390 題「千年桜の下で」 New! 2006/07/23(日) 19:05:22.35 ID:qphBTaAfO
プロローグ


「千年桜」の木の下に
誰にも知られず誰も気付かず

男が一人、眠っている。

長い、眠りに就いている。

二度と目覚めぬ、永遠の眠り。



千年桜ノ木ノ下デ。

393 千年桜の木の下で1話「千年桜」 New! 2006/07/23(日) 19:24:22.69 ID:qphBTaAfO
時は春。桜が満開の季節である。
キーンコーンカーンコーン
(;´・ω・`)「ふぅー。終わった。」
少年は、鉛筆を机に放り出した。
(;'A`)「…ハハハ…」
(;゚∀゚)「まずい、ドクオが死にかけだ。ショボン、アレやれ。」
ショボンと呼ばれた少年は頷くと、放心状態のドクオと呼ばれた少年に向き、耳元で囁いた。
(´・ω・`)「(レ・ッ・ツ、く・そ・み・そ
や ら な い か)」
('A`;)「だが断る!!」
ドクオは即座に叫んだ。
(#´∀`)「おい、ドクオ。」
ドクオは背後に殺気を感じ、恐る恐る振り向いた。
(;'A`)「あ、あらモナー先生。」
(#´∀`)「俺のテストがそんなにいやモナ?ちょぉーっとくるモナ。」
('A`;)「いやああああああ!くそみその方がまだましだー!」
ドクオは襟を掴まれ、教室からどこかへ連行されていった。

405 千年桜の木の下で1話続き New! 2006/07/23(日) 19:52:12.36 ID:qphBTaAfO
(´・ω・`)「…ジョルジュ…」
(;゚∀゚)「だ・が・断る。」
ジョルジュと呼ばれた少年は焦りながら言った。
(;´・ω・`)「僕はまだなにも…」
(;゚∀゚)「だいたい言う言葉は予測できたからな。」
(´・ω・`)「(チッ…鋭いな。)まあ、いいや。授業も終わったし、帰ろうか。」
(;゚∀゚)「おいおい、花見はどうしたんだよ。」
(;´・ω・`)「あ、忘れてた。」
(;゚∀゚)「忘れるなよ…とりあえず、ブーン達と合流して、ドクオを待とうぜ。」

ショボン達は、校舎の外でドクオを待つことにした。
ξ゚听)ξ「おっそいわね、ドクオったら。」
(;^ω^)「仕方ないお、ツン。捕まった相手が悪すぎるお…」
(;゚∀゚)「そうだぜ、相手はあの鬼軍曹だ。もう少しかかるだろう。」
ツンと呼ばれた少女は、「そんなこと分かってるわよ!」といいながら花壇の縁に座った。
('A`;)「ま…待たせたな…」
暫くして、ドクオが千鳥足でやって来た。

421 千年桜の木の下で1話続き New! 2006/07/23(日) 20:08:53.94 ID:qphBTaAfO
(;゚∀゚)「おいおい、大丈夫かよ…」
('A`;)「安心しろとは言えねえレベルだ。」
ドクオは相当弱っていた。
ξ゚听)ξ「とにかく、みんな揃ったから、花見に行くわよ!」
ツンの一言で、一行は花見をするべく、「千年桜」まで向かうこととなった。

みんな、楽しそうだな…。僕も楽しいけれど何か足りないんだ…一体何が足りないんだろう。僕自身にさえわからない。
そう考えている内に千年桜に着いたみたいだ。
いつ見ても綺麗な木だ…おかげで花見客が居るわけだけど。
ちょっと幹にふれてみよう。僕の足りない物が何なのか、分かる気がする。

足リナイ、何カガ足リナイ。

僕の頭の中に、そんな言葉が響いた。
千年桜、君もなの?

足リナイ、血ガ足リナイ!ワタシに血ヲ!血ヲ吸ワセテクレ!

436 千年桜の木の下で2話「血吸い桜」 New! 2006/07/23(日) 20:28:01.40 ID:qphBTaAfO
血!?何を言っているんだ!?この桜は一体…?
(;^ω^)「…ョボン」
でも、何だろう。何か共感出来る…?

