732 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 02:54:14.97 ID:zRmdYiCpO
俺はジョルジュ。
野良猫なんかに名前は必要ねぇが、まぁ、便宜上、というヤツだ。
名前がないといろいろ不都合だしな。

俺の目の前に広がるのは、第二の故郷、美府街。
なぜ俺がこの街に戻ったのかは、自分でもわからねぇ。
ただ、ふらふらと街を渡り歩いている内に、戻って来ちまったんだな。これが。

(=゚∀゚)「ここは変わってねぇなあ」

夜になるにつれて灯ってゆくネオン。
通りに漂う酒と香水の香り。
酔っ払いをカモにしようとする呼び込み達。

うん、全く変わってない。少し安心した。

(=゚∀゚)「さて、こっちはどうかなっと」

少し裏通りを覗けば、そこは猫達の楽園でもある。
俺達の可愛さに、物好きな人間が、いつも餌をくれるんだよ。
ちょろいもんさ。

『ニャー!ニャー!』

少し訂正。
どうやらちっとばかり楽園、とは言えなくなっちまったみたいだな。
……この声はまだ子猫か。ゲスが。

733 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 02:55:43.76 ID:zRmdYiCpO
<=ヽ`∀´>「ふひひ、可愛い子猫ちゃん、ウリとまぐわうニィダ」

*(=;;)*「ニャ……」

あー、やっぱ馬鹿っぽそうな顔してんな。
どれ、ちょっくら懲らしめてやるか。

『ニャにしてるんだお!』

あん? なんで俺を睨むかな。
……こいつ、もしかして。俺を?

(#=^ω^)「ヘリカルにニャにしてんだおって聞いているんだお!」

(;=゚∀゚)「おいおい、俺は助けようとしてたんだぜ?……あいつから」

えーっと、もう居ないな。うん。
子猫だけだ。
勘違いされるのも無理ないよ。うんうん。
――嬢ちゃん、フォローを。

*(=;;)*「このおじちゃんが……」

よし、いいぞ。がんばれ。
おじちゃんがなんか引っ掛かるが、多めに見ようじゃないか。
別段外れてもないし。

*(=⊃⊂)*。「ふぇえ……」

736 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 02:57:47.42 ID:zRmdYiCpO
ああぁ、こりゃダメだ。
なんて間が悪い。
コレじゃ俺が襲いましたって言っているようなもんじゃねぇか。
――しゃあねぇ。悪いな、若いの。

(#=`ω´)「てめぇゴルァ!!」

あれ……こいつ。
この口調。この感じ。
顔は全く似てないけど。

(=゚∀゚)「お前、もしかしてギコの……?」

お、ビンゴか。
分かりやすいねぇ。あいつと一緒だ。
それにしてもギコの奴、いつのまに。

(;=^ω^)「じぃちゃんを知ってるのかお!?」

――じぃちゃん、か。
……ハハ。
俺も随分ここから離れてたもんだ。
まさかギコの孫だとはね。
歳は取りたくねぇなぁ。

(=゚∀゚)「俺はあいつの友人だよ。
案内してくれるかい?」

740 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 02:59:27.58 ID:zRmdYiCpO
まぁ、あいつの血を引いてんなら、無理だろうな。
んー、やっぱり、やる気かよ。毛が逆立ってやがる。
案の定血の気が多い一族みたいだな。

(#=^ω^)「お前みたいな変質者が、じぃちゃんの名を語るニャおゴルァ!」

うは、凄い殺気。若いっていいねぇ。
でも、突っ込むだけじゃあ喧嘩は勝てねぇよ。
突っ込んできた奴の首を噛んで、ほらよっと。

(;=^ω^)「おぁっ!?」

(=゚∀゚)「そんな直線的な動きじゃ、返し技の思う壺だぜ?」

お、まだやるか。大したもんだ。
手加減してねぇのに。
――面白い。疼くぜ。

(=゚∀゚)「さ、来いよ」

俺の挑発を聞いたか聞いて無いか。
奴はまた愚直に突っ込んでくる。
さて、どうしてやろうか……っ!?。

(*=゚ー゚)「はいはーい。待った待った」

っとぉ!あっぶねぇ!
こいつ、いきなり男の戦いに水を差すと、は……!?

