688 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 05:27:37.42 ID:KGjXJQF10

 丑三つ時を回り、店内から喧騒が消える。

 ( ゚∀゚) 「はあ……今日の肴は終わりかねえ」
 川゚−゚) 「………ふ」
 ('A`) 「なあに、すぐに届くだろうよ。そろそろな……」
 (´・ω・`) 「期待に僕のここも膨らみっぱなしさ」

 嬾惰と酔飽が漂うカウンターに、くすくす笑いが響いた。

 川゚−゚) 「と――いらっしゃったようだぞ」

 カウベルが鳴り響く。
 新たな同胞の誕生に、倦んだ酔漢達が振り向いた。

 川゚−゚)゚∀゚)'A`)´・ω・`) 「――…いらっしゃい!」

 高々と掲げられたグラス。
 飛び散る色とりどりの飛沫が、新たな来訪者を歓迎した。

 ( ^ω^) 「おっおっおっ、皆さんおそろいで嬉しいお!」

 彼の名は内藤。
 ミルクホール「VIP」の新顔であった。


689 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 05:28:16.13 ID:KGjXJQF10

 ミルクホール……大正の世に生まれた造語で、喫茶店を意味する言葉である。
 最もその業務は喫茶店だけに留まらず、夜には様相を変えてアルコールを提供する事でも知られている。
 喫茶店かつバー。それがミルクホールの実態であった。

 EX地区に店を構える「VIP」も時勢に違わず、流行に敏感なモガやモボ達の溜まり場となっていた。
 カウンターの中にはいい男…阿部と呼ばれるバーテンが、いつも寡黙にグラスを磨いている。

 川゚−゚) 「今日は少し遅かったのでは?」
 ( ^ω^) 「はい……記事の編集に戸惑ってしまったんですお」
 川゚−゚) 「ほう、それはそれは……」

 内藤の隣、カウンターに肘を突くこの美女。名をクーと言う。
 本名の類は内藤も知らない。
 烏の濡羽もかくやの黒髪に、体の線を浮き立たせる洋装。
 黒で統一された衣服は寡婦の慎ましさではなく、妖しさを映して深い。
 

690 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 05:29:04.94 ID:KGjXJQF10
 
 川゚−゚) 「今日も……内藤の話を期待して、良いと言う事かな」

 毛穴の一つも見当たらぬ、うるんだ美貌が内藤に近づく。
 形容しがたい芳香。不思議に感じさせない体温。それら全てが内藤の煩悩に火をつける。

 ( ^ω^) 「おおおおおおお勿論ですおおおおお!!!!!!」

 間髪入れずに取り出した手帳をめくる。
 カウンターに並んだ男達が、こっそりとしのび笑いを漏らした。


692 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 05:46:07.95 ID:KGjXJQF10

 ( ゚∀゚) 「単純だねえ、内藤さんは」

 放埓に笑ったのは長岡。EX地区にシマを持つ任侠者だ。
 だがそれを知る者は少ない。今このカウンターについている数人を除いて、彼の素性は隠されていた。
 勿論、背に負う弁天を見たものはいない……筈である。

 ('A`) 「言うな。そのお陰で、今日も俺達は倦まずに済む」

 変わらずグラスを傾けるのはドクオ。医者である。
 町の小さな医院に籍を置く彼は、怠惰な風貌とは裏腹に、腕の良い医者として知られていた。
 最も、強い煙草を浴びるように飲むのが良い医者であるならば、だが。

 (´・ω・`) 「いいのかなあとも思うけどね……天下のホライゾン新聞さんがさ」

 泣きそうな顔で微笑んだ、この青年はショボン。
 帝都大学に通う、天下の学士様だ。遅くまでミルクホールに入り浸っているため、
 進級の是非は定かではない。本人はいつもの笑いで「大丈夫」と言うばかり、である。


693 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 05:52:21.71 ID:KGjXJQF10

 ( ^ω^) 「ええと、今夜のネタは、これですお……」

 そして、内藤。彼は隆盛のホライゾン新聞に身を置く、記者の卵である。
 最近数々のスクープをものにして、そろそろ上司の目にも止まろうかと言う、凄腕記者……の筈であった。

 しかし、彼の齎すスクープは、ある一点に絞られている。
 そう……オカルト、いわゆる「カストリ」記事に相当する事件が、何故か彼の周囲には起こるのだ。


 ( ^ω^) 「夜中に光るランプの怪」
 ( ^ω^) 「怪奇!あるはずのない壁」
 ( ^ω^) 「神様?妖怪?べろべろさんの噂」
 
 ( ^ω^) 「以上の三本立てでお送りしますお……と言いたいところなのですが」


694 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 05:55:30.53 ID:KGjXJQF10

