816 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:10:25.43 ID:9kQ+JR9y0
金氷な、重且つ大な。
気持ちも落としてしまうような雨が降り注ぐ、一面灰色の港町を、青い少女が走っている。
尾のように長い髪、角の生えた異形の容姿。
無表情ながら、負の感情が見え隠れしている。
その矛先は後ろにつけている奴等の所だろうか。

そう、少女は追われているのだ。
十数人、一人を追うには十分すぎる人数。映画やドラマでは定番の1シーン。
さしずめ、それを必要としてしまう何かを、あの青い少女が握っているといったところだろうか。

少女は走り続ける。

おそらく、少女の目指す所は港だろう。
もうすぐ船の出る時間だから。
だが、こんな時化た時に出る船はかなり珍しい。
そんなクレイジーな奴は世界広しとは言え、ここの船長だけだと思う。

少女は船が出ることを知っていた。
無論、雨が降ることも。
寧ろ、雨を降らしたのはこの少女なのだが。

港にたどり着いた少女はその足を止めずに、船に飛び乗った。
船も丁度出る頃合で、タイミングは申し分なかった。

少女を追っていた奴等は足を止めた。
港を離れていく船の中で少女はつぶやいた。

川 ゚ -゚)「ははっ、奴等を上手いこと出し抜いてやったぞ、マスター」

817 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:11:41.17 ID:9kQ+JR9y0
所変わって、ココはニューソクタウン。
他の大陸と離れている島で、そのことから、わざわざそこまで行こうという人も少ない。
いわゆる田舎だ。
このローカル過ぎる町に、一人の夢見る少女がいた。
夢見るは皮肉の意味で。

*(‘‘)*「辛いぜ♪イカすぜ♪ニュー速のアイドル〜♪」

このミントを吹いてしまうぐらいの痛い子はヘリカルという。
ニューソクタウンに住んでいて、今は町から少し離れた浜辺で遊んでいる。

いつもと変わらない海。

この少女はそんな海を見ながら歌うのが趣味なのである。
だが、今日は違った。

*(‘‘)*「何・・・あれ?」

初めて見る大きさの船。
それがこの島に向かっている。

*(‘‘)*「すげぇでかいです!」

異常への恐怖に興味が勝ったようで。
ヘリカルは船の傍まで駆けていった。

近寄るとその大きさが嫌というほど伝わってくる。

819 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:13:23.58 ID:9kQ+JR9y0

*(‘‘)*「というか、何でこんな所に?」

ごく普通のつっこみ。
理由はただ、シラフで瘋癲なこの船の船長がミスをして遭難しかけただけなのだが。

*(‘‘)*「もっもしや僕を北の国に拉致しようとして・・・」

夢と現実を行き来しているような子には、斜め上を行く考えしかできなかったようで。

*(‘‘)*「くぅー、こうなったらこの日のために鍛えてきた太極拳で・・・ん?」
川 ゚ -゚)「退けぇぇぇぇぇぇぇ」

ドッシーン!

*(メ‘‘)*「いてて・・・」
川メ゚ -゚)「退けと言っただろうが大馬鹿者!」

言葉が荒い。コレは荒らしの予感。

*(‘‘)*「いきなりそんなこと言われてもできないです!」
川 ゚ -゚)「まぁ確かに」

嵐終了。

川 ゚ -゚)「ところで、ココは何処だ?貴様は何者だ?」
*(‘‘)*「ここはニューソク島で、僕はここの住民のヘリカル沢近です」
川 ゚ -゚)「ふむ、聞いたことない島だn―」

ズゥゥゥン!

822 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:15:43.63 ID:9kQ+JR9y0
船が倒れた。
それもそうだ、この島は大型の船がつけるような場所はない。

*(‘‘)*「それよりもあの滑りがちな船がこの島に来たことの方が気になるです」
川 ゚ -゚)「そんなこと私に聞くな」
*(‘‘)*「え?貴方この船に乗ってたじゃないですか」
川 ゚ -゚)「私の名前はクーだ。知っているのは嵐でその船の進路は変わったことぐらいだ」

このクーと名乗る青い少女。
謎過ぎる。

そしてヘリカルは何事もなかったかのように話題を変える。

*(‘‘)*「クーさん面白いですね。特にその角とか」
川 ゚ -゚)「仕方ないだろ、私はハクリューなんだから」
*(‘‘)*「ハクリュー?ポケモンの?」
川 ゚ -゚)「そうだ」