742 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:01:47.42 ID:zRmdYiCpO
(;=^ω^)「ば、ばぁちゃん……」

(;=゚∀゚)「……しぃ」

懐かしい彼女は、俺を見て微笑んでくれた。
かつて、俺が心惹かれた彼女。
ばあちゃん……そうか、しぃがギコと……。

(*=゚ー゚)「本当に久しぶり、ジョルジュ。
全く変わってないわね」

(=゚∀゚)「お前もな」

いや、変わって無い筈ないよな。
俺は変わってないけど、変わりたくもある。
しぃやギコ達と同じ時間を過ごせていたら……。やーめた。
気が滅入る。

(;=^ω^)「ジョルジュって、じぃちゃんがよく言ってる人……。
でも、僕と歳が一緒に見えるお?」

ったく、ギコの野郎、肝心な事を教えてないな。

俺は――。

(=゚∀゚)「もう一本の尻尾、見たいかい?」

――猫又。
猫又になるには四十年以上飼い猫として過ごすんだが、飼い主はとっくに死んじまった。
言葉が上手いのもこのためさ。

744 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:02:37.45 ID:zRmdYiCpO
おっと、そんな事より。

(;=^ω^)「……」

あ、コイツ怯えてやがる。ちょっと傷つくぜ。
少しばかり他の猫より長生きしてるだけなのに。

(*=゚ー゚)「ジョルジュ、若い子をいじめないで。
ギコに会いたいんでしょ?」

そうだった。すっかり忘れてたぜ。
案内頼むわ。しぃ。
じゃーな。おまえら。

(;=^ω^)「……あ」

*(=‘‘)*「おニィちゃん、かっコワるいニャ」

746 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:04:45.10 ID:zRmdYiCpO
(=゚∀゚)「おー、なっつかしい」

まさか溜り場まで変わってないとはね。
それにしても、昔より随分と数が増えたもんだ。
昔は俺、ギコ、しぃ、モナー、モララーくらいしかいなかったんだがな。
おっと、あんまり昔を振り返ってたら『おっさん』呼ばわりされちまう。

(*=゚ー゚)「こっちよ。ギコも喜ぶわ」

さて、ギコと対面か。うー、ガラにもなく緊張しちまうぜ。
昔はいつも喧嘩してたっけ……。理由も思い出せねぇや。

(*=゚ー゚)「ギコ、調子はどう?」

――ギコ?コイツが?
そんな馬鹿な。しぃはこんなに元気なのに?
なん、で……、なんでへたりこんでるんだよ……ギコ。

(;,゚Дメ)「も、しかし、て……ジョ、ルジュ?」

(;=゚ー゚)「無茶しちゃダメよ。ギコ」

(,,゚Дメ)「馬鹿野郎!もう平気だゴルァ!!
……変わってないな、ジョルジュ」

(;=゚∀゚)「ああ……」

747 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:06:33.34 ID:zRmdYiCpO
俺はなんて答えりゃいい?

変わり果てた親友に『変わってないな』?
目とヒゲを抉られ、足腰も立たなくなった親友に『変わったな』?

何も言える筈が無い。
ただ、これだけは聞いておかなきゃ。

(=゚∀゚)「……一体、何があった?」

(;,゚Дメ)「何もないぞゴルァ!」

やっぱりこいつならこうくるよな。
馬鹿みたいになんでも自分で抱え込んで、一人で解決しようとして。
本当、馬鹿だ。
だから俺はしぃに聞く。

(=゚∀゚)「何があった?しぃ」

(*=゚ー゚)「他の猫達が私達の縄張りに入ってきたの」

(=゚∀゚)「あの馬鹿っぽそうな奴か?」

(;,゚Дメ)「しぃ!てめぇゴルァ!!」

あー、はいはい。
しぃ、構わず続けてくれ。

748 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:07:17.72 ID:zRmdYiCpO
他の猫が攻めてきて、ギコ達がただ、やられるはずはないだろ?
実際ギコの孫だって相当強いぜ?俺が強すぎただけで。

(;=゚ー゚)「どういう訳か……犬が向こうに付いているの」

犬、か……。
もしかして、モナーとモララーも?

(*=;―;)「……うん」

そう、か……。
よいしょっと。

(=゚∀゚)「俺がサクっと潰してきてやるよ」

言うは易く、行うは難し。そんな事ぁ判っている。
だが、行かなきゃならん。
俺が此処に戻ってきた訳、今なら分かる。

(;,゚Дメ)「いくら猫又だからって犬にゃ勝てねぇぞゴルァ!!」

――てめぇは黙って見てな。ギコ。
あと、孫によろしく。

(;=゚ー゚)「二本目の、尻尾……」

749 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:09:10.59 ID:zRmdYiCpO
おー、唸ってる唸ってる。
プライドの無いワン公が。

「グルルルル……」

(=゚∀゚)「出てくんのがおせぇよ、ワン公。
てめぇの飼い主はみんなやっちまったぜ?」

いやはや、凄い重圧だ。
猫に従ってたとはいえ、犬は犬だな。震えるぜ。
とりあえずやってみるか。
(=゚∀゚)「やっぱ爪も牙も通さねえ、か」

幸い俊敏さで勝るからいいものの、攻撃が通じないのは考えもんだ。
犬の皮は厚すぎるんだよなぁ。全く。
ま、愚痴ってもしゃあねぇや。
攻撃あるのみ。

「オ゙ォン!」

読まれてたか!?やっべ!