(;^ω^)「ショボン!きいてるかお?ショボン!」
(;´・ω・`)「!!」
(;'A`)「やっと聞こえたか、ショボン。花見は始まってんだぜ?ったく。」
ドクオは反対側を指差した。ツンとジョルジュは既に花見を始めていた。
('A`)「ほら、俺達も始めようぜ!」

僕達は、花見を始めた。ジョルジュは既に酒を飲んでベロンベロンに酔っていた。ブーンもツンもドクオも酒を飲んでいる。僕はりんごジュースでいいや。
それにしても、さっきのことばな何だったんだろう…血が足りないと言ってたな…おかしい。おかしいのに共感してるんだ。なんでだろう…


594 千年桜の木の下で2話「血吸い桜」続き New! 2006/07/24(月) 15:30:40.00 ID:EwZFpVYzO
すんません。VIP落ちてから来てませんでした。

あ、どこかの学生かな?桜の枝を折ろうとしてる。

ドスッ

何の音?周りから悲鳴が聴こえる。
('A`;)「救急車!!救急車呼べ!!早く!!」
ドクオが叫んでる。
僕は、桜の方を見た。
さっき枝を折ろうとしていた学生が、胸に桜の枝を突き刺して倒れている。

なんだ、この高揚感は。
僕が求めていた物もまさか…
ダメだ。忘れよう。
僕は、今日飲まないと誓ったはずのテキーラの入った携帯ボトルを取り出し、半分を飲み干した。

なぜか、血の味がしたような気がした。

603 千年桜の木の下で3話「血霞桜」 New! 2006/07/24(月) 15:46:40.02 ID:EwZFpVYzO
夕方

あの惨劇で花見は中止、ショボン達は、家に帰っていた。

(´・ω・`)「今日は、バーボンハウス休もう…」

そう呟くと僕は入口の目の前に「closed」という立て札を置き、鍵をかけ、一人椅子に座った。

なんだったんだろう、あの高揚感は。あのゾクゾクする高揚感。まるで僕もそれを望んでいたかのようだった…
何を考えているんだ、僕は。忘れようと自分で決めたじゃないか。

僕は、バーボンハウスに置いてあるバーボンを1本あけ、グラスに注ぐと、一気に飲み干した。

馬鹿だな、僕は。自分が酒に強いとわかっているのに酔おうとするなんて。

僕は、自分を罵った。

(´・ω・`)「そうだ、千年桜の所に、もう一度行こう。」

僕はバーボンを2本程保冷バッグに入れると、バーボンハウスを出た。

611 千年桜の木の下で3話続き「そのころのジョルジュ」 New! 2006/07/24(月) 16:08:13.71 ID:EwZFpVYzO
一方、ジョルジュ宅

それにしても、今日は散々だったな…つかあの学生、枝なんか折ろうとすんなよな…ったく…

( ゚∀゚)「胸くそワリィ…」

そう呟くと俺は冷蔵庫からビールを取り出し、そのまま栓を抜いて飲んだ。

駄目だ…こんなんじゃ酔えねえ…

( ゚∀゚)「しゃーねぇ、ショボンんとこのバーボンハウスで、キツい酒でも出して貰うか…」

俺は、手土産に秘蔵の15年物のウイスキーをコートのポケットに突っ込み、家を出た。

バーボンハウスは、閉まっていた。おかしいな、今日は空いてるはずなのに…あいつもショックだったのか?とりあえず、裏口に回ろう。
( ゚∀゚)「ショボン!俺だ。ジョルジュだ!開けてくれ!」
何度も扉を叩いて呼びかけたが、反応はない。おかしいな…まあ、出たくねぇんだろう。
( ゚∀゚)「仕方ねぇ、夜桜を肴にでもして、飲むか…」

俺はそう呟くと、千年桜のある場所に向かった。

623 千年桜の木の下で4話「人食桜」 New! 2006/07/24(月) 16:59:37.84 ID:EwZFpVYzO
(;´・ω・`)「え!?」

僕は驚嘆した。千年桜は、今日学生から流れ出した血を吸ったように「紅く」染まっていたからだ。
しかし、その驚きと共に発生したものはは、「恐怖」ではなく、「興奮」だったのは僕自身理解できた。

(´・ω・`)「綺麗だ…」

僕は、まるで取り憑かれたように千年桜の幹に触れた。


待ッテイタ…オマエノヨウナ感情ノ持チ主ヲ!サア、我ニ血ヲ吸ワセロ!