823 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:17:14.06 ID:9kQ+JR9y0
*(‘‘)*「ぷぷっ、やっぱりクーさん面白いです、面白すぎです。」
川 ゚ -゚)「一応大マジなんだがな。証拠をみせてやろう」

そういって、クーは掌を空にかざした。
すると、みるみるうちに晴天だった空が雲に覆われていき、雨が降り出した。

*(‘‘)*「うおっ冷たっっっ!」
川 ゚ -゚)「雨を降らせることができるのは私の種族だけだ。コレで信じるか?」
*(‘‘)*「信じるから止ませてです!」
川 ゚ -゚)「無理だ。一度呼んだら疲れて戻せない」
*(‘‘)*「最悪ですね」
川 ゚ -゚)「そういうなって」

後ろでは、突然降り出した雨のせいか、人が慌てて船から下りている。
避けられない滴を受けながら、二人は港を後にした。

川 ゚ -゚)「とりあえず公園か何かないか?」
*(‘‘)*「何故です?」
川 ゚ -゚)「とりあえず、落ち着けるところに行きたいのでな」
*(‘‘)*「それなら僕の家に来るといいです」
川 ゚ -゚)「いや、それは・・・」
*(‘‘)*「遠慮しなくていいですよー」
川 ゚ -゚)「(まぁ、ココまでは追ってこないか)それなら、お言葉に甘えさせていただくことにしよう」

こんな遣り取りがあり、
とりあえず目指しているのはヘリカルの家。
歩きながら、ヘリカルは自己紹介を延々と続けた。
クーはそれに相槌を打つ。満更でもない表情で。
そして自己紹介が終わり、質問タイムに突入した。

824 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:18:29.44 ID:9kQ+JR9y0
*(‘‘)*「一つ、質問があります」
川 ゚ -゚)「うむ、宿の礼だ。何でも答えようぞ」
*(‘‘)*「なんで人の姿なの?」

人型のポケモンもいなくはない。だが、突然の疑問だろう。

川 ゚ -゚)「簡潔に言うと、ラウンジ団に改造された」
*(‘‘)*「ラウンジ団って、あの東の国の自治団体ですか?」
川 ゚ -゚)「そうだ」
*(‘‘)*「何でそんなこと・・・」
川 ゚ -゚)「一昔前にな、ポケモン同士を合成する装置を作った奴がいたんだ。それの改良版の実験台にされたってとこだな」
*(‘‘)*「まさか・・・それって」
川 ゚ -゚)「うむ、人と合成された」
*(‘‘)*「そんな・・・」
川 ゚ -゚)「笑えないが、その人ってのが私の・・・!」

ヒュン!

何かが飛んできた。
クーがヘリカルを庇いながらも、間一髪回避することができた。

川 ゚ -゚)「あれはキバニア?何故陸地に・・・まさか!」
*(‘‘)*「重いですー」
川 ゚ -゚)「うぬ?すまない」

起き上がると、複数の人影。見覚えのある面子。
そう、あの時クーを追っていた奴等だ。

825 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:19:44.98 ID:9kQ+JR9y0
( ^ω^)「久しぶりだお」
川 ゚ -゚)「よくココが分かったな、なかなかの行動力じゃないかブーン。その身なりからは考えられん」
(#^ω^)「早速何言ってるお?ざけんなお!!!」

眉間にシワを寄せ、ブーンが近寄ろうとする。

(´・ω・`)「おい、むやみに近付くな。あいつがアレを持っているかもしれないんだ」
(#^ω^)「ショボン・・・ちっ」
川 ゚ -゚)「おいおい、ケツの穴が小さいとはまさにこのことだな。滑稽だぞ」
(#´・ω・`)「あぁ?ぶち殺すぞ」

そう吐き捨て、ショボンは腰のボールを手に取り、モンスターを開放した。

(´・ω・`)「君達、あの青い女を捕らえろ」
( ^ω^)「もうさ、ぶっ殺そうお」
(´・ω・`)「もしアレを隠していた場合、面倒になる。それはダメだ」
川 ゚ -゚)「殺すだの、殺さないだの、はっきりしない奴等だ」

クーは脇にヘリカルを抱える。

*(‘‘)*「え?え?」
川 ゚ -゚)「逃げるぞ。しっかり掴まっててくれ」
*(‘‘)*「うひゃぁ!?」

クーは再び駆け出した。

826 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:21:48.37 ID:9kQ+JR9y0
(´・ω・`)「相変わらず早いな、ジョルジュ!」
( ゚∀゚)「応!行くぜ、ギャロップ!!!」

