826 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:47:20.02 ID:4ZAbf2p90
('A`)ドクオと写真


今俺の手元には一枚の写真がある。
初めて動物園に行った時の写真――
象の檻の外で優しく微笑んでいる母と象が怖くて泣いている俺の写真。
母はそれを肌身離さずいつも持っていた――


もう見慣れてしまった真っ白な病院の廊下を抜け俺は母のいる病室に入る。
母は脳の病気のせいでここしばらく入院生活を送っている。
見舞いに訪れる親戚も最初の内はいたが、最近はもう誰も来なくなった。
それでも俺はほぼ毎日、母に会いに来ていた。

('A`) 「カーチャン、来たよ。今日も暑いな」

J( ゚∀゚)し「・・・・・・・・」

俺が話しかけても母からの返事はない。
病院の外で蝉が鳴く音だけが聞える。

('A`) 「カーチャン、またご飯残したのか?だめだろちゃんと食べないと
    病気治んないよ」

J( ゚∀゚)し「・・・・・あら?せ、先生。もう診察の時間?」

('A`;)「カーチャン・・・・」
 

827 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:48:29.39 ID:4ZAbf2p90
('A`;)「カ、カーチャン俺だよ。ドクオだよ」

J( ゚∀゚)し「きゃはは 先生ったら冗談ばっかり!」

('A`;)「・・・・・・・・・・・・」

最近では病気が進行して、もう俺と他人を区別することも出来なくなっていた。
しかしそんな母でも唯一忘れていないものがあった。

J( ゚∀゚)し「ねえねえ先生!」

('A`)「え、何?カーチャン」

J( ゚∀゚)し「先生!これ見てみて。うちの息子のドクオなのかわいいでしょ」

母が手に持っている写真――
それは俺が母と初めて動物園に行った時撮った写真だった。

('∀`)「ああ、覚えてるよ。俺この写真撮った後、象が怖くておしっこもらしちゃったよね。カーチャン・・・」

J( ゚∀゚)し「そーなのよー もう大変だったの。でもかわいい息子でしょ?」

('∀`;)「うん・・・・・」

昔と変わらない笑顔で優しく微笑む母。
そんな母の笑顔を見れて、俺はうれしかったがそれと同時にとても悲しくなった。
その笑顔が向けられているのは今の俺ではなく、思い出の中の俺なのだから。


828 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:49:32.04 ID:4ZAbf2p90
J( ゚∀゚)し「あら、そういえばドクオどこ行っちゃったのかしら?」

('A`;)「カ、カーチャン・・・・俺なら目の前にいるよ?」

J(# `Д)「ちょっと!!あんた誰?なぜ私の大事な写真を取ったの??
     ドロボーー!!」

('A`;)「ご、ごめんんさい」

J(# `Д)「かえせ!バカヤロー!」

('A`;)「カーチャン・・・・」

母は俺から写真をもぎとると、それを大事そうに抱えた。
俺がどうしようもなく立ち尽くしていると部屋に母の主治医が入ってきた。

(´・ω・`)「おや、毒田さんの息子さん。いらしてたんですか」

('A`)「あ、先生。こんにちは」

(´・ω・`)「ちょっとお話したいことがあるので、よろしいですか?」

('A`)「はい」
 

829 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:50:28.75 ID:4ZAbf2p90
俺は主治医の後に連れられて応接室に入った。

('A`)「先生・・・カーチャンは・・その、どうなんでしょうか?」

核心を突くのが怖かった俺は曖昧な表現で主治医に尋ねた。

(´・ω・`)「毒田さんの病気は脳細胞が破壊される病気だというのは前にも
     話しましたね?」

('A`)「はい・・・・・」

(´・ω・`)「この病気は現代の医学では完治が難しいのです。
     現状では薬で進行を遅らせることくらいしか手立てがありません」

('A`)「じゃあ・・・カーチャンは・・・・」

(´・ω・`)「大変申し上げにくいのですが・・・・病気の進行と共に徐々に
     記憶がなくなり、そのうち心機能も停止してしまうでしょう」

('A`)「そんな・・・・・・・・・・」

(´・ω・`)「・・・・・・・・・・・・・」

その後、少しの沈黙が訪れた。
しかし俺にはショックでその時間が無限にも感じられた。
     

830 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:51:01.52 ID:4ZAbf2p90
(´・ω・`)「ドクオさん・・・・毒田さんのお見舞いに来てくれるのは最近では
     あなただけになってしまいました」

('A`)「・・・・・・・・・」

(´・ω・`)「お母さんにあなただと分かってもらえないのは本当につらいことだと思います
     それでも、これからも毒田さんのお見舞いに来ていただけないでしょうか?」

('A`)「もちろん・・・・・そのつもりです。僕のたった一人の家族ですから」

(´・ω・`)「ありがとうございます。誰かと話すことはとてもいい刺激になります
     それも息子であるアナタとなら何かいい兆候が見られるかもしれません」

('A`)「ハイ・・・」

(´・ω・`)「我々も最善を尽くします。それでは・・・」

そう告げると主治医は部屋を跡にした。

('A`)「もう・・・・あの頃には戻れないんだな・・・」

(;A;)「カーチャン・・・・・うっ・・うぅっ・・」

誰もいなくなった暗い部屋で、俺は一人泣き崩れた。

831 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:51:51.56 ID:4ZAbf2p90
それからも、俺は毎日母の見舞いに病院を訪れた。
しかし、母の病気は回復することなく悪化の一途を辿っていた。

