471 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 18:24:41.05 ID:basvUzZh0

ここは、とある町の牢獄。
一人の男が鉄格子を叩きながら叫んでいた。

「出せお! ここから出せお!」

彼の名はブーン。
窃盗に始まり、恐喝、詐欺、放火、強盗、殺人などなど。
様々な罪を重ねてきた犯罪者だ。
だがある時、くだらないミスで捕まってしまい、今は独房暮らしの真っ最中である。

( ^ω^)「出せお! 出せお! 出せおーっ!!」

「うるさい黙れ! おとなしくしてないと一週間食事抜きだぞゴルァ!」

( ^ω^)「うぐぅ…」

看守に怒鳴られ、ブーンはうなだれた。

472 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 18:29:50.25 ID:basvUzZh0
( ^ω^)「くそぅ、あんなところにインリンの写真集が落ちてなければ今頃は……」

「ここから出たいのですか?」

( ^ω^)「当たり前だお。まだまだ人生を楽しみきってないお」

「では、僕が出してあげましょうか?」

( ^ω^)「そんなことできるわけ……って誰だお!?」

謎の声がする方へ振り返ってみると、ベッドの上に怪しげな男が腰を下ろしていた。

「やあ、どうも」

怪しげな男は片手を軽く上げて挨拶する。

( ^ω^)「ななな、お前は誰だお!」

(´・ω・`)「失礼、申し遅れました。わたくしはショボン。人間達が 『悪魔』 と呼ぶ存在です」

( ^ω^)「な、なんだってー!!11」

「うるせえってのがわからねえのかゴルァ!!」

( ^ω^)「フヒヒ、すいまっせーん」

473 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 18:36:07.12 ID:basvUzZh0
ブーンはなるべく小さな声で、

( ^ω^)「あ、悪魔? ほほほ本当に?」

(´・ω・`)「信じられませんか? まあ無理もないですね。
      では証拠をお見せしましょう。あの男のペンを見ていて下さい」

ショボンは何か熱心に書いている看守を指差す。

(´・ω・`)「いきますよ」

そう言って、パチン! と指を鳴らした。

( ^ω^)「あっあっあっ!」

ブーンは思わず、自分の頬をつねっていた。
ペンが見る見るうちに蛇へと姿を変え、看守の指の間をすり抜けると、壁の隙間に消えたのだ。

「うぎゃあ!ペペ、ペンが蛇になりやがったぞゴルァ!」

(´・ω・`)「どうです? これで信じて頂けましたか?」

( ^ω^)「すごいお! 信じる、信じるお! 早く出してくれお!」

(´・ω・`)「まあまあ、そう慌てずに」

ショボンは再び、パチン! と指を鳴らす。

475 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 18:56:16.69 ID:basvUzZh0
すると今度は、ブーンの手のひらに白い錠剤らしき物体が現れた。

( ^ω^)「お? これは? アナルに入れるのかお?」

(´・ω・`)「いいえ、飲むのです」

( ^ω^)「飲む? それだけかお?」

(´・ω・`)「そうです。それだけで誰にも咎められずに出られます」

( ^ω^)「おっおっ!透明になったりするのかお!」

(´・ω・`)「……」

ブーンは大喜びで錠剤を口に放り込み、一気に飲み込んだ。
すると、

( ^ω^)「ん? な、何かおかし……ごぼぇ!」

ブーンはいきなり苦しみ始めた。
手足をばたつかせ、のたうち回る。

476 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:01:33.66 ID:basvUzZh0
( ^ω^)「げふっ! 苦しいお! 死にそうだお!」

(´・ω・`)「その通り、死ぬのですよ」

( ^ω^)「な、何…!?」

(´・ω・`)「あなたが死ねば、誰にも咎められずに出られるでしょう?」

( ^ω^)「だ、騙し……たの、かお…!」

(´・ω・`)「騙すなんてとんでもない。言葉通りにやったまでです」

( ^ω^)「ち、ちくしょ…! ぐええええ…!!」

「な、なんだぁ!? あっ! どうした! おい! しっかりしろゴルァ!」

異常に気付いた看守が急いで独房の鍵を開ける。
しかし既に、ブーンはぐったりとして動かなくなっていた。

「いいいい、医者に見せるぞゴルァ!」

看守はブーンを独房の外まで引きずり出すと、慌てて医者を呼びに行く。

(´・ω・`)「ほら、出られたじゃないですか」

ショボンは笑顔でそう言った。

477 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:06:31.42 ID:basvUzZh0

――――



「……さい」

ブーンの頭の中で声が聞こえる。

( ^ω^)(うう、ここは死後の世界かお…?)