ジョルジュはギャロップの背中に跨った。

( ゚∀゚)「今日は雨がねぇから早いぜぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

川 ゚ -゚)「ちっ」
*(‘‘)*「何ですかあれ?早いですよ」
川 ゚ -゚)「浜辺に向かう。スピード上げるぞ!」
*(‘‘)*「うひゃぁぁぁぁぁ!!!」


再び浜辺。
船の周りにはもう人はいなかった。

川 ゚ -゚)「よし、ここなら平気だな」
*(‘‘)*「うへ〜」
川 ゚ -゚)「すまない、ちょっと強引過ぎた」
( ゚∀゚)「おらおらぁ!ほのぼのしてる暇はないぜぇ?美乳と微乳!!!」

先ほどのギャロップが突進してきた。

*(‘‘)*「いろんな意味でなんだってー!?」
川 ゚ -゚)「貴様程度が私に勝てるとでも?」

刹那、クーが消えた。
いや、消えたように見えたといえる。
クーはジョルジュの前に立っていた。
後方には横たわるギャロップ。

827 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:23:22.54 ID:9kQ+JR9y0
(;゚∀゚)「てってめぇ・・・」
川 ゚ -゚)「大人しくしていれば殺しはしない」
( ゚∀゚)「Dカップとみた!」

ゴッ

(。A。 )「がはっ・・・」

クーの拳が顎を打ち抜いた。

川 ゚ -゚)「あまり緊迫感がないのはよろしくないな」

( ^ω^)「一つしか見えないのもよくないお」
川;゚ -゚)「何!?・・・」
*(‘‘)*「クー!!!」

目に入ったのは奴等の姿と捕らえられているヘリカル。
その後ろに奴等のと思われるポケモンの数々。
迂闊だった。

川;゚ -゚)「貴様等・・・」
( ^ω^)「おっおっおっwwwいつもの辛口が聞こえないおーwwwwww」
川;゚ -゚)「ちっ・・・」
(*^ω^)「爽快だおーwwwあの赤目の腰抜けにもコレを見せてやりたいおwwwwwww」
川#゚ -゚)「貴様・・・マスターを侮辱するな」
(*^ω^)「きこえねぇよバーr」

バンッ!

不意に、小さな裏拳が男の顔を捉えた。

828 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:24:33.04 ID:9kQ+JR9y0
*(‘‘)*「アイドルたるもの自分の身は自分で守るんです!」
川 ゚ -゚)「ヘリカル!」
*(‘‘)*「僕を弱いとか思ってるアホ面共はみんな死んじゃえ!です」

決め台詞の後、逃げ出すヘリカル。
だがそれを許さないショボくれた奥の冷酷な目付き。

(´・ω・`)「アーボック、噛み砕け」
*(‘‘)*「うわっ蛇!?」
川 ゚ -゚)「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

ヘリカルを先に捕まえたのは敵の牙だった。

*(‘‘)*「きゃぁぁぁぁ!」
川#゚ -゚)「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

遅れて追いついたクーの右手の爪がアーボックの首を貫いた。
そして牙から離れたヘリカルを左腕で抱える。

川 ゚ -゚)「大丈夫かヘリカル!」
*(‘‘)*「う・・・うん、大丈夫・・・ウッ」
(´・ω・`)「キズは浅くても毒があるんだよね」
(メ^ω^)「餓鬼が、ざまぁみやがれお」

川 ゚ -゚)「・・・っ!」
(´・ω・`)「大人しくしていてほしい。悪いようにはしないさ」

829 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:25:46.04 ID:9kQ+JR9y0
邪悪が一歩一歩近付いてくる。

クーの脳裏にコンフリクトが突き刺さる。
この子を見捨てて戦うのか、背を向けこの子を救うか。
答えは明確なはずなのに、体が動かない。
寧ろ奴等がそうやすやすと逃がすなんてことが無いだろうが。

クーは心の中で呟く。
「また・・・守れないのか・・・」と、



831 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:27:30.40 ID:9kQ+JR9y0
―――

