64 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:45:52.43 ID:fP7qJTFZO
時はニュー速歴500年…。
人類は滅亡の危機に瀕していた。
西暦2028年に隕石が衝突。それにより文明は崩壊、そして最大の脅威である機械生命が出現し出したのもこの頃だ。
正確にはその機械生命によって文明を滅ぼされたといえよう。
 
( ^ω^)「ふぅ…」
 
男は一息つくと大きく伸びをしてチラリと横を眺めた。
彼の名は内藤ホライゾンといい、仲間からはブーンと呼ばれている。
彼の視線の先には少女がカプセルの中で眠っていた。
一見だけすると普通の人間と見間違えてしまうが、彼女は人間ではない。
彼女の正体は精巧に作られた半機械生命──サイボーグである。
目から下に引かれている一筋の線がなければ、恐らく判断するのは難しいだろう。
 
文明は崩壊したが人類は根絶やしにされた訳ではなかった。
辛うじて生き長らえた人々は僅かな希望を糧に団結した。そして創立された組織、VIP。
内藤のいる施設もVIPに属しており、こうした施設は世界中に点在している。
 
有能な人材を中心に活動しているこの組織は機械生命に対抗する為にあらゆる手段を尽くした。
幸い機械生命は通常の攻撃で─身体の一部が破損したくらいでは怯みもしないが─破壊する事ができる。
しかしながら戦力的にも、個人の力の差でも機械生命の方が勝っており、戦況は芳しいとは言えない状況だった。
そこで考案されたのがサイボーグである。
既に実用化されてはいるが性能は敵と同程度─…敵は戦力で勝っているので決定打には成り得ない状況だった。
 
彼女は俗に言う「次世代型サイボーグ」で、強大な力を秘めているとされている。
彼女は試作型のとして作られたのだった。


65 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:50:04.54 ID:fP7qJTFZO
( ^ω^)「…で、戦況はどんな感じだお?」

(´・ω・`)「う〜ん…正直言うと、かなりマズい事になっている。特にここ数日はね…」
 
困ったような顔で返答するのはショボンといい、内藤とは古い馴染みである。
 
(´・ω・`)「昨日も近くの施設が襲撃されたし、ココも危ないかもね…」
 
一昔前までは鳴りを潜めていた機械生命は、ここ数年で活発に活動を開始していた。
何か原因があるのだと推測されているが、隕石の衝突によって形成された巨大な湖─水銀に酷似した液体で満たされており、そこから機械生命が出現しているとされている─の水位が上昇した事くらいしか分かっていない。
 
(´・ω・`)「早めにツン=デレの起動実験をやってしまおう。起動前に襲撃されたらお終いだ」
( ^ω^)「把握した。いつでも起動できるお」

(´・ω・`)「よし、始めよう」
 
内藤とショボンは起動コードの入力を始める。
数秒の作業が終了した瞬間、カプセルが蒸気を上げて持ち上がった。


66 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:52:50.92 ID:fP7qJTFZO
(´・ω・`)「おはようございますお嬢さん」
( ^ω^)「きめぇwwwwwww」
(´・ω・`)「彼女も元は人間の女の子だ。紳士的に接しないと。
ご機嫌いかがですか? マドモアゼル」
( ^ω^)「wwwwwwwwwwwwww」
ξー匆)ξ「………」
 
ショボンが声をかけてもツン=デレは目を覚まさない。
 
(´・ω・`)「おかしいな…」
( ^ω^)「なんか間違ったかお?」
(´・ω・`)「そんなハズはないと思うけど…。もう一回入力して──」
 
ショボンが言いかけたその時、鼓膜を破らんばかりの轟音が響いた。
 
(;´・ω・`)「!!! 敵襲か!」
 
反射的に身体が動き、警報ボタンを叩き潰す。
サイレンが施設内に鳴り渡たり、別室に控えていた戦闘員と、少数のサイボーグがそれぞれが武器を手に飛び出した。
 
(;´・ω・`)「まずいな…この周辺で襲撃された施設は例外なく壊滅させられている…」
 
ショボンは爪を噛みながら唸ると、自身もライフルを手にして言った。
 
(´・ω・`)「無駄かもしれないけど僕達も加勢するよ。ブーンも早く──」
 
二度目の轟音。
そしてどれ程の衝撃だったのか、今度は天井にヒビが入り、破片が落下する。
 
(;゚ω゚)「!!!」

67 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:54:44.81 ID:fP7qJTFZO
内藤は床を蹴った。
そしてツン=デレに覆い被さると、硬く目を閉じる。
激痛が背中に走った。
ツン=デレに突き刺さるはずだった大小様々な破片が激突したのだ。
 
