684 ( ^ω^)やっぱり隕石は降り注いだようです。 New! 2006/05/26(金) 00:11:28.80 ID:K4UY20Pb0

 畜生騙された!

 誰だよ、隕石が振ってくるなんて言った奴。
 そう! 来る5月25日、大西洋沖に隕石が墜ちて人生が終わる――

 はずじゃないのか! どこかのえらい学者さんよ。

 まったく、何処の誰だぜ? こんな仮設をブチ立てた野郎は。
 はっ、そうか! オレは一つの真理に行き着いた。

 恐らく、きっと! もう隕石は墜ちているのだ!
 そしてその隕石は実には宇宙人が乗っていて、その宇宙人こそが!


 この『えらい学者さん』に違いない!
 そうか、これはアメリカホワイトハウスやエリア51を巻き込んだ、壮大な宇宙叙情詩だったのか!

 今頃何処かで宇宙人がほくそ笑んでいるに違いない!
 ああ、恐ろしいものである。どうか、どうかお願いする!

 セガールでもスネークでも、エージェントスミスでも誰でもえーから、魔の手から地球を救ってくれ! 

 とそのとき、俺の頭にまるで「隕石でも墜ちたような」衝撃が走ったのである!

685 ( ^ω^)やっぱり隕石は降り注いだようです。 New! 2006/05/26(金) 00:19:41.26 ID:K4UY20Pb0

「あんた、ほんと馬鹿ね。本当に信じてたの? アレ」
「うるせえヤイ」
「まったく、あんたの妄想癖には参っちゃうわよ。まぁ、ブーンの方がよっぽど深刻だけどね」

 さて、この妙に高飛車な女。
 くるくるに巻かれた髪の毛が可愛らしい、ツンデレという名前のクラスメイトである。
 ……一応美少女である。他意はない。美少女ではあるが、性格が少しあれなのだ。

 しかし残念。もう彼女には、ブーンという名の恋人がいるのだ。
 オレの出る幕はない。ああどうぞ好きにして下さいよオレは所詮独身ですよああかまいませんよ。

「何ぶつぶつ呟いてんの? ついに頭までやられちゃったぁ?」
「うるせい、ツンにオレ様の気持ちが分かるかっての」

 オレは冴えない男だ。名前はドクオ。
 常にエロ小説かラノベを携帯している。脳内妄想はいつもフル稼働なのだ。

 妄想か。この隕石というのも妄想だったのかも知れないな。

 教室の窓から外の景色を眺めた。ツンもオレに釣られて外を見た。
 台風一過の如き青空だ。チリが全くなくて、空がとても澄んでいる。
 きっと夜見る星は綺麗だろうな。

 ツンの横顔を見て、オレは気恥ずかしくなってまた空を見上げた。


 何かが、きらりと空を横切った気がした。

686 ( ^ω^)やっぱり隕石は降り注いだようです。 New! 2006/05/26(金) 00:29:50.39 ID:K4UY20Pb0

 フランス某所でのこと――。

 その日私は、パソコンを凝視していた。
 額には玉のような汗が浮かび、膝はがくがくと震えているはずだ。
 今私は、酷く狼狽し、同時に興奮している。

 言うなれば、誕生日前日の童子の如き心情である。

 フランス人特有の白みを帯びた顔が、真っ赤に紅潮しているのが分かる。
 黄色の猿共には分かるまい、この肌の白さが私は好きだ。

 時刻は深夜である。星達も寝静まる闇夜である。

 私は興奮と期待で胸が張り裂けそうになった。
 本日は5月25日。

 そろそろ、奴がやってくるはずである。
 私が長年求めて病まなかった実験の結果が、本日帰ってくるはずなのだ。
 実験の詳細は、敢えてここには記さないこととする。
 ここに著すには、ページが余りにも少なすぎる。

 時刻が徐々に予定時間に近づく。
 楽しみだ。実に楽しみである。 

 私の予言は絶対である。隕石は絶対に、墜ちるはずなのである。
                                          5月25日、フランス、巴里にて。

688 ( ^ω^)やっぱり隕石は降り注いだようです。 New! 2006/05/26(金) 00:36:55.01 ID:K4UY20Pb0

「――結局、隕石は墜ちなかったお」

 ブーンがしょぼくれて教室にやってきた。
 ショボンも一緒だった。ブーンとは違って、ショボンは元気だった。

「いいじゃないか、生きているからこうしてテキーラも飲める」

 中学生がテキーラを飲んでよいとは、この国の法律も甘くなったものだ。
 隕石を国会で取り上げるぐらいなら、酒税法か何かを考えろと言いたい。

「それにしても、国会でも取り上げられる何てね」

 オレの意に添うようにツンが話を切り出してくれた。
 空気が読める奴だ。多いに結構結構。

「まあ、大西洋に墜ちるって事になれば、欧米は大変なことになるからね」

 確かに日本経済の混乱も避けられまい。
 そうなれば――、ネット環境が悪くなるかも知れないな。
 それだけは避けたいものである。

 まあ、でも、エロ本さえあればオレの精神力は神に等しくなるから、もーまんたいである。
 オレは右手でちらりと、『ちゅうがくせい にっき』というエロ本を触った。

 エロ本の向こう側――教室の隅で、がさがさとゴキブリが這い回っていた。
 異様な寒気がして、オレはエロ本を鞄に押し込んだのだった――。

689 ( ^ω^)やっぱり隕石は降り注いだようです。 New! 2006/05/26(金) 00:47:06.90 ID:K4UY20Pb0


 アメリカ海軍、一般交信記録報告書甲型。

 25.May.2006/23:52
 タイコンデロガ級巡視艇TSGより、海軍司令部へ。

 現在、大西洋沖150海里付近を走行中。
 問題は見られない。

 同日/23:58

 上空に謎の発光体を視認。
 追跡許可を求む。

 返答、追跡許可。

 同日/25:59

 発光体は拘束で移動中。隕石であると思われる。
 フランスの某学者との関係を調べられたし。

 返答、貴艦は即時該当海域から離脱せよ。
 返答、理由を述べられたし。現在、こちらの判断で航行中。発光体が着水する。


 報告。

 以後、同艦消息不明である。以降同文書を機密書類とする。 

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