396 雨、後悔 ◆G9McmyiQYQ New! 2006/06/01(木) 14:40:23.07 ID:7ymaxA9M0
雨、後悔

私立VIP小/中/高は家の近くって設定でwww





今日も、雨。
それもどしゃ降りの。

( ^ω^)「・・・なんだか切ないお」

内藤は窓から、雨が降る様子をただじっと見つめていた。大きな窓の前に体育座りをして、窓枠から滴る雨の雫や花開き始めた紫陽花に時々目線を移しながら。
雨が降ってくる空を、ただ見つめていた。

そういえば、もうすぐで彼奴が死んでから1年になる。
内藤には人数こそは少ないものの、内藤をいつも励ましてくれる友達がいる。その中でもドクオとショボンは小学校の時からずっと一緒で、とても大事な内藤の友達だ。
しかしそのドクオは、1年前に内藤の前から居なくなってしまったのだ。
今でも蘇る記憶。

ドクオの部屋、返り血まみれのドクオの父親、そして死後硬直で指先を震わせるいつも以上に血の気の無いドクオ自身。
そして、まるでドクオの死を悲しむかのように降り出した雨。

( ^ω^)「ドクオ・・・会いたいお・・」

内藤は目を閉じて膝元に顔を伏せ、仕舞ったはずの幼い頃の記憶を引き出した。ドクオとショボンと、3人で過ごした日々を。




397 雨、後悔 ◆G9McmyiQYQ New! 2006/06/01(木) 14:41:48.32 ID:7ymaxA9M0
やべぇトリ違ってるけど.>>395>>396だからww



( ^ω^)「カーチャン、学校いってくるお!」

今日は内藤の入学する、私立VIP小学校の初の登校日。
内藤の家は決してゆとりがあるとはいえなかったが、親は大人になった時苦労しないように、と内藤を受験させた。結果は見事合格。
自分を待っている新しい友達、新しい先生。充実した日常生活を思い描きながら、内藤は覚えたばかりの道をブーンしながら学校へ向かった。

( ^ω^)「ぶんぶぶーん♪」

内藤はこの頃からブーンするのが好きだった。ブーンすると空を飛んでいる気分になれるのだ。ブーンばかりしていた故、幼稚園ではブーンと呼ばれるようになった。
特に雨の日のブーンが大好きだった。雨を全身に浴びながら手を広げ走る。
冬だとさすがに寒くて出来ないが、夏は最高だった。
雨を浴びると酸性雨がどうとかでハゲるといわれているが、そんなの気にしない。
今が楽しければいいのだ。この考えは内藤の長所でもあり短所でもあった。

( ^ω^)「ぶんぶ・・お?」

時々風に乗せられてやってくる桜の花びらを掴み取りはしゃぎながら、前を見るとそこには痩せ細った、少し暗そうな男の子がいた。
ランドセルの横に黄色い名札をつけていることからして、内藤と同じ1年生のようだ。

( ^ω^)「声かけてみるお!友達100人作るお」

友達100人できるかな〜♪と歌いその男の子に歩調をあわせ、隣を歩いた。少し男の子は怪訝そうな顔をしている。

( ^ω^)「おはお!!!君も1年生だお?」

('A`)「そうだけど・・」

398 雨、後悔 ◆cB20bjsB8w New! 2006/06/01(木) 14:42:24.10 ID:7ymaxA9M0

( ^ω^)「内藤ホライゾンだお!ブーンと呼んでくれお!!」

男の子に話しかけ、勝手に自己紹介をすると男の子は更に怪訝そうな顔をしたが内藤は気にならなかった。というよりも気づいてなかったのかもしれない。
男の子は面倒くさそうに、しかもいかにも怪訝そうに内藤を見た。
そして、「オレはドクオ」とだけ呟いた。

( ^ω^)「ドクオ!!!!今日からよろすくだお」

('A`)「ああ、はいはいよろしく」

はじめて出来た、同じ学校の友達。内藤はただ嬉しかった。
ドクオの手を勝手にとり、ブーンを強制的にさせるとドクオはその青ざめた顔を歪めたが、一瞬笑顔を見せた。

( ^ω^)「ブーーーーーーーーーーン!!!」

('A`)「ちょwwww早ぇよww」

内藤とドクオは、ブーンしながら互いの事を話した。6歳で、ポケモンが好きで、家は金持ちの方ではない。
6歳ということはともかく二つも共通点があった。内藤は子供ながらにドクオは悪い奴ではない。そう感じ取った。

( ^ω^)「もうすぐで校門だお!!肛門じゃないお!!!!」

('A`)「ハアハア・・・」

まだ登校時刻の40分前のせいか、誰も歩いていない道を内藤たちは走り抜けた。
時折通行人が微笑ましく内藤たちを見ている。内藤は疲れてスピードの落ちたドクオを半ば引き擦りながら校門を目指した。