(;ーωー)「ううぅ…」
(;´・ω・`)「ば…バカか!? 何やってるんだ! ツン=デレはそれくらいじゃ傷一つ付かないのに!!」

(;ーωー)「咄嗟に体が動いちゃったんだお…」
ξi冓)ξ「…………」
(;^ω^)「!?」
 
内藤はまばたきをして目をこすり、もう一度ツン=デレを見つめる。
 
ξー匆)ξ「…………」
( ^ω^)(気のせいかお?)
(;´・ω・`)「ブーン! 大丈夫かい!?」
(;^ω^)「だ、大丈夫、いけるお」
 
それを聞くや否やショボンは立ち上がる内藤にライフルを投げる。
内藤はそれをキャッチし、多少ふらつく足取りで部屋を後にした…。

68 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:56:28.14 ID:fP7qJTFZO
ダダダ、ダダダダ…ダダダ…
 
銃弾が飛び交う廊下で人間と機械が生死をかけた戦闘を繰り広げていた。
 
「クソォ! こいつめ! こい─…ぎゃあああ!!!!!」
「うわ、うわあああ!!!! 来るなァ────!!!!!! ぐげぇ…」

『破壊 破壊 破壊』
 
一つの単語を繰り返し呟く機械生命はひたすら惨殺を行う。
破壊された物もあるが、進行は一歩も止まらなかった。
 
(`・ω・´)「これはひどいな…」
 
ショボンは殺戮現場を目の当たりにし、怒りに声を震わせて呟く。
 
(`・ω・´;)「みんな! 引きながら応戦するぞ! 各自退避の態勢をとれ!」
 
ショボンの号令に戦闘員は後退りながら弾丸を打ち込み、爆弾を投げ付けた。
まともに爆炎に巻き込まれた機械生命はバラバラに吹き飛び、活動を停止する。
しかしそれでも後からは新たな勢力が迫っていた。
 
(;^ω^)「どうするお? このままじゃ全滅だお…」
(`・ω・´;)「………」
 
黙したまま敵だけを見据えるショボンの顔には焦燥が広がっていた。
彼は数十分──いや、数分かもしれない、不幸な未来を想像しているのだろうか。

69 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:57:27.64 ID:fP7qJTFZO
「敵が減らねぇ…チクショウ…!」
 
戦闘員が歯ぎしりをしてから言った時、爆音と共に天井が崩れ落ちた。
舞い上がる粉塵の中にある一つの影はこの場にいる人間全てに戦慄を与えた。
機械生命は強力だが、ここまでの破壊力は持っていないからだ。
 
('A`)「愚か者どもめ…。弱者の分際でいつまでも無謀にも抵抗する…。
だがそれもこれで終わりだッ!!!」
 
驚いた事に、その機械生命は流暢に言葉を操ってみせた。
言葉と同時に両手を突き出すと手は変形を始め、巨大な銃を形取った。
 
('A`)「死ねぇ!!!!」
 
速射性、弾丸の直径共に、受ける側にしてみれば最悪な攻撃が横薙ぎの雨のように人間へと降り注ぐ。

頭、腕、足、胴体…恐るべき威力の弾丸は一発で肉片を撒き散らせる。
大半の人間を地に沈めるにかかった時間は、たった数秒の出来ごとだった。
 
「あああああああああああ!!!!!!!!!!!」
 
恐怖に駆られた一人が単身で突撃した。
彼なりの精一杯の反撃だったのだろう。だがそれも空しく腹部に大穴を開けて絶命する結果となってしまう。


70 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 01:58:58.39 ID:fP7qJTFZO
(;゚ω゚)「なんなんだおアイツは…」
(;´・ω・`)「あんなの見たことがない…」
 
