662 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/06(水) 20:17:43.74 ID:jaqKwuzrO
( ・∀・)「こんばんは。今日は一足遅れの怪談話をしたいと思います」

( ・∀・)「おや、聴きたくない?
まぁそう言わずに。そうお時間もかかりませんから――」

男はニヤリと笑い、暗闇へと向かい歩いていく。
やがて音もせずに、大きな扉へと姿を消していった。

664 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/06(水) 20:18:31.84 ID:jaqKwuzrO
(´・ω・`)「いい話を仕入れたんだ」

彼のこの一言から、全ては始まった。
このしょぼくれた男の名はショボン。
いつもどこからともなく話題を仕入れてくる、クラスの人気者である。

('A`)「よし、聴かせてみろ」

彼と仲の良い友人――ドクオが話をするよう促す。
ショボンが話題を作り、ドクオがそれを聴く。いつもの流れだった。

(´・ω・`)「むかーしむかしあるところに、おじいさんとおばあs」

('A`)「はいはいわろすわろす」

(´・ω・`)「しょぼーん」

突然の切り返しに、思わずショボンはうなだれた。
それも仕方ない事だろう。このまま聴くと、川から桃が流れてきそうな勢いだった。

(´・ω・`)「これは昔話だけど、君が知っているようなありきたりな話じゃないから聴いてほしい」

まるで諭すように語りかけ、一呼吸置いてから話し始めた。

(´・ω・`)「昔、とても気の良い老夫婦がいてね。
ちょうど飢饉に悩まされている時期だった。
ロクに食べ物も採れず、人々は木の皮まで食べるほどだったんだ」

667 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/06(水) 20:19:19.61 ID:jaqKwuzrO
('A`)「うげぇ。木はさすがに無理だわ」

(´・ω・`)「普通ならそうだよね。でも、彼等は普通じゃなかった。
誰でも命の危機に晒されたら、理性を保てなくなる。
でもね、その老夫婦だけは違ったんだ」

('A`)「どうしてだ?」

先程までは興味ないまま聴いていたドクオは、ごくりと唾を飲み込み、続きを求めた。
一方ショボンはそれを聴いて、語り手特有の雰囲気(←変換できた)を醸し出し、続ける。

(´・ω・`)「二人には、もう余生がなかったんだ。
当時不治の病と言われた、癌にかかっていてね。
老夫婦は、近所の幼い子供たちに僅かな食料をあげていたんだ。
その親は老夫婦に感謝していたんだ。
でも、それは長くは続かなかった」

ショボンは続きを話すのも嫌だと言わんばかりの大きな溜め息を吐き、ドクオの顔を見つめた。

(´・ω・`)「……老夫婦の食料がなくなったんだ。
そしたら、親達は手のひらを返したように冷たく当たるようになった。
人間って、恐ろしい生き物だよね。自分に利益がないとわかった途端、平気で人を裏切る。
この時代だけじゃなくて、今もそうなんだけどね」

('A`)「……」

ドクオは黙ってその話を聴き続けた。
どこかで聴いたような、自分が知っているような不思議な感覚が彼を巡っていた。

668 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/06(水) 20:20:04.72 ID:jaqKwuzrO
(´・ω・`)「やがて、食料をくれなくなった老夫婦に対して、人々は憎悪すら抱くようになったんだよ。
でも、優しい老夫婦は、『私達は長くないから、貴方達が代わりに生きてほしい』と伝えた。
その言葉に対して、彼等はこう言ったんだ」

そこで一瞬喋るのを止める。ドクオの様子を覗き込み、無表情で見つめる。

('A`;)「な、なんて言ったんだよ?!」

その空気に耐えられなくなったか、無理に大声を上げて気を紛らわせようとした。

(´・ω・`)「『なら私達の為に死ね』
そう言ったんだ。事もあろうか、死ねだなんて酷過ぎると思わないかい?
しかも、抵抗すらできない老夫婦を刺し殺したんだ。……自分達が食べる為にね。
彼等にとって、利益のない老夫婦は、ただの食料にしかならなかった。
そのまま鍋にされて、食べられてしまったんだよ」

('A`;)「人を食べる?ありえない、作り話だろ?!」

冷や汗をダラダラと流し、焦点の合わない目で必死にショボンを見る。

(´・ω・`)「残念ながら、これは真実なんだ。
ここに、証人がいる」

彼の指差す先は、ドクオだった。
ドクオは慌てて後ろを振り向くが、当然何もあるわけがなかった。

――ボーン、ボーン

唐突に時計が2時を知らせる鐘を鳴らす。
まだ昼間だというのに、幽霊でも現れたかのように不気味な空気が漂う。

670 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/06(水) 20:22:05.25 ID:jaqKwuzrO
('A`;)「なんで、俺なんだよ……?」

(´・ω・`)「覚えていないかい?君の先祖はね、その老夫婦を食べたんだよ。
そして、僕は老夫婦の子孫ってワケ。わかるかな?
そうそう。家では全員裸なんじゃないかい?」

('A`;)「それがどうしたってんだよ?裸なのはよくあるだろうが!」

(´・ω・`)「心のどこかで認めてるんだろう?自分の先祖が何者なのか。
       そうだ。この話には続きがあってね。
       老夫婦を食べた後、彼等は老夫婦を見舞いに来た息子達をも襲ったんだ。
       服を引き千切り、丸裸にする。首を落とし、そこから溢れる血を啜る。
       最後にその肉も食べてしまった」

淡々と語るその口調には、僅かに怒気を帯びていた。
その前では、ドクオが嗚咽を漏らしながら話を聴いている。

(´・ω・`)「その息子達は、自分の身体を喰われながら、必死に何かを唱えていた。
       君達を呪う為にね。その目印として、服を着るのを嫌うようにしたんだよ。
       ドクオ。君達はもう人間じゃない。『裸族』なんだ。」

('A`)「……そっか。昔ばあちゃんに聴いたのを思い出したよ」

(´・ω・`)「思い出したか。なら、さよならだ」

今まで優しかったその表情が、突如悪魔のように変貌する。

(`゚ω゚´)「僕の為に死ね」

呪いの言葉をぽつりと呟いて、銀色に光る刃物がドクオを貫いた。

673 ◆dOKfgIN.m6 New! 2006/09/06(水) 20:24:19.41 ID:jaqKwuzrO
( ・∀・)「いかがでしたでしょうか?」

( ・∀・)「今時呪いや復讐だなんて、信じられないですよね。
これは、そんな君達に聴かせたい話でした。
次があれば、また語りたいものですね」

fin

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