362 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/01(日) 23:54:35.41 ID:zQJ6o9A40
その高校は昼休みを迎えていた。

('A`)「フヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ」
騒がしい教室の端っこで、携帯を見つめ、いかにも怪しげに笑うドクオがいた。
( ^ω^)「どうしたお?」
('A`)「わっ、ブ、ブーン! ななななんでもねーよ」
(´・ω・`)「その漫画的な驚き方……ハッ!」
('A`)「ちょ!」

(´・ω・`)「これは……」
(;^ω^)「うぇ」

ドクオの手から奪い取った携帯のディスプレイには。
特定の嗜好を持つ人物の性的好奇心を煽るイラスト、もといエロ画像が映し出されていた。

(;^ω^)「おま……さすがにドラえもんに出てくるしずかちゃんのエロ画像はねーよ」
('A`)「……」
( ^ω^)(……なんだお……?)

ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ

365 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/01(日) 23:55:57.06 ID:zQJ6o9A40
(;^ω^)「……!」

ドクオがその見苦しい身体から放っているモノ。
黒々しい、邪気に満ちたオーラだった。

('A`)「しょぼん……返せ……俺の……ハニーを……!」
(;^ω^)(うわぁ……)

(´・ω・`)「ドクオ」
('A`)「ん?」
(´・ω・`)「……GJ」
('A`)「!」

('A`)「わかるか!同士よ」
(´・ω・`)「当然。レトロとロリ、そしてお風呂場などでの充実したエロス。しずかちゃんの容姿には無限の愛しさが含まれているよ!」
('A`)「おおおおおおお!しょぼん!」
(´;ω;`)「ドクオぉぉぉ!」
熱い抱擁を交わす二人。
(;^ω^)「えー……」
ブーンですら引いていた。

367 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/01(日) 23:57:56.99 ID:zQJ6o9A40
………
……


帰路。
ブーンとツンは一緒に帰るという事を日課としていた。
方向が同じだから、というのが双方が合意に至った理由である。
まぁ、ありがちといえばありがちだ。

ξ゚听)ξ「へー」
( ^ω^)「……感想はそれだけかお?」
ξ゚听)ξ「そんな変態話にどんな反応すればいいのよ」
(;^ω^)「……それもそうだお」
昼休み、ドクオとしょぼんの間で起こった禍々しい出来事は、
間違っても女性に話すものではなかった。
相変わらず空気の読めないブーンに、ツンは一つため息をついた。
彼女ももう、ブーンの言動に慣れているのだろう。

ξ゚听)ξ「それにしても、ドラえもんかあ」
( ^ω^)「ツンはドラえもんが好きなのかお?」
ξ゚听)ξ「まあね」
( ^ω^)「うは、藤子信者きめえ」
ξ゚听)ξ「……」
( ^ω^)「……ごめんだお」

371 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/01(日) 23:59:09.50 ID:zQJ6o9A40
ξ゚听)ξ「でもあれって、楽しい話も一杯あるけど、怖い話もあるよね、結構」
( ^ω^)「アリに世界が征服されたり」
ξ゚听)ξ「夢と現実が混濁したり」
( ^ω^)「のび太が団子食って家に帰れなくなったり」
ξ゚听)ξ「なんだ、あんたも結構知ってるじゃない。あとねー……独裁スイッチ」
( ^ω^)「ああ、みんないなくなっちゃう話かお?」
ξ゚听)ξ「そうそう。怖いよねー」
( ^ω^)「ツンは僕がいないと困るかお?」
ξ゚听)ξ「んー……あんた一人ならいなくなってもいいと思う。というかむしろ今すぐ死ねばいいと思う」
(;^ω;)「……」



ξ゚听)ξ「はーあ」
一つの岐路でブーンと別れて、ツンは一人。
都会とは言えないこの街だが、夕暮れ時でも人通りは結構多い。
買い物に急ぐ主婦。サッカーボールを追いかける少年。自分と同じように、帰宅する高校生。
適度に騒がしくて、平和だ。

ξ゚听)ξ「♪〜〜」

そんなとき。
それは訪れた。

374 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/02(月) 00:00:39.82 ID:X4O2ugoJ0
足音が、一つ消えた。
ξ゚听)ξ「え……?」
振り返るツン。
ついさっき、彼女の脇を通り過ぎた女性がいない。
ここは一本道。どこに隠れることもできないはず。

ツンが困惑している最中に、また一つ、消えた。
ξ゚听)ξ「……」
もう一度前を向く。
ヨタヨタと自転車をこいでいた中年男が消えていた。
ξ゚听)ξ「なに……なに…………」