(;=゚∀゚)「しまっ……!?
うあぁぁぁぁっ!!」

くっそ、前足がやられたか。
こりゃまずい……。
近づくなよ?ワン公。

751 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:10:42.18 ID:zRmdYiCpO
(;=゚∀゚)「あっぐっ!!」

近づくなって言って……。

(;メ=゚∀゚)「がぁっ!?」

こいつ……楽しんでやがる……。
っ!? 尻尾を噛むな!

(;メメ= ∀ )「あ゙あアァ゙アぁあ゙ぁアァ゙ア!!!」

あ、あ……し、尻尾が……。
――尻尾が千切れちまった……。
クソッ……たれ……が。

「ヴァァウ!!」

もう、ダメ、か……。
すまねぇ、ギコ、モナー、モララー……。

――しぃ。

「グォ!?」

へっ……、只じゃ、……死ねねぇよ。
てめぇも……道連れだ。

752 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:11:57.96 ID:zRmdYiCpO
「ゴォ!!ブォォオ!!」

ゲホッ!ゴぼッ!
……暴れたって……無駄さ。
この尻尾は……離れねぇ。

(メメ= ∀ )「――こいつは『俺の尻尾』だからな」

俺が生まれてから、全ての力が籠もった尻尾。
一介のワン公ごときに、外せやしねぇよ。

「ガァッ!!ヴァォッ!!
ギ……ッ」

やっと大人しくなりやがった……。疲れたなぁ……。
ふぁーあ、眠てぇ……。

(メメ= ∀ )「少し……寝る位なら……いい……よな」

ああ、ぐっすり眠れそうだ。いい夢が見られるといいな。
なんでこんなに気持ちがいいんだろう。
まるで、空を飛んでるみたいじゃねえか……。

755 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:14:06.75 ID:zRmdYiCpO
(*=゚ー゚)「――もう、行っちゃうの?」

そんな顔すんなって。
俺のやらなきゃいけない事があるんだよ。
壮大な夢がな。

(=゚∀゚)「究極のおっぱいを見つけなきゃならねぇからな」

これこそが猫科の夢。
オスは誰でもおっぱい探す旅人のようなもの〜っと。

(;,゚Дメ)「おめぇは以前もそうやって出ていったよなゴルァ!!」

お、元気になったじゃねぇかギコ。
お互いまた会えるなんてな。
今回は猫又の血に感謝だ。

*(=‘‘)*「おじちゃんアリガとうニャ!」

いやいや、嬢ちゃんも大きくなっていいおっぱいを授かるんだぜ?
……っと、兄貴もいたか。何か言いたそうだな?

(*=^ω^)「……おっぱいニャかまだお」

おっぱい仲間……。
良い響きだ。そう、俺達はおっぱい仲間。
いつか一緒に旅をしようじゃない。

『本当にありがとうございました』

759 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:18:51.93 ID:zRmdYiCpO
ん? 誰? まだ誰か家族が居たのか?

(*=゚∀゚)「……おお!」

この張り、このツヤ、大きさ……。
もしかして、この子は!?
き、究極の……!?

(*=゚ー゚)「どうしたの?」
(,,゚Дメ)「行かないのかゴルァ」

今ここで『やっぱ旅に出るの止める』なんて言ったらどうなるかね?まずいよな……。
いいのかな……。


765 野良猫ジョルジュ New! 2006/08/25(金) 03:46:04.39 ID:zRmdYiCpO
うあぁぁああぁぁあ!

(=^ω^)「ニャんか心残りでも?」

*(=‘‘)*「おじちゃん……?」

(=゚∀゚)「おっぱい、おっぱい……」

『え、何、を……?』

(=゚∀゚)「おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!おっぱい!」

あーあ、やっちまった!
もうどうにでもなれってんだ!!

ん? 俺が軽率だって?
そんな事言う奴は、長生きできねぇよ?
人生いつもお気楽極楽ってな。
なんつってね。

終わり

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