225 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:31:18.66 ID:WDgO1OcP0
( ,,゚Д゚)「てめーらは一体何度叱られたら生活態度を改めようって気になるんだ!? ええ!?」

時代遅れの風貌をした教師が時代遅れの木刀を床にたたきつけながら激高している。
ここは教官室。風紀担当の教師の溜まり場だ

('A`)「いやー、だって、携帯ぐらいいいじゃないっすか」

呼び出された三人のうちの一人。ドクオが教師の机に置かれている携帯電話を恨めしげに見つめる。

( ,,゚Д゚)「程度の問題じゃねーんだよ! いいか? この学校にはなぁ、校則ってのがあるんだよ、校則が! お前らはここにいる限りそれは守らなきゃいけねーんだよ、わかってんのかこの素人童貞ども!」
(´・ω・`)「むさいおっさんに罵倒されてもねえ」
( ^ω^)「何も感じないお」
('A`)「新しい世界は見えないな」

最早体育教師の怒声は肉食獣の咆哮レベルに達している。
そんな時、ガラリとドアが開いた。

( <●><●>)「いつもどおりここが騒がしいのはわかってます」
( ,,゚Д゚)「お、あ、ああ、教頭先生」
('A`)「出たよバーコード」
(´・ω・`)「いやもう、あれはゴビ砂漠でしょ」
( ^ω^)「ゆで卵っぽいお」

もちろん、彼の頭部に対する批評である。


228 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:32:25.43 ID:WDgO1OcP0
( <●><●>)「今日もこの三人組が怒られているのはわかってます」
( ,,゚Д゚)「ほんとこいつら、何遍言っても聞かないんですよ」
( <●><●>)「そうだとしても、ここが職員室の隣であることもわかってください」
( ,,゚Д゚)「あ、ああ。すんません」

その間も、ブーンたちに降り注ぐ教頭の頭で反射した光。
引き篭もりが久々に拝んだ陽光並みに厳しいものがある。

('A`)「うおっまぶしっ」
(´・ω・`)「今更そんなネタ使ってもねえ」
( ^ω^)「寒いお」

( <●><●>)「ともかく、もう少し静かにしてください」
( ,,゚Д゚)「あ、はい」

忠告を終えた教頭はそそくさと去っていった。

( ,,゚Д゚)「……はぁ。お前ら、もう一度学校に持ってきたら叩き折ってやるからな」
('A`)「そんなことされたら皆で訴えようなー」
( ^ω^)(´・ω・`)「なー」
( ,,゚Д゚)「こんのクソバカどもが……」

教育の現場は、今日も順調に崩壊の一途をたどっている。

229 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:33:45.35 ID:WDgO1OcP0
帰途につく3人。
('A`)「はーぁ、なんで携帯持ってきちゃいけねーんだろうな」
(´・ω・`)「別に授業中に使ってるわけでもないのにね」
( ^ω^)「他にも持ってきてる奴いっぱいいると思うお」

そしてしょぼんは携帯を開く。

(´・ω・`)「ああ、会いたかったよ、ヒカル……」
('A`)「ヒカル? アイドルか何かか?」

最初から彼女であるとは思っていない。

( ^ω^)「だいたひかるかお?」
(´・ω・`)「ちげーよ。そこまで趣味悪くねーよ」
('A`)「宇多田?」
(´・ω・`)「違うよ……」
( ^ω^)「じゃあ誰だお?」
(´・ω・`)「伊集院」
('A`)「伊集院!?」
(´・ω・`)「わからないかな、あの僕の全てを包んでくれそうな肉体、マイナスイオンを惜しげもなく放出している顔。全てが壮大でまるで宇宙のようだ」
('A`)「それで待ちうけが伊集院、と」
( ^ω^)「しょぼんの思考回路が宇宙みたいだお」

何気ない会話を繰り広げる。
通常。それはとても通常。

だったはずだ。
そういった普遍的なものほど。壊れたときの狂騒は計り知れないものがある。

230 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:35:03.19 ID:WDgO1OcP0
( ∵)「ちょっと君たち」
( ^ω^)「お?」

突然の声に三人は振り向く。
ひょろ長い男が立っていた。

( ∵)「私の名前はビコーズ。それはまぁいいんだが、君たちの願い事が聞きたいな」
( ^ω^)「……なんなんだお、いきなり」
(´・ω・`)「伊集院光に抱かれたいです!」
('A`)「ちょ」
( ∵)「ふむふむ……君たちは?」

しょぼんが答えてしまったために、残り二人も答えなければならないような雰囲気が生まれる。

( ^ω^)「んー……超常現象とか、体験してみたいお」
('A`)「泳ぎに行きたいなあ」
( ∵)「ふうむ、わかった」

わざとらしく頷いて、ビコーズは言った。

( ∵)「君たちの願いは、そのうち叶うよ」

そういい残してビコーズはどこへともなく消えていった。

( ^ω^)「なんなんだお……」

そして、次の瞬間だった。


232 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:36:51.48 ID:WDgO1OcP0
あまりにも唐突だった。
唐突過ぎて何が起きたのか理解するのに苦しむほどに。
ブーンとしょぼんの目の前に今まで存在していたドクオが消えた。