一つ、また一つ。
足音だけではない。
カラスの鳴き声。排気音。家から響く生活音。
全てが、消失した。

無音の中に、ツンは独り取り残されたのだ。

ξ゚听)ξ「誰か……」
独り言のように彼女は呟く。
当然、応答はない。
ふらふらと歩き出す。ジャリ、ジャリという自分の足音が恐ろしく感じる。

ξ゚听)ξ「誰か!」
今度は叫んだ。それでもなお、返事はなかった。
ξ゚听)ξ「なんなの……これ……」
現状が把握できない。誰もいないという事実が飲み込めない。

378 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/02(月) 00:03:05.11 ID:X4O2ugoJ0
当然のように恐怖に駆られる。
それと同時に、一つの事実に思い当たった。
これは、そうだ。
さっきまで話していた、ドラえもんの話。
独裁スイッチの状況のそっくりだ、と。

そのときだった。
???「もしもし」
ξ゚听)ξ「!」
後ろから突然の声。

ξ゚听)ξ「誰……」
( ∵)「こんにちは」
そこには男が立っていた。
ツンは呆然と立ち尽くす。彼女の、男に対するファーストインプレッションは唯一つ。でかい、だった。
身長は180cmは優に超えている。ひょろりとしているが、見上げた先にある両目は、静物であるかのように生気がなく、ツンの恐怖心を煽る。
( ∵)「私はビコーズです。ツンさん」
ξ゚听)ξ「びこーず……?」
( ∵)「あなたは今、全生物を世界から隔離しました」
挨拶もそこそこに、男は妙なことを語り始めた。

ξ゚听)ξ「隔離ですって……?」
( ∵)「そう、あなた自身の力によって、ね」
ξ゚听)ξ「力……? そんなもの、私には」
( ∵)「貴方の中にある、潜在的な力の、無意識による覚醒が生物の隔離という結果を引き起こしました。それ以上の説明をする術を、私は持ち合わせていません」
淡々と話す男。あまりにも狂っていて、無駄に青臭い単語の数々に、ツンは振り回されていた。

380 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/02(月) 00:04:35.56 ID:X4O2ugoJ0
ξ゚听)ξ「そんな……じゃあ、みんなは」
( ∵)「あなたが消しました」
ξ゚听)ξ「うそよ、うそ!」
( ∵)「現に、今この世界は誰もいない」
ξ゚听)ξ「……」
( ∵)「貴方の友達も、家族も」
ξ゚听)ξ「やめて……」
( ∵)「想い人も」
ξ;;)ξ「やめてよ!」
ついに、ツンは悲鳴をあげた。

( ∵)「ま、私にはどうでもいいことですが……それでは」
ビコーズは最後にそう呟き、ツンに背を向けた。
ξ;;)ξ「え……」
( ∵)「後は独りで、この世界を楽しんでください」
ξ;;)ξ「そんな、ちょっと!」
駆け出すツン。

( ∵)「ごゆっくり」
ビコーズを捉えようとした彼女の手は、見事に空を切った。

382 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/02(月) 00:06:01.39 ID:X4O2ugoJ0
ビコーズも消えた。
ツンは、本当の孤独を得た。

ξ;;)ξ「……うぅ……うぅぅう……」
太陽は落ち、空は徐々に、闇に包まれていく。
ξ;;)ξ「寂しい…、こわい…、助けて…皆戻ってきて…」
無機的な空間。
彼女の心の悲鳴を聞く者は、誰一人としていなかった。

ξ;;)ξ「誰か……誰か……お母さん……お父さん……」

ξ;;)ξ「…………ぶーん……」

386 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/02(月) 00:08:28.82 ID:X4O2ugoJ0
翌日。
通常の世界。
(;^ω^)「ちょ、今度はエスパー魔美かよ!」
('A`)「だから見るんじゃねーよ!」
(´・ω・`)「いや、すばらしい!彼女の、羞恥心に乏しいが故の魅力。スタイルも抜群!藤子先生の煩悩は共感に値するよ!」
('A`)「しょぼんんんんんん!」
(´・ω・`)「ドクオオオオオオォォォォ」
(;^ω^)(うわあ……)
デジャヴのような風景。
通常の世界。

390 お題:人がいない他 sage New! 2006/10/02(月) 00:10:23.60 ID:X4O2ugoJ0
隔離された世界。
気の狂ったツンを彼方から見下ろすビコーズがいた。
( ∵)「……ふふふふふ」
彼は小さく笑っている。

ビコーズの言葉は全て虚言だった。
本当に隔離されたのは、ツン。そして彼女を隔離したのは他ならぬ、ビコーズだ。
そしてその存在は、無いものとされたのだ。
あのような芝居をしたのは。
単なる、ビコーズの嗜好によるもの。
他人の絶望、発狂。ビコーズが最も好むものである。

ビコーズ、身長192cm。人外の存在。
彼はこれから、ツンが野垂れ死にする様を見届ける。

終。


以上です。
感想・批判が頂ければ幸いです。

inserted by FC2 system