('∀`)「カーチャン、今日もいい天気だな」

J( ゚A゚)し「あれ?おにいさんだあれ?」

('A` ;)「カーチャンドクオだよ・・・」

J( ゚A゚)し「ドクオなんて知らない!私のお父さんとお母さんはどこ?」

('A` ;)「カーチャン!しっかりしてくれよ!」

J( 'Д`)し「おうちへ帰りたいよう・・おかあさーーーーん」

('A` ;)「カーチャン・・・」

俺はその日もいつものように母の身の回りの世話をすませると病院を後にした。
その日はいつもよりひどく疲れたような気がした。
 

832 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:52:46.96 ID:4ZAbf2p90
そんな生活を続けていたある日、家に電話が掛かってきた。

('A`)「もしもし、毒田ですが」

(´・ω・`)「もしもし、毒田さんのお宅ですか?
     VIP総合病院のショボンですが」

('A`)「あ、先生。どうなされました?」

(´・ω・`;)「実は毒田さんの容態が急変しまして・・」

('A`;)「ええ!カーチャンが!?」

('A`;)「カーチャンは、カーチャンは大丈夫なんですか!?」

(´・ω・`;)「落ち着いてください。今のところは大丈夫ですが、また
     いつ容態が急変するかわかりません。ですのですぐ病院にいらしてください」

('A`;)「わかりました!すぐに行きます!」

俺は得体のしれない不安を胸に抱き、病院へ向かった。
 

833 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:53:20.44 ID:4ZAbf2p90
病院に向かった俺は主治医から詳しい話を聞いた。
カーチャンの脳の機能はかなり低下しておりもはや記憶
そのものも引き出せない状態だという話だった。

俺は絶望感にさいなまれながら、ベッドに横たわるカーチャンを
ボーっと見つめていた。

J( 'A`)「・・・・・・・・・」

('A`;)「・・・・・・・・・・」

('ー`;)「カーチャン、動物園に行った日のこと覚えてるか?」

J( 'A`)「・・・・・・・・・・」

返事がないのは分かっていた。
だけど俺は母に話しかけ続けた。

('ー`;)「あの日、一緒にお弁当をつくって行ったよな」
 

834 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:53:54.09 ID:4ZAbf2p90
('ー`;)「俺、おにぎり握ったよ。なかなかうまく握れなかった
   でもカーチャンは褒めてくれた。おかずは卵焼きとウインナー・・」

J( 'A`)し「・・・・・・・・・」

('ー`;)「うーん・・・あとは何が入ってたか思い出せないや・・」

それでも、やはり母からの返事はなかった。

('ー`;)「カーチャン・・・もう何もしゃべってくれないのか?」

(;A;)「うぅ・・カーチャン・・うぐっ・・うぅぅ」

今まで抑えていた気持ちがあふれ出し、俺は泣くのを我慢できなかった。
俺は母のベッドに顔をうずめて泣いた。
その時だった―

J( 'A`)し「・・・ア、アスパラに・・・ベーコン・・巻き・・」

(゚A゚;)「カーチャン???」  
 
それは紛れもなく、母の声だった。
 

835 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 06:54:44.61 ID:4ZAbf2p90
J( 'ー`)し「あと・・・肉じゃが・・・ね・・」

('∀`;)「カーチャン!記憶が戻ったの??」

J( 'ー`)し「お弁当おいしかったかい?」

('∀`;)「うん!カーチャンの弁当おいしかったよ」

J( 'ー`)し「ぞうさん・・・大きかったねー」

(;∀;)「うん!ヒック・・・ぞうさんすご・・く・・ヒック・・すごく大きかったよ!」

J( 'ー`)し「ドクオ・・・・・」

(;∀;)「グス・・な、なにカーチャン?」

J( 'ー`)し「動物園・・楽しいかい?」

(;∀;)「た、楽しいよ!すっごく楽しいよ!!」

J( 'ー`)し「・・・・・・・・・」

(;A;)「カ、カーチャン?」

母は――もう目を開けなかった。
 

836 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/08/08(火) 07:01:19.57 ID:4ZAbf2p90
母は脳の記憶が薄れていく中、懸命に動物園の時の記憶を
俺の為に最期まで残しておいてくれたのかもしれない・・

カーチャンの枕の下には動物園の写真があった。
その写真のネガはもうなく、動物園に行った時のたった一枚の写真だった。

母が見ていたのは思い出の中の俺なのか今の俺なのかは分からない。
けど、そんなことはどうでもいいことなのだと今になって気付いた。
母が見てくれていたのは紛れもなく「俺」自身だったのだから。

('∀`)「カーチャン・・・最期に俺のこと思い出してくれたんだな・・」

('∀`)「ありがとう・・・」

そう呟くと、俺は棺おけの中に動物園の写真を入れた。


     ドクオ、お弁当食べよっか?

              J( 'ー`)し     ウン!!
               (  )\(∀` ).
               │|  (_ _)ヾ
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




inserted by FC2 system