341 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:17:44.88 ID:mYAF2RQG0
川 ゚ -゚)「これだ、これ」
('A`)「……これ?」

ここはクーの家の前。
時は夕暮れ。
ドクオはクーが抱えている段ボール箱の中をのぞきこんだ。

('A`)「猫?」

潤んだ二つの瞳が見上げてくる。
三色に分けられた毛色。

川 ゚ -゚)「そう、子猫、三毛猫だな」
('A`)「どうしたんだ? これ」
川 ゚ -゚)「拾ったんだ。道端で、お腹をすかせて倒れていたんだよ。それで家に持って帰ってきたんだ。でもうちの家族は動物嫌いが多くてここには長く置いておけない……そこでキミに飼ってはもらえないかと」
('A`)「……急だな」
川 ゚ -゚)「すまない。昼休みの時点でもっと説明しておくべきだったな」
('A`)「うーん……」
川 ゚ -゚)「今日中にとは言わないよ。でも、できれば早めに決断して欲しいな」

クーの目が真剣だ。女性に見つめられることのほとんどないドクオはそれだけでたじたじになってしまう。

('A`)「……わかった。俺、飼うよ」
川 ゚ -゚)「本当か? ご両親の許可とか……」
('A`)「いいよ、たぶん許してくれるだろうし」
川 ゚ -゚)「ありがとう! さすがドクオ君。優しいんだな」
('A`)「いや……いやいや」

そっぽを向くドクオ。
やはりヘタレだ。

342 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:20:37.10 ID:mYAF2RQG0
('A`)「……と、安請け合いしたのはいいんだが」

夜、首をちょいとかしげている子猫を前にしてドクオは一人悩んでいた。
猫は大好きだ。しかし猫の世話なんてものはやったことがない。
二年くらい前から、近所に住みついていた三毛猫に餌をやったことぐらいはある。
ドクオはその猫に勝手に「ミケ」と安直な名前を付けていた。
もっとも、近頃全く姿を見かけなくなって落胆していたのだが。
しかし自宅で飼うとなると話は別だ。トイレの世話からしつけまで……色々しなければならない。
とりあえずミルクを入れた皿を置いてみた。猫はさっきまで一心不乱にミルクをなめていたのである。

('A`)「……」

にゃあにゃあ。
子猫が元気に鳴く。

('A`)「……よしよし」

その頭をなでてやる。目を瞑ってされるがままの子猫。非常にかわいらしい。
その笑顔を見ていると、なんとなくこの三毛猫を飼っていけそうな気がした。

('A`)「ネットで検索してみるか」

ドクオはあのセリフを思い出す。

川 ゚ -゚)「優しいんだな」
('A`)「……フヒヒ」
('A`)「にしてもこの子猫……」
('A`)「いつかどこかで、見たことある気がするんだよな……」

再度ミルクをなめ始めた子猫を見やって、ドクオはそんなことを呟いた。

343 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:22:17.45 ID:mYAF2RQG0
一週間後。

川 ゚ -゚)「どうだ、三毛猫の調子は」
('A`)「あー、うん。人なつっこい性格らしくて、もう俺に慣れてくれたよ」
川 ゚ -゚)「それはよかった。猫にも、優しい人は分かるのかもしれないな」
('A`)「いや、あ、いや、いやいやいや」
川 ゚ -゚)「そうだ、一度キミの家に行かせてもらえないか?」
('A`)「え」
川 ゚ -゚)「あの子猫がもう一度見たくなったんだ。お願いするよ」
('A`)「あー……はい、いいよ」

というわけで帰路。
肩を並べて歩くドクオとクー。
二度目とはいえ、緊張することに変わりは無い。

川 ゚ -゚)「こうしていると、ペヤングそのものだな」
('A`)「ぺ、ぺやんぐ?」
川 ゚ -゚)「ああ。ペアとヤング。合わせてペヤングだ」
('A`)「へー……」

344 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:24:37.14 ID:mYAF2RQG0
摩訶不思議な複合語に頭をひねるドクオ。
そんな和気藹々としている二人の前に現れたのは。

(´・ω・`)「!」
('A`)「あ」
川 ゚ -゚)「やあ、しょぼんくんじゃないか」
(´・ω・`)「どく、ドクオ……」
('A`)「いや、違う、これは、その」
(´;ω;`)「ドクオのばかああああああぁぁぁぁ!!」

乙女のようなセリフを吐いて走り去っていくしょぼん。
呆然とするドクオ。

川 ゚ -゚)「いやあ、滑稽だな」
('A`)「あの口調……すでに女になりかけているのか……?」

寒気がとまらない。

345 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:27:10.18 ID:mYAF2RQG0
('A`)「ここでちょっと待ってて」

家の前でクーを待たせてドクオは自分の部屋に行く。
そこはすっかり猫用に整備されていた。

子猫を抱えてクーのところに戻る。

('A`)「……お待たせっ」
川 ゚ -゚)「お、おー。可愛いな……よしよし」

ドクオから子猫を受け取ったクーは頭をなでたり頬ずりしたりしている。

川 ゚ -゚)「それにしても……この子を捨てた親はひどいな」
('A`)「ああ、倒れてたんだよな、こいつ」
川 ゚ -゚)「うん。周りを見ても親猫はいなかったし……」

そのときだ。
急に、クーの腕の中から子猫がするりと抜け出した。
そして、庭のほうへと走り去ってしまったのである。
直後、排気音が聞こえてきた。
重く、低い排気音。トラックのものだ。

