566 ( ^ω^)が歌うようです New! 2006/05/25(木) 19:20:43.66 ID:q9YnhBpIO
一人暮らしを始めて、もうすぐ一ヵ月経つ。
初めは仕事や家事に追われ、自由な時間がなかった。
でも、『一人暮らしをしている』という雰囲気だけで満足だった。

(´ω`)「せっかく休みが貰えたのに暇過ぎるお」

しかし、仕事に慣れ、少しづつ自由な時間ができて、ふと寂しいと感じてしまった。
ゲームを買おうにも、稼いだお金は全て生活費に消えた為無い。
親元を離れ、遠くに引っ越して来た為友達がいない。

(´ω`)「可愛いおにゃのこと付き合いたいお」

もちろん、彼女も居るはずがなかった。
がっくりと肩を落とし、せめて気を紛らわせようと、外に出ることにした。

567 ( ^ω^)が歌うようです New! 2006/05/25(木) 19:21:43.03 ID:q9YnhBpIO
星が綺麗で、地元でよく見た空と似ている。風はとても冷たく、身を突き刺すようだった。
しかし、彼はそんなことも気にせず、空を見上げ続けた。

( ;ω;)「家に帰りたいお」

気付けば、彼は涙を流していた。
『絶対に夢を叶えるまで帰らない』
そう言って家を飛び出したのに、たった一月で心が揺らいだ。
見知らぬ土地に一人。それは、彼でなくとも辛いだろう。

( ^ω^)「こんな時は歌を歌うお!」

突然思い付き、何処へ行くとも決めず、ゆっくりと歩きだした。
歩く途中、数組のカップルを見た。皆同じように腕を絡ませ、寄り添って歩く。
しかし、彼は構わず歩き続る。

( ^ω^)「お?あそこなんかいいかもしれないお」

小さな公園を見つけ、そこのベンチに腰掛けた。
備え付けの時計を見上げると、今は午後11時30分。

( ^ω^)「もうこんな時間かお」
( ^ω^)「でも、今日くらいなら歌っても大丈夫なはず」

自問自答をして、一息つく。口を開けて発声練習をする。

568 ( ^ω^)が歌うようです New! 2006/05/25(木) 19:23:31.77 ID:q9YnhBpIO
5分ほどして、やっと喉が暖まったのか、少し空を見上げながら歌いだす。

( ^ω^)「自分勝手に思い込ん〜で♪裏目に〜出る〜こと〜♪」

初めは控えめに歌っていたが、集中しすぎた為か、周りを気にせず熱唱していた。

( ^ω^)「ひとりじゃない〜♪」

さほど上手くない、彼の歌が響き渡る。
たまたま近くを通りかかった人達は、そんなことも気にせず過ぎ去ってゆく。
程なくして、一曲歌い終わった。

「とてもよかったよ!」

ぱちぱちと拍手をしながら、若い男性が近付いてきた。
彼は、「聞かれてしまっていたのか」と恥ずかしがりながら、声をかけてくれた男性に会釈をした。

「突然ごめんね。君もDEENが好きなのかい?」

570 ( ^ω^)が歌うようです New! 2006/05/25(木) 19:25:25.88 ID:q9YnhBpIO
( ^ω^)「そうだお。君もかお?」

彼は、話が共有できる相手ができたのが嬉しかったのか、隣に座るよう促した。

「もうすぐ年が明けるけど、何か予定はある?」
( ^ω^)「最近引っ越してきたから、まだ友達がいないんだお」
「僕もそうなんだ。ねぇ、他の曲も歌ってもらえるかな?」

彼は立ち上がり、答える代わりに歌を歌った。
今は午後11時58分。
つられて歌いだす。
お互い名前も知らないけど、通じ合えればもう友達だ。
二人は、このまま年が明けるのもいいと歌っていた。
END

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