39 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:51:32.81 ID:aeYiP44G0
8月13日 PM8:46 ブーン

最近調子が悪い。

身体は至って健康なのだけれども、ネットサーフィンでの収穫がめっきり減っている。
理由は自分でも分かっている。時間帯が悪いのだ。
某巨大掲示板も11時以降こそが真骨頂で、その場でしか得ることのできない
写メや、神絵等をゲットしようと思うのならば夜更かしは必須。

だが、1年前の僕ならともかく、今の僕にはそれができない。
次の日の仕事に差し障りがあるから。

( ^ω^)「あーあ、VIP分が足りないけど、そろそろ寝ないといけない時間だお」

僕は高校を卒業した後、何とか就職口を見つけていた。
学校での成績は良い方では無かったけれど、一生懸命な面接態度を分かってくれた人がいたのか
いくつも周った企業の内、一社だけ内定を出してくれたのだ。

( ^ω^)「せっかく拾ってくれた社長さんをガッカリさせるワケにはいかないお」

下手をすればニート一直線だった僕に手を差し伸べてくれた会社には感謝しているし、仕事も好きだ。
決して楽というワケでは無いけれど、ホモ説が有力なショボーン先輩は面白い人だし
社長の娘さんのツンさんは少しキツい性格だけれど紛れもない美人で眺めているだけで心が癒される。
僕は毎日仕事に行くのがそれなりに楽しみだった。


40 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:52:40.14 ID:aeYiP44G0
それはそうと、定時に出勤するためには僕は6時半には起きなければならないので
夜の10時までには寝ていないと起きる自信が全く無い。
もうそろそろ明日の準備に取り掛からなければ。

パソコンを切る前に僕は未練がましくも「最後に1スレッドだけ」と思い、
一度更新ボタンを押し、一番上にきたスレッドを閲覧することにした。

(更新中)

運命のスレッドが表示される。
僕はたいしてドキドキもせずに、だがVIPクオリティーがミラクルなスレを表示することを
期待をしながら更新が終了するのを待った。

更新終了。



1:ちょwwwww女に弄ばれたwwwwwwwwww     2



(;^ω^)「なんとも見事なクソスレを引いてしまったお…」

41 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:53:41.05 ID:aeYiP44G0
一応内容を確認してみると


1 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 投稿日: 2006/08/13(木) 20:46:47.50 ID:G4v0yoBp0
本気で惚れてたのに、マジでヘコむ。

2 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2006/08/13(木) 20:46:55.82 ID:Tnj5ulvFt0
2get


とだけ書かれている。
どう見ても典型的なクソスレです、本当にありがとうございました。

( ^ω^)「女の子と接することができただけでも十分ジャマイカ、僕なんて(ry」

折角なので思ったことをそのまま書き込むことにした。
どうせ立て逃げだろうし返事は期待していなかったが
1分待って更新ボタンを押してみると意外に>>1から返事が返ってきていた。

42 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:54:41.61 ID:aeYiP44G0
('A`)「…だよな、俺みたいなドクオに一瞬たりとも彼女もどきができただけ
    幸運だと思わないとな、アホなこと書き込んでスマンかった」

低姿勢な>>1の様子を見た僕は>>1が本当に落ち込んでいるのだと感じ、
自分で良ければ話を聞く旨を書き込んでみた。
先ほどとは違い、少し間を置いて返事が返ってきた。

('A`)「>>3 ありがとう…じゃあスマナイが少しだけ俺の話に付き合ってくれ」

43 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:55:43.35 ID:aeYiP44G0
8月13日 PM8:47 ドクオ

最後に何か自分のいた形跡を残したい。
そう思った俺は自分の悲愴感とは対照的な「w」だらけのクソスレを立てていた。

不幸すら笑いに変えるVIPの住人なら俺のクソスレもイイ具合に料理してくれるだろう。
スレを立てて1分、誰か返信をしているかと思い更新してみると、


3 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2006/08/13(木) 20:47:55.82 ID:Ude4DDRFw0
女の子と接することができただけでも十分ジャマイカ、
僕なんて相手にすらしてもらえないお! (#^ω^)ビキビキ


ああ、不快な気分にさせてしまった。
申し訳ない、申し訳ない、申し訳ない、申し訳ない、申し訳ない、申し訳ない。
最後の最後まで俺は皆の気分を害してばっかりだ。
どうせならこの>>3に謝ってから練炭に火をつけよう。

44 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:56:43.25 ID:aeYiP44G0
謝罪文を打ち込んで相手の反応を見ると、
どうやら相手は自分の文章から何かを感じ取ったらしく俺の話を聞いてくれると言ってきてくれた。

こんな良い奴に俺の鬱な話を聞かせるのも悪いような気がするが、
折角の相手の誘いを断る方が失礼だと思ったこの時の俺は
親切な>>3に話を聞いてもらうことにした。
今考えるとdでもない面倒を>>3にはかけてしまったと思う、申し訳ない。