('A`)「あ、こら……ごめん、クー」
川 ゚ -゚)「いや、気にしないでいいよ……じゃ、私はこのへんでおいとましようかな」
('A`)「あ、そう……それじゃ」

なぜだか、ドクオの頭の片隅に何かしこりのようなものが残った。

346 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:29:26.46 ID:mYAF2RQG0
それから気付いたこと。
子猫はトラックの排気音をやけに怖がるということ。その音が聞こえると部屋の片隅にうずくまってしまうのだ。
ドクオの中で、一つの嫌な予感が浮かび始めていた。

(*゚ー゚)「この前の話なんだけどさあ」

女生徒の話し声というものは基本的にやかましい。その昼食時も、教室に響き渡っていた。

(*゚ー゚)「気持ち悪いものみちゃったよー」
ξ゚听)ξ「えー、何よ」
(*゚ー゚)「あのね、三毛猫。死んじゃってる奴」
('A`)「!」
ξ゚听)ξ「あー、それは確かにやだねー」
(*゚ー゚)「なんかさ、車かなんかに轢かれちゃったぽかったよ」
('A`)「おい、今の話!」

ドクオがたまらず二人の間に割って入る。

(*゚ー゚)「うわっ、びっくりした……ってなんだ、ドクオか」
('A`)「あ、いやその……今の話、本当か?」
(*゚ー゚)「え? あ、まぁ、うん」
('A`)「……」
ξ゚听)ξ「ちょっとアンタ、なんなのよいきなり」
('A`)「あぁ、すまん……」

そのままとぼとぼと歩き去るドクオ。背中が物寂しい。

ξ゚听)ξ「なんなのよあいつ……」

憮然とした表情で一人が呟いた。

349 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:31:30.25 ID:mYAF2RQG0
('A`)「クー」
川 ゚ -゚)「ん、どうした?」

放課後。ドクオはクーに話しかけていた。

('A`)「ちょっと付き合ってくれないか?」
川 ゚ -゚)「なんだ、デートか?」
('A`)「いや……ちょっと、気になることがあるんだ」



太陽も沈みかけている頃。
ドクオとクーはあまり人通りの多くない道を歩いていた。
ドクオの腕の中には子猫がいる。

川 ゚ -゚)「確か、このあたりだったと思うが」

クーが立ち止まる。
そこは一週間ほど前、クーが子猫を拾った場所だった。

('A`)「……よし」

ドクオはゆっくりとしゃがんで、そこに子猫を放してやる。
最初、子猫はきょろきょろと視線をさまよわせていたが、やがてとことこと歩き始めた。
ドクオはそれについていく。クーもわけのわからないまま追従する。

確かめたいことは色々ある。
ドクオの予想通りであれば、最初ドクオが子猫とであったときに感じたデジャヴに説明が付く。
ただ、ドクオの予想は少しつらいものだ。できれば、的中していて欲しくない。

350 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:33:37.45 ID:mYAF2RQG0
子猫はゆっくりと歩いていた。何かを確かめているかのように。
やがて立ち止まる。
そこはちょうど、見通しのよくない曲がり角だった。
子猫は鳴いた。
何度も何度も。誰かを呼ぶように鳴いていた。

同時に、ドクオの目も潤み始めていた。

('A`)「そうか、やっぱりそうだったか」

ひざを地面について、猫をなでながらドクオは呟く。
予感は的中していた。

('A`)「お前、あいつの子供だったんだな。ミケの子供だったんだな」

('A`)「それでミケは……死んじゃったんだな」

当初のデジャヴはこの子猫が、ドクオが親しんでいたミケの子供だったから。
子猫がトラックの排気音を怖がるのは、おそらく親であるミケがトラックに轢かれて死んでしまったから。
子猫は今のように何度も何度も鳴いたのだろう。
親を探し、歩きながら鳴いたのだろう。
そしてやがて、力尽きて倒れてしまった。それをクーが拾ったのだ。
たった一度の命を、無駄にせずに済んだのだ。

358 お題:ペヤング他 sage New! 2006/10/04(水) 01:53:29.79 ID:mYAF2RQG0
川 ゚ -゚)「ドクオ?」

状況を飲み込めないクーが子猫を抱きかかえたドクオを見る。

('A`)「あぁ、いや、ごめん。用は終わったよ」
川 ゚ -゚)「なんだ、別に私は来なくて良かったんじゃないのか?」
('A`)「いや、クーのおかげだよ……色々と。ありがとう」
川 ゚ -゚)「む、そ、そうなのか? な、なんだかよくわからないが……感謝の意は受け取っておくよ」

川 ゚ -゚)「ところでこの猫、名前は決めたのか?」
('A`)「あー、そうだな……」

('A`)「そのうち、決めるよ」
川 ゚ -゚)「そうか」

クーが笑う。ドクオも笑った。
子猫が鳴いたその声も、今はとても嬉しそうだった。


後日。

(´・ω・`)「いやね、社長。お尻撫で回さないでっ☆」
('A`)「……」
( ^ω^)「どうやら、妙な方向に目覚めたらしいお」
('A`)「あれじゃオカマバーのマスターじゃねえか」
(´・ω・`)「いや、今日もきてくれたん? あたい嬉しいわぁ」

そして、数年後
しょぼんがオカマ界に革命……Revolutionを引き起こすのはまた別の話。
終。
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