19 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/27(水) 20:28:42.30 ID:ES9vuDu/O
(;^ω^)「あ、あれはなんだお?!」

視線の先には、木の足場が網の目のように張り巡らされた、工事中の建物があった。
もちろんそれ自体に対して驚いているわけではない。
その建物の上で、数十人もの男達が暴れていたのだ。

(;^ω^)「ちょwww危ないおwwwww」

よく目を凝らすと、足場にぶら下がりながら、脚を器用に使って争っている男が見えた。
遠目からではうまく判断できないが、ぶら下がる男一人に対して集団で襲っているように見える。

( ^ω^)「そういえば、いいもの持ってるお!」

ブーンは何かに気付き、大きなカバンを探り始めた。
そして、まるで某猫型ロボットの如く『いいもの』を取り出し、それを覗き込む。
それは、主に観光・観戦などに使用される、ごくありふれた双眼鏡だった。
ブーンが双眼鏡を通して建物を見ると、まるで自分が近づいたかのようにズームして見えた。当たり前だが。

(;^ω^)「やばいお!」

見ると、3人一斉に飛び掛かっていた。
しかし男は全く怯む様子はなく、その長い脚を振り上げ、襲い来る敵に踵落としを決める。
当たった男は運悪くバランスを崩して転落。
ブーンは流石にグロシーンを見たくないらしく、そのままぶら下がる男に視線を向けた。

タイミングをずらして殴り掛かる二人に対して、腕の筋肉だけで身体を持ち上げ、逆上がりの要領で拳を躱す。
そのまま一回転して、男の背中に蹴りを入れた。
あっけなくやられた二人は、空中できりもみしながら、数秒で地面へと接触した。

21 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/27(水) 20:29:59.42 ID:ES9vuDu/O
(;^ω^)「あの人テラツヨスwww」

彼の感じた通りだった。
ある男は攻撃を避けられ転落。
ある男は両の足で挟まれ、無理矢理空中へ投げ出される。

パンッ――

突如乾いた音が鳴ったかと思うと、足場を掴む手が弛み、強靱な男は呆気なく落下した。
ふと横を見ると、黒服の男の手には、闇夜に溶け込むかのような黒い鉄の塊があった。

(;^ω^)「やべぇwwwこんなことなら旅行なんてくるんじゃなかったお」

ブーンはこの惨劇を見て、自分の愚かさに絶望した。

         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|       あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれはたまたま旅行に来たんだが
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        気付いたら事件に巻き込まれていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人       な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ      おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ      頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r ー---ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    催眠術だとか超スピードだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ   そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ   もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

23 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/27(水) 20:30:55.61 ID:ES9vuDu/O
ブーンの心境は、まさにこの通りだった。
思い切って落下したであろう場所に目を向ける。
そこには、骨が肉を突き破り、内蔵がぶちまけられている光景が――なかった。
潰れた蛙のような光景を想像していたが、傷だらけになりながらも、男は立っていた。

( ^ω^)「うはwwwktkr!」

ブーンは男が生きていた事に驚き、喜びの声を上げた。

パンッ――

喜びも束の間、辺りに銃声が響き渡る。
上を見ると、先程の黒服の男が狙いを定めていた。

( ^ω^)「危ないお!」

叫ぶと同時に再び弾丸が放たれる。
気付けばブーンは走り出していた。
ブーンには弾丸がまるでスローモーションのように映り、一瞬が永遠に引き伸ばされる感覚があった。

( ゜ω゜)「速く!もっと速く!」

持てる力を全て使い、傷だらけの男へと駆ける。
だが、それは間に合う事はなく、地面へと着弾した。
ブーンは当たらなかった事に安堵しつつ、数秒遅れて到着する。

24 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/27(水) 20:31:57.34 ID:ES9vuDu/O
「カット!カッート!☆@∪→∀◆」

突然英語で叫ぶ声が聞こえた。
後ろ半分はブーンの学力では理解できなかったが、前半部分だけは聞き取れた。

( ゜ω゜)「……お?」

理解するまでにたっぷり10秒費やして、ブーンは辺りを見回した。
よくみると、カメラや照明器具などがある。
先程カットと叫んだ男がブーンへと近寄る。

「$*☆※♭ヰÅ∬」

(;^ω^)「あ、あいどんとすぴーくいんぐりっしゅ」

ブーンは頭脳をフル回転させて、稚拙ながらに英語を話せない事を伝える。
すると、それが通じたのか、もう一人東洋系の男が近づいてきた。

25 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/27(水) 20:33:05.20 ID:ES9vuDu/O
「君は日本人かい?今は映画の撮影中なんだ」

( ^ω^)「……」

( ゜ω゜)「亜qwせdrftgyふじこlp;@ 」

どうやら通訳らしく、ブーンに事情を伝えた。
まさか撮影だとは思っていなかったらしく、意味不明の奇声を上げながら卒倒した。

「ジャッキーさんが、『勇気をくれてありがとう』だそうだ。……って、聞こえちゃいないか」

その後ブーンは担架で運ばれ、病院のベッドで目覚める事となった。
ブーンが飛び込んだシーンは、NG集として全国の映画館で放映されたらしい。


( ^ω^)がラッシュアワーに出演するようです


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