136 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:04:31.36 ID:pEyzvFizO
雨が静かに夜の街を包む。

ぽつりぽつりと電気が点いているのはバーだろうか。

こんな時間に外にいるのは安売りの娼婦と酔っ払いくらいだろう。

そんな人通りも疎らな裏路地を一人の男が歩く。

僕が尾行しているのはバレてないだろう。これでも尾行は得意分野だ。

男は少し早足で角を一つ曲がりすぐまた曲がる。

まずい…これでは見失ってしまう…

慌てて駆け足で角を曲がった瞬間―

(;´・ω・`)「っ!!」

ショボンが追っていた男は壁にもたれて静かに立っていた。



137 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:05:50.67 ID:pEyzvFizO
('A`)「なんか用か…?」

やばい。

急いで逃げようと振り返った先には―

('A`)「失礼な奴だな。人の顔見て逃げようとするなんて」

今まで追っていた男が立っていた。

な…どうやって…?

そこで強烈な衝撃と共にショボンの意識は闇に沈んでいった…

139 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:06:55.49 ID:pEyzvFizO
―静かだ。何も聞こえない。人の気配すらないね…

ショボンは少し前から気が付いていたが目を開く事はできなかった。

なんだこれ…?テープとか接着剤とかじゃないみたいだけど…

声に出さずに考え込む。
彼はどこへ行ったのだろう?

('A`)「気が付いたみたいだな」


141 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:07:45.98 ID:pEyzvFizO
(;´・ω・`)「え…?」


今まで確かにそこに気配なんてなかったのに…

('∀`)「ははっ。そりゃそうだ。気配なんてねーよ」

男の言葉に軽く息を吐いて、覚悟を決める。
どの道こうなる予定だったんだ。
少し理想とは違うけれど仕方ないよね。

(;´・ω・`)「僕は今…声に出してないよね。それも君達の力の一つかい?」

('A`)「なに?」

僕の言葉に彼がピクッと反応した。
…いけるか?


142 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:08:35.68 ID:pEyzvFizO
数分後、僕は無事彼の部屋の中央に居座るテーブルに着いていた。

(´・ω・`)「僕の名前はショボン。バーボンハウスのマスター兼新聞記者だ」

彼の目が興味深そうに開かれる。

('A`)「ふーん。それでその記者さんが俺なんかになんの用だ?夜な夜な人を付け回すのは趣味が良いとは言えねーぞ?」

ここだ。この質問への返答で僕の進退は決まる。ダメなら切り札を使わねばならない。

僕は予め用意していた答えを注意深く、しかし大胆に答える。

(´・ω・`)「率直に言おう。君の事を記事にしたいんだ」


144 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:09:21.86 ID:pEyzvFizO
('A`)「ほう…俺が何者なのかわかってんのか」

相変わらず彼の表情は読みづらい。

(´・ω・`)「そうだね。バーのマスターなんてやってると自然と噂話は耳に入ってくるんだよ。当然君にも謝礼は払う。悪い話じゃないはずだけど?」

彼は深く考え込んだようだった。
暫くして顔を上げた時、彼の白い顔は「NO」と語っていた。

('A`)「俺達の社会は特殊だ。俺が話した事がバレたら俺が殺される。悪いがこの話は無し、だ」

145 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:10:18.76 ID:pEyzvFizO
―やっぱり切り札を使わないとダメか。
かなりの危険を伴うから嫌だったんだけど。

(´・ω・`)「ドクオ、いやMr.ルイ。どうしても無理かい?」

瞬間、僕は地面から数メートル離れた壁に押し付けられていた。
彼の細い体にこんな力が…?

(;´・ω・`)「ぐっ…苦しい…は、はな…」

目を開くとそこには真っ赤な目を爛々と輝かせる彼がいた。

('A`)「俺のそっちの名前を誰に聞いた。てめーらが生まれる遥か前に捨てた名前だ」


146 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/03(火) 00:11:07.93 ID:pEyzvFizO
(;´ーωー`)「は…放してくれないと…しゃべ…れ…」

('A`)「いいから話せ」

金属質の冷ややかな声のまま、彼は手を放そうとはしなかった。

(;´ーωー`)「な…長い黒髪の…おん…な…」

告げた時には手を放されていた。重力に引かれるまま地面に落ちた僕は床で暫く荒い息を繰り返した。

ふとドクオに目をやると彼は窓から薄暗いロンドンの街を見下ろしていた。心なしか彼の細い体が一層小さくなったように見える。

('A`)「クー…」

ようやく息を整えた僕は後ろから彼に声をかける。

(´・ω・`)「聞かせて…もらえるよね?」

彼は虚ろな目のままこちらを向くとゆっくりと口を開いた。

('A`)「いいぜ、聞かせてやるよ。俺のこの呪われた人生をな」

僕はそれから少しずつ扉を開いていった。
狂気と狂った愛の世界への扉を。
決して終わらない彼の物語。


(´・ω・`)インタビュー・ウィズ・ドクオ
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