45 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:57:44.19 ID:aeYiP44G0
8月13日 PM9:37 ブーン

(;^ω^)「この>>1、可哀相だお!!」

話を聞いて僕は>>1に感情移入しまくっていた。

>>1の話した内容は大体こういうモノだった

1、生まれて初めて優しくしてくれた女の子に勇気を出して告白した
2、意外にも相手がすんなりOKしてくれた
3、初めてのデートの最中にその一連の動作が罰ゲームの命令によるものだったと告白される
4、ガチでヘコんでいると相手が「でも今は本当に貴方のことが…」と予想外な展開に
5、数日後、彼女の家に呼ばれてついていってみると
  ソコにはカメラを片手にニヤニヤしたヤツらがイパーイ、どうやらドッキリは続いていた様子
6、日が暮れるまでイジられた挙句、本当の彼氏っぽい男が見せ付けるように想い人と公開接吻
7、現在に至る


B級の映画の中でしかココまで酷い話はお目にかかれない。
今まさに不幸のドン底にいるであろう>>1
何て声をかけたら良いか、若しくは文章を送れば良いか、などと僕が思案していると
相手の方が先に発言してきた。

46 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 14:58:44.48 ID:aeYiP44G0
('A`)「>>3 アンタに聞いて貰えて嬉しかった。
    そろそろ俺は落ちることにするよ、ありがとう」

どうやら相手は僕を話し相手にすることで気持ちが和らいだらしい。
特にこれといって気の利いたセリフは一言も言えず仕舞いだったのだけれども、
こんなことで心が安らぐならお安いものだ、良かった良かった。



本当に…?



僕の背筋に嫌な予感が走る。
一気に鳥肌がたった自分の腕を見て更に鳥肌がたった。

彼を本当にここで落ちさせても良いのだろうか。
否、あるかどうかもわからない僕のシックスセンスが「引き止めろ」と言っている。

慌ててタイピングを開始する僕。
陰鬱な夜に>>1を一人で居させてはいけない。
落ちる前にもう一度スレを見てくれ>>1よ。

47 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 15:00:40.03 ID:aeYiP44G0
8月13日 PM9:37 ドクオ

>>3には俺の実体験を余すところなく伝え終えた。
ふと時計を見ると9時37分、50分も掲示板でチャットのようなことをしてたのか。
>>3には本当に申し訳ない時間の使い方をさせてしまったな。
そろそろ切り上げるべく、お礼の文章を打ち込み、落ちる意思を伝える。
それに対する>>3の返事はこのようなものだった。

42 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2006/08/13(木) 21:37:41.33 ID:Ude4DDRFw0
>>1 明日はどうするの?

48 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 15:02:10.76 ID:aeYiP44G0
8月14日 AM5:16 ドクオ

朝日が眩しかった。

部屋の窓から差し込んでくる太陽光は四畳半の部屋のほぼ全域を照らし出し
葉緑体の無いはずの俺の身体はまるで光合成をしているかのごとく活力を帯び始めていた。

('A`)「ん、もう朝か」

あれから今まで俺は律儀に>>3から矢継ぎ早に繰り出される質問に返答をしていた。
質問の内容は主に明日(もう既に今日だが)はどうやって過ごすか、といったものだった。
過ごす気の無い今日のスケジュールを適当に答えている内に
今日の俺の行動は数分単位で決まってしまっている。
一体何をやってるんだろうな、俺と>>3は。

50 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 15:03:15.15 ID:aeYiP44G0
殺風景な部屋には、結局使わずじまいだったガムテープと練炭が転がっている。

('A`)「そういえば、俺は人より早めに人生を終えようとしていたんだったな」

まるで他人事のように呟いた俺は軽く伸びをし、
昨日から着替えていないジーパンの後ろポケットに財布をねじ込んだ。
まだ少々鬱な気分は残っているが今更人生を断つ気は今の俺には無かった。

318 名前: 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします [sage] 投稿日: 2006/08/14(金) 05:17:45.14 ID:fKVecmkSew0
>>3 ちょっと朝飯買ってくる。

朝飯を買いに行こう、>>3に話した出鱈目なスケジュールを実行する為に腹ごしらえは必要事項だ。
満腹になったら名前も知らない>>3にお礼を言おうと思う。
「お前のお陰で昨日を越えることができた、ありがとう」と。

そういえば、>>3は朝まで俺と会話してて学校や仕事は大丈夫なんだろうか?

51 夜明けの時間 sage New! 2006/08/14(月) 15:04:26.84 ID:aeYiP44G0

8月14日 AM5:17 ブーン

>>1との会話はひと段落ついた、嫌な予感はもうしない。
心地よい脱力感に包まれていた僕を突如別の嫌な予感が襲う。
いや、これは予感じゃないな。ただ思い出しただけだ。

(;^ω^)「あ…仕事のことをすっかり忘れてたお」




〜おしまい〜

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