334 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:32:21.90 ID:r3nil8c20

奪うことは、おそらく不可能。

でも、彼女なら。
きっと助けに来てくれる。

刑務所の中で、身内がここにいるのだと言って、
その人の面会のついでに話し相手になってくれたあの女性。

根拠の無い自信だが、彼は確信していた。



──それにしても。

( ,,゚Д゚)「どうして、こんな事になっちゃったんだろうな・・・」

言葉と共に溜息が漏れた。

335 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:33:18.13 ID:r3nil8c20

──確かに、俺は人を、この手で殺してしまった。

・・・己が生きるために。
幼い命を、この手で絶った。

それは、否定のしようもないことだった。

あれはおよそ3ヶ月ほど前、スラムを歩いていたときの事。

「ちょいとお兄さん、お金貸してくれない?もちろん全額」

という声に振り向いてみたら、
10代半ばぐらいの女の子が、すぐ後ろに立っていた。
刃渡り40cm程の、短剣を持って。

裕福ではないギコだったが、今日はたまたまお金を持っていた。
病気の妹の、誕生日だったのだ。

たいしたものは買えないからせめて早く、
と近道のためにスラムを選んで、こんな事になるとはな・・・

己の不運を呪いながらギコは「これは妹のために使うから、君には渡せない」と言った。

女の子は、手に持った刃をこちらに突き立て、突進してきた。

337 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:34:21.29 ID:r3nil8c20

殺らなければ殺られる、そうギコは直感した。

だから、ギコも腰に刺した剣を抜いて──


その後、立っていたのはギコだけだった。
少女はもう少女では無かった。

その後、呆然としたギコは通行人に目撃され、そのままお縄にかかった。

─正当防衛・・・だったのだ。

仕方ない、とギコは思う。
己が生き残ろうとするのは、人間の本能だから。


・・・でも、あの女の子には悪いことをした、そう思ってもいたのだ。

俺が、死んでいれば、と。




(,,゚Д゚)「にしても、死刑はないだろ・・・」

ギコの溜息は止まらない。

339 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:35:46.27 ID:r3nil8c20


(´・ω・`)「ふぅ・・・」

ギロチンの下で死を待つ青年を見ながらショボンは息を吐いた。

死刑執行人なんて、くだらない。
刃を繋ぎとめる縄を自分が切れば、この男はもれなく絶命するのだから。

(´・ω・`)「こんな死に方、なまぬるいな・・・」

もっと、もっともっと苦しめばいい。そう彼は思っていた。

彼は、彼の家族を無残に、無差別に殺された事がある。
それ以来、死刑囚を見下す様になったのだ。

─彼らに人権など、与えてはいけない。



─無残に殺されるべきである、と。


340 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:36:41.76 ID:r3nil8c20

(*゚ー゚)「はぁっ、はぁっ・・・お願い、間に合って!!」

現在時刻、9時58分43秒。
ギコの公開処刑は10時丁度に行われるのだ。

息を切らし、しぃは走る。

(*゚ー゚)「お願い、間に合って!!」

腰に提げた細く長い剣の鞘がベルトの金属に当たって高い音を出す。

スピードは、衰えない。


(*゚ー゚)「あそこね!」

処刑が行われると予告されていたその広場は、人だかりであった。


(*゚ー゚)「ごめんなさい、ちょっと通して!」

人を掻き分け前へ、前へ泳ぐ。

刑務所にいる兄に会うためにそこへ向かい、出会ったギコという青年。
彼をギロチンから救うため、しぃは処刑場の真ん前に立ちはだかった。

341 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:37:38.10 ID:r3nil8c20

( ,,゚Д゚)「しぃ!お前・・・やっぱり、来てくれたのか!!」

(*゚ー゚)「9時59分32秒。ギリギリだけど、間に合ったわ」

悠然と微笑むしぃ。
安堵の息を吐くギコ。

(*゚ー゚)「さぁ、今すぐ助けるから、ちょっと待っていて」

彼女の視線は、死刑執行人へと向かう。


(´・ω・`)「邪魔をする気かい?執行時間はもう過ぎた、妨害ならただでは済まさないよ?」

