789 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:05:02.66 ID:Xt5B03nAO
<ヽ`∀´>「ひぃぃっ、た、頼むニダ、命だけは……!!」

薄暗い路地の奥。
悲鳴じみた声を上げる男の前に、小柄な影が立っている。
華奢な身体に、肩口で切り揃えた金髪。
可憐な笑みを浮かべた女の前で、屈強そうな男が涙を流して命乞いをする構図は、明らかに異常だった。
わかっている。助けを乞うても無駄だと。依頼を受けて仕事をこなすだけの殺し屋に、自分の生死を決める権限はないと。
しかし、わかってはいても、男はせめて目の前の優しげな微笑にすがりたかった。

从゚∀从「無理」
<ヽ`∀´>「ひっ……!!」

ほんのわずかな期待を無情に打ち砕く女の言葉に、がくがくと震えていた男が身を竦ませる。
が、男が恐怖の絶頂を感じたのは、ほんの一瞬だっただろう。

最後に男の目が映したのは、澄んだ瞳と、天使のような笑顔。
瞬き程の間に、女の左手に握られたナイフは、男の心臓を正確に貫いていた。

从゚∀从「バイバイ。ひゃは」

無造作にナイフを引き抜く。
刃についた血を舐め、女は無邪気に笑った。
吹き出した返り血に、髪を、顔を紅く染めて。

ブラッディエンジェルと呼ばれる、通り名そのままの姿で。

790 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:06:11.88 ID:Xt5B03nAO
(´・ω・`)「こいつが、今回の標的だ」
从゚∀从「……」

ショボンが差し出した写真を手に取り、高岡は写真に視線を落とす。
薄ら笑いを絶やさない高岡とは対照的に、ショボンがその無表情を崩す事はない。

(´・ω・`)「同じ学生相手に、薬を売ってる疑いがある。
      が、疑惑はあるが証拠がない」

写っているのは、若い男だった。
隠し撮りしたものだろうか。どこかのキャンパスらしき一角で、不景気そうな面持ちで佇んでいる。

从゚∀从「……証拠をつかむのも仕事のうち、ってか」
(´・ω・`)「不満かい?」
从゚∀从「別にー」

ショボンの元に持ち込まれる様々な依頼のうち、通常、高岡が請け負う仕事は『フィニッシュ』に限られる。
だが、今回の標的は大学生。
チンピラ風情の他の部下達に『調査』させるよりも、一見カタギの人間に見える高岡の方が、より標的に接近しやすい。
ショボンはそう判断したのだろう。

両親を亡くしてからゴミクズ同然の暮らしを送っていた高岡を、拾い上げてくれたショボン。
衣食を与え、学校に行かせてくれた。両親と住んでいたのよりも遥かに広い、この部屋もくれた。
彼女がショボンの指示に逆らったことは、一度もない。

指先で、軽く写真を弾き上げる。
次の瞬間。
目にも止まらぬ速さで高岡の左手から放たれたナイフが、写真を壁に縫い止める。
命令を了承したことを示す、ブラッディエンジェルのいつものパフォーマンスを見届けると、ショボンは表情ひとつ変えずに部屋を後にした。

791 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:07:50.57 ID:Xt5B03nAO
「なぁ、まだ先生こねーの?」

ひと気の少ない教室の片隅。
いつも通り、窓際の席で一人で本を読んでいるドクオに、珍しく話しかける者がいた。

('A`)「……今日は休講だけど」
从゚∀从「うそ、ちょ、まじで?」

知らない女だった。
そもそも、無口で無愛想で、男友達でさえ少ないドクオに、女友達などいるはずもない。
が、知り合いでないにしても、同じ学科の人間なら多少なりとも見かけた事はあるはずだが。

从゚∀从「やっべ、どうしよ。なぁなぁ、あんた先週出てた? 試験範囲とか知ってる?」
('A`)「……知ってるけど」
从゚∀从「まじで? うっはー助かった!」

ドクオの仏頂面も意に介さない様子で、嬉しそうに笑う女。
仕方なく、出題範囲を教えてやる。
「ありがとうな!」と、満面の笑みで教室を出ていく女の後ろ姿を眺め、ドクオは溜息をついた。
普段はサボってて、試験前になったら、出題範囲を聞くために慌てて講義に顔を出すような手合いか。
もう二度と話をすることもないだろう。
その時は、そう思っていた。

ところが。

792 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:09:08.94 ID:Xt5B03nAO
('A`)「うおっ!?」

