39 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:47:03.16 ID:oEPnQpDM0
過疎ってる内に・・・
ブーン小説らしくないのは承知の上で投下


「ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです」

──あたしは、いつもこの蒼の海辺で歌っていて。

──そこで遊ぶ王子の無邪気な表情に憧れて。
   たまたまとはいえ、溺れた彼を助けた。

──そして、魔女にこの声を売り、足を得て、王子に近づいた。


そこまでは、ちゃんと計算どおり。



そう、人魚の掟を破ってここまでやったわ。
あのひとに、あいたくて。

40 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:48:28.20 ID:oEPnQpDM0
( ^ω^)「セバスチャンっ!お隣のお姫様が来てくれたお!」

豪奢な城の最上階。
この部屋は海に面しており、どんな美しい瞳よりも青い、空を落としたような蒼い海がいつでも望める。

(´・ω・`)「ショボンです、ブーン王子。だから今日はそんなにおめかししてらっしゃるのですね」

( ^ω^)「おっおっ。分かるかお?今日は赤で決めてみたお!」

(´・ω・`)「似合ってな・・・いえ、お姫様とまた海辺で遊ばれるんですか?」

( ^ω^)「そうだお、行って来るおー」

ぱたぱたと音を立て、両手を広げた走りで王子は出て行った。

(´・ω・`)「王子様ももう17・・・そろそろ結婚相手が必要・・・だな」

かちゃり。
いきなりドアが開く。



41 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:49:05.91 ID:oEPnQpDM0

美しい女性。ショボンは息を呑む。

そして一息深呼吸して、息を整えて言う。

(´・ω・`)「これは王女様。ブーン様は先に海に行かれましたよ」

王女は豊かに広がるドレス姿。
この姿で海を遊ぶというのだから、たいそうおてんばな姫だ。

しかし、王女は柳の様にしなやかに頷き、
身を翻して海に近道の階段へ優雅なステップを踏み向かう。

そして、階段を下りる前に一度だけこちらを向いて口を開いた。

(*゚ー゚) 「・・・それはどうもありがとう、ショボン」


42 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:49:39.96 ID:oEPnQpDM0
─王子は隣国の王女様に夢中だった。

─王子は、彼が溺れたときあのひとが助けてくれたのだと思っているの。


─ねぇ、王子


あたしは、ここよ。

43 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:50:25.89 ID:oEPnQpDM0

(´・ω・`)「おーい、そこの侍女。そこの花をこっちに持ってきてくれないかい」

ξ゚听)ξ「・・・」

その女は返事すらしないが、紙に包まれた花束をすぐさまこちらに運ぶ。

(´・ω・`)「お前は、よく働いてくれる」

侍女は一礼する。ただの町娘ではない、と思えるその気品が漂う。

(´・ω・`)「・・・王子が、海からお前を連れてきたときは困ったけどね」

苦笑するショボン。

女はショボンを上目遣いに見つめる。
そしてその後、周りをきょろきょろと見回し、首をかしげる。

(´・ω・`)「あぁ、この飾りつけが気になる?
      このパーティ会場、いつもよりもよほど豪華になっているものね。



      これは・・・王子の隣国の王女様との婚約披露パーティだよ」


44 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:51:07.88 ID:oEPnQpDM0
ξ゚听)ξ「・・・っ!!!」

侍女は顔の筋肉を盛大に動かし、驚愕の表情をする。
その顔には、少し嫌悪感が混じっているように見える。


(´・ω・`)「お前も、心配なのか?あの王女が・・・」

ショボンが顔を曇らせて言う。

彼は思った。
王子を彼女と結婚させていいものか。

あの女は、顔こそ美しいが、性格はそれに遠く及ばない。
顔立ちの整った侍女に対しては、ひどい嫌がらせをしているとも聞く。

この娘は、声こそ出ないが美しい。きっと何かされたのだろう。

慰めの言葉をかけようとしたが、

( ^ω^)「セバスチャン、こっち来て一緒にタキシード選んでくれおー」

という王子の間延びした声が聞こえたため、女を独りにさせるのは忍びないと思いつつその場を離れた。


ξ゚听)ξ「・・・」

だから、声のない娘の翳った表情を、潤む碧い瞳を誰も知らなかった。


45 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:52:10.54 ID:oEPnQpDM0
─このあとも、婚約パーティはつつがなく行われて。