「そんなことは無い」

川 ゚ -゚)「え?」

「君ならできるよ」

川 ゚ -゚)「・・・マスター?」

「その通りだ」

川;゚ -゚)「なっ何故!?」

「例の如く、君の中で生きている。って奴かな」

川 ;-;)「すまない、私が非力だったばかりに・・・」

「あれは仕方ないことだ。君が悔やむ事は無い。それよりだ」

832 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:29:40.15 ID:9kQ+JR9y0
「何故、あれを使わないのだ?」

川 ;-゚)「また・・・あの時のような惨劇になるのが怖いのです」

「クー。博士が何故あれを君に託したかわかるか?」

川 ゚ -゚)「・・・」

「それは、君を信頼しているからだ」

「君なら正しく使いこなす事ができる。そう思ったからなんだ」

川 ゚ -゚)「しっしかし・・・」

「君の力は何のためにある?過去じゃなくて今を討つためだろ?」

川 ゚ -゚)「・・・」

「大丈夫さ、私もついてるから」

川 ゚ -゚)「そうか・・・」

「できるか?」

川 ゚ -゚)「無論だ」

―――

833 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:32:08.18 ID:9kQ+JR9y0
クーの目が煌々と、赤く輝いた。
それは主と同色の。

まるで復活の灯火のように。

川 ゚ -゚)「ヘリカル、少し我慢してくれ。すぐ終わる」

ヘリカルを寝かせてやると、
クーは胸元からとても小さな銀色を取り出した。
コレは技マシンだ。
ただし、これはポケモンに覚えさせるものではなく、そのものが武器となる。
Dr.ドクオの努力の結晶。マスターピース。
技マシンは見る見るうちに変形し、レーザー砲のような形になった。

(´・ω・`)「それは!」
川 ゚ -゚)「加減はするが、死んでも恨むな」
(;´・ω・`)「ちょ、まっt」

川 ゚ -゚)「はかいこうせん」


・・・

834 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:33:10.57 ID:9kQ+JR9y0
*(‘‘)*「わぁぁぁ!!!」
川 ゚ -゚)「何だ?こっちが驚きだぞ」
*(‘‘)*「あっあいつ等は!?」
川 ゚ -゚)「ラウンジ団なら、今は豚箱入りしてるさ」

そう、奴等はクーに倒された後、警察に捕まった。

*(‘‘)*「そうですか。よかったです」
*(‘‘)*「ていうか、ココは何処です?」
川 ゚ -゚)「病院だ。それより体の方はどうだ?」
*(‘‘)*「あ・・・僕、あの蛇に噛まれたんだっけ・・・」
川 ゚ -゚)「砕かれなかっただけ不幸中の幸いというか・・・無事で何よりだ」
*(‘‘)*「ですよね〜」
川 ゚ -゚)「・・・」

俯いて黙るクー。

*(‘‘)*「どうしたですか?」
川  )「すまなかった。こんなことに巻き込んでしまって」
*(‘‘)*「全然気にして無いですよ?寧ろ楽しかったとも思ってますです!」
川 ;-;)「そう言ってくれるか・・・」
*(‘‘)*「うわっ何泣いてるですか!?」
川 ;-;)「グスッ・・・また守れないと・・・思って・・・」
*(‘‘)*「?」
川 ;-;)「よかった・・・ホントに・・・」
*(‘‘)*「よしよし、クーは泣き虫ですねぇ。もう大丈夫ですよ」
川 ;-;)「・・・」

836 ハクリューと僕のようです New! 2006/09/07(木) 00:33:53.15 ID:9kQ+JR9y0
その日、クーとヘリカルは同じ床についた。
他愛も無い世間話が2人を眠らせない。
とはいえ会話の8割がヘリカルのマシンガントークだったことは内緒。


そして次の日。

川 ゚ -゚)「私はもう行くが、何かいいたいことはあるか?」
*(‘‘)*「強いて言うなら・・・またこの島に来てほしいです」
川 ゚ -゚)「約束するよ」
*(‘‘)*「ふふっ嬉しいです♪」
川 ゚ -゚)「うむ、何故だか私もだ」
*(‘‘)*「体、きっと元に戻れるですよ」
川 ゚ -゚)「ああ、きっとだ」

確信も無い言葉だが、コレがクーのエンジンを燃やす糧となる。

川 ゚ -゚)「それじゃあ、また会おうヘリカル」
*(‘‘)*「うん、バイバイです」

クーは歩き出した。
また、マスターの、今度は声だけでなく、顔を見れる日を夢見て。

川 ゚ -゚)「あ、泳げないの忘れてた」

お終い。
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