323 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:50:53.19 ID:kCWk5EL/0


ガタンゴトン ガタンゴトン

――――俺は何の為に、誰の為に生きているのだろう

頭の中で繰り返されるこの答えのない疑問に、俺はいつも悩まされていた。
追う夢も見つけられずただ流れてゆく時を眺めるだけの生活。
ああ、出会いが欲しい。

('A`)「……鬱だ」

どんな幸せも、不幸も全て他人事のようで。
時々、本当に生きている実感が湧かない。

ガタンゴトン ガタンゴトン

ぼんやりと電車に揺られながら、窓の外を見て俺は思わず顔を顰めた。
畑と田んぼで緑一面の景色に一瞬呆気を取られ、
一時間前、うっかりと転寝をしてしまった自分を呪う。畜生。


ここは、どこだ?



324 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:51:40.12 ID:kCWk5EL/0

俺の行く道を妨げるようにして立ち並ぶ木々は、鬱々しくて堪らない。
しかも熱中症になりそうなくらい暑い。

運の良くない日というのは誰にだってある。その日が俺にとって今日だ。
財布を落とし、電車は乗り過ごす。なかなか素敵じゃないか。
ああ、このまま現実逃避してしまいたい。

目的地はないが、とりあえず歩き続けてもう30分が過ぎようとしている。
いい加減本当に倒れそうだ。

(;'A`)「し、死ぬ……かも」

思わず倒れそうになり、ふらふらと隣にいる女の人に寄りかかってしまう。
ん?女のひtくぁwせdrftgyふじこlp;@

(;'A`)「うわ、あわわわわわっ」

川 ゚ -゚)「今年もぴったり同じ時間だな」

(;'A`)「あ、う……はい?」


326 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:52:27.93 ID:kCWk5EL/0

川 ゚ -゚)「いや、気にするな。しかし大丈夫なのか?」

(;'A`)「……すいません、立ち眩みが」

川;゚ -゚)「嘘はよせ。まるで故人のような顔をしているぞ?」

(;'A`)「それは元からです」

不思議な人だ。この暑さの中でも汗一つ見当たらない。
先ほどまで気配も何もしなかったのに、いつの間に隣にいたのだろうか。
思わずしげしげと見つめてしまう。

整った顔立ち。
長い黒髪が光に染められ、キラキラと輝くその姿は綺麗だった。

川 ゚ -゚)「せっかくだから、私の家に来ないか。喉、渇いただろう?」

(;'A`)「え、……え?」

フラグですか?
実は死亡フラグだった、というオチではないですよね?

うろたえる俺を目尻に、彼女はくすりと笑った。


327 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:53:07.11 ID:kCWk5EL/0

('A`)「……すげぇ」

目の前に堂々と建つ豪邸に、俺は思わず感嘆した。
屋根は赤く、広い庭付きのこれは、まさに童話に出てくるような家だった。

川 ゚ -゚)「何をしている?入ろうじゃないか」

(;'A`)「お、お邪魔しまーす」

玄関まで見事です。俺の部屋に負けないぐらい大きい。少し惨めになる。
小さめの彼女の靴のとなりに、きっちりと自分の靴を並べて
後ろを振り向くと――――彼女はいなかった。

(;'A`)「あんれ?」

代わりにある、長々と続く光の差し込まない廊下は薄暗く、少し心細くなる。

彼女はどこだろう?


328 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:53:39.46 ID:kCWk5EL/0

勝手に動き回るのも悪いような気がして、仕方なく大人しく待つ。
そわそわと辺りを見渡すと、どうやらかなり古い建物のようだ。

('A`)「こんな広いところで一人暮らしなのか?」

しかも女の人が。
夜とか怖くないのだろうか?といらぬ心配をしてみる。

('A`)「でも……どこか懐かしいなぁ」

これが例のデジャヴですか?
名前もしらない地域に来たというのに、何度も訪れたような感覚。
さっきの彼女とも初めて会った人とは思えないような、
そんな不思議な感覚。実に奇妙だ。


――――あ りがと う 



330 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:54:44.92 ID:kCWk5EL/0

('A`)「……ん?」

不意に廊下から声が聞こえた。

聞こえづらいが、女の人の声のようだ。クーさんか?
どこか寂しげなその声は、何故か自分と酷く似ているような気がして。
急に気味が悪くなってきたが、そんなのどうでもよくって。

ただ見つけてあげたいと思った。


――――あり が と う


思わず立ち上がり、廊下に足を進める。
背中にゾクゾクと悪寒のようなものが走るのを感じながら、
俺は廊下から続くドアを前に深呼吸をした。そして―――――




川 ゚ -゚)「麦茶とウーロン茶、どっちがいい?」

突然開いたドアに、俺は腰が抜けた。


331 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/10/04(水) 00:55:37.41 ID:kCWk5EL/0

カーテンの隙間から夕暮れの日差しが差し込んできた。
それから、もう数時間も過ぎたようだ。

(;'A`)「やっべ、そろそろ帰らないと……」

川 ゚ -゚)「む……泊まってはいかないのか?」

('A`)「あーいや、明日は大切な授業があるので」

生真面目だな、と彼女は不貞腐れたように呟く。
俺も名残惜しいが、今回ばかりは仕方ない。単位がヤバイのだよ単位が。
しかしこれで最後というのは寂しい。

('A`)「また、遊びに来てもいいですか?」

遠慮がちにそう聞いてみると――――彼女が初めて微笑んで頷いた。

川 ゚ー゚)「ああ、また来年の夏に遊びに来い」


――――ありがとう

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