181 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 保守 New! 2006/10/01(日) 18:13:33.71 ID:yUuU3lsc0
  ('A`)「……バーボンハウス?」

今夜も一人の男が何の因果かその店へと吸い込まれていった。

(´・ω・`)「やぁ、ようこそバーボンハウスへ」
  ('A`)「マスター、キツイの頼む」
(´・ω・`)「今にも死にそうな顔をしているね」
  ('A`)「……色々、聞いてくれるか?」
(´・ω・`)「さて、話をするのは君の自由さ。そんな湿ってたんじゃ口火も点きやしない。まずは
      このテキーラでも飲むと良い」

恐る恐る少しだけグラスを傾けたが、顔をしわくちゃにして男はすぐにグラスを戻した。

  ('A`)「……カッ! こいつはキツイや」
(´・ω・`)「……」

それっきり俯いたまま何も喋らない男だったが、やがてポツポツと語り始める。

182 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 保守 New! 2006/10/01(日) 18:16:45.82 ID:yUuU3lsc0
  ('A`)「マスター、俺よぉ仕事で嫌な事があってさ」
(´・ω・`)「良い事だらけだったらニートやフリーターなんて居ないさ」
  ('A`)「冷てぇなぁ……直接的には俺は悪くないんだ。連帯責任って言うかさ……はぁ……
      もう仕事辞めてぇよ」
(´・ω・`)「怒られたのかい?」
  ('A`)「……あぁ。怒られた位でこんなに凹んでるのも恥ずかしい話だけどな……やっぱ辛いよ」
(´・ω・`)「君は刑務所に入ったことはあるかい?」

急な話の切り替わりに、男はしばらくボーっとマスターの顔を見つめた。

  ('A`)「また唐突だな、マスターは何か武勇伝でも持ってるのかい?」
(´・ω・`)「まさか、僕はそんな度胸なんてないさ。一度何かで見てみるといいよ、彼らの暮らし振りなんかを」
  ('A`)「?」
(´・ω・`)「僕は初めて見た時、なんて自分には自由があるんだろうと思ったよ」
  ('A`)「……」
(´・ω・`)「彼らは塀の外には出られないけど……君はどうだろうね」
  ('A`)「俺には塀の外が真夜中の大海に見えるよ。まるで泳ぎきれそうにないほどの、さ」
(´・ω・`)「さて、それはどうだろうね」

言ってマスターは徐にテキーラの残るグラスにオレンジジュースを注ぎ、ステアし始める。

184 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 終了 New! 2006/10/01(日) 18:20:18.87 ID:yUuU3lsc0
(´・ω・`)「真夜中って言ったね。つまり、もしかしたら今は見えない幸せの島が、目の前に
      浮かんでいるかも知れないってことだ」

そしてグラスの淵からゆっくりとグレナデンシロップを注いだ。

(´・ω・`)「はい、テキーラサンライズ。僕から夜明けのプレゼントだ。どうしようもなくなったら
      カクテルの作り方くらいは教えてあげるよ」
  ('A`)「マスター……」

眉間にシワを寄せながらグラスを飲み干す男。その頬がほんのりと朱を帯びた。

  ('A`)「……また、来るよ。まだ助け舟は要らなそうだ」
(´・ω・`)「それはよかった。次は良い話を持ってきてくれると嬉しいよ」

そしてまた、バーボンハウスには静寂が戻った。

−終−
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