941 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:09:52.79 ID:I0th13HkO
真夏の夜
今日は珍しく涼しい
雲一つない夜空に大輪の花火が次々と咲き、散っていく。
そう、今日は花火大会だ
前の僕ならはしゃいでいたけれど、今日はそんな気になれない。

( ゚∀゚)「・・・花火、綺麗だな」
僕の親友長岡は


――もうすぐ癌で死ぬ

この、白く何もない病室で。




942 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:11:14.38 ID:I0th13HkO
(´・ω・`)「ああ、綺麗だね・・」

( ゚∀゚)「・・来年も、見れたらいいのに」 
長岡はどこか悲しそうな目で、そう呟くと黙ってしまった。


(´・ω・`)「・・・」

それから何十分たっただろうか、フィナーレの巨大な花火がうち上がり、パッと散った

まるで、僕たちの思い出が消えていく様に。
ただ一人の友が、僕の手から離れていく様に。




943 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:12:20.04 ID:I0th13HkO
( ゚∀゚)「・・机の引き出し」

(´・ω・`)「え?」

( ゚∀゚)「俺が死んだら、机の引き出しに入ってるノートを見てくれ」

(´・ω・`)「・・分かった」

本当は、死ぬなと言いたかった。
今は亡き彼の両親の代わりに抱き締めてあげたかった。
だけど、できなかった。
僕は友の為に何もできない、無力な一人の人間だ。

( ゚∀゚)「そろそろ帰らなきゃ、おばさんが心配するぞ」
(´・ω・`)「・・分かった。じゃあまた明日ね」
僕は答えも聞かずに病室を出ていった。

944 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:13:26.15 ID:I0th13HkO
――涙が、頬をつたって落ちた


------
三日後、長岡は僕が帰った一時間後に死んだ。
きっと苦しかった筈なのに、まるで眠っている様な安らかな顔だった。

(´・ω・`)「・・・」

僕は片付けられた病室に戻った
昨日まで長岡が寝ていたベットにはもう、誰もいない。


945 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:14:49.15 ID:I0th13HkO
(´・ω・`)「人の願いなど大きな時間の前では無力だ、か・・」
昔、長岡が言っていた言葉。
今になってその意味が分かった気がする


花火大会の日に言われた通り引き出しを開けると、タイトルも名前も書かれてない大学ノートが一冊入っていた
パラパラとページをめくると、地図と数行の文章が長岡の筆跡で書いてあった。



946 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:16:14.20 ID:I0th13HkO
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前略、酒田ショボン様へ
―――
これをお前が見てる頃には俺は死んでいるんだな。
イマイチ実感がわかないよ、俺が癌だなんて。
お前には迷惑かけたな、手紙だから言える。ありがとうショボン。

俺からの最後のお願いだ
この地図のとこ、親父が昔やっていた工場から花火をとってきてほしい。
そして、昔よく行った海。覚えてるよな?
そこで花火をあげてくれ。迷惑かもしれないけれど、お願いだ。
そしたらまた、お前に会える気がするんだ
じゃあ、お先に天国で待ってるぜ
――
ジョルジュ長岡
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947 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:17:14.05 ID:I0th13HkO
最後の方は涙の跡がついていた。
(´;ω;`)「・・長岡」

そこに、また涙が落ちる


涙を拭き取り、ショボンは空に向かって言う。
(´・ω・`)「分かったよ長岡、最後の願い絶対叶えるから」

ノートを抱え、ショボンは病室を出ていった。




948 天国へ届く花火(題:死に花+花火大会) New! 2006/08/08(火) 17:18:16.02 ID:I0th13HkO
雲一つないあの日の様な空に咲いた美しい大輪の花火が、蒼い夜明け前の海に反射する
それを眺めるショボくれた顔の男が呟く

(´・ω・`)「長岡・・見てる?親父さんの花火少しだけ残ってたよ。綺麗だね・・」

( ゚∀゚)「ああ、綺麗だな・・ありがとう」


――そう、聞こえた気がした。
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