案の定、校門の前には教員が立っていた。片方はガッチリとした身体つきの先生、隣には眼鏡をかけた細い先生。
内藤たちは校門の前で立ち止まり、先生に挨拶をした。

400 雨、後悔 ◆cB20bjsB8w New! 2006/06/01(木) 14:43:13.67 ID:7ymaxA9M0


( ^ω^)「おはようございますお!!」

先生「元気がいいねwwwおはよう」

('A`)「お・・ハアハア・・うござい・・・ま・・」

ドクオは息を切らしてその場にしゃがみ込んだ。どうやら体力は余りないようだ。
しかしドクオの表情には笑顔が見えた。


これがドクオとの出会い。

ポケモンの話や、ケロロ軍曹の話で盛り上がり、毎日ブーンしながら一緒に登校。
ドクオとはクラスで一番仲良くなれた。
そして4ヶ月くらいして、ショボンとも仲良くなった。

それから中学に進学して、ジョルジュをくわえて四人でつるむようになった。
イジメも大してなく、毎日エロゲの話や包茎について、そして未知の茂みの世界について毎日語り合った。ドクオと過ごす時間は、楽しかった。

しかしこの頃からだろうか。ドクオが時々頬を腫らしてくるようになったのは。

( ^ω^)「ドクオ、そのほっぺどうしたお?」

(´・ω・`)「誰かにやられたのか?」



401 雨、後悔 ◆cB20bjsB8w New! 2006/06/01(木) 14:45:46.53 ID:7ymaxA9M0
(´・ω・`)「誰かにやられたのか?」

内藤もショボンも何度も聞いた。しかしドクオが答えることは無かった。階段から落ちただの、電柱にぶつかっただのと言って。
もしこの頃詳しく、しつこく聞いていればもしかしたらドクオはあんな事にならなかったのかもしれない。

ドクオを、助けられたかもしれない。


月日が経つにつれますますドクオは痣や傷跡を増やしていった。しかしドクオも言おうとしなかったし、内藤といる時はとても楽しそうだったので大して気にしていなかった。
どうせまたヘマをやって階段から転んだのだろう、それで解決してしまっていた。
ドクオが 父親から暴力 を受けていたなんて、
思いもしなかった。








そして、あの日。
ドクオはここ3日学校を休んでいた。小学校のときから無遅刻無欠席だったドクオが。
ショボンと内藤は、ドクオの家に訪ねてみることにした。
道はうろ覚えだ。ドクオは家に内藤たちを呼ぼうとしなかった。なので2回くらいしかドクオの家にいったことがない。
なぜ呼ぼうとしなかったのか解らなかったが、部屋が汚いとかそんな理由だろう、と内藤は思っていた。


403 雨、後悔 ◆cB20bjsB8w New! 2006/06/01(木) 14:50:27.50 ID:7ymaxA9M0

ピンポーン・・・


( ^ω^)「ドクオー!!!居ないのかお?」

ドクオの家は新築だ。ドクオが話すことはなかったが、建て替えたらしいと噂できいた。
インターホンを、押す。しかし誰からも反応は無い。
何度も押すが、反応は無かった。

内藤はこの時、胸騒ぎを覚えた。しかしなぜ胸騒ぎを覚えたのか解らなかった。

(´・ω・`)「鍵があいてる、中に入ってみよう」

どうやらショボンも胸騒ぎを覚えたようだ。真新しいドアノブを引くと、ドアは開いた。
玄関のすぐ前には階段があった。


2階から、物音と言い争う声が聞こえる。


( ^ω^)「ドクオの声だお」

内藤たちは少し急な階段をあがった。



('A`)「うわあああああああああああああああ」



404 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/06/01(木) 14:52:25.76 ID:7ymaxA9M0
部屋は血で赤く染まっていた。
そして、腹に包丁を突き刺されているドクオ、指先は震えてる。それは死後硬直によるものだと、後から解った。


ドクオの横に立っているのは、ドクオの父親。

真っ白なTシャツは、ドクオの血で染まっていた。

(;^ω^)「ドクオ!!!!!!!」







( うω;)「ドクオ・・・」

内藤は今、泣いていた。
あの時気づいていたら、と後悔しながら。

( ^ω^)('∀`)(´・ω・`)( ゚∀゚)

4人で撮った写真を手に取り、自分より一回りも小さな写真の中のドクオの身体に、指先で触れて。涙を写真に零して。

雨は気付くとあがっていた。
雲の裂け目から見える青空を眺めると、ドクオがブーンをしながら空を飛んでいるように見えた。

おわり


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