二人は完全に戦意を喪失していた。
二人だけではない。
残った者も皆、抵抗する気力を失ってしまっていた。
 
('A`)「ククク…その表情だ…」
 
満足気に言い、ゆっくりと歩み寄る。
もはや逃げる事さえ忘れているのか、戦闘員達は一歩も動かない。
 
('A`)「まずは、貴様だ」
 
最初に選ばれた不幸な者、それは内藤であった。
 
(;゚ω゚)「う、お…」
 
声も出せずに硬直する内藤。
その頭を掴んで持ち上げると悪魔は握り締める。そして最大限の恐怖を与えながら殺害するつもりなのか、これもゆっくりと圧迫しだした。
 
('A`)「己の弱さと無力さに嘆き、絶望して死ね…」
 
(;ーωー)(誰か………ツン…デ…レ)
 
ミシミシと内藤の頭蓋骨がきしむ。圧迫され、鼻孔からは血が滴った。
ジワジワと締め上げ、あと少し力を込められれば弾けてしまう、その時!


71 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:00:52.24 ID:fP7qJTFZO
ドゴオオォォォン!!!!!!
 
('A`)「!!?」
 
壁が、爆砕した。
気を取られたのか、手を緩めたおかげで内藤の頭は砕かれずに済み、身体は地面へと落下した。
内藤はかすれる目でそこから現れた物を目にする。
煙幕の中から徐々に姿を見せた少女、それは紛れもなくツン=デレだった。
 
('A`)「なんだ貴様は…」
ξi冓)ξ「大丈夫?」
 
ツン=デレは問い掛けを無視し、内藤の身体を支える。
 
(;^ω^)「ツン=デレ…?」
ξi冓)ξ「ええ」
('A`)「……貴様、人間ではないな? 今までのサイボーグとも違う…。静かなようで、激しいエネルギーの奔流を感じるぞ」
 
ツン=デレはこれも無視して内藤と話を続けた。
 
ξiーi)ξ「ちょっと待っていて。すぐに片付けるから」
 
そう囁くとショボンを呼んで内藤を任せると、機械生命達を睨み付ける。

72 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:01:52.63 ID:fP7qJTFZO
ξi冓)ξ「疾く、去りなさいッ! 破壊されたくなければね!!」
 
ツン=デレの透き通るようで張りのある声は、彼に冷笑を浮かべさせるだけの効果しか持たなかった。
 
('A`)「フン、馬鹿な事を…。行け!」
 
残忍な笑みで発せられた言葉が合図となって、待機していた機械生命は一斉に行動を開始した。
 
ξi-i)ξ「……忠告はしたわ」
 
ツン=デレは仁王立ちする。
 
ξi冓)ξ「排除開始!!!」
 
ツン=デレがフォルムがブレた。
向かってくる敵との距離は消滅し、瞬間的に間合いに入る。
敵は彼女の速度に対応できず、あっさりと攻撃を許してしまった。
接近すると蹴りを放ち、突きを繰り出し、確実に破壊する。ツン=デレの攻撃は単純な肉弾戦であるにも関わらず、人間と比べると威力は段違いだ。
彼女の拳と足に触れた物は盛大に分解した。
銃撃を受けても動きの停滞はなく、一撃一撃で確実に葬り去るその姿はある種の美しさを醸し出していた。
それでも敵の数は多く、次々と襲いかかる。

73 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:03:23.71 ID:fP7qJTFZO
ξ#i冓)ξ「ああもう! 鬱陶しいわねッ!!」
 
ツン=デレは後退し、両手を前に突き出した。それと同時に都合六枚の翼が展開される。
手と翼から数十発の小型ミサイルが発射され、それぞれのミサイルが別々の敵をロックしているのか無駄なく全て着弾した。
目前まで迫っていた機械生命は瞬く間に鉄くずへと変えられてしまった。
 
ξiーi)ξ「フフン、こんなもんね──」
ξ;><)ξ「きゃっ!」
 
埃を切り裂いて飛来するのは大型の弾丸であり殺意の塊。
彼女のボディに突き刺さる弾丸は、弾かれながらもヘコませ、破壊する。
しかしただ黙って攻撃されている彼女ではない。ツン=デレもミサイルを撃ち込んで反撃に転じた。
弾丸とミサイルが宙でぶつかり合い、新たな煙幕が生まれる。
一分ほど時間が経っただろうか。ツン=デレは攻撃の手を緩めた。
 
ξi-i)ξ(手応えはあったはず…)
 
彼女は目を凝らして粉々になっているであろう強敵を探そうとしたが…。
 
ξ;iдi)ξ(敵反応…!)
 
