426 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:12:58.96 ID:McpdgJOiO
僕は今、某県の山奥の田舎に来ている。
夕暮れの中、轍の上を車で走らせていると目的の建物を見付けることが出来た。
木で出来た引き戸を開けると、古い木造建築独特の微かな木の香りが僕を包み込む。

僕は売れないながらも物書きをやって生計を立てている。
しかし、僕には悩みがあった。
…………最近めっきり筆が進まないのだ。
平凡なスランプではあるが、貧乏作家の僕には生活そのものに大きな打撃を与える。

それだけではない。
もう才能が枯れ果ててしまったのではないかと言う自分自身への猜疑が余計に僕の筆を重くさせていた。
滑稽な程に僕は典型的な負の螺旋に囚われていた。

427 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:14:03.38 ID:McpdgJOiO
友人のドクオに相談した所、環境を変えてみればなにかが変わるのではないか?と言うアドバイスをくれた。
彼が、昔住んでいた田舎の家を貸してくれると言うので二つ返事で僕はここへ飛んできたと言う訳だ。

幸いにして電気も水道も通っている。
ドクオが言うには、年に一度別荘代わりに使うため近所の親戚が管理してくれているらしい。
僕は壁に掛けられる様に置いてあった座卓を畳の上に起き、ノートパソコンを開く。
既に物語の大筋は出来ている。あとは筆が進むかどうかの問題だ。

428 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:15:45.13 ID:McpdgJOiO
( ^ω^)「藁葺き屋根の悪魔……っと。」
ブーンの書く小説の主人公は郷土の文化を研究している学者だ。
彼はある日出張の帰りに台風で山奥で立ち往生し、一軒の藁葺き屋根の家を見つける。
そこには老婆が一人で暮らしており、彼は老婆に、夕暮れも近いため一晩泊めてくれる様に頼む。
老婆は彼を泊める事を受け入れ、その夜主人公は老婆に何か面白い話はないかと訪ねる。

老婆は淡々と「藁葺き屋根の悪魔」の話を始める。

430 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:17:31.54 ID:McpdgJOiO
遠い昔の時代、まだ病が呪いや怨霊の類の仕業だと思われていた頃、一人の女が自分の婚約者の不治の病を治すために占い師の言う通りに薬の原料となる「夜にしか咲かない花」を探しに旅に出る。

女はある日、旅の途中に怪我を負ってしまう。
女は無人の藁葺き屋根の家を見つけ、そこにたどり着くが怪我をした足では何処へも行けず、そのままそこで無念の最期を遂げたそうだ。

この地方では夜に誰かが訪ねてきたとしても決して迎え入れてはいけないと老婆は語る。
足を怪我した女の霊が代わりに花を探させるために、人を拐いに来ると言うのだ。
もし迎え入れてしまったら━━━━━

432 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:18:46.87 ID:McpdgJOiO
ドン、と急に入り口の引き戸を叩く音がした。
ブーンは恐る恐る周りを見渡す。
気付けばもう既に夜も更け、すっかり漆黒と静寂とが辺りを包み込んでいる。

もう一度ドン、と戸を叩く音がした。
ブーンは恐る恐る引き戸の向こうに居る人物に声をかける。

(;^ω^)「どなたですかお?」

「さけ……」

声が反って来た、と思った瞬間、鍵が開き引き戸ががらり、と音を立て勢い良く開いた。

433 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:20:06.89 ID:McpdgJOiO
ドン、と急に入り口の引き戸を叩く音がした。
ブーンは恐る恐る周りを見渡す。
気付けばもう既に夜も更け、すっかり漆黒と静寂とが辺りを包み込んでいる。

もう一度ドン、と戸を叩く音がした。
ブーンは恐る恐る引き戸の向こうに居る人物に声をかける。

(;^ω^)「どなたですかお?」

「さけ……」

声が反って来た。と思った瞬間、鍵が開き、引き戸がガラリと音を立て勢い良く開いた。

435 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/08(金) 13:22:27.80 ID:McpdgJOiO
('A`)「おいすーwww酒持ってきたぜブーン!!」
(# ^ω^)「………」

ブーンはピシャリと引き戸を閉めた。
折角、筆が進んでいたと云うのにこの男は………。

('A`)「ちょwwwなんで閉めんの!?折角心配して来てやったのに!!
   ………ウッ!!!」
(;^ω^)「ドクオ!?」

ドクオの呻き声にブーンは引き戸を開ける。
ドクオは家のすぐ横の道ばたで立ちションをしていた。

(*'A`)「ごめん。急に尿意が来たwww

( #^ω^)「死ね!!!!!」

おわり
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