184 ( ^ω^)が赤いアンチクショウに乗るようです New! 2006/09/30(土) 18:15:35.62 ID:4wf4M3wP0
ξ゚听)ξ「帰って。今すぐに」
(;^ω^)「なんでだお?」
ξ゚听)ξ「アンタみたいな臆病者は、この決戦を乗り切れない」

 ブーンはツンの言葉が理解できなかった。

ξ゚听)ξ「今までは昔のよしみで面倒みてあげてたけど……限界よ。
    アンタ一人で戦ったら死ぬわ。早く帰りなさいな」

 それだけを言い捨てて、彼女は母艦へ向かった。

         ※

 未来。レーダーを無力化する技術の開発で、戦争の主力は巨大ロボットとなっていた。
 今も地球軍と宇宙軍が、交戦の真っ最中である。

(;^ω^)「敵影を確認……10機? 11機? これ一人で狙撃するお?」

 周りには自分しか居ない。その事実が今更ながら浸透してくる。
 しかしブーンは、黙って愛機ブンキャノンのカメラを睨んだ。なぜなら、この状況は自分が望んだものだからだ。

(;^ω^)「だいじょうぶ、やれるお!」

 この距離なら狙撃に特化したブンキャノンのほうが強い。祈るような気持ちでトリガーを引く。
 大型ビームライフルから光の束が伸び――ややあって、彼方で閃光が見えた。どうやら当たったらしい。

( ゜ω゜)「やった! 当たった! 当たったお!」

 気づいたらしい敵が、こちらへ近づいてくる。だが、それは『的にしてください』と言っているようなものだ。
 嬉々としてトリガーを引くブーン。そのたび宇宙に炎が舞い、敵兵の命が散っていった。

185 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/30(土) 18:16:49.06 ID:4wf4M3wP0
 ブーンの戦闘スタイルは『援護射撃』である。いつも誰かが側にいた。
 しかし今回、初めて『単独での狙撃』というスタイルを選んでいる。
 女性でありながらエースパイロットである、ツン。大好きなツン。彼女に、同じ戦場でも戦えると認めて欲しかったのだ。

 攻撃は続く。敵影は、またたく間にその数を減らしていく。
 そろそろ離脱して、あとは味方に任せても良かったのだが……ブーンは狙撃を続けた。
 上手くいけば、自分だけで一分隊を全滅させられるかも知れない。あわよくば――これからも側に居て欲しいと、ツンが言ってくれるかも知れない。

('∀`)「はい、確保ー」
Σ( ゜ω゜)「おわっ!?」

 突如、足元を襲う振動。見れば、クレーンのような巨大な鉄の爪がブンキャノンの下半身を掴んでいる。
 その爪の持ち主は、緑色の敵機だった。逆三角形に手が生えたような姿をしている。
 前方の敵だけを見ていたブーンは不意打ちに気づけなかった。

(`A゚)「そーれ、まっわれー!」
((( ゜ω゜)))「うわああぁぁあああぁぁぁ!?」

 上下、左右、前後。多数のバーニアを操り、ブンキャノンを振り回す敵機。

(((iiiω-)))「ああああぁぁあああぁぁぁ!?」

 ブーンの視界が黒くなる。遠心力で血液が目から抜け、ブラックアウトが起きる。
 このパイロットにダメージを与える戦法こそ、高機動機体『ビーグル』の特技だった。

('∀`)「へっ、どうだ。抵抗できないだろう?」
(((;-ω-)))そ「…………」(ビクビクッ)
('A`)「こんだけ振り回してフレームが歪まないとは、いい装甲だ。
   せっかくだから実験してやる。至近距離からのメガ粒子砲……耐えられるかな?」

186 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/30(土) 18:17:56.49 ID:4wf4M3wP0
 ビーグルの胸が開く。巨大な砲身が現れ、かすかに光り始めた。

('∀`)「充填に時間がかかる分、威力はスゲェんだってさ。俺も試すのは初めてだぜ」

 朦朧とする意識の中、ブーンの目に映ったのは……ビーグルの後方から向かってくる敵分隊だった。
 最初に狙撃していた対象が間合いを詰めてきたらしい。撃ってこないのはドクオを巻き込まないためか。

(;^ω^)(やっぱり……無理だったお……ツン……)
(`A゚;)「くらえ……ぐはぁっ!?」

 コクピットを再びの振動が襲う。ビーグルの巨大な爪が、ブンキャノンの足を離した。
 見れば装甲の端が溶け、穴が開いている。誰かがビームライフルで狙撃したらしい。

( ^ω^)「助かったけど……一体誰が……?」
ξ゚听)ξ「なにやってんのよ」
( ^ω^)「!」

 無線が入る。振り向くと、遥か頭上に真っ白な機体――ツンダムの姿があった。

ξ゚听)ξ「まったく、頭の中身は子供の癖に……格好つけんじゃないわよ!」
(;^ω^)「すまないお」

 会話をしながら、ブーンは考えをめぐらせた。
 ブンキャノンの装甲なら、多少の打撃を受けても逃げられる。その隙にツンに接近してもらい、自分は援護射撃に徹すればいい!

