333 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:26:34.03 ID:Hc2h2xiFO
お題:クーデレを目指すようです、白痴
 
ξ゚д゚)ξ(何よ、のレデレしちゃって…)
 
ツンと内藤は幼馴染みである。
共に育ったせいか、いつからかツンはブーンに好意を持つようになっていた。
そこに、ブーンとクーが親しげにイチャついている光景である。
 
ツンはクーと楽しそうに話すブーンにある種の怒りを覚えていた。
世間ではこれを嫉妬というが、ツンはそれを認識する事を無意識に拒んでいた。
ただ漠然とした苛立ち、それが今ツンの中にある全てであった。
しかしある日を境に、彼女はクーデレを目指すことになる。
それは、いつものように内藤と帰宅する時であった。
 
ξ゚-゚)ξ「ねぇブーン?」
( ^ω^)「なんだお?」
ξ゚-゚)ξ「あんたクーとどうなのよ…?」
( ^ω^)「え? ただの友達だお」
ξ゚ー゚)ξ(そうかぁ…よかった…)
ξ゚听)ξ「でもあんた達、最近やたらと仲がいいじゃない」
 
ホッとしたツンだが、つい責めるような口調で詰問してしまった。
 
(;^ω^)「ちょwwwwwなに怒ってんだお? 僕達はなんにもないお」
ξ゚ー゚)ξ(それならいいのよ。よしよし)
( ^ω^)「でも、クーの性格はとても好感が持てるお。ちょっと好きかもしれんお」

ξ;゚听)ξ「!!!」


335 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:27:31.46 ID:Hc2h2xiFO
──その夜
ξ゚-゚)ξ「ブーンってクーみたいな子が好きなのかな…」
 
ツンは悩み、恐れていた。
このままではブーンとクーがくっつくのではないか、そんな漠然とした思いが彼女にはあったのだ。
 
ξ゚-゚)ξ(私もクーみたいにしようかしら…)
 
しかし性格というものはそう簡単に変えられるものではない。それはツンにも分かり切っている事だ。
無理に演じてもいつかはボロが出る、その時に襲われる羞恥は彼女に耐えられるものではなかった。
 
数日の時が流れた。
相変わらずクーは内藤に近付き、内藤もそれを拒む事はない。
その様子を見る度にツンの不安は募る一方であった。
 
 
ツンは今、図書館にいる。
何故こんな所にいるのかわからなかった。
情緒不安定になっているのだろうか?
 
ξ゚听)ξ「いつ来てもこの図書館はすっごいわねぇ…」 
一生かけても読み切れないほどの書籍がそこにはあった。
その中で、何となく本に目を通していたが、気がつけば夜になっていた。
 
ξ゚-゚)ξ「そろそろ帰ろうかしら…あら?」

336 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:28:38.83 ID:Hc2h2xiFO
いつもは鍵がかかり、中に入れない扉が開いている。
 
ξ゚-゚)ξ(変ね…。誰もいないのに…)
 
恐る恐る近付いて中の様子を窺う。
やはり、誰もいなかった。
 
ξ゚-゚)ξ(勝手に入っちゃまずいわよね…)
 
しかし彼女の興味心が理性に勝る。
もともと本が好きな彼女は、以前からこの部屋が気になっていたのだ。
 
ξ゚-゚)ξ(ちょっとくらいならいいよね…)
 
周囲を警戒しながら侵入し、目についた分厚い本を手に取り、それを開いた。
最初に開いたページに、ツンは釘付けになる。
Aと書かれた盲目白痴の神について書かれていたのだが、その中に気になる文章を見つけた。
 
「この姿を見た者は心を破壊される」
 
普段なら気にも止めないような文ではあるが、なぜかツンはそこに惹かれた。
気付かぬうちに、よほど参っていたのだろう。一度心を壊してしまえば別の性格になれるのではないかと、危険な想像を膨らませていたのだ。
その時、足音が聞こえた。
 
ξ;゚听)ξ(やば…っ! 誰か来る!)
 