迎撃しようと動くが時既に遅し、ツン=デレは首を掴まれて後方へ押し出された。


74 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:06:33.40 ID:fP7qJTFZO
濃密な煙を掻き分けて肉薄したのは言うまでもなくあの悪魔だ。
彼女を掴みながら壁に突っ込み、押さえ付けながら凄まじい形相と驚愕の入り交じった表情で言った。
 
(;'A`)「貴様…なぜそれ程までの力を持っている…!」
 
さすがの彼でも無傷とはいかずに所々が陥没していた。
だからといって膂力は衰えてはおらず、パワフルに力を行使する。
首から手を放すとすかさずツン=デレの両肩を掴み、引き千切ろうと力を入れ始めた。
 
ξ;iдi)ξ「ん…く…!」
 
ツン=デレも劣らず腕を掴み返し、握り潰そうともがく。
停滞。
両者の身体が軋む音だけが不気味に響く。
 

ξ;i冓)ξ「ここで、終わる、訳には…いかない、のよォ…!」
 
僅かではあるがツン=デレが優っていた。敵の腕に指が食い込み、破片が床を跳ねる。
 
(;'A`)「なん、だと…?」

ξi冓)ξ「アナタの…負け、よッ!!!」

 
そして一気に腕を引き剥がすと、渾身の一撃を拳に込めて突き出した。


75 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:08:03.57 ID:fP7qJTFZO
(;'A`)「ぐおおお────!!!!?」
 
宙を舞う無機質の身体。
弾け飛ぶ破片。
溢れ出す液体。
彼は破損部から火花を散らせて身を起こす。
目線は元居た場所──そこにはツン=デレはおらず、代わりに眼下まで肉薄していた。
彼女の巻き毛のような部品は無くなっており、それは手に装着されて獰猛な唸りを上げていた。
 
(;'A`)「貴様は…何者だッ!!!」
ξi冓)ξ「私はアンタ達を倒す為に作られた物、ツン=デレよッッッ!!!!!!!」
 
言葉と同時にドリルを突き出し、彼の胴体に突き立てた。
 
ξi冓)ξ「やあああぁぁぁぁぁ───!!!!!」
 
高速回転した切っ先は激しい音を立てながら突き進み……そして貫通した。
 
(;'A`)「ヌぐ…ぅおあああああ!!!!!!!」
 
彼は腹部と胸部に穴を開けられながらツン=デレを殴り付ける。
彼女は不意を突かれてまともに食らい、吹き飛んで壁に激突する。
 


76 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:08:40.87 ID:fP7qJTFZO
(;'A`)「ぐ、グ………まさかこれ程の力とは…」
(;'A`)「ここは一旦引かせてもらおうか…」
 
その瞬間、彼の背中からも翼が展開された。
そして天井に変形させた手を向けると銃撃を開始、一瞬で空が見えるまでの穴が空いたのを確認すると、彼はフワリと飛び上がった。
 
(;'A`)「俺の名はド・クオ…。貴様の名前、覚えたぞ…」
('A`)「また会おう」

ξ#i冓)ξ「あ! コラーッ! 待ちなさーい!!!!!」
 
ツン=デレの怒鳴り声を置いて、それだけを言い残すと彼──ド・クオは空の彼方へと消えてしまった……。


77 ξ゚听)ξは次世代型サイボーグのようです New! 2006/07/19(水) 02:10:52.54 ID:fP7qJTFZO
( ^ω^)「すごいおツン=デレ! あの怪物を撃退しちゃったお!」
(´・ω・`)「これはすごい成果だね。早速各所に報告しなくちゃ」
 
ショボンは小走りで消えていった。
 
( ^ω^)「それにしても後少しツン=デレが遅れてたらアウトだったお!
ありがとうだお!」
ξ////)ξ「べ、別に感謝する事はないわ! アナタを助けたのはプログラムされているからであって、当然のことよ!
声が聞こえたとか、必死に動こうと思ったとか、そんなんじゃないんだからね!」
( ^ω^)「おっおっ顔が真っ赤だお。そんな機能までついてるのかお」
ξ////)ξ「う、うるさい!」
 
ツン=デレはそっぽを向いてショボンの後を追い、内藤も彼女を追った。
 
 
 
人類にとって彼女の存在は微かな希望だ。
人は希望さえあれば明日も歩いて行ける。
たとえそれが吹けば消えてしまう、儚い灯であっとしても──────
         続く…?

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