( ^ω^)「ツン、助けてくれお!」
ξ゚听)ξ「やだ」
(;^ω^)「は?」

187 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/30(土) 18:18:32.67 ID:4wf4M3wP0
 唖然とするブンキャノンを尻目に、ツンダムは遠ざかって行く。

ξ゚听)ξ「嫌よ! 大人なんだから一人で頑張りなさい!」

 それっきり無線は途絶えた。

(#^ω^)「どっちだぉぉおおおぉぉぉぉ!?」

 絶叫。状況は振り出しに戻っただけ……というか、明らかに不利。
 敵に囲まれたこの状況で、この狙撃用の機体で勝たねばならないのだ。どうやって?

(#゜ω゜)「あああ、あのアマ! 生きて帰ったら犯してやるお!!」
(`A゚)「ちっ、なんだか知らんが今度こそ死ねぇ!」
(;^ω^)「ひいっ!?」

 再びビーグルの大爪が襲いかかる。今度は左腕を掴まれた。
 メキリと嫌な音がして、アラームが左肘の異常を告げる。

(;゜ω゜)「ひっ!?」

 とっさにバーニアを稼動。横向きのGが加わり、二機は抱き合ったまま回転する。
 振り切れないかと淡い期待を抱くブーン。だが次の瞬間にはビーグルが回転の中心になっていた。

(((;゜ω゜)))「うわああぁぁあああぁぁぁ!?」
('A`)「俺の目を回そうってか? 残念、回転用に調整してあるんだ。 バーニアが違うんだよ!」

 ドクオの細い目が開く。そこにあるのは、むき出しの殺意。

(`A゚#)「さっきみたいに振り回して! 今度こそ沈めてやらあっ!」
(;゜ω゜)「や、やめろぉぉおおおぉぉぉ!!」

188 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/30(土) 18:19:26.96 ID:4wf4M3wP0
 必死で操縦桿にしがみつくブーン。それを断ち切るように衝撃が走る。
 ビーグルの加速が始まり、ブーンの背は再びシートに押し付けられた。

(((;゜ω゜)))「ああああ、や、やめりゃあ良かったのに!!」
('A`;)「なに?」

 遠心力が、ブーンの手を操縦桿から引き剥がす。その最後の刹那、指先がトリガーに触れた。

(((#゜ω゜)))「ビームライフルをくらえっ!!」
('A`;)「うおっ!?」

 見当違いの方向へ撃ち出された熱線が、ビーグルの腕で振り回され……全方位への攻撃に変化した。
 それはさながら鞭のごとく、近くにあったモノを片っ端から灼いていく。

(’e’)「うわあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
('A`)「あ……え……?」

 ドクオは呆然と周囲を見渡す。
 その目に映るのは、巻き起こる無数の爆発。付近のザクマは全滅していた。

Σ(((;-ω-)))「…………」(ビクビクッ)

 ブーンは答えない。ショックで意識が飛んでいる。

('A`;)「そんな……俺のせい……?」

 しかしドクオはショックのあまり、この決定的なチャンスを逃してしまった。

(;-ω-)「う……」
Σ('A`;)「!」

189 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/30(土) 18:20:32.38 ID:4wf4M3wP0
 ブーンのうめき声が、彼を現実へと引き戻す。ビーグルがブンキャノンを真正面に掲げた。

(`A゚#)「どうすんだ!? どうしてくれんだ、この野郎ぉぉおおおぉぉぉ!!」

 内臓されたメガ粒子砲が光り始める。しかしエネルギーの充填には、まだ時間がかかるようだ。

(`A゚#)「ちくしょう! 早く充填しろよ!
   死ねぇ! 死ねぇぇえええぇぇぇ!」

 溢れ出す禍々しい光。次の瞬間、激しい光と灼熱が機体の中心を撃ち抜いた。

('A`;)「……あれ?」
(;-ω-)「うう……」

 ドクオは自分の腹を見た。壊れた計器のカバーが、深々と突き刺さっている。
 ブーンの指が操縦桿を、トリガーごと握り締めていた。
 どんな出鱈目な狙いでも、至近距離なら外れない。240mm低反動キャノンが、ビーグルのメガ粒子砲を破壊していた。

('A`;)「そんな……これで終わり……?」

 ジェネレーターが爆発を起こす。宇宙(そら)に小さな華が咲き、一つの命が散っていった……

191 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/30(土) 18:21:03.33 ID:4wf4M3wP0
         ※

( ・∀・)「単身、12機の敵機を破壊。ブーンに名誉勲章を授ける」
(*^ω^)「ありがとうございますお」

 壇上の彼。嬉しそうな彼。子供っぽい横顔を見つめながら、私は小さな疑問を抱いた。
 なぜ彼が表彰されているのだろう? いつも表彰されるのは自分だったのに。

 彼は鈍くさくって、いつもお荷物だった。頼ってくる表情が子供っぽくてウザッたかった。
 死んでしまっても、ハッキリ言って問題無かった。昔のよしみで忠告だけはしてやったけれど。

 なぜ彼が表彰されているのだろう? 理解できない。

 ブーンは艦長席から降りてくると、一瞬こちらを見た。
 どうするのかと思いきや、頼りない笑顔を浮かべ、無言で去っていった。(了)
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