「お……て下さい」

( ^ω^)(くそ、悪魔の言うことなんか聞かなければよかったお……)

「起きて下さい!」

( ^ω^)「アッー!!」

肛門に電撃のような衝撃が走り、ブーンは飛び起きた。

(´・ω・`)「ようやくお目覚めですか」

隣にはショボンが立ち、ブーンの尻に熱い視線を注いでいる。

(´・ω・`)「まったく。あまりにも起きないので尻穴をいただこうかと思いましたよ」

( ^ω^)「ぼ、ぼくは…? お前の薬で死んだはずじゃあ…?」

478 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:11:45.54 ID:basvUzZh0
(´・ω・`)「Exactly。でもそれは薬の効果でです。
      人間からは死んだとしか思われない仮死状態になる。
      それがあの薬の効果なのです」

( ^ω^)「そうだったのかお……」

(´・ω・`)「あなたは見事に死んだと思われ、ここまで運ばれたのですよ」

辺りを見回すと、ブーンが寝ているのはどこかの家の床だった。
うす暗いせいでよくわからないが、多分空き家だろう。
周囲に人の気配は無い。

( ^ω^)「イヤッッホォォォオオォオウ!」

ようやく事態を把握できたブーンは、大喜びで飛び跳ねる。

(´・ω・`)「静かにして下さい。
      誰かに気付かれたらどうするんですか」

( ^ω^)「おっおっ、すまんこすまんこ」

(´・ω・`)「で、これからどうするつもりですか?」

( ^ω^)「決まってるお! また色々と盗んだりするんだお!」

(´・ω・`)「そうですか。まあ捕まらないように気をつけて下さいよ」

( ^ω^)「その時はまた助けに来てくれお!」

(´・ω・`)「フフ、暇だったら伺いますよ」

479 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:15:01.66 ID:basvUzZh0
( ^ω^)「今日中に都会まで行きたいから、もう行くお! 世話になったお!」

(´・ω・`)「お元気で」

ブーンは「空も飛べるはず!」と言いながら、両手を広げて走り去った。
ショボンはふう、と息を吐く。

「なーにがお元気で、だ!」

いつの間にかショボンの後ろに立っていた男が口を開いた。
青白い顔で不機嫌そうに口を結んでいる。

480 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:16:04.59 ID:basvUzZh0
(´・ω・`)「やあドクオ。いたのかい」

('A`)「やれやれ、相変わらずエグい真似しやがる」

(´・ω・`)「人聞きが悪いな、僕は夢を与えてるっていうのに」

('A`)「お前が楽しんでるだけだろ」

(´・ω・`)「楽しくないかい? 夢を与えた時の表情を見ているとさ」

('A`)「はん、夢ね。そりゃ素晴らしい仕事なこって」

(´・ω・`)「ドクオこそ、『死神』 の仕事は順調かい?」

('A`)「お生憎様。お前みたいな奴のせいで、未練タラタラの人間が増えまくりんぐだよ」

(´・ω・`)「ハハハ、悪いね」

('A`)「畜生め」

ドクオはそう言い残すと、黒マントを翻しながら出て行った。

481 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:19:37.20 ID:basvUzZh0
(´・ω・`)「さて僕も行くとしよう」

ショボンは夕闇に包まれた町へと歩き出す。
すれ違う人間には誰も彼の姿は見えていない。

(´・ω・`)「ああ、そういえば」

ショボンはふと気付いたように、

(´・ω・`)「悪魔や死神が見えるのは死期が近い証拠だから注意して下さい。
      って言うの忘れていたけど、まあいいか……」

ショボンは歩き続ける。
すれ違う人々は、口々に何かを喋っていた。

「そうなんだよ!誰かが馬車で向こうの崖から落ちたんだとよ!」

「でもその馬車馬って、頭がイカレちまったから処分される予定だった馬だろ?
誰がそんな馬を馬車に使うんだよ」

「わかんねえ、どっかのバカが知らずに使ったのかもしれん」

「哀れな奴だ。あの崖から落ちたら絶対に死んでるだろうな」

「とりあえず崖まで行ってみようぜ」

そんな会話があちこちから聞こえてくる。

482 ( ^ω^)が脱獄するようです New! 2006/08/10(木) 19:21:00.53 ID:basvUzZh0
ショボンは立ち止まり、振り返って呟いた。

(´・ω・`)「最後にいい夢、見られましたか?」


再びショボンは歩き出す。
やがてその姿は、深まっていく闇に溶け込むようにして消えた。


――終わり。

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