161 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/01(金) 00:11:48.35 ID:m4Us56EE0

(;'A`)「ブーン、ごめん」

俯きながら、感情を押し殺したような声でドクオはこう言った。
そう。優しい彼のことだ、全て自分の責任だと思っているのであろう。

( ^ω^)「謝られても、ブーンが惨めなだけだお……」

本心だった。誰よりも自分が悪いと分かっているからこそ思うことだ。

―――僕がちゃんとツンを大事にしてあげれなかったから

今更後悔しても、もう遅いのに。
ツンは僕と別れて、ドクオと付き合う事になった事実は消えないのだ。
大切な人を一度に二人も失ったという孤独感に襲われて、
ブーンは思わず階段を上る途中で立ち尽くしてしまった。

ドクオが小走りに階段を駆け上りの僕少し後ろで止まる。
しかし僕にどう声を掛ければいいか迷っているようだ。


162 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/01(金) 00:13:25.02 ID:m4Us56EE0

('A`)「……それでも俺は、お前と友達のままでいたい」

少しの間沈黙が続き、ドクオは遠慮がちに呟いた。
そしてやっぱり流石に図々しいかな、と寂しげな表情で笑う。

そんなドクオに、ぐちゃぐちゃとした訳の分からない感情が渦巻く。

これは大事な人を奪っていった者への嫉妬?
それとも、顔を顰めてしまう程の眩しさをもつ者への憧れだろうか?

屋上へと続く薄暗い階段に、暖かい光が差し込む。

( ^ω^)「…………あ」

何かを言わないといけない、と勢い良く振り向いた僕は


―――そのままバランスを崩してゆっくりと身体が傾いた。


自分の名前を呼んで手を伸ばすドクオや、
いつもなら気付かない天井にある小さな皹を見て、僕は次に来るであろう痛みに構え目を閉じた。


164 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/01(金) 00:14:08.92 ID:m4Us56EE0

(;'A`)「ブーン………!!」

手を伸ばすが、僅かに足りない距離にドクオは舌打ちをした。
ならば―――と、思いっきり手を前に伸ばし、飛ぶようにして僕の腕を掴む。

しかし、こうなった所で何も変わらないと悟ったのだろう、

身体が僅かに宙に浮くのを感じながら、ドクオは僕を抱き込んだ。
その瞬間にやけにゆっくりと感じていた時が、本来のスピードを取り戻した。
先ほどまで覚悟した痛みは感じなかったが、それでも身体にくる衝撃は物凄い。

唸るような声にぼんやりと顔をあげてみると、
いつもより酷く青い顔をして身体が小さく痙攣するドクオが見えた。
頭を強く打ったのだろう、血が止め処なく流れている。


バクバクと跳ねる心臓に、嫌な汗が額にじんわりと浮かんだ。


ドクオは助からないだろう。
すでに色を無くしたドクオの顔を見て、僕は確信した。


165 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/09/01(金) 00:15:53.83 ID:m4Us56EE0

ツンは僕にとって月であった。
いつも傍にいるだけで心が安らげるような、そんな存在。


―――ならばドクオは僕にとって何だったのだろうか


雨の音が聞こえる。
虚ろな目をそこに向けると、さっきまで眩しく差し込んでいたはずの光はもう、なかった。



終わり

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