暑い日差しが照りつける、大学の中庭で。
突然、首筋に冷たいものを押し当てられ、ドクオは飛び上がった。

('A`)「なっ……?」
从゚∀从「ひゃーっはっはっは!」

振り向くと、見覚えのある女が、やたらテンション高く笑い転げている。

从゚∀从「あはははは、びっくりした? なぁなぁ、びっくりした?」
('A`)「……お前、この前の」
从゚∀从「こないだは助かった。これお礼」
('A`)「は? いや、ちょっと待……」

一方的にまくしたて、女はドクオの手にペットボトルを押しつけると、身を翻して走っていく。
冷えたペットボトルを手に、ドクオは思わず立ち尽くしていた。

('A`)「……何なんだ、あのDQN女」

鬱陶しそうに吐き捨てながらも。
女の突き抜けた笑顔が、ドクオの脳裏に灼きついて離れなかった。

793 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:10:33.88 ID:Xt5B03nAO
あれ以来、あの女は頻繁にドクオに声をかけてくるようになった。

どうせ普段は大学に来ないから、他に話すような友人もいないのだろう。
とはいえ、何故わざわざ自分のような陰気な男につきまとうのか。
ドクオは彼女の真意を測りかねていた。

('A`)「……いや、まさかな」

『あれ』が目的の奴なら、もうとっくにその話を切り出しているはずだ。
未だにその話を振ってこないところを見ると、本当に、単に友人がいない故の暇つぶしに過ぎないのだろう。

ともかく、二週間の試験期間が終われば、キャンパスは長い夏休みに突入する。
試験さえ終われば、このうざったい女ともおさらばだ。
あえて友人を作らないようにしていたドクオにとって、あの女は、迷惑以外の何者でもなかった。

迷惑だったはずなのに。



从゚∀从「なぁなぁ、なんでお前っていつも辛気くさい顔ばっかしてんの?」
('A`)「うるせぇ、放っとけ。地顔だ」
从゚∀从「もったいねーなー。なぁ、ちょっと笑ってみ? もうちょっと明るい顔してれば、結構もてるんじゃね?」

親しい友人は作らないようにしていたのに。
どうして、夏休みに入った今も、この女と連絡を取り合っては会っているのだろう。

('A`)「……ねーよ馬鹿」

刺すような日差しと、ハイテンションな笑い声にいくらか辟易しつつも。
ドクオは、高岡と名乗る女の屈託のない笑顔に、いつしか惹かれていた。

794 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:11:47.82 ID:Xt5B03nAO
(´・ω・`)「時間がかかり過ぎてるな」

数週間ぶりに部屋にやってきたショボンが、壁の写真を見ながらつぶやく。
その小言を、高岡は鼻で笑い飛ばした。

从゚∀从「るせーな。だったら調査専門の奴にやらせればー?」

ナイフを弄びながら、悪びれる様子もなく笑ってみせる。

从゚∀从「私の本業は別だしー」

標的の男が、薬を売っているという証拠が掴めれば。あるいは本人の自白でもあれば。
そこからが、高岡の『本業』の出番だ。
が、普段やり慣れない類の仕事だからか、高岡は未だに証拠を掴むまでには至っていなかった。

(´・ω・`)「わかってる。急ぎの仕事なら、他にやらせてるさ」
从゚∀从「だったら問題ねーじゃん」
(´・ω・`)「俺が危惧してるのは、時間が経てばそれだけ、」

一瞬、ためらう素振りを見せてから、ショボンが言葉を繋ぐ。

(´・ω・`)「……あいつに情が移るんじゃないかと」
从゚∀从「ねーよ馬鹿」

796 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:13:00.52 ID:Xt5B03nAO
その言葉を、高岡はぴしゃりと撥ねつけた。
無表情がトレードマークのショボンが、わずかに目を見張る。
が、それも一瞬の事だった。

(´・ω・`)「……なら良いんだけどね」

ドアの近くの壁に、一枚の写真を貫いて突き刺さったナイフ。
そのナイフをショボンは引き抜いた。
はらりと写真が落ちかけた、次の瞬間。
逆手に握ったナイフを強烈な勢いで突き立て、写真を再び壁に縫い止める。
そのまま、ショボンは振り返りもせずに部屋を出ていった。

从゚∀从「……なーに怒ってんだ、あいつ」

部屋に一人取り残された高岡は、小さくつぶやきを漏らした。
ゆっくりと立ち上がり、壁に歩み寄る。
鋭い刃に穿たれた写真。
写っているのは、不景気そうな仏頂面。
ここ数週間で、高岡が一番よく目にしている顔だった。

そういえば、さっき思わず口走った「ねーよ馬鹿」って。
こいつの口癖だっけ。

从゚∀从「……ドクオ」

797 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:14:10.19 ID:Xt5B03nAO
( ^ω^)「お前は母さん似だお
       目元とか髪の色とか、ほんとそっくりだお」
从゚A从「……」