(´ ω・`)「は、はは、何を言ってるんだこの桜は!僕が人殺しなんてするわけ…」

そこで、僕の理性は吹っ飛んだ。

(´ ω `)「分かってる。存分に飲ませてあげるよ。存分に、ね…」

636 千年桜の木の下で4話続き「決別」 New! 2006/07/24(月) 17:18:34.39 ID:EwZFpVYzO
さあて、着いたぞ。こんな所で飲むのは胸くそワリ…!?
桜が…紅い…?
なんだ、この嘔吐感は…
俺は、たまらずコートの裾で鼻を覆った。

(;゚∀゚)「血の…臭いか?くそ、鉄臭ぇ…」

俺は、なんでこんな臭いがするのかと気になり、千年桜の木の下まで行った。そこで見たのは…ショボン?

ショボンが、女の首を割ったテキーラの瓶の突起で切って、桜の下に垂らしている…?

(;゚∀゚)「何を…しているんだ?ショボン。」
(´ ω `)「やあ、ジョルジュ。こんな夜中にどうしたんだい?」
ショボンは、血が飛び散った顔で笑いながら俺に話しかけてきた。
ふと、ショボンが殺した女の顔が見えた。

(#゚∀゚)「どうしたじゃねえ!!お前、自分が何をしているのか分かってんのか!?」

俺は吠えた。
信じたくなかった。
ショボンが殺していたのは、紛れもない、今日の花見でも見た顔。

ショボンが殺したのは、ツンだったんだ。

655 千年桜の木の下で5話「千年桜ノ木ノ下デ」 New! 2006/07/24(月) 17:38:45.93 ID:EwZFpVYzO
俺は、ショボンを思い切り殴りつけた。
吹っ飛ぶショボンを後目に、俺はツンの状態を確認した。
息を引き取ると言うには遅く、既に体が冷たく、青ざめていた。

なあ、嘘だと言ってくれよショボン。
お前はこんなことしない奴だよな。
これが夢だったら、どんなに良いか。
でも、夢じゃない。現にショボンを殴った俺の手は痺れている。
俺は、冷たくなったツンを静かに地に預けて、ショボンに向き直った。

( ;∀;)「なあ、ショボン。ドッキリだと言ってくれよ。一瞬に夜桜を肴に飲み明かしてくれよ。…変わっちまったのかよ!?」

俺は叫んだ。叫び続けた。ショボンは、まるで話を聞いていないように、テキーラの瓶を持ち、突っ込んできた。

この、千年桜の木の下で。

677 千年桜の木の下で5話続き New! 2006/07/24(月) 18:33:56.33 ID:EwZFpVYzO
放心状態の俺には為す術は無かった。

ドスッ

俺の心臓のある場所に瓶が刺さる。
深々と、奥に食い込む。
俺の口から血が垂れる。
ショボンが瓶を抜くとその部分から血が吹き出す。心臓までイッちまったか…
そろそろ限界、だな…
なあ、ショボン…
お前じゃ、ないよな…
ツンを、殺したのは、お前じゃ、ないよな…

(;ー∀ー)「…まえ…ない…ょな?…」

声が、うまく出ない…
ちくしょ…う…
……
ジョルジュの意識は途切れた。

(´ ω `)「…」
ショボンは黙ったまま、近くにあった枝を手に取り、千年桜の木の下の土を掘った。
深く、深く。
二人分。
穴が出来上がると、ショボンは二人の体を穴に寝かせ、土を被せた。

(´ ω;`)「…」

ショボンの目から、1滴の水が垂れた。それを拭うと、ショボンは、暗がりに消えていった。

679 千年桜の木の下で「エピローグ」 New! 2006/07/24(月) 18:58:37.80 ID:EwZFpVYzO
ザザッ次のニュースです。昨日未明からツンデレ(19)とジョルジュ高岡(19)ショボン(19)の行方が○○市○○公園にある千年桜の付近で行方不明になるという事件が起こりました。
3人ともまだ発見されておらず、警察が捜索を続けています。
そして、その千年桜ですが、昨日未明に幹ごと折れるという怪現象があったという事です。
警察は、失踪事件と関係があるとみて調べを進めていま…
プチッ


千年桜の木の下で、
男が「二人」と女が一人、
深い眠りに就いている。
二度と目覚めぬ、永久の眠り。

千年桜ノ木ノ下デ。

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