( ^ω^)「は」
(´・ω・`)「ん?」

それでは済まなかった。
直後、二人の周りの空間を、光が包んだ。
それは、始まりの光だった。

やがて光は消えた。元の世界が戻ってきた。

……そう思えたのはほんの少しの間だけだった。
怪異がもう一つ。

( ,,゚Д゚)「……ありゃあ?」

ジャージをきた不恰好な男が、二人の目の前に立っていたのだ。

( ^ω^)「あれ、むさ男」
(´・ω・`)「なんでここに? つかドクオは?」
( ,,゚Д゚)「しらねーよ、俺は確かに学校に……」

怪異は続く。

233 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:39:18.63 ID:WDgO1OcP0
一度現れた教師が再度消えた。
それだけではない。
背景にあった樹木が消失する。
次に消えたのはしょぼんだった。
なんの前兆も無く、ただその場から消えていく。音もなく。

( ^ω^)「しょぼん……?」

出現と消失の永続連鎖。
それはまだ、始まったばかりだった。

アスファルトの欠片が消失する。
日本では見受けられないような鮮やかな色をしたカエルがブーンの視界を横切る。

石で出来た壁が消失する。
節操無く、出現と消失は繰り返される。

(;^ω^)「なんだお、なんなんだお!? 何が起こってるんだお!?」

その叫びも、怪異にかき消される。

世界が変化をきたし始めた。
ブーンの目の前ももう、日常の風景ではなくなっている。
ジャングルにありそうな奇怪な樹木が聳え立っている。
赤く濡れた包丁が転がっている。
餓死したらしく、やけに腹部の突き出た黒人の子供がその横に転がっている。
昔の絵巻物に描かれている地獄絵図に、現実味を加えたような光景だ。

234 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:41:26.93 ID:WDgO1OcP0
それでもなお、怪異は継続される。
世界の崩壊に、時間はかからなかった。

次にブーンの前に現れたのは、溺死体だった。
考えればわかる。地球のほとんどは海で構成されているのだ。
ランダムに出現する先が水の底である可能性は余りにも高い。

( ^ω^)「……」

目先には絶望。

声もでなくなっていた。
そんな時、またブーンの前に人が現れた。

( ^ω^)「お?」
川 ゚ -゚)「む」

( ^ω^)「クーじゃないかお」
川 ゚ -゚)「!」

彼女は何も言わず、ただブーンの手を握り締めた」

( ^ω^)「ちょ、いきなり何を」
川 ゚ -゚)「傍にいてくれ」
( ^ω^)「え……」
川 ゚ -゚)「やっと、知っている人に出会えた……」
( ^ω^)「……」

洒落にならない。
そんな当たり前のことに、ブーンはやっと気付かされた。

236 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:43:40.43 ID:WDgO1OcP0
川 ゚ -゚)「一体何が起きているんだ……」

安全な場所などどこにもない。
今この瞬間に彼らの上空から何か大きく重たいものが落下してこないとも限らない。
生と死は今まさに隣り合わせにある。
絶えず繰り返される出現と消滅はとどまりそうにない。

川 ゚ -゚)「怖い……」
( ^ω^)「……」

クーはその場にうずくまる。手は繋いだまま。
かける言葉もない。ブーンも怖がっている。怖すぎて涙も出ない。
未だ消失の対象になっていないだけ、ましだろう。

川 ゚ -゚)「ブーン」
( ^ω^)「……お?」
川 ゚ -゚)「終わるのかな、この世界は」

力の無いクーの言葉に肯定も否定もできない。
何もわからない。
怪異が始まってまだ30分も経っていないのではないだろうか。
この世は意外と呆気ない。

そのときだった。

238 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:46:07.99 ID:WDgO1OcP0
ブーンとクーを再び光が包んだ。
クーが驚いてブーンに寄り添う。
ブーンは事の顛末を見守った。

それは、この怪異が終息を迎える可能性を秘める唯一の、希望という名の光だった。

始まりと同じく、それは唐突に終息を迎えた。

光が消え、荒れ果てた世界が帰ってくる。
しかしもう、それ以上の消失及び出現は起こらなかった。

( ^ω^)「……ふう」

ブーンがため息をつく。同時に、クーも。

川 ゚ -゚)「なん、だったんだ、本当に……」
( ^ω^)「わからないお……でも、助かったお……」

だが、喜べなかった。

( ^ω^)「!」

彼が目にしたもの。
おそらく、二度目の光に包まれる直前に出現したのだろう。
それは紛れも無く、すでに息絶えているドクオだった。

243 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:56:07.96 ID:WDgO1OcP0
( ゜ω゜)「ドクオ、ドクオ!」

その身体は濡れている。彼もおそらく、溺死だろう。

川 ゚ -゚)「ドクオくんが……」
( ;ω;)「ドクオ……うう……」

しばらくして、

( ;ω;)「これは……?」

彼が拾い上げたのは一枚の紙切れだった。
そこには、こんなことが書かれていた。

「願い事は叶えましたよ」と。

ブーンは悟った。
悟らざるを得なかった。
全てはあの男の仕業なのだ。

ブーンは超常現象を欲した。結果、出現と消失という怪異が発生した。
しょぼんは伊集院光を欲した。結果、どうなったのかブーンに知る方法は無い。
そしてドクオは海を欲した。結果、彼は海のど真ん中に放り出されたのだろう。

( ;ω;)「……」

ビコーズを憎む。そして自分を憎む。
それぐらいしかブーンにはできない。

彼にとって、願いは絶望と同義だった。

246 お題:伊集院光他 sage New! 2006/10/03(火) 22:58:02.32 ID:WDgO1OcP0
( ∵)「ふふふ」

ビコーズは笑う ひたすら笑う。
他人の絶望が愉快でたまらない。

( ∵)「……さて」

ひとしきり笑った後、彼はまた動き出す。

ビコーズ。有り余る力を全て他人の絶望に費やす男。
次の絶望を求めて、彼は街を闊歩する。


終。


途中でさるさん食らったorz

感想or批評が頂ければこれ幸いです。
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