父さんの暖かくて大きな手が、私の頭をなでる
父さんはいつも笑ってる

ξ゚・゚)ξ「あら、ハインリッヒは父さん似よね
     笑った顔なんて瓜二つだわ」
从゚A从「……」

母さんの暖かくて細い腕が、私を抱きしめる
母さんはあまり笑わないけど、

从゚∀从「……」
ξ゚ー゚)ξ「ほら、父さんそっくり
     ま、そこのピザより、ずっと可愛いけどね」
( ^ω^)「ひどすwwwww」
从゚∀从「……ふは」

私が笑うと、母さんも笑うんだ
そんな母さんと私を見て、父さんもまた笑うんだ

ξ゚ー゚)ξ「ハインリッヒ、あなたは私たちの天使よ」

だから、私は笑うんだ

800 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:15:20.47 ID:Xt5B03nAO
('A`)「おい、起きろ、高岡」

すぐ側で呼ぶ声に、ゆっくりと意識が覚醒していく。
ここはどこだろう。
窓から差し込む西日と、夏の終わりを告げるヒグラシの声が、狭いアパートの部屋を満たしている。
身体が斜めになっているのに気づいて姿勢を直すと、身体の右側から温もりが離れていくのがわかった。
誰かによりかかったまま、眠っていたらしい。

ああ、そういえば。
ドクオの家で一緒に課題をやるとかなんとか。

('A`)「どした。恐い夢でも見たか?」
从;∀从「……は」

問われて初めて、頬を伝う液体に気がついた。

从;∀从「……そっ、そんな事、」

さっき見てたのは恐い夢じゃない。
懐かしい、暖かい夢。
確か、私は笑ってたはずだ。
なのになんで、

从;∀从「父さんと、母さんの……」
('A`)「……そっか」

幸せな夢を見てたはずなのに。
私は笑ってたはずなのに。
なんで、涙が出るんだろう。

801 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:16:47.99 ID:Xt5B03nAO
出会ってから一ヶ月近く。
いつも笑ってばかりいた高岡が、初めて見せた涙。
泣き続ける高岡に戸惑いつつ、ドクオは不器用ながらもそっと、その金色の髪を抱き寄せた。

一瞬、強張った高岡の身体が、やがてわずかに力を抜く。
さっきのように眠ってしまったからではなく、高岡が自分の意思で身体を預けてきた事に、ドクオの心臓が緊張と嬉しさとで大きく波打った。
肩口に高岡の頭の重さを感じながら、その髪をゆっくりとなでる。
窓からの夕陽に照らされ、髪がツヤを深めて輝く様子が、まるで天使の輪のようにドクオの目には映っていた。

('A`)「ほら、もう泣くな。な?」
从;∀从「泣いてな、う、ひっく、ふぇぇ……」

こんな時間が、いつまでも続けばいいのに。
高岡の髪をなでながら、いつも仏頂面を崩さないドクオの口元は、知らず微笑んでいた。

しゃくり上げる声が落ち着いてきた頃を見計らって、ドクオは顔を引き締め、口を開く。
ここ数週間、心に秘めていた、ある決意と共に。

('A`)「……高岡。
   俺、お前に言いたい事があるんだ。
   けどその前に、言わなきゃならない事があるんだ」

わざと友人を作らなかったドクオ。
人づきあいは得意ではないが、決して苦手なわけでもない。
にもかかわらず、親しい相手を作ろうとしなかった理由はただひとつ。

商売相手に、情が移ってしまうのを避けたかったから。

('A`)「俺、……薬の売人をやってたんだ」

802 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:18:25.54 ID:Xt5B03nAO
『あの教室が空き時間の時に行ってみたらいい。
 窓際で本を読んでる奴に頼めば、売ってくれる』

そんな噂を人づてに聞きつけ、ドクオの元を訪れる『客』は少なくなかった。
が、『客』とは、売る側と買う側としてのつき合いのみ。
売買に手を染めながらも、いや、染めているからこそ、ドクオは薬の危険性を熟知していた。
もし、親しい友人が自分の売った薬のせいで廃人になった日には、悔やんでも悔やみきれないだろう。
そうなるのがわかっていたから、ドクオは他人との間に一線をひき、誰も寄せつけなかった。
彼女に出会うまでは。

