もとに押しつけて言う。
 
ξ;;)ξ「助けて…」
(;`ω´)「ツンに手を出したら許さないお!」
「ならば我々と来てもらおうか」
 
今は従ったほうが賢明に思えた。
ブーンは両脇を固められて連行される。ツンも一緒に。
そしてワゴンに乗せられた。
 
ξ;;)ξ「ヒック…ヒック…私達、どうなっちゃうの…?」
(;^ω^)「分からないお…」
「喋るな」
(#`ω´)「………」
 
どれくらいの時間が経っただろうか。
車内にはツンの嗚咽だけがこだましていたが、停車した途端にドアが開けられる。
目的地に着いたらしい。
 
「降りろ」
(#`ω´)「………」
ξ;д;)ξ「ヒック…うぅ…」
「来い」

479 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:14:24.59 ID:jsQqVuosO
廃工場だろうか。
男はその中へ内藤とツンを導く。
ツンが人質にされているので下手な動きはとれない。
男に言われるまま、内藤は工場へと入っていった。
 
 
「お待たせしました」
 
工場の奥には腕に武骨な何か──そう、何かだ。
肩までを覆い、時折機械音を発している物を着けた男が立っていた。
 
「ンンー? 5分の遅刻ですね。私が時間に細かい事は知っているはずです」
「そ、それは…ターゲットが思いの他すばしっこくて…」
「言い訳ですか。
時間を守らない者は…わかってますね?」
 
男の腕から極細のワイヤーが飛び出す。
それはブーンを連行した男に絡み付き、そして───
 
(;゚ω゚)「……!」
 
バラバラになった肉片を踏み付けながら男は近付く。
 
「申し遅れました。私は──そうですね、仲間のには、私の武器にちなんで『スパイダー』と呼ばれています」
 
スパイダーは軽く自己紹介をした後、4人を肉片へと変えた。
1分につき一人、という訳らしい。

480 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:15:32.12 ID:jsQqVuosO
(;`ω´)「お前達はなんなんだお…? 何が目的なんだお」
 
ツンは完全に怯え切って声も出せない様子だったが、内藤はどうにか声を絞り出す。
 
「ふむ…。何も知らずに連れて行かれるのも不憫でしょう」
 
スパイダーは語り出した。
 
「組織が私に与えたは指令はあなた達ARMSを捕らえるという事だけです。
それ以外は知りませんね」
(;`ω´)「あーむず…?」
「その腕に仕込まれた究極兵器の事ですが…もしやまだ発動させていないのですか?」 
訳が分からない。
そこで内藤は話を変える。
 
(;`ω´)「こんな事をして、いいと思ってるのかお!? 今に警察に捕まるお!」
「警察も、私達ウンエイには手出しできませんよ。ウンエイにかかれば隠蔽などたやすい事です」
 
もしそれが本当なら治安を守る組織が、犯罪組織と繋っていることになる。
スパイダーは嘘を言っているのだろうか。
だが彼の様子からはとても嘘には見えなかった。
 
「さて…。そこの少女はあなたを捕縛する為にさらったのですね?」
 
スパイダーが問い掛けると、部下である男達はビクビクしながら答える。
 
「は、はい」
「ではもう用はありません。始末しなさい」

481 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:16:32.56 ID:jsQqVuosO
(;`ω´);;)ξ「!!!」
 
多少ためらったようだが、スパイダーが目を細めると男達は決意を固めたようで、銃を抜くとツンに銃口を向けた。
 
ξ;;)ξ「い、いや…」
(#`ω´)「おおおおおおおおお!!!!!!!!!」
 
内藤が動いた。
人質があれば何もしないだろうと、内藤は拘束しなかったのが裏目に出たようだ。
銃を構えた男は内藤のタックルを食らって倒れ込む。
その際に誤射した弾丸が不運な仲間に突き刺さった。
 
(;`ω´)「ツンに手を出したら許さないと言ったお!」
 
内藤は限界まで声を張り上げて叫ぶ。
しかし───
 
(;`ω´)「……ッ!」
ξ;;)ξ「ブーン…!」
 
数回銃声が轟いたと思えば、その弾丸は内藤の腹を貫いていた。
膝を付き、やがて倒れる内藤。
泣き崩れるツン。
 
「貴様ッ! なぜ撃った!」
「あ、あいつが暴れるから…」

482 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:17:48.95 ID:jsQqVuosO
男達は口々に怒号を飛ばす。
気がつけば引き金を引いた男達の前にスパイダーがたたずんでいた。
 
「ひぃ! 命だけは…」
「…ARMSの移植者はあれくらいでは死なないと聞きます。
しかし勝手な行動をした者にはお仕置が必要ですね」
 
言い終えた瞬間、スパイダーの両腕からワイヤーが飛び出し、男の腕に絡みついた。
鮮やかな切断面から大量の鮮血が迸り、床を朱に染めた。
 
ショックで意識を失なった男を余所に、再びツンを殺害する命令を出す。

484 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:19:15.11 ID:jsQqVuosO
( ω )(身体が動かないお…。ツン…ごめんお……)
 
