358 無色 New! 2006/06/01(木) 07:47:31.07 ID:AT7r5SiA0
( ゚∀゚)「ショボン、お前にいいものやるよ」
(´・ω・`)「何? ……薬?」
( ゚∀゚)「世界が全部無色に見える薬だ。すごいだろ」
(´・ω・`)「カプセルにDHCって書いてあるけど?」
( ゚∀゚)「ド変態ちゃんの略だ」
(´・ω・`)「フォローになってないよ……。まぁサプリメントは好きだからいいけどね」


 あの時飲んだ薬の所為なのか、それは定かではないが、とにかく朝起きた時の衝撃と言ったら
なかった。何度、目を擦ったかは分からない。まるで夢の続きみたいだが、部屋の色が明らかに
少なくなっていたのだ。例えばそう、水色だったはずのカーテンは青に、僕のお気に入りの青紫色
の枕カバーも同じ青色になっていたのだ。まるでチューブから出した絵の具をそのままカンバスに
塗りたくったような青色に。
 とりあえず落ち着いて部屋の色の数を数えてみた。それにしても原色だらけの景色は目が痛くな
ってくる。まるで自分がカートゥーンの世界に入り込んだようだ。

(´・ω・`)「赤、青、黄、白、黒……五色か……」

 しかし数えたところで何が変わるわけでもなく、ようやく動き始めた頭で部屋のカーテンを開けると、
外の世界はよりバイオレンスだった。真っ白な道路の上を真っ赤な人間が走って、黒い鳥が飛ぶ青
い空には黄色い太陽が浮かんでいた。

(´・ω・`)「悪夢だ……」

 耐え切れずにカーテンを閉めなおして、僕はもう一度布団の中に潜った。途中母親の声が聞こえた
ような気がしたが、僕は頑なに夢の世界から離れようとはしなかった。

359 無色 New! 2006/06/01(木) 07:48:22.60 ID:AT7r5SiA0
 気が付くと部屋の温度がいつもより少し暖かかった。どうやらしばらくの間寝ていたようだった。ぼん
やりとした視界が段々とクリアになっていく中で、僕が目にした世界は悲しいことに更にその色を失っ
ていた。

(´・ω・`;)「ま、まるっきり白黒じゃないか」

 さっきまであんなに自己主張が激しかった部屋の家具たちが、しん、と沈まりかえってひどく無機質
に感じられた。一体何の冗談なんだろうか、僕の目は一体どうなってしまったのか。急に現実が襲い
掛かってきた気がして僕は慌てて階段を駆け下りて居間へと向かった。

(´・ω・`)「母さ――」

 そう口を開いた瞬間、僕の世界から、色が消えた。そこは白い世界だった。ゆらゆらと揺れるように
何かと何かの境界線を感じ取ることは出来たが、そこには勿論色はなかった。ただ感じるだけの世界。
 そんな真っ白な闇の向こうから母さんの声が聞こえてきた。

「ショボン!? あぁ、助けて……」
(´・ω・`;)「母さん!? 何があったの?」

360 無色 New! 2006/06/01(木) 07:49:09.06 ID:AT7r5SiA0
 ほとんど手探りの状態で僕は母さんの声のする方へと足を運んだ。けれどもまるで見えない。母さん
がどこに居るのか全く分からない。

     「助けて……血が止まらないの……」
(´・ω・`;)「怪我をしてるの!? ねぇ! 母さん!」

 やっとの思いで母さんと思わしき暖かいものに触れることが出来た。けれども、見えなかった。僕には、
母さんの流している血が見えなかった。このままじゃ全く母さんを助けることなど出来やしない。

(´・ω・`;)「あぁ! もう何なんだよ! いい加減にしてくれ! なんで見えないんだよ!」
     「……そうか、見えないのか」
(´・ω・`)「……え?」

 一瞬母さんと違う声が聞こえ、そしてその後僕は無色の世界をゴロゴロと転がった――様な気がした。



−終−


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