974 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/25(火) 10:23:09.80 ID:OVHfGxoh0
鳥がないている。朝。雲のない、晴れわたったあかるい朝。
ちゅんちゅんちゅん。

( ^ω^)「お」

ベッドの上に起き上がって首を回す。鳥のなき声がここちよく頭にひびく。
小気味よい音がなって、目が完全に覚める。

夢をみていた気がする。
ひどく懐かしいような、ふしぎな夢。
思い出そうとすればするほど、頭の中から消えていきそうだ。

( ^ω^)「なんの夢だったかお」

部屋を見回しながら、ゆっくりと夢を思い出してみる。
薄いカーテンから差し込む光に照らされて、部屋の中が蜃気楼のように霞んでみえる。
小学生のときから使っている勉強机、大量の漫画本が収まっている回転式の本棚、
脱ぎ散らかした服、乱雑で、味気ない部屋。

975 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/25(火) 10:23:28.76 ID:OVHfGxoh0
( ^ω^)「味気ない……?」

くもの糸がほぐれるように、夢の中の出来事が鮮明によみがえってくる。
あたたかい草原に寝そべって、晴れ渡った空を見上げていたんだった。
すると横から細い腕が伸びてきて、僕に紙コップを手渡した。
腕の伸びてきたほうを振り向きながら、ありがとう、といった気がする。
目の前に彼女がいた。透き通るようなきれいな肌、ぱっちりした目。
ツンが僕のほうを見て微笑んだ。

( ^ω^)「日に焼けちゃうから、帽子をかぶるといいお」

だいじょうぶ。彼女はそういって、僕のほほを両手で挟んだ。

( ^ω^)「どうし」

僕のことばが途中でさえぎられた。ツンの口が僕の口をふさいでいる。
ふふ。口をはなしたツンが、恥ずかしそうに笑った。
僕も笑顔をかえした。ツンのキスはなんの味もしなかった。
そういったら、キスに味なんてないよ、とかえされた。
ツンはまるでパソコンのギャルゲに出てくるヒロインみたいに、
僕をやさしくつつみこんでくれる。

( ^ω^)「あれ、夢じゃなくて現実だったっけお」

976 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします New! 2006/07/25(火) 10:23:45.36 ID:OVHfGxoh0
夢で寝転んでいたあの草原に、たしかに行ったことがある気がする。
いや、確かにいった。そのとき……ツンもとなりにいた気がする。
高校の同級生だったツンに勇気を出して告白して、一緒に近くの山にのぼったんだった。

( ^ω^)「おっおっ、さいきん物忘れがひどいみたいだお」

そうだ、あれが夢のわけがない。目を瞑ると、ツンとすごした思い出があふれ出してくる。

( ^ω^)「そうだ、今日もいい天気だお。ツンと一緒に出かけようかお」

枕もとの携帯に手を伸ばす。電話帳を開く。ツン、ツン、ツン。

( ^ω^)「お?見つからないお。間違えて消しちゃったのかお?」

日が高く上って、日が沈んでも、電話帳にツンの名前を見つけることは出来なかった。
暗くなった部屋の中で、パソコンのモニターだけが淡い光を部屋に投げかけていた。
モニターには、目の大きな可愛い女の子が映っていた。

おしまい。

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