22 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/08/02(水) 22:25:32.54 ID:5YWZ/BvI0
(´・ω・`)「やっぱり一人暮らしは大変だな・・・ご飯考えるだけでもいっぱいいっぱいだなあ」

そう呟く青年、ショボンは今年から社会に出たばかりのいわゆる「新人」という人間。
大学を経て何の変哲も無い会社と仕事にありつき、実家を出て一人賃貸アパートで暮らすようになった。
家事については実家で手伝っていたこともありそつなくこなすのだが・・・・
彼を悩ませるのは「レパートリー」であった。

(´・ω・`)「うーん、チャーハンばっかりも飽きちゃうしね、カーチャンが毎日違うご飯出してくれてたのは凄かったんだなあ・・・・」

実家、むしろ母親の料理のレパートリーに感謝しつつ、自分もそうならねばと努力しようとする・・・が
簡単にはそんなうまくはいかないのが世の常。アイデアはそうポンポンと出てくる筈も無い。

(´・ω・`)「とりあえず、食費は問題ないから色々スーパーで買い物してみようっと」

支度を済ませ一人暮らしを始めた時からお世話になってるスーパーへと買出しに出かけるショボン。
その間にも自分の腕前とそれに見合った料理のメニューを考えながらテクテクと歩く。

ガーッ

自動ドアが開きいつものようにカゴを手にする。
何故だろう?いつもの見慣れたスーパーなのに、いつもと違う雰囲気が漂っている。
客?店員?・・・・いや違う。もっと違う「何か」がこの雰囲気を作り出している。

23 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/08/02(水) 22:25:57.32 ID:5YWZ/BvI0
・・・・・・・カッテクレ

その雰囲気はまるで求める者を誘うかのような雰囲気だった。
この異変に気づいている者は客にも店員にも居ない。僕だけのようだ。
その空気が濃い場所・・・・レトルトコーナーに足を運んでみた。

たった一つ、たった一つだけ置かれている商品がその雰囲気の「主」のようだ。
その商品に近寄れば近寄る程空気がどんどん濃く、厚くなっていく。

カオスバーモンドカレー

おかしいな?こんな商品あったかな?CMも見たことないな・・・
真っ黒なジャケットに真っ白な○
見た目こそあの「バーモント」だが色は全く違う。やっぱり見たことない。

(´・ω・`)「今日はカレーにしてみようかな・・・・たまにはレトルトでもいいよね」

その商品を手に取る・・・・瞬間。

今まで強烈に肌で感じ取っていた雰囲気が霧散した。
いつものスーパーの、いつもの店員の、いつもの客の、いつもの商品の。
まるで元から杞憂だったかのような「通常」が戻ってきた。
もちろん後にも先にも只ならぬ雰囲気を感じ取っていたのはショボン一人だけだった訳だが・・・

24 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/08/02(水) 22:26:19.76 ID:5YWZ/BvI0
その他にもジュースやお菓子を軽くカゴに放り込み、会計を済ませる。
そして店員が「カレー」を手に取りバーコードを読み取らせると

ピーー

エラーだ。店員が怪訝に思いもう一度バーコードを通す。同じだ。
何度やってもエラーが出てバーコードが読み取れない。

( ,,゚Д゚)「あぁん?なんだゴルァ。こんな商品見たことないぞゴルァ」

店員は何回やってもエラーを起こすその商品を不思議に思いつつも
バーコードが通らない為張られた値札シールを元に会計に加える

( ,,゚Д゚)「804円・・・っと、消費税加えまして合計で1,344円だゴルァ」

少しレトルトにしては高いようだが・・・その分味は悪くないんだろうとショボンは思い会計を済ます。

( ,,゚Д゚)「1,500円のお預かりで、156円のおつりだゴルァ。またのご来店をお待ちしておりますぜゴルァ」

買った商品をビニール袋に詰め、スーパーをあとにする。

ひとまず家につきさっそく夕食の支度にかかる。といってもレトルトの為
鍋に水を入れて火にかけるだけだが。

(´・ω・`)「それじゃこれをお湯の中に入れてっと、ご飯はまだあるね、うん」

レトルトを鍋の湯につけ、炊飯ジャーを確認する。今朝炊いたばかりだから十分にご飯はある。

25 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/08/02(水) 22:26:37.34 ID:5YWZ/BvI0
そして。

(´・ω・`)「うっ・・・・!」

突然体が固まる。立ったまま強烈な金縛りに逢うショボン。
意識も薄れていくが、金縛りの為倒れることもない。
続いて金縛りと思いきや意に反して勝手に動き出す自分の体。
ぼうっとした思考の中まるで客席からその姿を眺めているかのような感覚に陥る。
自分の体なのに・・・動かない!動けない!!

そして意に反した動きはついに唇までも動かし・・・

(´-ω-`)「エゴイムエンザイム・・・エゴイムエンザイム・・・我は食を求め訴えたり!」

あれ・・僕なんか訳の分からない言葉を発してるや、どうしたんだろう僕。

すると突然、煮立った鍋のレトルトが勝手に封切られその明け口から煙がもうもうとたちこめる
火事!・・・ではないようだが、その煙は鍋とショボンを取り巻くように対流し始める。

その煙の中からどこからともなく声がする・・・・

「我、魔界の食を司る闇の料理人。バーモンド、汝の望みをしかと受け取った。我が最高の腕前をその身でしかと味わうがいい!」

――――――――――――暗転

26 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/08/02(水) 22:26:59.66 ID:5YWZ/BvI0
(´-ω-`)「うーん・・・・」

(´・ω・`)「はっ!?」

気づいたそこにはテーブルの前に座る自分と。ほこほこと湯気を立てるカレーライスがあった。

(´・ω・`)「えーっと・・・カレー・・・・・」

記憶を辿るがいまいちぱっとしない。とりあえず鍋に火をかけレトルトをそこに入れたまでは覚えてる。
そして目の前にあるのはカレー。

(´・ω・`)「作った後寝ちゃったのかな僕。疲れてるのかなあ、とにかくお腹すいたことだし、食べよーっと」

両手を合わせいただきます、と一言。そしてスプーンを手に取りカレーを一口。

(´゚ω゚`)「アッーーー!!!」

今までに味わったことのない「衝撃」が彼を襲う。全身を突きぬけ、脂汗がとたんに吹き出る。
まるで煮え立つマグマでも口にしたかのような熱さが口を襲い、のどを焼き、胃を溶かす。
そして脳を支配する「美味」・・・・

――――――――――――ショボンが捨てたジャケットの裏面に
「原材料:レッドサヴィナハバネロ」と書かれていた・・・・

27 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします sage New! 2006/08/02(水) 22:27:23.02 ID:5YWZ/BvI0
――――――――魔界某所

('A`)「なあバーモンド、さっきお前どこに呼ばれたんだ?」

( ゚д゚ )「ああ・・・また人間界で『アレ』が使われてな」

('A`)「またか、お前も忙しいな」

( ゚д゚ )「それが俺の役目だしな。魔界の味を知ってもらういい機会だと思っている」

('A`)「そうか、それならもう何もいわねえよ。頑張れや」

( ゚д゚ )「魔界の味だけだと人間には到底口にできぬものなので人間界の『辛味』を調味料に使っている。お前もどうだ?」

('A`)「俺辛いの苦手なんだよね、もっと他のにしてくれ」

( ゚д゚ )「そうか、ならば――――――」

今日もどこかで、混沌を呼ぶカレーが陳列棚にまた一つ並べられているだろう。
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