571 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/30(火) 02:20:21.48 ID:XZ1j8r+pO
―地表から地面を潜ること約50メートル。
世の中が眠りに着いているであろう時間に、異様な熱気に包まれている空間があった。

それは単なるレストラン。ただ一つ、明らかに普通のレストランと違うのは中央にぽっかり開いた空間に八角形の檻があること。


572 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/30(火) 02:21:04.42 ID:XZ1j8r+pO
客席は全て埋まって、檻の中で繰り広げられる光景に皆、瞳を奪われている。

そこにあるのは残虐などという言葉では足りないくらいのあるまでの暴力と充満する血の匂い。

全身を血で染めた二頭の魔獣の饗宴。

数メートルを隔てた客席まで届く血の匂いを嗅いだ数人の客が隠し切れずに正体を現す。
…ある者は狼の顔に、またある者は尖った牙を突き出し檻の中の惨劇に見惚れている。
客は全て、人間ではないようだった。


( ^ω^)「やっと…ここまで来たお」
レストランと檻を一望できる高さに作られた選手用の控え室の窓の前に立ちながらブーンは一人呟いた。
「この中に奴はいるお。必ず見つけだして…」

…殺ス。

573 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/30(火) 02:21:43.87 ID:XZ1j8r+pO
眼下では死合が終わったようだ。敗者は即座に首を撥ねられている。
あの死合が終わったなら次は自分の番。あいつは出てくるだろうか…?
心が虚ろに過去を彷徨い出した頃ためらいがちにドアがノックされた。

−コンコン

( ^ω^)「誰だお?」
返事を聞かなくてもわかる。僕のサポーターのクーだ。
−ガチャ

川゚-゚)「ブーン、いよいよ出番だ」
( ^ω^)「わかったお。すぐ行くお」

真っ暗な通路を二人は並んで歩く。途中会話等は無いがクーはブーンの体から殺気が満ち溢れているのが感じられた。

しばらく歩くと向こうが明るくなっていて選手用ゲートが見えた。
ゲートをくぐる寸前、ブーンは懐から取り出した錠剤を口に放り込み、一気に噛み砕く。
川゚-゚)「わかってはいると思うが…10分だぞ?」

ドクン!と一度大きく体が震えるがブーンは気にすることもなくクーから顔を背けて告げた。

( ゜ω゜)「今夜が奴の眠れない夜の始まりだお」

574 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/30(火) 02:22:20.84 ID:XZ1j8r+pO
ゲートをくぐり抜け檻までの細長い道を歩くブーンに好奇の視線が降り注ぐ。

それも当然か、とブーンは心の中で呟く。彼らは食事を楽しみながら選手のどちらが勝つか賭事をしている。

つまりこの道はさながらパドックといったところか。
そしてブーンは彼らを騒がせる理由をもう一つ持っている。
「ニンゲン…?」
「あれは人間か?」

( ゜ω゜)「ただの人間とは思わんで欲しいもんだお」
言うや否やブーンの全身から角と毛が爆発的に伸び、顔が一気に獣に近づく。その顔はさながら雄々しい牡牛だった。

レストランの最上部。他人の一切入れない支配人室に彼はいた。
(,゚Д゚)「あれはライカン…?まだ存在したのか?」

狭い檻の中、ブーンは相手と向かい合う。自分より明らかに倍は大きい相手だ。負けたら、死。
不思議と緊張はない。
( ゜ω゜)「あまりに…慣れ過ぎたかも知れないお」
…しかし今は好都合、か。

鐘の鳴る音が響く。


ブーンの復讐が始まったようです。

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