─あたしなんか、王子に相手にされるはずもなくて。



──王子は、王女さまと結婚してしまった。


王子が結婚したその夜。

あたしの部屋は一階の海に面した部屋。そこで眠ろうとしたんだけど、なんだか眠れなくて。
窓から海に出て足を浸していたら、姉が来た。

早く海に帰って来いと言った。魔女の魔法は解いてやる、と。

あたしは、ただ黙って首を横に振った。

姉は悲痛な声で言う。
そうでなきゃ貴女は泡に──

46 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:53:07.03 ID:oEPnQpDM0

パンッ

姉が、胸から血を吹いて倒れた。

あたしは振り返る。

そこにいたのは・・・今頃王子と一緒のベッドで眠っているであろう、王女様。
右手に、銃。

(*゚ー゚) 「ウフフ・・・あなた、やっぱり人魚だったのね」

そこからは彼女の独白が続いた。
止めたくてもあたしには止めようとする声が無かった。

動けば・・・撃たれる。そんな気がして。

(*゚ー゚) 「見て、この私の髪の付け根の色・・・黒いでしょ?」

確かに、ほんの僅かな部分だけ、漆黒のカラスのように黒かった。

(*゚ー゚) 「これね、染めたの。
     王子が溺れた後、それを探すためのお触れが出て、
     助けた女の特徴が記されていたの。

     私はそれに似せて・・・姿を変えた。
     王子に近づくためにね」

あっけらかんと王女は言う。

47 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:53:41.95 ID:oEPnQpDM0
(*゚ー゚) 「なのに、貴女を王子は拾った。
     本能的に貴女が恩人だと気付いているのかもしれないのよ・・・」

王女の顔に強い翳りがさす。

(* ー ) 「ここの国は裕福なの。私の国より遥かに。
     観光資源・・・主に、海だけど、この収入はとても多い」

顔を上げた王女。
どうして、そんな・・・

(*゚ー゚) 「私の野望にはいつか貴女が脅威になる可能性があるの。

     なにより、王子に対して偉そうな態度をとるのが気に入らない。
     ツンデレ?舐めんじゃないわよ・・・3次元ではそんなの嫌われるのよ。



     だから、死んで?」


すがぁん、と重い音がした。


硝煙の匂いに包まれたその部屋で、
彼女は、哂っていた。   

48 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:54:16.89 ID:oEPnQpDM0


─別に、王子を奪おうとか、そんな気持ちは無かったのにな・・・。

いつだったかしら。あたしにまだヒレがあった頃。
岩陰に潜んで歌うあたしの歌声を聞いて、彼は本当に心地よさそうな顔をしていたの。

恥ずかしくて人前で歌えなかったあたしに、勇気をくれたの。

傍に居たくて、魔女にお願いしたときに声を失ってしまうと聞いてとても辛かった。
でも、他に何か、雑用でもしてあげることができれば、と思って差し出した。

ただ、近くにいられたら良かったの。


・・・でも、これももちろんあたしの計画のうちだった。

魔女との約束は、「王子と結婚できなければ海の泡になる」

いずれ王子は、誰か高貴な女性と結婚する。
そうなれば、あたしは泡になる。


──それでこそ、計画通りだったの。


49 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:55:35.13 ID:oEPnQpDM0
( ^ω^)「あの子は・・・どうして死んでしまったんだろうお・・・」

王子、いや、王になった彼は昔の事をふと思い出した。
自分の結婚記念日に死んでしまった声のない娘。

懐かしい話だ、と王は思った。
でも、あの日からずっとなんだ。

──海から、歌が聞こえるのは──

海の泡が、歌っているのだと気付くまでにそう時間は掛からなかった。

ぽこぽこと海からつくられるそれは、澄んだ声で歌うのだ。
あの、遠い昔、海で聞いたあの声で、あの歌を。

遠く遠く愛おしい、泣きたくなるようなあの声で。


50 ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです New! 2006/09/25(月) 04:56:29.46 ID:oEPnQpDM0
ただ、その声は妻が海で溺れて死んだ時だけ・・・鎮魂歌を歌った。

それはそれは不思議な泡。

王は海に向かって語りかける。

( ^ω^)「お前達は、僕が死んだときも鎮魂歌を歌ってくれるのかお?」


ξ゚听)ξ「もちろんよ。
     そしてあなたが死んだら、この声を魔女に返して、泡は海に返して。

     あなたと一緒に逝くわ」

( ^ω^)「・・・お?」

一瞬のさざなみのあと、
海は、その泡は、いつものように歌を続けた。 



ξ゚听)ξツンは人魚姫のようです  おわり


長くなった、スレ汚しすまない

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