431 ペニサスの憂欝とコーヒー New! 2006/05/29(月) 21:53:42.78 ID:SRcIDeU7O
('、`*川「ふぅ……」

一体これで何度目のため息だろうか、もはや自分でも数えきれない。
この憂欝の原因は判っている。
新しく入ってきた、あの子だ。

控えめな仕草に俯き気味の顔。
暗くて、ぼそぼそとした喋り方。
――その全てが私の神経を逆撫でする。

喫茶店の窓から見える景色は、私の心象風景。
……土砂降り。

(´・ω・`)「どうぞ。
このコーヒーはサービスだから飲んでほしい」

私のテーブルに、湯気立つ店長特製のブレンドコーヒーが置かれた。


432 ペニサスの憂欝とコーヒー New! 2006/05/29(月) 21:55:10.29 ID:SRcIDeU7O
どこまでも深く苦い漆黒を薄めようと、輝く純白に甘い粉雪に手を伸ばしたが、やめた。

(;、;川「……苦い」

口の中に広がるコーヒー本来の味は、とても苦い。
苦すぎて、涙が出そうだ。

(´・ω・`)「人生は、コーヒーと一緒さ」

唐突に、マスターが語りだした。
私は無言で耳を傾ける。

(´・ω・`)「人生は、苦い。
だから人はコーヒーに友人とか、趣味を入れて味を誤魔化そうとする。
それもいけない事じゃあ無いさ。
ただ、あんまり人生に砂糖やミルクを入れてちゃ、人生本来の味が、わからなくなってしまう」

なるほど。
私は今、人生の苦みを味わっている訳か。


433 ペニサスの憂欝とコーヒー New! 2006/05/29(月) 21:56:25.37 ID:SRcIDeU7O
(´・ω・`)「今、君はコーヒーに何も入れずに飲んだ。
苦い事は知っていたのに、あえて飲んだ。
つまり……」

('、`*川「つまり?」

何時の間にか、カップの中身は、私に飲み干されていた。

(´・ω・`)「人生の本当の旨さを、知ろうとしたのさ」

――少し、喋りすぎたかな。
そう言って、店長は私のテーブルから離れた。

雨はあがり、雲の切れ間から差し込む陽光が眩しい。

私の心象風景。

終わり


inserted by FC2 system