ツンは急いで本を戻し、その部屋から脱出した。
 
男「あれ? ツンさん、今この部屋から出て来ませんでした?」

337 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:29:23.56 ID:Hc2h2xiFO
この男は図書館でアルバイトをしている者で、ツンとは面識があった。
 
ξ;゚ー゚)ξ「な、何の事かしら…?」
男「それならいいんですけど、この中には危険な物もありますから…」
ξ;゚ー゚)ξ「ならしっかり鍵かけとかないとね。
私急ぐから、これで…」
 
ツンは急ぎ足で図書館を出た。
外はすっかり暗くなっており、今日はそのまま帰る事にした。


338 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:30:22.13 ID:Hc2h2xiFO
ξ゚-゚)ξ(ここはどこかしら…?)
 
辺りに広がるのは闇と星々。
まるで宇宙に漂っているかのようだ。
 
ξ゚-゚)ξ(ああ、これは夢ね…)
 
生まれて初めて夢を夢と認識した瞬間だった。
だからといって特に面白い事もない。
しばらく漂っていると、何か─沸騰する混沌の核と表現すべきだろうか─が現れた。
一瞬見ただけで、その姿のあまりの悍ましさにツンは目を閉じる。
その姿はまさにAであると認識できたが、図書館で見た物より遥かに醜悪な者だったのだ。
気が狂いそうになりながら身を震わせていると、Aがツンの耳元で囁き────

339 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:32:15.02 ID:Hc2h2xiFO
ξーдー)ξ「ん……」
ξ゚-゚)ξ「…………」
 
目を開いくと、自分の家の物ではない天井が飛び込んできた。
風に靡くカーテン、柔らかなベッド…。どうやら病院にいるらしい。
頭だけ横を向いてみると、椅子に座った内藤が静かに寝息を立てていた。
 
ξ゚-゚)ξ「……ブーン?」
( ーωー)「お…?」
(;゚ω゚)「つ、ツン!? 目が覚めたのかお!?」
ξ゚-゚)ξ「ええ…。私、どれくらい寝てたの…?」
( ;ω;)「おお〜ん! 良かったおー!!!」
 
戸惑うツンにブーンは抱き付く。
 
ξ////)ξ「ちょ、ちょっと!」
 
内藤の話によると、ツンは5年もの間眠り続けていたという。
自宅で発見された時には、完全な狂人と化していたらしい。
医者から、病院で眠り続けるツンに内藤は毎日通いつめ、付きっきりだった事も聞いた。


340 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:33:12.76 ID:Hc2h2xiFO
ξ゚-゚)ξ「ねぇ…ブーンはクーみないな子が好きなんじゃないの…?」
 
最も気になっていた事を、ツンは弱々しく問う。
いつも気丈であったせいか、その態度が彼女を更に小さくみせた。
 
( ;ω;)「そんな事ないお! 僕はツンのツンツンなのが好きなんだお!!」
ξ////)ξ「え…?」
 
興奮しているのか、内藤は早口に本音を言ってしまった。
それでも一度溢れ出した言葉の本流は止まらない。
 
( ;ω;)「ツンが眠ったままになって本当に心配したんだお! このまま目を覚まさないんじゃないかと…。おおおおおおあ……」
 
泣きじゃくる内藤に、しばらく呆気にとられていたツンであったが、感覚を取り戻しつつあったこともあり、自信に満ちた声で言った。
 
ξ゚ー゚)ξ「まったく、しょうがないわねブーンは。
私がいつまでも寝てる訳ないでしょ!」
( ;ω;)「良かったおおおおおおお……」


342 未知なるクーデレを夢に求めて New! 2006/05/22(月) 05:34:02.97 ID:Hc2h2xiFO
ξ゚听)ξ「ホラ、顔を上げて涙を拭きなさい! あんたも男ならシャキッとするのよ!」
( ;ω;)「わかったお〜…」
 
口ではそう言いながら、ツンの胸で泣きやまない内藤。
 
ξ//_//)ξ(こんなブーン初めて見たわ…)
ξ////)ξ「しかたないわね。私の胸、もうちょっと貸してあげるわ。
べ、別にあんたをカワイイとか思ってる訳じゃないんだからねっ!」
 
 
彼女が欲しかったものは手に入らなかった。
しかし彼女は気付いたのだ。自分の性格を無理に偽る必要のない事を。
この場所には「クーデレ」ではなく、確かな「ツンデレ」がそこにはあった…。
          終
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