845 小説家は夢を見る New! 2006/09/11(月) 23:28:27.97 ID:VpH/0e1SO
題:睡眠、厨設定、ベッド、トリニクス・D・モリスン、憂、戸惑い、青春の日々

内藤ホライゾン、自称『小説家』。
自称、というのは彼が小説家になっていない、という事実を表している。
志を持ち、都会に出てきてから数か月。
彼は日々に忙殺され、最初の熱意はすっかり薄れてしまっていた。

( ‐ω‐)「……むにゃ」

睡眠の時間を削ってまで書いていては明日の仕事に差し支える。
その考えが彼をベッドに誘うのだ。
そうこうしている内に、夢は手の内から消えてしまうとは知らず。

彼が自分の事を『会社員』と名乗る時は、遠くないだろう。
そしてそれが大多数の人に用意された、夢の結末。

846 小説家は夢を見る New! 2006/09/11(月) 23:31:26.43 ID:VpH/0e1SO
「俺の名はトリニクス・D・モリスン。」

(;^ω^)「は? 鍵括弧の前は読点使うなお?」

困惑する内藤の目の前には四メートルもの巨大な剣を構えた大男。いや。

その剣はあまりにも大きすぎた。
大きく、分厚く、大雑把すぎた。
それは正に鉄塊だった。

(;^ω^)「モロパクッてるお……」

戦場に咲く一輪の花。
その花は今にも死神の鎌に吹き飛ばされ、紅い華を散らせそうに。

(;^ω^)「……僕の事かお。分かりづらい」

847 小説家は夢を見る New! 2006/09/11(月) 23:32:49.66 ID:VpH/0e1SO
モリスンの持つ大剣は、伝説の鍛冶屋、ヴァルドリガウスが鍛えた無銘の剣。
モリスンの為に創られ、モリスンのみが扱える。
リ・アルカーラ帝国主義者達、全てを斬る為に用意された。

(;^ω^)「何故武器の説明が? というか、帝国?」

「いくぞぉ!『究極神話創造斬』(きゅうきょくしんわそうぞうざん)!!」

究極神話創造斬。モリスンの秘奥義。
ただ敵に突っ込んで斬るのみの技。
だが、大剣の重さ、イリヤ神の加護を受けたモリスンにより恐るべき破壊力を誇る。

(;^ω^)「秘奥義なのに突っ込んで斬るのみ? イリヤ神? 明らかに外人なのにオール漢字の必殺技って」

848 小説家は夢を見る New! 2006/09/11(月) 23:34:06.63 ID:VpH/0e1SO
――グオオォォォォッ!!

獣の咆哮を上げ、内藤に一直線で迫るモリスン!!
危ないっ!
ぶつかるおっ!!!

(;^ω^)「ぎ、擬音に視点移動……めちゃくちゃだお」

「おーっと、モリスン。そこまでだぜ?」

ギュキュキュュッ!

モリスンの巨体が軋み、筋肉も軋み、関節も軋んだ。内藤に向かった狂刃は彼の数ミリ手前で止まり、殺意の旋風を惜しみなく内藤に浴びせる。
モリスンは歯軋りをし、声の方向を向く。 鬼、だ。

「…やはり来たか。憂、惑亥、青春(ゆう、まどい、あおはる)」

(;^ω^)「このおっさん軋みすぎだお、ロボットかお? あと、括弧はいらないお。ついでにリーダは偶数個だお」

849 小説家は夢を見る New! 2006/09/11(月) 23:35:01.91 ID:VpH/0e1SO
煌めく月光に三人の影が映える。
一人は銀髪に燃える紅の瞳。
一人は紫髪に深い緑の瞳。
一人は金髪に漆黒の瞳。

三人に共通している事は、三人とも守護の鎧を装着している事。
それは正しく神に守られている存在。

(;^ω^)「こいつら、一体何人?」

「ブリガダイ・ファイアー!」

「霧氷魔天強襲戟!」

「ルオ・フィエイム・ゾディア……」

三人は崖から飛び降り同時に破壊最強呪文を唱えた。
モリスンは塵になった。
その魂は宇宙に舞った。
彼はようやく解放されたのだった。

(; ゚ω ゚)「なんだおそりゃぁぁぁぁ!!」

850 小説家は夢を見る New! 2006/09/11(月) 23:35:50.04 ID:VpH/0e1SO
自分の叫び声で内藤は目を覚ます。体中が汗でベタついていた。
夢だった事に内藤は安堵し、自分のパソコンの前に座る。

時刻は午前三時。平生ではベッドで惰眠を貪っている時間だ。
だが、内藤にはやらなければならない事がある。

パソコンの起動と同時にディスプレイに映し出される彼の小説。

『憂と惑亥、青春の日々』

書いてる時は楽しかった。
だがそれだけではダメなのだ。
小説は自分だけが楽しむものじゃない。読者も楽しませなければいけない。

( ^ω^)「それが、作家の義務だお」

内藤に、今まで書いた全ての作品を消去するためらいはない。
客観的に自分の作品を見、否定してしまったのだ。
作者に愛されない作品など、いらない。

全ては白紙に戻った。
そこからもう一度書く覚悟があるかないか。
再び自分の作品に向き合う恐怖に耐えられるか。

――それが素人と玄人の差かもしれない。

終わり

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