死刑執行人、ショボンが問うた。



(*゚ー゚)「ええ・・・もちろん、ただで、とは言わないわよ」

343 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:39:00.35 ID:r3nil8c20

その刹那、二条の剣の交差。
甲高い音が鳴る。

素早さでは両者ほぼ互角。

(*゚ー゚)「せいっ!」

しいの低い姿勢からの刺突。

ショボンは幅広の剣を盾にする。

(´・ω・`)「なかなかやるようだけど、僕も素人じゃないからね」

上段に構えた剣を振り下ろす。
その速さは目にも留まらない。

(*゚ー゚)「甘いわっ」

しぃはいつの間にかショボンの懐に潜り込んでいた。
そのままみぞおちに蹴りを放つ。

(´・ω・`)「ぐっ・・・」

ショボンが片手で腹を押さえてよろめく。

処刑を見に来た観客は、この処刑場の決戦に何も言わなかった。
ある者は戦いに見とれ、ある者は野次を飛ばしていた。

344 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:39:57.80 ID:r3nil8c20

(*゚ー゚)「別に私は、あなたを殺そうとは思ってないのよ?

    少しだけ、眠ってて?」

いつの間にかショボンの後方に回り込んでいたしぃ。

執行人の首根っこ剣の柄を叩き込む。
彼は、無音のまま倒れた。


観客は完璧に野次馬と化し、勝者であるしぃに大歓声を送った。

( ,,゚Д゚)「しぃ!怪我はないか!?」

(*゚ー゚)「えぇ、この通りぴんぴんしてるわ」

彼女はそう言いながら執行人の腰に付けられた鍵を奪う。

349 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:44:26.12 ID:r3nil8c20

かちゃり、と独特の音がしてギコは処刑器具から解放された。

服の埃を払うギコ。

( ,,゚Д゚)「助かったぜ、礼を言うよ」

しぃはギコの両の手をそっと握る。


(*゚ー゚)「いいえ、礼には遠く及ばないわ。だって貴方、好きで人を殺したわけじゃないんでしょ?」


( ,,゚Д゚)「あぁ、仕方がなかったんだ」

(*゚ー゚)「そう・・・そうよね」


352 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです ID変わったけど>>349続きです New! 2006/10/01(日) 23:47:02.76 ID:fm/KAads0



ドスッ

直後、鈍い音。
肉を、刃が貫いた。

( ,,゚Д゚)「あ・・・」

なんだ、胸があつい・・・
どうして、左胸から剣が生えている?

(´・ω・`)「この期に及んで、まだ貴様はそんな事を言うのかい?

       俺達の妹を刻んで殺して、それでもなお」


貴様、倒れたんじゃ・・・


(´・ω・`)「フン、いい顔をしているね。

      しぃ、君の考えた芝居はどうやら効果的だったようだね」

(*゚ー゚)「ありがとう兄さん」


354 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:48:57.06 ID:fm/KAads0

そんな、こいつが兄?
芝居?妹を殺した?

もしかして・・・?

( ,,゚Д゚)「どうして・・・こんなこ・・・」

それでも口は疑問だけを発する。
こぷ、と口から血が流れた。

しぃは妖艶と微笑む。
右手には固く握られた刃が輝いていた。

(*゚ー゚)「私達が、心も体もずたずたにして殺してあげようと思ったの。
    人を殺し、少しでも傷ついたあなたに取り入るのは簡単だったわ。

    言ったでしょ?『礼には及ばない』って」


356 (*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです New! 2006/10/01(日) 23:50:19.60 ID:fm/KAads0


右手を、大きく振りかぶった。
もう、彼女は止まらない。


(*゚ー゚)「あなたは、ギロチンで死ぬなど生ぬるい。



    あたし達の手で・・・じゃなきゃ、救われないわ」



(*゚ー゚)しぃが勘違いをしているようです おわり



すいません、途中でさるさんくらってID変えてきました(´・ω・`)
批評などありましたらお願いします

そして>>311お待たせしました

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