 ( ゚∀゚) 「が?」
 ( ^ω^) 「このランプの噂は嘘ですお!」
 川゚−゚) 「……まさか、お前……」

 クーの声が一段低くなる。
 怒り故とは気づかぬ内藤は、でれでれと鼻の下を伸ばしながらクーに向き直った。

 ( ^ω^) 「はいだお!港に取材に行ったはよかったものの……」

 ( ^ω^) 「なんだか古びたランプしか見つからなかったから、海に捨てて来ましたおwwwwwwww」


 川゚−゚)゚∀゚)'A`)´・ω・`) 「・・・・・・・・・・・・・・・・」

 VIPに、重い打突音が響いた。


695 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 06:02:21.64 ID:KGjXJQF10

   _  ∩
 ( ゚∀゚)彡 「お前、あれほど先走るなと言ったろうが!」
  ⊂彡
 
 腕を振るジョルジュの声はうっそりと沈んだ。
 どれだけ残念がっているかは、彼の視線がクーの乳房から外れた事でも判る。

 (;^ω^) 「だ、だって、ホントにきったねえランプだったんですお!!ガラスも濁ってたし」

 頬を押さえた内藤が抗議する。
 
 (#'A`) 「濁ってんのは、テメエの目だろうが……」 

 ドクオの煙草が赤々と燃え、物騒に揺れた。

 (;^ω^) 「し、ショボン君!ショボン君は分かってくれるおね!?」

 (´・ω・`) 「・・・・・・・・・・・・・・」

 (´・ω・`) 「ぶち殺すぞ」

 (;^ω^) 「うはwwwwwwww怒りのオーラキタコレwwwwwwwww」


696 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 06:11:59.53 ID:KGjXJQF10

 川゚−゚) 「……ともあれ、残り二つを取材する事は、我々の同行なしでは許されないぞ」
 (;^ω^) 「ぼ、僕はこれでも新聞記者の……」
 (´・ω・`) 「ぶち犯すぞ」
 (;^ω^) 「アッーーー!!わかりました、わかりましたお!!皆さんの協力をお願いしますお!!」

 がっくりと肩を落とす内藤。
 だが、彼とて本心から嫌がっている訳ではない。むしろ、こうなる事を望んでVIPに来ているのだ。
 何しろ、今まで彼が打ちたてた功績は……ここにいる四人の協力無しではできなかったのだから。


697 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 06:14:35.53 ID:KGjXJQF10

    〃                 i,        ,. -‐
   r'   ィ=ゝー-、-、、r=‐ヮォ.〈    /
    !  :l      ,リ|}    |. }   /   .ま
.   {.   |          ′    | }    l
    レ-、{∠ニ'==ァ   、==ニゞ<    |    あ
    !∩|.}. '"旬゙`   ./''旬 ` f^|    |
   l(( ゙′` ̄'"   f::` ̄  |l.|   |     ま
.    ヽ.ヽ        {:.    lリ     |
.    }.iーi       ^ r'    ,'    ノ    あ
     !| ヽ.   ー===-   /    ⌒ヽ
.   /}   \    ー‐   ,イ       l    皆
 __/ ‖  .  ヽ、_!__/:::|\       ヽ


 ずうんと陰茎に響く声が三人をたしなめる。
 彼こそが四人目の協力者、阿部高和。 VIPの雇われバーテンだ。


699 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 06:27:05.24 ID:KGjXJQF10

 "゚'` {"゚` 「内藤君の気持ちも分からないではない。自分のテクを試したかったんだろ」
 ( ゚∀゚) 「阿部さんがそう言うなら仕方ねえ……内藤、感謝しろよォ」

 わしわしと内藤の頭が掻き回される。ハンチング帽がぐしゃりと乱れた。

 (;^ω^) 「……じ、実は……」


 (;^ω^) 「ほ、他の二つの取材も、もう……」


 川゚−゚)゚∀゚)'A`)´・ω・`)"゚'` {"゚`) 「・・・・・・・・・・・・・・・」
 



 (;゜ω゜) 「あおおおおおおおおおおおーーーーーーーーッ!!」 
 

700 ( ^ω^) ブーンは新聞記者のようです New! 2006/08/28(月) 06:28:15.42 ID:KGjXJQF10

 ミルクホール「VIP」……
 運が良ければ、貴方も彼らに出会うかもしれない。
 丑三つ時に出歩く勇気があるならば、この場所はいつでも貴方を待っている。



 〜長くなりそうなので無理矢理完〜

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