637 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 21:37:15.04 ID:aBtC5/I00
あれはいつのことだったのか。
確か私が好きなアニメを見た後のことだったから
幼稚園くらいのことなんだろう。
これはきっと私以外の人間には――そう、例えあの人にとっても
――あまりにもくだらないことなのだろう。
でもこのことが私の一生を決めた。
それは確実である。

川゚ー゚)「ルーズに恋するオヤジは〜キモくて汗かきピザだよ〜」
川゚ー゚)「パンチラチラッっと第三者の視線、よ!パシャパシャ」

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・」

川゚ー゚)「なにしてるの?おじさん」

( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

川゚ー゚)「おじさん?」

639 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 21:42:22.29 ID:aBtC5/I00
( ^ω^)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
川゚ー゚)「どうしたの?おじさん」
(;^ω^)「ちょwwwwwおじさんって僕のことかおwwwwwwwwww」

その時の彼はものすごく困っていた。
あの時は少し髭を生やした彼は確かに『おじさん』に見えたが
今考えると研究室に何日も篭っていた大学生というだけで
『おじさん』呼ばわりは少し可哀想だったのかもしれない。

川゚ー゚)「だって、おじさんでしょ?」
(;^ω^)「僕はまだ19だおwww」
川゚ー゚)「あたしは・・・・・・」
( ^ω^)「?」
川゚ー゚)「・・・・・・・・・・・・」
(;^ω^)「?」
川゚ー゚)「今年で年長さんよ」
( ^ω^)「ちなみに世間ではそれを5,6歳という」
川゚ー゚)「・・・・・・・・・・・」

なんて大人気ないやつだ。

けどそういうところが無ければ私も
ただのつまらない大人だと思っていたことだろう。

640 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 21:48:04.86 ID:aBtC5/I00
川゚ー゚)「おじさんは何をしてたの?」
(;^ω^)「ブーンだお、そう呼んでほしいお」
川゚ー゚)「私はベッキーっていうの」
( ^ω^)「ベッキーちゃんかお?」
川゚ー゚)「うるさい下等動物!!」
(;^ω^)「ちょwwwwwwwwwwwwww」
川゚ー゚)「クーっていうの」
( ^ω^)「クーちゃんかお」
川゚ー゚)「そうよ、ブーン」
(;^ω^)「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
川゚ー゚)「どうしたのブーン?」
(;^ω^)「・・・・・・なんでもないお」

そう言うとブーンはまたさっきのように空を見上げてしまう。

川゚ー゚)「なにやってるの?おじさん」
(;^ω^)「それなんて無限ループ?」

( ^ω^)「ちょっと考え事だお」

654 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 22:45:51.77 ID:aBtC5/I00
それから彼はしばらく話をしてくれた。
所々わからないところもあったけど
半分くらいはわかりやすく説明してくれたのでそれなりに面白かった。

川゚ー゚)「つまり、女に負けたわけねブーン」
(;^ω^)「・・・・・・ま、まあ簡単に言えば」

同い年で密かに憧れているツンという人に負けているから
アウトオブランナウェイ。そういうことらしい。

それから二人で道端に座って色々なことを話した。
主に私が好きなアニメのことを話すだけだったけど。
そして最後に彼は不思議な石を見せてくれた。

655 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 22:55:03.61 ID:aBtC5/I00
( ^ω^)「ちょっと手をだすお」

そういって小瓶の中の物を私の手のひらに開ける。

川゚ー゚)「・・・・・・溶けちゃった」
( ^ω^)「戻してみるお」

元の容器に戻してみる。
正直自分のせいで壊したんじゃないのかとビクビクしながら。
すると・・・

川゚ー゚)「あ!元に戻った!!」

彼はにっこりと笑い説明をしてくれた。

( ^ω^)「原子番号は31ホウ素、アルミニウムなどがある第13族元素に属し、元素記号はGa」
( ^ω^)「融点が29,76℃だから融点の学習教材に使われてるお」
( ^ω^)「・・・お世話になったから、クーちゃんにあげるお」

そういってその小瓶をくれた。
今も私はその夕日を浴びてキラリと光った小瓶とよれよれの白衣を身にまとい
無精髭を生やした彼の少年のような笑顔を覚えている。

656 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 22:59:00.80 ID:aBtC5/I00
( ^ω^)「それじゃあ帰るかお」
川゚ー゚)「うん」
( ^ω^)「送っていくかお?」
川゚ー゚)「いや・・・それはちょっとキモい・・・・・・・・」
(;^ω^)「ちょwwwww最近の子供wwwwwwwwwwwwww」
川゚ー゚)「嘘よ、大丈夫、あたしの家はすぐそこだもん」
川゚ー゚)「それよりもブーン、ツンに勝ちなさいよ?」
( ^ω^)「おk」
川゚ー゚)「じゃあ」

小指を差し出すとちゃんと私の目の高さにまで屈んでくれて

( ^ω^)「指きりだお」

そう言って彼はだんだんと顔を表し始めた星と夕焼けを見上げながら歩いていった。

658 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 23:07:08.72 ID:aBtC5/I00
川゚ー゚)「zzzzzzz」
('A`)「クー教授、大丈夫ですか?」
川゚ー゚)「あ、ああ」

いけない、少し寝てしまったようだ。
顔を上げぐるりと当たりを見回す。

そうだ、ここは私の研究室だ。
枕にしていた筆箱、そこに長時間押し付けていたためだろうか、
おでこが少しへこんでいるかもしれない。

('A`)「大丈夫ですか?」
川゚ー゚)「なに、昔のことを思い出していただけさ」

あの日のことを。

660 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/05/25(木) 23:09:54.89 ID:aBtC5/I00
あの石のおかげで勉強を楽しいものとして見る様になり、今はこの職についている。
この世界に入って知ったのだが、ブーン。内藤ホライゾンは現在アメリカで
研究者として忙しい毎日を送っているらしい。
ツンという伴侶を従えて。

風の噂で聞いただけで彼にはあの日以来あってはいない。

川゚ー゚)「でも・・・」

洗濯はしているので少しは綺麗な白衣のポケットからとあるものを取り出す。

それはあの日、彼がくれたあの不思議な石だった。
今となってはその正体もわかっている。
でもこれがあれば私は頑張れる。

窓から外を見、深呼吸をしてから生徒達の方へ歩き出す。

大丈夫、私は負けない。
逃げ出したりもしない。

だってこんな素敵な思い出は誰にもあげられないから。

END
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