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
 
 
 
《力が欲しいか!?》
 
 
「早く始末して彼を運びますよ」
 
ξ;;)ξ「あ…あ……」
 
 
《力が欲しいのなら……》
 
 
「悪いな嬢ちゃん」
( ω )(ツン…)
 
 
《く れ て や る ! ! !》
 
 


485 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:20:14.32 ID:jsQqVuosO
「ギャアアアアアアア!!!!!!!」
 
工場全体に響き渡るような悲鳴。
その声で内藤は目を覚ました。
驚く事に、腹に開いた傷は完治している。
しかしそれ以上に内藤を驚かせた事、それは───
 
(;゚ω゚)「……なんだお、この腕…」
 
内藤は絶句しそうになった。
彼の“腕”が伸び、悍ましい形へと変形しているのだ。
その腕は自分の意思とは無関係に暴れ回り、男達を掃討していく。
 
「これがARMS…。実物を見るのは初めてですね…」
 
スパイダーは震えているが、口元は笑っている。
武者震いなのだろう。
 
「相手にとって不足はありません。私とARMS、どちらが優れているか…勝負です!」
 
スパイダーは天井のパイプにワイヤーを伸ばし、上空へと舞い上がる。
切断されない事から、攻撃用のワイヤーではないらしい。
 
(;゚ω゚)「うおおおお!!!!!! 止まれおーーー!!!!!!」
 
内藤は暴れ回る“腕”を相手に苦戦していた。
壁やコンテナの破壊を続ける“腕”。
既に生き残っているのはスパイダーとツンだけだった。

対するスパイダーはパイプからパイプへとワイヤーを飛ばして高速で移動する。

486 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:21:41.06 ID:jsQqVuosO
「どうやら制御はできていないようですね!」
 
上から伸びたワイヤーが内藤の“腕”に絡み付いた。
そして切断。
血は出なかった。
 
(;゚ω゚)「……!?」
 
断面が蠢く。
そして盛り上がり、瞬時に新たな“腕”が誕生した。
それはスパイダーを敵とみなしたのかは不明だが、今度は一直線にスパイダーへと伸びる。
 
「…凄まじい再生能力ですね」
 
呟きながらワイヤーを使って移動し、“腕”をかわす。
少し焦りが見え始めた。
 
「…生きたままの捕縛は困難です。殺してあげますよ!」
 
ワイヤーが内藤の首に伸びた。しかしワイヤーは首に絡み付くことはなかった。
内藤の“腕”が即座に方向を変え、爪がワイヤーを切り裂いたのだ。
引っ張られ、落下するスパイダー。
その際にもう一度“腕”を切断しようとワイヤーを発射したが、それは“腕”に食い込むだけで終わった。

488 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:23:04.74 ID:jsQqVuosO
「な…っ!」
 
硬度を増した“腕”は、スパイダーを引き寄せる。
そしてワイヤーの発射装置を掴むと引き千切った。
 
「ぐがあああああああ!!!!!!!!!!」
 
肩から腕をもがれ、絶叫するスパイダー。
そしてもう片方の腕も引き裂かれてしまった。
 
おびただしい量の血を吹き出しながら這っていた所に、爪が迫る。
 
「ARMS…!」
 
そして頭を掴むと、紙細工を潰すかのように握り潰してしまった。
 
(;゚ω゚)「ハァ……ハァ……」
 
これで止まる、そう思ったのも束の間、再び暴走を始めた。
 
(;゚ω゚)「どうやったら止まるんだおおおお!?」
 
辺りには破壊する物は、一つを除いてもうない。
それは隅でうずくまりながらガタガタと震えていた。
ツンに迫る“腕”。


489 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:24:54.07 ID:jsQqVuosO
( ;ω;)「もうやめてくれおおおおお!!!!!!!」
 
この時内藤は心の底からそれを願った。
その人は、その人だけは殺してはいけないと。
もし、止まってくれるならどんな事でもする決意までした。
 
ξ;;)ξ「いやぁーーーーーーっ!!!!!!」
 
───“ARMS”は、ツンを切り裂く寸前で止まり、徐々に元に戻っていった。
 
ξ;;)ξ「あぁぅ…」
( ;ω;)「おおお……」
 
二人は無言で涙を流す。
突如巻き込まれた非現実的な世界。
言葉を失うのも無理はなかった。
 
……………………………………………………………………………………………………………………………………
 
 
それからしばらく時間が流れた。
二人は落ち着き、状況を把握しようと努めるが、理解できそうもない。


490 ARMS New! 2006/06/03(土) 04:25:29.17 ID:jsQqVuosO
ξ;;)ξ「終わったの…?」
( ;ω;)「………」
 
終わり。
それは何を指すのだろうか。
 
この、平和で穏やかな日常の終わりである事を、近い内に思い知るだろう。
それを二人は受け入れていかなければならない。
生きる為に─────
          終
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