('A`)「けど、もう辞めた」

軽蔑され、嫌われても仕方がない。
だが、深い人づきあいを避けてきたにもかかわらず、それでもなお惹かれた相手に。
心から好きになった相手に。

('A`)「お前に隠し事はしたくなかったんだ」

金色の輪を浮かべた髪に顔を寄せ、精一杯の思いをこめて、ドクオは囁く。
……たとえ俺の罪が許されなかったとしても、汚れた世界から足を洗うきっかけをくれた彼女は、俺の天使であることに変わりはない。

('A`)「……好きだ、高岡」

从 ∀从「……」

高岡の肩が、小さく震えた。

804 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:19:49.76 ID:Xt5B03nAO
从 ∀从「……は」

从 ∀从「……ははっ」

从゚∀从「……はは、はははっ、ははははははひゃはははひぃやぁあーっはっはっはっはぁぁぁぁぁあ!!!!」

突然、壊れたようにけたたましく笑い始めた高岡に、ドクオは驚いた。
無理もない。嫌悪の視線を浴びる覚悟はしていたが、こんな反応は予想していなかった。

('A`)「……た、高岡?」
从゚∀从「ひぃーっはっはっはっはははははぁははは、あひゃひゃひゃははひゃっはっははははははふひはははは」

ドクオの肩に額を押しつけ、ぎゅっと抱きつきながら、ネジが飛んだような勢いで高岡は笑い続ける。
いきなりの豹変ぶりにどうしていいかわからず、宙をさまよっていたドクオの手が、揺れ続ける肩に恐る恐る触れる。

不意にぴたりと笑うのを止め、高岡が顔を上げた。

从゚∀从「笑ってよ」
('A`)「……え」

唐突な言葉の真意は、ドクオには最後までわからなかった。

最後にドクオの目が映したのは、真っ赤に腫れた瞳と、泣き笑いの表情。
そして、高岡が振り上げた左手に光る、銀色の閃きだった。

805 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:21:00.32 ID:Xt5B03nAO
私が笑うと、母さんも笑うんだ
私が笑うと、父さんも笑うんだ
だから私は笑うんだ

ねぇ、笑ってよ
私が笑ってるんだから、あなたも笑ってよ

あなたに笑ってほしいから、私は笑うのに

笑ってよ、父さん
笑ってよ、母さん



笑ってよ

ねぇ、ドクオ






806 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:22:49.47 ID:Xt5B03nAO
(´・ω・`)「ご苦労さん」

ショボンが声をかけても、高岡は身じろぎひとつしなかった。

電気もつけず、月明かりだけが照らす室内。
むせかえるような血の匂い。
虚ろな目で、血溜まりの中に座りこむ女。
かたわらには、胸を一突きにされた男の死体が転がっていた。

普段の彼女なら、もっと後始末のしやすい場所で『フィニッシュ』に及ぶのに。
自分達や依頼主の息のかかっていない、ごく普通のアパートだってのに、この惨状だ。
これはちょっと後始末に手こずりそうだ、と、ショボンは小さく溜息をついて室内を見渡した。

从゚∀从「……隠し事とかさぁ」

ふと、高岡がつぶやく。

从゚∀从「馬鹿じゃね? 隠し事とか」

ショボンに聞かせる風でもなく、ドクオの死体に話しかけるでもなく。
薄笑いを浮かべた唇が、今更言っても仕方のない繰り言を紡ぐ。

从゚∀从「黙ってればいいのに。それを馬鹿正直にさ。あぁ、だから馬鹿ってついてんのか、ひゃは」

隠し事の何が悪いのかと。
黙っていてくれれば。
売人をやってたなどと、黙ってさえいてくれれば。

こっちだって、こんな稼業のことは隠したままでいられたのに。
互いに隠し事を抱えたまま、一緒にいられたのに。

808 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/13(日) 23:24:35.75 ID:Xt5B03nAO
(´・ω・`)「さぁ、帰ろう」

ショボンが高岡の腕を取る。
抗う事もなく、高岡は素直に立ち上がった。

血の匂いが充満した部屋を出る。
高岡は振り返ろうとはしなかった。
テーブルに広げたままの課題。
借りていたDVD。
愛用のナイフ。
好きだった男の亡骸。

放っておいても、いつも通り、ショボンが片付けてくれるだろう。
それで、今回の仕事は完了。

从゚∀从「……そういえばさ。
    あんたも、ちっとも笑ってくれないよな」

ふと思いついたように、高岡が言う。
どこか淋しげな口調で。
が、ショボンにはわかっていた。
彼女が本当に笑って欲しいのは、笑って欲しかったのは、自分ではないと。

(´・ω・`)「……君だって、俺の前では一度も泣き顔を見せた事ないよね」

ショボンの独白は、高岡の耳に届く前に、夜風にかき消された。


終わり

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