408 ドクオが悩まされそうです sage New! 2006/08/29(火) 23:26:25.73 ID:4k5w4AS10
カタカタカタ―
タイピングの音だけが無機質に響き渡る。
窓の外はまだ墨汁の様に触れると色が移りそうなほど黒い。
デジタル時計の点線がAM 3:47と静かに告げている。
部屋の光源はディスプレイと時計しかなく、
それがさらに夜の黒さを強調しているようだ。

―カタカタ…パン
一段落つきタイピングを中断して一息いれる。
深夜の住宅街は世界から隔離されている様な静寂と孤独に包まれている。
ディスプレイの光に、ぼんやりと照らされた薄幸そうな男の顔は、白を越えて青い。
その死相にも似た表情を窓に向けて溜息をついた。


410 ドクオが悩まされそうです sage New! 2006/08/29(火) 23:27:39.78 ID:4k5w4AS10
('A`)「はぁ…明後日って言うか明日は卒業式か……マンドクセ…」

そう、今日はvip高校の卒業式前日であり、
ドクオは卒業生代表の挨拶を徹夜でタイピングしていたのだ。
と言ってもドクオ自身が読み上げるわけではなく、
生徒会長の代理で書いているのであった。
締め切りは今日のAM9:00まで。
報酬は会長秘伝おっぱいビデオ。

――我ながら安請負したもんだ…。

ドクオは暖房の温度と同じになったインスタントコーヒーを一気に煽り、気管に入り込んだ苦い汁に軽く咽せ、
涙目で早春の夜桜を眺めた。

413 ドクオが悩まされそうです sage New! 2006/08/29(火) 23:29:03.42 ID:4k5w4AS10
――ん?

闇に薄く浮かび上がる八分咲きの並木道を歩く女が居る。
浮かび上がるかのような真紅のドレス
腰近くまで伸びる黒髪
陶器のような白い肌
ただ歩いている。
それだけなのに、なぜか目が離せない。
なにかがおかしい…なにかが…………
…っ!

な ん で あ ん な に は っ き り 見 え る ん だ ?
夜で…しかも眼鏡も掛けていないのに…
その瞬間、並木道の女が顔を上げこちらを見た。


414 ドクオが悩まされそうです sage New! 2006/08/29(火) 23:29:35.58 ID:4k5w4AS10
(;'A`)「…え……あれ?」

女はじっと此方を見ている。
それが信じられず、ドクオは瞼を擦りもう一度並木道に目を落とした。

(;'A`)「……………あ、あれ?…」

さきほどに人影は幻の様になくなっていた。
ドクオは気味が悪くなりカーテンを閉めると、またディスプレイに向かった。

夜風に揺られる並木の下は暗黒の川の様に底を隠していた。
まるで不幸を運び込んで来るかのように…


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